御殿場のギャンブラー とっつぁん

発行者:久米昇

授業中にとっつぁんの顔を見かけた記憶がほとんどない。たまにとっつぁんを見かけるのは、大学の近くの雀荘だった。しかし、それもごくまれなことで、ほとんど大学には来ていなかったような気もする。
他人のことをいろいろ言えるものでもないが、当時の彼は、栄養が行き届いていないかのようにかなり痩せていた。そして、立ち居振る舞いに若さが感じられず、何処となくおじん臭さを感じた。それは、我々がまだ知らなかった馬券の買い方や、麻雀のやり方等を知っていたからかもしれない。我々は彼から麻雀の手ほどきを受けた。そして受けたものはそれだけである。我々はそんな彼を「とっつぁん」と呼ぶ。

競輪、競馬、パチンコ、麻雀。とっつぁんとギャンブルは、セットで我々のイメージとなっている。今でも、とっつぁんは時々集合時間に遅れる。その理由は、場外馬券を買いに寄り道をしてくるからである。電車で集合場所にやってくる場合は、改札を出てくるとっつぁんの手には必ずワンカップがある。

そんな酒とギャンブルに明け暮れているようなとっつぁんが、時々獅子の会の宴会で、調子が悪そうにしていることがある。一度ちゃんと検査してもらった方がいいと言うのだが、結果を聞くのが怖くて検査にも行かれないようだ。