安倍首相が訪中しトップ会談−戦略的互恵関係構築へ
安倍晋三首相は１０月８日、中国を公式訪問し、北京で胡錦涛国家主席、温家宝総理、呉邦国全国人民代表大会常務委員長と相次いで会談した。これは安倍氏が９月２６日に首相就任後初の外国訪問であり、０１年１０月に小泉首相が北京を訪問して以来５年間中断していた日中首脳による相互訪問の再開となった。
首脳会談の結果、双方は日中関係をさらに高い次元に高め、共通の戦略的利益に基づく互恵関係を構築することで一致し、会談の成果をまとめた「共同プレス発表」を出した。
政治関係悪化の原因となっていた靖国神社参拝問題について、中国側は「問題を善処し、政治的障害を除去しなければならない」と表明した。これに対し、安倍首相は「日本がかつてアジア諸国のひとびとに対して多大な損害と苦痛を与え、傷跡を残したことに対する深い反省の上に戦後６０年の歩みがあり、この思いはこれからも変わることは無い」との歴史認識を示した。参拝については明言を避け、政治的な困難を克服し、両国の健全な発展を促進する観点から「適切に対処する」と述べた。 経済問題では、日中双方はエネルギー、環境保護、金融、ＩＴ、知的財産権などの分野で協力を強化することで合意し、東シナ海問題では共同開発の方向で解決策を模索することを確認した。
国際問題では北朝鮮の核実験を含む朝鮮半島の情勢に深い憂慮を表明し、６者会談を推進することを確認した。また日中韓の協力を強め、東アジアの一体化を推進することを確認した。
安倍首相は胡錦涛主席、温家宝総理の訪日を招請し、中国側は原則同意した。政治関係は正常化に向けて大きく前進した。
安倍首相は中国訪問後、９日に韓国を訪問し、盧武鉉大統領と会談した。
共同プレス発表（要旨）
◎日中関係は両国にとって最も重要な２国間関係の１つ。日中関係の安定的発展の持続は両国の基本的利益に合致。アジア、世界の平和と発展に建設的な貢献を行うことが両国に与えられた厳粛な責任だ。
◎双方は日中共同声明などの諸原則を順守し、歴史を直視し、未来に向かい、両国関係の発展に影響を与える問題を適切に処理する。
政治と経済という２つの車輪を力強く作動させ、日中関係をさらに高い次元に高めていく。
共通の戦略的利益に基づく互恵関係を構築し、共同発展という目標を実現する。
◎指導者間の交流と対話は両国関係の健全な発展に重要な意義を有する。中国指導者の日本訪問招待に、中国側は感謝の意を表し、原則的に同意した。
◎中国側は、中国の発展は平和的発展であり、各国と共に発展していくことを強調。日本側は戦後一貫して平和国家として歩んでき、引き続き平和国家として歩み続けることを強調し、中国側も積極評価した。
◎双方は東シナ海を平和・協力・友好の海にするため協議のプロセスを加速し、共同開発という大方向を堅持し、解決の方向を模索する。
◎双方は政治、経済、文化などの分野で各レベルの交流と協力を促進する。
〇エネルギー、環境保護、金融、ＩＴ、知的財産権などの分野を重点として、互恵協力を強化する。
〇安全保障対話や防衛交流を通じて相互信頼を増進。
〇有識者による歴史共同研究を年内に立ち上げる。
◎双方は核実験問題を含む朝鮮半島情勢に深い憂慮を表明した。６者会合の共同声明に従って６者会合プロセスを推進し、対話と協議を通じて朝鮮半島の非核化の実現、北東アジア地域の平和と安定の維持に尽力する。
◎東アジア地域協力、日中韓協力での協調を強化する。国連改革について対話を強化する。
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<資料> 日中共同プレス発表(平成18年10月8日) 2．日本側及び中国側双方は、国交正常化後34年間、日中両国間の各分野における交流と協力が絶え間なく拡大・深化し、相互依存が更に深まり、日中関係が両国にとり最も重要な二国間関係の一つとなったとの認識で一致した。また、双方は、日中関係の健全かつ安定的な発展の持続を推進することが、両国の基本的利益に合致し、アジア及び世界の平和、安定及び発展に対して共に建設的な貢献を行うことが、新たな時代において両国及び両国関係に与えられた厳粛な責任であるとの認識で一致した。 3．双方は、日中共同声明、日中平和友好条約及び日中共同宣言の諸原則を引き続き遵守し、歴史を直視し、未来に向かい、両国関係の発展に影響を与える問題を適切に処理し、政治と経済という二つの車輪を力強く作動させ、日中関係を更に高度な次元に高めていくことで意見の一致をみた。双方は、共通の戦略的利益に立脚した互恵関係の構築に努力し、また、日中両国の平和共存、世代友好、互恵協力、共同発展という崇高な目標を実現することで意見の一致をみた。 4．双方は、両国の指導者の間の交流と対話が両国関係の健全な発展に重要な意義を有すると考える。日本側より中国の指導者の日本訪問を招待したのに対し、中国側は感謝の意を表明し、原則的にこれに同意し、双方は、外交ルートを通じて協議することで意見の一致をみた。双方は、両国の指導者が国際会議の場においても頻繁に会談を行うことで意見の一致をみた。 5．中国側は、中国の発展は平和的発展であり、中国が日本をはじめとする各国と共に発展し、共に繁栄していくことを強調した。日本側は、中国の平和的発展及び改革開放以来の発展が日本を含む国際社会に大きな好機をもたらしていることを積極的に評価した。日本側は、戦後60年余、一貫して平和国家として歩んできたこと、そして引き続き平和国家として歩み続けていくことを強調した。中国側は、これを積極的に評価した。 6．双方は、東シナ海を平和・協力・友好の海とするため、双方が対話と協議を堅持し、意見の相違を適切に解決すべきであることを確認した。また、双方は、東シナ海問題に関する協議のプロセスを加速し、共同開発という大きな方向を堅持し、双方が受入れ可能な解決の方法を模索することを確認した。 7．双方は、政治、経済、安全保障、社会、文化等の分野における各レベルでの交流と協力を促進することで意見の一致をみた。 ・エネルギー、環境保護、金融、情報通信技術、知的財産権保護等の分野を重点として、互恵協力を強化する。 ・経済分野において、閣僚間の対話、関係当局間の協議や官民の対話を推進する。 ・2007年の日中国交正常化35周年を契機として、日中文化・スポーツ交流年を通じ、両国民、特に青少年の交流を飛躍的に展開し、両国民の間の友好的な感情を増進する。 ・日中安全保障対話や防衛交流を通じて、安全保障分野における相互信頼を増進する。 ・日中有識者による歴史共同研究を年内に立ち上げる。 8．双方は、国際問題及び地域問題における協調と協力を強化することで意見の一致をみた。 9．日本側は、安倍晋三内閣総理大臣の中国訪問期間中における中国側の心のこもった友好的な接遇に対し、感謝の意を表明した。 2006年10月8日北京で発表した。 |