新刊 中国関連書籍
中国 静かなる革命
呉軍華 著
日本経済新聞社(TEL03−3270−0251)
2000円(税込)
■書評
「崩壊論」のような否定的な中国論が目につく中で、本書は改革・開放を振り返り、中国の近未来を冷静に見つめて、崩壊論に間接的に反論する。
著者は共産党一党支配が崩壊しない理由として、天安門事件以降、党がイデオロギーを追求する政党から政権維持を至上命題とする開発独裁型政党に変身し、富を求める自由が国民に与えられたことを挙げる。
その上で中国は2022年までに民主主義的な政治体制に移行する「静かなる革命」が進んでいるという。
中国の近未来に関心を持つ人に一読を勧めたい。
著者は中国の復旦大学を卒業後、東大大学院博士課程を修了し、現在は日本総合研究所理事の日中の経済に通じた専門家である。
中国で「革命」が進む背景にはソ連・東欧の民主化後の景気低迷や社会的混乱が反面教師となり中国で安定志向が高まったこと、中国に多くの中産階級が台頭してきたことなどがあるという。
どのような過程をたどって2022年までに「革命」がおきるのか。著者は1966年から約10年の文化大革命の時期に青春を過ごした40年代後半から50年代に生まれた理想を持ちながら苦難に蹂躙された「知識青年」に期待を寄せている。
この人たちは胡錦涛総書記らの第4世代に続く第5世代である。第5世代は次の2012年の第18回党大会で指導者に選ばれ、多くは第19回大会で再選されて22年まで政権を担う。第5世代には民主化を推進しようという連帯感があり「革命」は進むとみている。
さらに官製資本主義は限界にきている。一党独裁での政治の経済支配は改革・開放下で豊かになった共産党員も望んでいない。中国ではいま民衆の声を汲み上げる「民主の増量」が進んでいる。こうした状況が22年までの革命達成を助けることになるという。
楽観的すぎないかと思う点もあるが、通して読めば説得力を持っている。(垂水健一)
(「日本と中国」2008年10月5日号掲載)