今日のコラム・バックナンバー(2006年 3月分)


INDUSTRYWEB HOMEへ戻る / 今日のコラムに戻る/ バックナンバーに戻る

掲載は日付順になっています。


2006.3.1

グラスファイバーで作った少量生産の個性的なボディーに
モジュールとして社会に供給された部品を組み込んで
個性的なスポーツカーを少量生産する。
これがイギリスなどに見られる
自動車生産の「一つのやり方」ではある。

いまでもそういう自動車メーカーは
イギリスには存在していて
そんな車をよくみると
どこかでみたような他の車メーカーの車に使われている
外装部品とかランプ類とかがそのままや
あるいは上下逆にされて付けられていたりする。

結構違和感なく装着されていて
あたかも専用部品のようにくっついていたりして
これはあの量産車のどこぞの部品じゃないか、と
発見したりすることがあってほほえましいといえば言える。



2006.3.2

機構部品も同じようなものが、あるいは全く同じものが
使われていて
そういうものに関しては
他メーカの車であるにも関わらず
廃車になった車が他社の車の部品取りになったりする。

ポルシェとか日本の車の場合にはそうはいかない。

モジュール化された部品の集合体である
イギリスの少量生産スポーツカーに比べ
はるかに部品相互の関連性や影響度が高い
それらポルシェとか日本の車の場合は
ほかの車に部品取りとして使える部品は
ほぼないに等しい。

専用に作られた高度にすりあわせて作られた
部品の集合体だからだ。



2006.3.3

よくしたもので、というか
イギリスの産業の歴史的変遷、というか
資本主義の変遷のなかから、
とでも言ったほうがいいかもしれないが、

イギリスにはそういう「共通部品メーカー」が
たくさん存在する。

自動車メーカーのある車のために
専用設計された部品も生産して供給もするが
部品によっては
部品メーカーのほうが自社の規格で
作った部品群をもっている。



2006.3.4

自動車メーカ、特に小さな少量生産スポーツカーメーカーなどは
そんなすでに規格品といて販売されている部品を
買ってきて使う。

日本の部品メーカーは
例えばヘッドライトやテールランプのなかに入っている
ライトのバルブ、要は電球そのものが
それらはさすがにどこのメーカの車の
ものも共通部品化されているが

(といっても最近はご存知LEDによる
省エネ型テールランプみたいなものも出てきているから
ますます専用部品化してきていることは間違いないだろうが)

基本的には各自動車メーカの特定の車のために
専用部品を企画して開発して採用されて使用する。



2006.3.5

イギリスの少量スポーツカーメーカーなどは
部品メーカーが自ら独自に企画して
一般的に市場に供給している
共通化された部品を使っているから

ポルシェや日本車とことなり
イギリスの車、特に少量スポーツカーメーカーは
他社の事故車、特に少量スポーツカーメーカーなどから
車に使える部品を
移植することができることが多い。

実は日本の自動車メーカーも
すべて「擦り合わせ型」で作っているかというと
そうでもない。

最近はモジュール部品を積極的に利用している部分も
すくなくない。



2006.3.6

「擦り合わせ型」と「モジュール型」をうまく使いわけて
コストと性能と機能で
競争力のある車を作っているのが日本のカーメーカーだ。


で、さて、前置きが長くなったが
この擦り合わせ型ものづくりと
モジュール型ものづくりに
「ものづくりは大別できる」、というのが
藤本先生の主張だ。

どちらが優秀とか優れているとかではない。
でもとりあえず日本では
擦り合わせ型のものづくりに代表される
自動車産業が日本の産業の牽引力に
なっていること、なってきたことを
重視する必要があると主張される。



2006.3.7

で、ここまでは「ものの作られ方」を
この二つに大別したわけだが

一方、
ものを
どういう供給のしかたをするか、
あるいは
どういう供給の仕方を目指すか、
という視点でも二つあるとする。

藤本先生はそういう言い方ではないので
このあたりは割り引いて読んでほしいが
たぶんはそんな論調だ。

どういう供給のしかたをするかということでは
ずばりひとつは
同じようなものを大量に作って供給する方向

もうひとつは
最終的には個々のニーズにむかって
少量や個別に生産する、という方向だ。



2006.3.8

日本の自動車産業の成功は
「ものの作られ方」としては
擦り合わせで作った優れた製品、を
「どういう供給のしかたをするか」という視点では
大量に市場に供給してきたことによる、とされる。

