政治問題を棚上げにしてでも日中関係は前進させるべきだ
朱建栄・東洋学園大学教授
私が来日してから20年以上が経ちましたが、その間に日中関係は大きく変わりました。そして、今は更に大きな変化に向かう過渡期にあると考えています。私はこの時期を越えれば、日本と中国は対等な運命共同体として生きて行くことができると考えています。事実、日中関係はこの5年間で大きく前進しました。経済面ではすでに日中両国は運命共同体になっており、07年の日本における対中輸出入額はアメリカを超えてトップになりました。そして、これまで輸出入額でトップだったアメリカとの貿易は年々、減少傾向にあります。
(張国清)一方で、たがいに反中、反日感情の高ぶりも見受けられますが、そのあたりはいかがでしょうか。
この過渡期は精神的な調整期間でもあると考えています。たとえば、日本は中国の台頭で自信と誇りを喪失しつつあるわけです。現に、日本は中国に対して余裕を持った対応ができなくなってきています。振り返ってみれば、80年代の中曽根内閣の頃は今よりは反日運動が激しかったにもかかわらず、日本はどっしりと構えていました。が、小泉内閣の頃は「靖国問題」に関して、中国の言い分に耳を貸す余裕をなくし、「中国に押し切られたくない」といった意識から対立を長引かせていた一面がありました。と同時に、一般の人たちの中国に対する感情にも変化が見られるようになりました。10年前までは多くの人たちが中国に親しみを持っていたにもかかわらず、最近は反中を掲げる人たちが目立つようになって来ました。ですが、いったん対等な関係を築いているとの認識が共有されれば、こういったことは問題にならなくなるはずです。
(『日本で活躍する在日新華僑』張国清氏のインタビューより抜粋09.10.30発行)