今日のコラム・バックナンバー(2006年 2 月分)


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掲載は日付順になっています。


2006.2.1

IT企業長者のM氏もH氏も
そんな分野に投資したら
味方も日本中にでてくるだろうし・・。

と思っていたら
そんなIT企長者のH氏も
これまでの事業拡大のやり方の
中身が問われて
日本中からバッシングされる事態となった。

まあ、新聞やテレビの報道の中身を読めば
たしかに社会に有用な価値や豊かさを
生み出してきたことに対する評価としての
株式の価値ではなかったようだから
早晩こうなることになったのだろう。



2006.2.2

日本のものづくりや価値創出に
再び日の光を当てるなどということを
ありあまるお金を使って行なうなどしていれば
日本中が味方になってくれただろうにと思う。

日本を中心とする
ものづくりから生まれる貨幣のやり取りの総量と
お金でお金を買って儲けようとする
ビジネスがやり取りし世界中をかけめぐるお金の総量では
近年では数百倍の違いがあるとされる。

もちろんものづくりの数百倍ものおかねが
お金でお金を稼ぐビジネスで流通する。

すでに
そんな恐ろしい状況にまで世界は進んでいて

製造業が風邪を引くことで金融がくしゃみをする、どころか
金融業界がくしゃみをすれば
製造業が風邪を引いて寝込んでしまう、という事態なのだ。



2006.2.3

そんな時代に
まじめにカメラやものづくりを行なって
ほそぼそ儲けて、あるいは儲からないくらいなら
同じお金を儲かる金融ビジネスに流通させたほうがいいと
多くのひとが思うだろう。

しかし、そんな甘いはなしは
そうは転がっていなかったというのが
今回のライブドアショックの教訓だろう。



2006.2.4

しかし一方で
まじめに社会や家庭や産業に
ものやサービスで価値や豊かさを供給していく
ものづくりが
儲からない、あるいは
大きく儲けることまでは望まないとしても
とりあえず心配なく事業が継続できる、
そんな状況が望めない今の状況にも
あまりに問題があるとは思う。



2006.2.5

経営学者の故PFドラッカー氏は
その著作のなかで
100年前の農業の、
そして今日の工業の
生み出す価値が
あまりに小さくなってきてしまった、ことを
問題にした、、、というよりは
社会の変化に伴って
付加価値の創出を行なう主要な産業が
農業から工業へ
そして工業から次の産業に
移っていくというのは避けられず、そして
工業の次に来る主要な付加価値創出を担う産業は
今後は知識であって、知識で飯を食う時代だ
と強く主張しているわけなのだが・・・



2006.2.6

かといってそれは
知識で飯を食うことを
お金でお金を売り買いして利益を生み出すような
最近の金融ビジネスや企業買収ゲームのことを
さしているのではない、と思う。

故PFドラッカー氏は
知恵を使って社会や産業に豊かさと価値と
富を生み出すものたちこそ
これからの時代の
知識人や技術者、テクノロジスト、であり
その役割なのだといっているのだし、

そんな人々が活躍する時代に
そう遠くない時期に
到達するのだろうと予言しているのだし、
それに備え、または準備をすすめるのが
産業人の使命だといっているのだ、と思う。



2006.2.7

ちょっと前にも取り上げたことがあるが
昨年12月の週間ダイヤモンドで
「ホンダの突破力」という特集があった。
このなかに
福井社長のインタビューがあって
読んでみるととても面白い。

特になるほどと思えたのは
今のホンダは「プロダクトアウト」型であると
コメントしている点だ。

以前日経ビズテックという雑誌の
「ソニーの処方箋」という特集で
花王の元社長や会長の任についていらした
常盤さん、今は東京理科大MOTの教授や
NPO日本ものづくり学会の理事長をになっておられるが
が、かかれていた論文に

ソニーは
「プロダクトアウト」「ニーズオリエンテッド」型に
戻る必要がある、と
かかれていたことにも附合する。



2006.2.8

あるいはちょうどそのころ
日経新聞にかかれていた
シャープの町田社長が
シャープは
「プロダクトアウト」「ニーズオリエンテッド」
である必要があると考えているとかかれていたことにも
附合する。

福井社長は
カブ(今はやりの株のことではない、
あの戦後日本のモータリゼーションの
牽引力になったホンダ・カブのことだ)
はまさに
「プロダクトアウト」
だという。