これをもし個別ニーズにむけて
擦り合わせをしていたら
ユーザーにとってはとても良い製品、
わがままに応えてくれた贅沢な製品
にはなるかもしれないが、
作るほうとしては
コストや手間などの点で
とてもじゃないが折り合わないものになってしまう。

では
モジュール部品を利用して
大量にものを作ったらどうなるだろうか。



2006.3.9

たしかにモジュール部品を組み合わせることで
開発の手間や擦り合わせの手間は大幅に省けるわけで
すぐに「もの」や「形」はできるだろうが
擦り合わせ型にくらべたら
最適な設計ではないから
若干競争力はおちる。

イギリスの少量生産のスポーツカーが
個性的であるにもかかわらず
実は量産車などの外装の量産部品を追加工したり
上下をひっくり返して装着したりして使っているから
実はの車をデザインした人間にとっては
最適で満足したデザインの結果ではない、
いわばつぎはぎの車である、ということを
考えれば
  擦り合わせ型にくらべたら
  最適な設計ではないから
  若干競争力はおちる。
という意味はおわかりいただけると思う。



2006.3.10

なにより、モジュール部品の集合体ということでは
モジュール部品をあつめてくることができれば
だれもが参入できる製品だから
ちょっと大きな市場や利益がこの先読めるとなると
大手企業、中小企業問わず皆が参入してきて
過当競争にすぐ陥ってしまう。

日本のMP3プレーヤーやデジカメ、それと
シロモノ家電がそんな分野だろう。

実はモジュール部品の組みあわせだからといって
「出来る生産物」が
けしてみんな同じようなものになってしまうわけではないのだし
必ずちょっとした擦り合わせ作業は必要にはなるのだが
お金さえあれば基本的には
誰もができて誰もがビジネスに参入できる環境にはなる。



2006.3.11

特に電子デバイスの塊のような
最近のIT家電のようなものは
簡単にいってしまえば
重要な電子デバイスを調達してきて
ちょっとデザインした筐体に入れてしまえば
同じようなものはできてしまう。

実際はそう簡単なものではないだろうが
これまで日本から
数多く生み出されてきた工業生産品のように
複雑にインダストリーが絡み合いながら
形を作っていった「ものづくり」に比べたら
そんな感じに近い。



2006.3.12

具体的には
MP3プレーヤーがそれにちかく、
技術的参入障壁が比較的低かったので
一時は中小企業や海外、特に韓国などの
新興ものづくり企業でさえ参入したが
あっというまに市場は飽和し
似たような製品が乱立し、
メーカーはあまりの収益性の低さに撤退が相次いだ。

昨年はそのニュースで
産業系の新聞はしばらくにぎわったことを覚えている人も
多いと思う。

アイポッドとかウォークマンが注目される裏側で
実はMP3プレーヤーなど
いわゆるシリコンオーディオのメーカの再編が
昨年は一気に進んだ。



2006.3.13

今からたった10年前に
市場にあふれていた
カセットテープレコーダーのようなものは
基本的にはメカ部品の塊だった。

プレス部品や引き物部品など
金属をそれなりの工程を経て加工したものを
組み合わせて形にしたものだった。

メカを実現するための
複雑な設計や開発
金型の設計生産、
部品の生産と組み立て、など
複雑なものづくりの工程の結果としてようやく
製品が出来て、市場にもたらされたのだが

