中国への緑化協力に思う

井出 正一 元厚相、(社)日中友好協会副会長

都での第11回日中友好交流会議における「基調発言」の最後に、私は若干テーマから逸れることを承知しながらあえて次のような発言をした。
 「春になると黄砂が時々日本まで舞い飛んできます。正直のところ年々酷くなっているように思えます。それだけ中国での森林の減少と砂漠化は深刻になっているのでしょう。もちろん中国でも対策を講じていますが、追いつけないのが実情です。私の知る限り、各地の日中友好協会、企業、大学生、労働組合、宗教団体、NPOなどわが国から、日本政府の用意した日中緑化交流基金や各種カンパなどをもとに、中国各地で緑化協力のボランティア活動をしているチームは40近く存在しますが、呼び水的な役割を果たしているに過ぎません。

の広大な中国を緑の地にできるかどうかは、中国の人たちの行動に懸かっています。元中国社会科学院日本研究所副所長の馮昭奎氏は、昨年暮、『日本経済新聞』に「中国の“環境防衛”は一刻を争う。人民解放軍の一部を以て“森林建設兵団”を作り植林を進めよう」と提言されています。(中略)日本としてもこれまで以上に緑化協力に力を注ぐべきですし、ご参集の中国の皆さんには、それぞれのお立場から関係筋に対して、緑化運動への理解とボランティア的活動への呼びかけ、また地方及び中央政府への緑化活動に対するさらなる要請、働きかけをどのように進めていくべきかについてお考えいただけたらと考えます」
 こう語りかけながら、私は1996年の夏、中南海で江沢民国家主席とお会いしたときのことを思い浮かべていた。

時国会議員だった私が所属していた“新党さきがけ”の代表であった武村正義氏が、90歳を越してなお、砂漠の緑化に生涯をかけ内モンゴルのクブチ砂漠で植林活動を続けている遠山正暎・鳥取大学名誉教授の事業を知り、“緑のPKO”と称してさきがけ植林隊を派遣、私も園田博之、堂本暁子議員らと参加した。中国大使だった佐藤嘉恭会長代行を煩わして江主席との会見が実現、遠山先生を紹介したところ、江主席は作業服姿の遠山先生に「あなたはクブチの愚公先生です」と握手を求め感謝の意を表された。
 武村さんが「いつの日か、貴国の人民解放軍とわが国の自衛隊が一緒に植林活動をやれたら素晴らしいですね」と問いかけると、一瞬びっくりしたような表情のあと、「同感です。私もそのような日の来ることを望みます」―夢のような話でもあるが、私にとっては懐かしい、忘れられない光景である 。
(「日本と中国」07.7/15号)