曽慶紅副主席に「三つの代表論」を問う

 平山郁夫会長を団長とする全国都道府県日中友好協会会長代表団の一員として、冬近い、しかし空は「北京秋天」の続く北京へ行ってきた。
 11月8日午前中に設定された国家要人との会見は、曽慶紅国家副主席が率先買って出てくれたとの報を前日耳にした。
 4年前の11月、中国共産党第16期1中全会で選出された第4世代指導部に外国人として初めて会見したのは、平山会長以下わが協会訪中団で、私も同席した。その時われわれの前に登場したのが曽氏であった。

下はその折の私と曽氏との質疑の要約である。
 井出「今回の私営企業家も党員として容認するという党規約の改定には驚いた。私たちの常識からすれば、これでは共産党ではなくなってしまうのではとさえ思える。もっとも党のために人民があるのではなく、人民のために党があると考えるならば肯けないこともないが…。その点について、江沢民主席の懐刀といわれている曽慶紅先生から改めてご説明いただきたい」
 曽「仰しゃる通り中国共産党は人民のためにある。かつて中国が半植民地であり、中国共産党は権力を掌握していなかった時代には、党は人民を峻別し引率することもあったが、いまや中国は独立し、共産党は権力を握るに至った。となると広範な人民の声・要求に党は耳を傾ける必要がある。三つの代表論も、そうした中国の発展、変化に即応したものである」

回、野中広務名誉顧問、平山会長に続いて何人かの発言のあと、私は4年前の論議に触れつつ、「社会主義的市場経済という、学説もモデルもない壮大な実験に挑んでいる中国の動向に、私は大きな関心を持っているが、第三の代表を党内に受け入れた影響は如何か。例えば経済成長にとって、あるいは格差の拡大にとって等々、どんな評価をなさっているか」と質した。
 曽氏は「時間がないので詳しくはお答えできないが、総じて順調、判断に誤りなかったと考えている。今後もわれわれは毛沢東思想、ケ小平理論、三つの代表論の3本の柱を中心に、科学的な調和社会の実現を目指していく所存である。その際克服しなくてはならない課題も数多く生じてくるだろうし、省エネ、環境など様々な分野で日本から学ばなくてはならない」と答えらえた。
 来秋二期目に入る胡錦涛体制のキーマンと目される曽慶紅氏は、祝宴の席で乾盃のグラスを手にわれわれの食卓を廻られた。4年前よりいっそう自信に満ち、エネルギッシュな一挙手一投足であった。
(2006/11.25「日本と中国」フォーカスより)