つくる会中学歴史教科書、採択率0.4%にとどまる
長野県内採択なし
9月2日の信濃毎日新聞はじめ各社の報道によれば、「新しい歴史教科書をつくる会」の主導する扶桑社の『中学新しい歴史教科書』の採択率は0.4%程度にとどまる見通しという。(前回は0.039%)。この教科書は、中国や韓国はじめアジア諸国への侵略を、「自存自衛のアジア解放の正義の戦争」といった歴史の真実を歪曲するトーンで描き、国内外から批判を浴びていたもの。禁止されている関係者への事前宣伝や、教育委員会への政治的介入など、なりふり構わない行動で「10%採択が目標」と喧伝していただけに、日本国民の良識を示したものと評価される。
なお、長野県日中友好協会は7月12日、県教育委員会を訪れ、つくる会歴史教科書の不採択を申し入れたが、長野県内では4年前と同様採択されたところはなかった。
通常このような低い採択率では、採算がまったく取れず破綻するはずというのが、教科書業界の常識とされるが、この教科書は、政治的背景を持って再び登場したのだった。「結果を分析し今後に生かしたい」との扶桑社の話は、4年後に向けて三たびチャンスをうかがおうとしていることを示しており、要注意だ。「あれは侵略ではない、あれは侵略ではない・・・・、嘘も100回言えば真実になる」といった「ヒットラーまがいの嘘」を見抜く力を持ちたいものだ。民族的責任の思想を踏まえてアジアの人々と真の信頼関係を築いていくために。
<資料>
つくる会中学歴史教科書、採択率0.4%にとどまる
「騒ぎ嫌い広がらず」見方も
長野県内採択なし (信濃毎日新聞05.9/2)
来春から中学校で使われる歴史教科書のうち、「新しい歴史教科書をつくる会」主導の扶桑社版の採択率(シェア)は、現在の在籍者数を基にした試算で0.4%程度にとどまることが9月1日、共同通信社の集計でわかった。
0.04%だった四年前の前回よりも増えたものの、同会が一貫して目標に掲げてきた「採択率10%」にはほど遠い結果に終わった。扶桑社版をめぐっては「歴史を歪曲(わいきょく)している」とする韓国や中国との間で外交問題に発展、国内でも市民グループなどが内容について批判していた。
ほかの教科書会社やつくる会の関係者からは「教育委員会が外交問題などの騒ぎに巻き込まれるのを嫌ったこともあるのではないか」との声も出ている。
集計は各都道府県教委や採択地区などを通じて行った。
市区町村で扶桑社版歴史教科書を採択したのは東京都杉並区と栃木県太田原市の2地区だけだった。
これに東京都立と愛媛県立、滋賀県立の中高一貫校、養護学校などと私立中を合わせると、77校で来春から使用される。
77校の在籍者数(来春開校の学校は入学予定者数)計約16,300人を基に試算すると中学生全体の0.44%だった。公民は43校(約9,300人)で、0.25%。
私立校では、歴史、公民とも扶桑社版の採択が判明しているのは、今回新たに採択した玉川学園中(東京)と明徳義塾中(高知)のほか、常総学院中(茨城)や国学院栃木中(栃木)など9校。歴史のみが岡山理科大付属中(岡山)。公民のみは日大三中(東京)と清風(大阪)の2校だった。
県教委は1日、来春から県内の公立中学校が使う教科書の採択結果を公表した。県内14地区のうち、「新しい歴史教科書をつくる会」が主導した歴史と公民の教科書(扶桑社発行)を採択したところはなく、いずれも東京書籍か帝国書院発行の教科書だった。
また、県内の信大付属や私立の中学校、盲学校・ろう学校、肢体不自由と病弱の生徒が通う養護学校の中学部についても、すべてで同様の対応となった。
「市民の勝利だ」 (子どもと教科書全国ネット21の俵義文事務局長の話)
ごくわずかの採択にとどまったのは、つくる会教科書に反対する市民運動の大きな勝利だ。一部の教育委員会での採択は、子どもや教育のためではなく、不当な政治的思惑によってなされたもので、撤回を求める。子どもや保護者の声をよく聞き、学校単位、教師単位で採択できる制度の実現に取り組みたい。
「不採択の地域残念」(扶桑社の話)
前回より採択部数は着実に増えた。ただ、期待していたが、採択されなかった地域もあり残念だ。結果を十分に分析し、今後に生かしていきたい。反対派の執拗(しつよう)な妨害活動により、公正な採択活動が阻害された。教科書批判を行うなら是々非々で論じるべきであり、当社のみを批判するのは公正さに欠けている。