今日のコラム・バックナンバー(2007年 1 月分)


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掲載は日付順になっています。


2007.1.9

今年もよろしくお願いします。

今年の新年のテレビ番組やコマーシャルは
あらかた「お笑い」と
「マグロ」と
「団塊の世代」と
「イノベーション」とに
占拠されていた感があった。

ともかくチャンネルを回すと
上記の単語によくぶつかった。

「お笑い」はもう何年も前から
寝正月の市民から視聴率を稼ぐには
一番コストパフォーマンスが
高い、というテレビ局側の都合によるものが
多いというのはわかる気がする。

しかし、
クロマグロの漁獲規制が始まって
今後以前のようにはマグロが食卓には上らない
食品になっていくだろうということや
日本以外のアジア諸国で
マグロを食べる、それも生で、
習慣が広まってきた、ということがあったとしても

「マグロ」が正月のテレビで
ドラマになったりドキュメントになったりと
これほどまでに取り上げられるとは
いまだに理由がわからない。



2007.1.10

まあ、これもコストパフォーマンスが
高い、ということになるんだろうが
それにしてもマグロ漁がチャンネルをひねるたびに
映し出されるのは
なにか政治的意図でもあるんじゃないだろうかと
思えるくらい頻繁に正月のテレビに写しだされていた。

「団塊の世代」と
「イノベーション」の単語は
2007年の経済を占う単語としては
双璧をなすものだ。

「団塊の世代」は
いよいよ2007問題、
(どうも「問題」という言い方には違和感がつきまとうのだが、、、)
の本番がまくをあけたということだし

「イノベーション」については
今度の内閣のうたい文句の
一つであることから
「再チャレンジ」とともに政治経済の番組やら
テレビや新聞でとりあがるのはわかる。



2007.1.11

さて、その「イノベーション」だ。

安倍内閣になって進めている施策に
イノベーション25 というのがある。
以下は、
国の進める産業施策、イノベーション25 
http://www.cao.go.jp/innovation/index.html
のホームページだ。ここにはこのように書かれている。

  「イノベーション25」とは、安倍政権の所信表明演説に盛り込まれた公約の
  1つであり、2025年までを視野に入れた成長に貢献するイノベーションの創造
  のための長期的戦略指針のことです

またこうも書かれている。

  よく技術革新や経営革新、あるいは単に革新、刷新などと言い換えられて
  いますが、イノベーションとは、これまでのモノ、仕組みなどに対して、全く
  新しい技術や考え方を取り入れて新たな価値を生み出し、社会的に大きな
  変化を起こすことを指します。

