2005年の新年を迎えて

             (社)日中友好協会会長 平山郁夫

 明けましておめでとうございます。今年こそは平和な年でありますようにと祈っていますが、朝鮮民主主義人民共和国との正常化交渉、イラク紛争、アフリカ問題など、きびしい交際問題が山積みとなっています。

 中国とはここ三年間も両国首脳の往来が実現せず、「政冷経熱」の状態が続いています。一日も早く日中首脳が懸案を解決して、相互訪問ができるよう祈っております。

 そうした状況の中で、昨秋に弘法大師入唐千二百年を記念して西安を訪れ、陝西省と西安市の政府及び各界関係者によって催された盛大な儀式に出席しました。その折に、若き遣唐使、井真成の墓碑銘が初公開され、記者会見の席に私も立ち会いました。

 若き無名の井真成は、開元22年(西暦734年)没とあり、時の玄宗皇帝から手篤く葬っていただいたことや、真成の人柄を讃していました。阿倍仲麻呂と共に713年ごろ遣唐使節に加わった優秀な留学生であったことも記されていました。

 ギクシャクした日中関係の今、留学生の魂から千二百数十年後の我々が呼びかけられた気持ちで、感動しました。今年は戦後60年を迎えます。このような日中関係の中では、大いに民間交流を行っていくことが望まれます。

 今年はまた南京城壁修復10周年を迎えます。10年前に、日中間の心の修復を願い、城壁文化財を修復することを通して心の傷を癒そうと呼びかけ、多くの日本人がこれに参加しました。修学旅行の高校生をふくめ、大勢の人が修復事業に参加してくれました。10周年を記念して日中友好運動の原点としたいものです。

 かつて東アジアは、中国を中心とした文化圏でした。2000年にわたる東アジアの歴史にしっかりと根ざした歴史認識を持つならば、将来への明るい展望が期待できると思います。ヨーロッパでは、一足先にこの問題を乗り越えて、EU共同体に向いつつあります。日本も、近隣諸国と手を携えて、明るい世界に向って歩を進めたいと祈念します。