第11回日中友好交流会議を前に

                                井出正一  元厚相、(社)日中友好協会副会長

 月23・24日の両日、四川省の成都で開催される第11回日中友好交流会議の開幕式後の全体会議において、日本側の代表として「基調発言」を仰せつかった。テーマは「戦略的互恵関係と民間交流の役割」である。目下、その草稿をしたためているところである。
 前大会が長野市で開かれた一昨年の4月は、小泉首相の靖国参拝をはじめとする歴史認識をめぐって、反日デモも発生、日中関係は国交正常化以来最悪の状況といわれていた。全体会議の議長として私は冒頭、「このような時期に開かれるこの会議の意義はより一層増した。感情的な対立の中に双方の理性的な声が埋れてよいわけがないし、埋れるはずはない」と申し上げた。2年が経過した現在、当時のあの重苦しい状況とは大きく異なった雰囲気の中で開催されることを嬉しく思う。

の契機となった昨年10月の安倍首相訪中の際の「戦略的互恵関係の構築」を謳った「共同プレス発表」に続いて、4月11日温家宝首相が「氷を溶かす旅にしたい」と訪日、中国の首相として初めての国会演説は、中国全土にテレビで生中継された。中国国民が政府の対 日姿勢の転換をどう受け取るか。日本国民の多くは、威厳はあっても飾らない温首相の人柄に好感を持ったはずである。

「共同プレス発表」の持つ意味については本紙1月25日号の拙稿をご覧いただきたいが、キーワードの「共通の戦略的利益に立脚した互恵関係」について、ジャーナリストの田勢康弘氏も「含蓄に富む言葉である。日米関係のように同盟関係ではない。しかしながら、ともに利益を共有する『互恵関係』、加えて『戦略的』という言葉には『価値観や政策の違い』を大局的見地から乗り越えていこうという積極的な意味が込められている」(「日経」4月16日)と評価、期待している。それゆえ、今回交流会議のテーマとして採り上げられたのであろう。

中国交正常化35周年のことしは「日中文化・スポーツ交流年」として多彩な交流事業が展開されよう。その中で市民同士の交流、市民活動を行っている団体同士の交流、県市町村レベルの交流がより重要となってくるであろう。更に急速に変化、発展してゆく中国との今後の交流を考えるとき、新しい視点に立っての交流、そのためには若い世代の交流を、留学生を含めて一層盛んにしなくてはならない。本紙新年号で小倉和夫・国際交流基金理事長が仰る通りである。中国のある指導者から聞いた「長江後波推前浪(若い者が時代を動かすの意)」の語句が思い出される。
(「日本と中国」2007.6.5)