ここに書かれていること自身はそのとおりだと思う。
が本当にそうだろうか。
「狭義の技術革新」を結局は示しているように思えるのだ。



2007.1.14

これだと大学・研究所と大手企業の間で行ない成果を出すのが
イノベーションなり、ということになりはしないか、と思える。

たしかに大学や研究所、大手企業などで
これまでにない技術的な革新を
イノベーションの一つとして捉えるのは間違いはない。

しかしイノベーションの指す意味は
けしてそれだけではない。

   これまでのモノ、仕組みなどに対して、
   全く新しい技術や考え方を取り入れて新たな価値を生み出し、
   社会的に大きな変化を起こすことを指します。

という言葉に反論するならば

    全く新しい技術や考え方を取り入れずとも
    全く新しい価値でなくとも
    大きな変化を起こさずとも

ことを起こすこともイノベーションと呼んでいいはずだ。

イノベーションは
けして大学・研究所と大手企業のみの専売特許ではない。



2007.1.15

残念ながら昨年亡くなった
かの経営学者 故P・F・ドラッカー氏が
イノベーションについて様々な著書で触れているのだが
とても参考になる。

企業は二つのことをおこなわなければ存続できない。
それはイノベーションとマーケティングである。

「イノベーションの機会」には7つの機会がある。
下記に記す。「下」にいくほど
イノベーションに成功するのが難しく困難になる。

容易

↓予期せぬ成功失敗を捉える
↓ギャップを捉える
↓ニーズを捉える
↓産業構造の変化を捉える
↓人口の変化を捉える
↓認識の変化を捉える
↓アイディアや知識

困難




2007.1.16

よく産学連携や技術開発や技術革新で
言われる「シーズ」というのは
この場合新しい「アイディアや知識」のことを指すのだろうし、

今回の国のイノベーション25戦略が指す
イノベーションとはたぶんそれらの部分を指すように思う。

しかし、ドラッカーにいわせれば
この新しい「アイディアや知識」の発見を
イノベーションの機会とし成功するのは
一番難しいのだということになる。

一方、「シーズ」と逆の意味で良く単語として使われる
「ニーズ」をイノベーションの機会として捉えるのも
容易なほうから3番目になっていることに注意する必要がある。



2007.1.17

イノベーションの機会として捉え成功させるのに
一番成功率が高いのは
「予期せぬ成功失敗を捉える」
ということだとドラッカーは言う。

「予期せぬ成功失敗を捉える」・・・
あまり聞かないフレーズなのだが

要は
自分等の考えている事業の目標や目的とは別に
知らないうちに提供するサービスや製品が
知らない、設定していない目的や目標としていない市場に
受け入れられていることがある場合がある。

この場合、事業者は自分達の考えていた
事業の姿とは異なっていることから
それをあえて認めたがらない、力や認識が働く。
状況によってはその事実を無視することさえ行なうというのだ。

まさに予期していなかった成功がそこに
生まれているのにそれを認めたがらない、というのだ。



2007.1.18

しかし実際にはそこに市場があり
ビジネスのチャンスは存在しているのであるのだから
そこを機会・チャンスとして捉える必要がある。
それをドラッカー氏は
「予期せぬ成功失敗を捉える」ことが
必要だし重要だと力説するのだ。

ビジネスとしても市場のほうで窓をあけてくれているのだから
そこに自分達のすでに持つ製品やサービスを
新しい市場に持ち込むだけでいいのだし、
これほど成功の可能性が高い機会はないではないか、
というわけだ。

「予期せぬ成功失敗を捉える」に続き
「ギャップを捉える」ことも「ニーズを捉える」ことも
同じようなことだ。



2007.1.21

市場にすでにある必要性や声に気がついて
そこにむけてサービスや製品を作るなり持ちこむなりで
ビジネスとして成立する、というわけだ。

いくら「すごそうなアイディアや技術」があっても
それが市場にうけいれられなければ
ビジネスとしては成立しないのは当然だ。

最近の言葉で言えば
新しいアイディアや技術によるシーズが
市場に受け入れられずビジネスにならないという
「死の谷」がまさにそれにあたる。

だから今度の「イノベーション25」も
下手をすれば
「死の谷」を渡りきれずに
谷の前に屍累々となる状況がおきえるのだ。



2007.1.22

それを否定はしない。

成功する確率は低いとはいえ
それも大事なイノベーションの機会となりえるからだ。

大企業や大学や研究機関がそれらの
確率が低いが新しいアイディアや技術の発見を
社会や産業に大きな変化をもたらす
大きなイノベーションの機会として
捉えることは間違いではないと思うし

一国の産業政策としてアイディアや技術や知識を
産業にしていくことをあきらめてはならないと思う。

なかには例えば最近の青色ダイオードや
昔で言えばトランジスタラジオなど
一国の国際競争力に直結するものもあるわけだ。

また、
大企業などはその巨大な体躯を維持するために
シーズ先行で大きな市場をまっさきに確保しなければ
ならないといった事情がある。



2007.1.23

そして
日本の産学連携と言われるものが
一様に目指しているのはまさしくこの部分だ。

しかし、
人材も資本も設備もある程度潤沢にもっている
大学や研究機関、大手企業だからこそできる分野であって
少なくとも地方や大部分の中小企業が
容易に選択できるような方法ではないとも思う。