しかし、今の「シリコンオーディオ」は
これらの「昔のオーディオ機器」に比べたら
驚くほど部品点数はすくないし
メーカーごとの差異もデザインを除けばない。



2006.3.14

ここまでのところをまとめると

擦り合わせ型のものづくりと
モジュール型のものづくりの
二つのものの作り方があるということと

大量に同じものを作ることと
個別少量をつくるという二つの方向がある、という

この2つの「作り方」と2つの方向を掛け合わせれば
都合4つのセグメントがあることになる。

1、★擦り合わせ型のものづくりで大量に同じものを作る

2、★擦り合わせ型のものづくりで個別少量をつくる方向

3、★モジュール型のものづくりで大量に同じものを作る

4、★モジュール型のものづくりで個別少量をつくる方向



2006.3.15

なんども書いたが

「1、★擦り合わせ型のものづくりで大量に同じものを作る」

このやりかたがこれまでの日本の富を築き上げてきたとされる。

一方
「2、★擦り合わせ型のものづくりで個別少量をつくる」方向

は、とても贅沢なものの作り方ではあるが
価格や手間の点ではあまり儲かるやり方ではない。

また、
「3、★モジュール型のものづくりで大量に同じものを作る」

のはすぐに儲からなくなる、
大手を含め誰もが参入してくることが
お金さえあれば可能な
敷居の低いビジネスになってしまう。



2006.3.16

で、藤本先生は

「1、★擦り合わせ型のものづくりで大量に同じものを作る」

がこれまでも日本の産業が得意としてきた分野であり
なおかつ
日本の富を作り出してきた分野だと言われていて
たぶん
今後も日本の産業の生きる道であろう、
という主張をしている、とされているし
実際、いろんな文献やそれを紹介する論文などを読んでいても
その方向だと言っているように思うのだが

実は筆者の思うには

藤本先生は「1、★」だけではなく

「4、★モジュール型のものづくりで個別少量をつくる方向」

の可能性もあるのではないか、と主張しているようにも思える。



2006.3.17

まあ、けして
「1、★擦り合わせ型のものづくりで大量に同じものを作る」
にくらべたら
「4、★モジュール型のものづくりで個別少量をつくる方向」
は、産業人みんなが基本的には望む方向である
大きな商売や産業分野になるには
ちょっと無理がある。

小さな商売を積み重ねていっても
なかなか大きな商売になり難いとか
いろいろ問題はあるのだろうし
たぶん
「モジュール型のものづくりで個別少量をつくる方向」
を実現するのはそう簡単な話ではないのだろうが、



2006.3.18

じつはある一定(特定)の市場とその規模と「優位性」が
4、のビジネスからは起り得るのではないかと
筆者は思う。

藤本先生もたぶんそういう主張を実は
されていると思える。

実はこの分野は以前ここで書いたことがある
アメリカの識者が一昨年あたりから主張している
「ロングテール現象」とも一致する認識だ。

「ロングテール現象」について
簡単にもう一度説明すると

これまで一般的には「産業」「生産」「消費」とかは
おなじものを大量に生産し販売し消費してもらうことが
効率的とされてきた。



2006.3.19

「おなじものを大量に」というのは
言い方を換えれば
できるだけ少ない種類、品目、で
できるだけ多くの売上をはたしたい、ということになる。

よく言われるパレートの法則というやつで言えば
全体量の8割を
全体の2割の種類で
まかなってしまうというのが
これまでの産業だ。

売れ筋である2割のなかにあたる製品を
どんどん作って全体量の8割をまかなおうとする。



2006.3.20

逆に考えれば
全体の残り8割の種類では
全体の2割の量、すなわち売上にしかならないから
その2割しか売れない8割の種類は
種類を動かす、つまり個別対応の動きが
多いわりに売上に貢献しないように思えるから
生産のラインナップからどうしても
落とされていくことになる。

これがこれまで普通に行なわれてきたビジネスだ。

しかし、実は情報技術の発達などによって、
あるいは前述の「モジュール化」の進展によって
ビジネスのなかにおけるコミニケーションコスト
取引コストが劇的に下がってきた。



2006.3.22

一番端的に現れてきたのがデジタル財だ。

これらによって
これまで無視されてきたり相手にされてこなかった
この残り8割の種類で全体の2割の量を
商売にしようという試みが
デジタル財を中心におきてきている。

デジタル化された音楽やテキストなどは
コピー費や再配布のコストが
圧倒的に安く、これまでの「もの」の
流通や生産にかかっていた
コピー費や再配布のコストに比べればほぼ「ただ」に近い。

最近は小口配送便の発達によって
小さなものをとても安価に早く国内や海外に
送ることが可能になった。



2006.3.23

いまではあたりまえになり
社会や産業の上で必須なものにもなった
小口配送便の発達、などといっても
これができたのはそう昔の話ではない。
たった20数年前におきた
大きな技術革新、イノベーションだ。

