拝啓 与党「中国残留邦人支援PT」メンバー各位

井出 正一 元厚相、(社)日中友好協会副会長


健祥のことと存じます。召集直後に首相が替わるという前代未聞の臨時国会、ご苦労多きかと思いますが、ご活躍のほどお祈り申し上げます。
 さて、満蒙開拓という国策によって生じた問題ゆえに国の責任は重いと、かねて要請して参りました帰国した中国残留邦人への“新たな支援策”につきましては、皆様方のご尽力により、お蔭様で原告・弁護団も受け容れられる内容になり政治決着をみましたこと、改めて深謝申し上げます。私の周囲におります該当者も大変喜んでいてくれます。
 来年1月に支援策をスタートさせる関連法案が、この臨時国会で審議されるわけですが、その際もう一点ご高配いただきたく一筆認めた次第であります。

申しますのは、永住帰国時の国籍取得の際、「帰化」手続きで取得した人は外国人と同じ扱いとなり、国民年金の特例措置の対象外の期間(難民条約が批准された1982年まで)を有しており、このことで新支援策でも不利な状況になるのではないかと案じられる方が、長野県飯田地区に2人存在することが地元紙に報じられたからです。
  紹介されている中島千鶴さん(75)は、飯田日中友好協会が展開している“満蒙開拓語り部の会”のメンバーとして、若い世代に歴史を語り継ぐ役を担っていてくれるおひとりです。終戦時13歳だった中島さんは、49年に中国人男性と結婚。57年に中国籍を取得。85年に帰国したが法務局で中国籍取得の経緯を詳しく説明したため、自らの意思で取得したと理解され帰化扱いになったとみられます。そのため難民条約が批准されるまでの9年余について特例措置の対象外とされ、対象期間の保険料は追納したものの、月に受け取る国民年金の額は4万6千円と一般より少なく、このことが新支援策でも不利に働くのでないかと危惧されているわけです。

労省の中国孤児等対策室の担当官は「戸籍・国籍に関することは管轄外なので」と発言したと地元紙は報じています。元厚相として遺憾ではありますが、縦割行政のなか、一室長の裁量の範囲を超えているようにも考えます。中島さんのような例の他に、肉親が不明、証拠もないことから、永住のために「帰化」手続きによって就籍=戸籍取得をした人たちもいるかもしれません。全国でどの位の数になるのか掌握してはいませんが、この人たちが他の残留邦人に比べて不利にならないよう、どうかこの分野でも「政治」の力を発揮して下さいますようお願い申し上げます。  敬具

(「日本と中国」10/15号)