新しいアイディアや技術を機会としてとらえて
ビジネスとして成功させるには
時間もかかるし人材も資本も設備もかかる。
かりにそれを市場につなげることに
一見成功しても
大きな市場になりえず設備などにかけた
投資が回収できないまま
短時間で収束してしまうことや
もともと市場にたどり着けないことさえ多い。
最近は大企業でさえ
こういったビジネスモデルに四苦八苦しているくらいなのだ。



2007.1.24

そういえば
ちょっと前にイノベーションといえば

「プロセスイノベーション」
と
「プロダクトイノベーション」

という言葉にいきあたることが多かった。

この議論が行なわれた社会背景は次のようなものだ。

キャッチアップ型の日本の産業は
欧米が考えた技術や製品のアイディアを
安価に品質を高く市場に供給することを
目指し実際に様々な家電や自動車などを
大量生産しててきてこの数十年にわたり
世界の産業の先頭を取り成功してきた。

何を作るのかは欧米を真似すればよく
要は日本は
「何を作るのか」
「プロダクトイノベーション」
ではなく
「どうやって作るか」つまり
「プロセスイノベーション」を考えていれば
よかったのだ、と言われた。



2007.1.25

しかし「追いつけ追い越せ」の時代、
キャッチアップの時代を終えて
日本は自ら「何を作るのか」という
「プロダクトイノベーション」を
おこなわなければならない時代に突入したのだ、
という問題意識のなかで
この
  いままでのような
  プロセスイノベーションではなく
  これからは
  プロダクトイノベーションが必要
という議論は行なわれたのだと思う。

しかしこれまで書いてきた
ドラッカーの7つのイノベーションの機会の話と
この話を比べると
「プロセスイノベーション」
「プロダクトイノベーション」
の二つでしかイノベーションの姿を捉えてない。



2007.1.28

ドラッカーの「7つのイノベーションの機会」の話に比べて
プロセスイノベーションとプロダクトイノベーション
の議論には範囲の狭さがあるように思う。

プロダクトにしろプロセスにしろ
7つのイノベーションの機会でいえば
その7つめの機会であり
一番成功率の低い「アイディアや知識」の
ワクのなかでの話だからだ。

でもどちらかとおいえば
「アイディアや知識」のイノベーションや
プロセスやプロダクトのイノベーションは
大手企業の範疇で行なわれるものだ。

しかし、大手も中小もなく
事業や企業にとって必要な作業である
「マーケティング」と「イノベーション」であるのなら
中小企業にとっての
「イノベーション」も当然あっていいのだろう。



2007.1.29

たぶん

↓予期せぬ成功失敗を捉える
↓ギャップを捉える
↓ニーズを捉える
↓産業構造の変化を捉える
↓人口の変化を捉える
↓認識の変化を捉える
↓アイディアや知識

の7つの機会は企業や個人に平等に開かれていていい。

そして中小企業の場合には
アイディアや知識をイノベーションの機会と捉えるよりは
むしろ
得意とする「多様多彩なものづくり」と
社会や産業や現場のもつ
ニーズ・ギャップ・思わぬ成功失敗、をつなげることで
中小企業もいろいろにイノベーションの可能性を
高めていくことができるはずだ。



2007.1.30

もちろん
大手企業や大学や研究機関も
アイディアや知恵をイノベーションの機会にする以外に
予期せぬ成功失敗を捉えたり
ギャップを捉えたり
ニーズを捉えたりすることを
イノベーションの機会とすることも
できるはずだ。

が、たぶん
市場の声に細かく応えたり
需要の変動に細かく応えたり
じぶん自身をすばやく変化させていくのは
大手企業や大学研究機関などよりは
中小企業のほうが得意なはずだと思う。


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