これなどによっても
例えば書籍など小口の荷物を流通させるコストも
実は劇的に下がっている。

これらのやり取りをする管理コストも
ITの発達によって
やはり劇的に下がってきた。
その気になれば複雑な処理を
自動的に無人で行なうことも最近はできる。



2006.3.24

であるとすると
これまで主要なビジネスには向かないとされていた
量は2割にしかならないが
種類は8割もしめていて
あまり売上に寄与しないとされてきた
財の存在が最近は浮かび上がってきた。

特にアメリカではその分野が注目されている。

これをグラフに書くとこうなる

縦軸に量、横軸に種類をとる。

・
 ・
  ・
   ・
     ・
       ・
          ・
              ・
                     ・
↑
量  種類→



2006.3.25

右にむかって長い尻尾のように伸びていくから
「ロングテール現象」というわけだ。

で、このグラフのうち
左の部分がこれまで儲かるとされ参入分野とされてきた
全体の2割の種類で全体の8割の量を占める分野だ。

しかし右側の部分は8割の種類で全体の2割の量しか占めないから
ビジネスには向かないとされてきた部分だ。



2006.3.26

手間や販売コストばかりがかかり
売上につながらないと理解されてきたからだ。


が、前述のようにコミニケーションや管理コストなどが
劇的に下がってきた現代では
このこれまでビジネスには向かないとされてきた
右側の部分が新たな参入のチャンスがある分野とされているわけだ。

事実アメリカで右側の部分で調子をあげているのは
書籍販売のアマゾンであり
音楽配信のIチューンであるとされている。



2006.3.27

売れ筋の本や楽曲ではなく
たまにしか売れない珍しい書籍や
たまにしかダウンロードされない珍しい楽曲、
そんなものを集めれば
たしかに販売する種類は8割にも達するが
一方、量、売上、は2割にしかならない。

これまでであれば面倒なわりに儲からない商売分野ではあろうが

実は管理コストや配送費やコミニケーションコストが
昔に比べたら圧倒的に安くなった、、、

特にデジタル財である音楽配信はそうであるし
例えばインターネットで書籍の一冊づつの
受発注も配送も
そうコストをかけずに可能になった。



2006.3.28

ので
むしろこの部分を重点的に
ビジネスとして成立させてしまおうというのが
書籍販売のアマゾンや音楽配信のIチューンだ。

もう一度書くが、前述のグラフが
右に行くにしたがって
細く低くなっているのがわかると思う。
だからその部分を「ロングテール」と呼び
その部分がビジネスにもなるのではないかと
捉えているのを「ロングテール現象」と呼ぶ。

で、ここからは大胆な予測と仮説だが、
この「ロングテール現象」の考え方と
だいぶ前に書いた
4、の、モジュール型のものの作り方で
個別少量のものづくりを行なう、という考え方は
ほぼ一致する概念だとおもえる。



2006.3.30

けして左側に位置する
「これまでの産業で言えばメインの部分」が
ビジネスの方向としては小さくなったり失われていき
「ロングテール」型ビジネスに
すべて変わってしまう、というのではない。

あるいは
「1、の擦り合わせ型ものづくりで大量に生産・販売する」
分野がなくなり

「4、の、モジュール型のものの作り方で個別少量のものづくり」、
に
すべてなってしまう、というのでもない。

そんな新たな分野や方向が
情報技術の発展やIT技術によって
新たに見出されてきつつあるのではないかということだ。



2006.3.31

特にものづくりの世界では

「4、モジュール型のものの作り方で個別少量のものづくり」、が
今後多様に、そしてビジネスとして成立するようになっていけば
それ自身が次に大量生産のビジネスにつながっていく可能性がある。

いわば、あまり最初は大きな需要ではないのだが
新規で特殊な少量の需要にこたえて
ロングテール分野の多様なビジネスが生まれていけば

それが一定の時期には消費のある程度の規模を占める
メインの消費分野に
変化していく可能性があるのではないか。


INDUSTRYWEB HOMEへ戻る / 今日のコラムに戻る/ バックナンバーに戻る