新春インタビュー

崔天凱駐日本国中国大使

アジア安定に意思疎通を

 崔天凱氏が07年10月初旬、第10代大使として赴任した。国連での勤務が長く、多国間関係のスペシャリストである。日本での勤務は初めてだが、かつて外交部アジア局長、次官補を勤め、対日外交などを担当した。流暢な英語を操る崔大使は、従来にない日中関係を構築するうえで大きな役割を果たすと確信する。崔大使に日中関係、日本勤務の抱負を聞いた。

−日中関係の現状と進むべき道は

 日中関係は発展の勢いがある。06年10月の安倍首相(当事)の訪中で、政治的難局から脱却することができ、戦略的互恵関係構築で意見の一致を見た。これは次の5点に現れている。

 @首脳交流の増加:国交正常化35周年に当たり、4月の温家宝総理、9月の賈慶林政協主席の訪日があった。APEC、東アジアサミットを利用した首脳会談も行われた。福田首相は就任後すぐに日中間で初の電話会談を行った。今後、電話会談は頻繁に行われることになろう。

 A経済貿易の新段階:国交正常化当時11億ドルだった両国の貿易額は07年には2500億j前後になると思われる。07年12月1日と2日に第1回ハイレベル経済対話が行われた。今後の経済協力推進に指導的役割を担うと思う。

 B民間交流の新たな高まり:35周年として文化スポーツ交流年が行われ、広範で積極的な影響を与えた。政党、議会交流のメカニズムも進展した。07年の人的往来は500万人突破が見込まれる。

 C防衛交流:解放軍艦艇が11月下旬に初めて日本を訪問した。対話を強化し、信頼を増進し、懸念を払拭するのに有益である。日本で中国の軍事力に注目している人は多い。平和を守る軍隊であることを理解してもらえたと思う。

 D国際社会・地域協力:戦略的互恵関係は両国だけではなく、アジア、世界に向けてのものでもある。朝鮮半島、アフリカ、環境などで両国は協議した。

 両国関係を充実するため次の3点を重点として展開すべきである。

 @首脳交流の継続:福田首相の早期訪中、胡錦涛主席の08年の訪日を実現させる。中国の国家主席の来日は10年ぶりで、両国関係の長期的発展に重要な意義がある。A戦略的対話の推進:意思疎通を通じ、相互信頼関係に、競争相手ではなく協力のパートナーとなるべきである。B共通利益の基礎固め:世界の潮流から見て、省エネ、環境保全での協力が重要である。地域一体化ではそれぞれの優位性を発揮しなければならない。

 台湾、歴史など敏感な問題を処理することも大切であり、東シナ海の共同開発も重要である。障害を取り除き、新たな関係を構築すべきだと思う。

−世界における日中協力の役割について

 エネルギー、気候変動などに積極的に取り組み、協力しなければならない。Win-winの努力をすべきである。経済発展と環境保護の両立が可能な発展をしなければならない。両国ともエネルギーの大量輸入国で、安定した供給・価格保持、市場予測、再生可能クリーンエネルギーで協力する必要がある。開かれた貿易や伝染病、テロなど非伝統分野の安全保障での協力も求められている。

 アジアの平和と安定を守るために、朝鮮半島の核問題、ミャンマー情勢などを意思疎通と協調を通じ、アジアの知恵で解決すべきである。ASEANは一体化を進めており、日中は協力を提供する必要がある。

 アジアの発展を楽観視している。挑戦も多いが、両国はチャンスを逃さず、挑戦に立ち向かうべきだと思う。日中がともに取り組む仕事は多い。アジアに「リーダー国」は不要だ。ともに手を携え、解決すべきである。

−抱負と日本の印象は

 日本には若いころから興味を持っていた。新幹線に乗るケ小平氏の姿をテレビで見たし、日中間の美談をたくさん聞いた。戦争が両国民に大きな災いをもたらした歴史もある。両国民は子々孫々、友好的に付き合わなければならない。両国の主流は前進である。長江は狭い峡谷から発し、勢いよく大海原に出ていく。両国の関係はこのようなものと思う。外交部アジア局長、次官補の時代に日中の困難な時代とその改善を経験した。このような時期に着任したことは光栄であると同時に責任も重いと考えている。国や国民の使命に応えられるよう努力する。個人としての力は限られているが、大使としては全力を尽くさなければならない。

 出張で何度も日本に来たが、日本の印象はとてもよかった。資源が豊富でないなか、アジア唯一の先進国となった。アジアは日本の有益な経験を参考にすべきである。日本は公害を克服し、よい生態環境を作り、省エネでは世界トップ水準である。国民の資質も高い。調和社会の実現に際し、日本から学ぶ事は多い。日本のオリンピックや万博の経験も中国にとって有用である。

−日本国民へのメッセージを

 中国の隣国政策は「与隣為善、以隣為伴」(隣国と善き関係を持ち、隣国をパートナーとする)で、日本とも当然、仲良くしていきたい。日中友好をリレー競争のように世代から世代へと受け継いでもらいたい。次の世代により良いものを残したかが問われる。在任中、心の交流を強化していきたいと思う。

(「国際貿易」08.1.1)