だが一方、実は
ホンダがある時期に
「マーケットイン」に振れたこともあるという。



2006.2.9

特に1990年代のある次期に
マーケットの必要とするものに対し
ホンダが送り出すものに
ずれが生じた次期があり、
それを引き戻すために
マーケットインにふったこともあったのだという。

ホンダの成長過程のなかで
そういう時期も絶対に必要ではあったのだという。

しかし、マーケットインをずっと行なっていたら
会社はつぶれてしまう、ともいう。

そんなことはだれにでもできることで
差別化できない。という。



2006.2.10

このくだりは
非常に示唆的なので
以下に引用させていただく。

  われわれ経営陣はものすごい危機感をもっている。
  かなり前から、商品の構想を練る人には、
  現場に行きなさいと口をすっぱくして伝えてある。
  お客さんの生の声を聞いたうえで、その言葉をうのみに
  するのではなくて、潜在意識にあるものを
  嗅ぎ出せ、と。

週間ダイヤモンド 2005 12 10 
特集「ホンダの突破力」



2006.2.11

「マーケットインをずっと行なっていたら
会社はつぶれてしまう」ともいう一方、
そうは言っても
マーケットの声や現場のニーズに
耳を傾ける、ということの
重要性は言っておられる。

が、
マーケットの声や現場のニーズだからといって
それを鵜呑みにするのではなく
その底に流れている
「本当のニーズ」を見つけ出せ、ということだろう。



2006.2.12

「本当のニーズ」を見つけ出し
マーケットが認識していなかったものを生み出すことこそが
「プロダクトアウト」ということなのだろう。

前述の花王の常盤さんも、シャープの町田社長も
おなじようなことを言っているのだと思う。

で、こういうことは企業、それも
巨大な人員と資源と資本を抱え維持し
運営をしマネジメントし
持続していかなければならない大手企業には
必要なことであり、
進めざるを得ない方向なのだろう
と筆者には思われる。



2006.2.13

社会や家庭や個人や産業が
まだ認識せず理解もしていない
しかし巨大なニーズを探し出し
それを埋めることが可能な
「プロダクトアウト」製品を
いち早く市場に投入し市場を席巻する。

他社が似たようなもの追随し
後から追ってきて
市場が飽和したり製品や技術が陳腐したりする前に
投資を回収し儲けをだし、
次に開発し市場を占有すべき「プロダクトアウト」製品を
生み出すために全力を傾ける。

それがこれまで戦後の大手企業がとってきた
勝ちパターンだ。



2006.2.14

少なくとも
世界や日本の戦後の成長期に
巨大になり、
あるいは成長していった企業の多くは
こういう戦略というか、方向性を持ってきたし
今も、そしてこれからも
たぶんこんな方向でやっていくのだろうと思える。

が、これが日本の企業数の上で
もっとも多くを占める中小零細企業が
同じようなパターンで
今後もいけるのかというと
ちょっと、いや、結構、疑問ではある。



2006.2.15

もし仮に「プロダクトアウト」な製品や技術を
他者に先駆けて見つけ出すことに成功し
そこに巨大なマーケットが出現しても
巨大な企業がすぐ後を追い、
追い抜いてしまう。

結局は価格競争になることが多いし
もともと開発費や製造コストが巨大になる
「プロダクトアウト」製品は
開発も製品化も中小零細企業には荷が重い。

新たな市場を生み出した中小企業が
市場が大きくなる様を見るにしたがい
巨大な市場のコントロールを中小企業自らが
できるとばかりおもい込み
設備投資やマネジメントを始めることが多いように聞くが、
やがてマネジメント不能に陥ることが多いのも
新聞紙上で見聞きすることがよくある。
新興の市場などはよく聞く話だ。



2006.2.16

それにそんな
「プロダクトアウト」な製品や技術を
次々に生み出していくことは
いわば「賭け」に近い。

最初の一発目の市場の占有に成功したとしても
やがて必ずやってくる製品や技術としての
陳腐化や飽和状態は避けられない。

もし仮にとても長期にわたって
細々とでもいいから
市場に流れていく技術や製品にめぐり合えば
それはそれでとても幸運なことだ。

産業界ではそんな「枯れた技術」「枯れた製品」を
たまに見ることもある。



2006.2.17

代替する技術も製品もないので
昔ながらの技術や製品が
永いあいだ使われていく。

だがそれとてもそうそうめぐりあえるものではない。

はじめの一発目に成功しても
二発目を必ず開発していかなければならないのは
宿命だし、それに失敗したり
生み出すタイミングを失し、
その裏で一発目がピークを過ぎて収縮していけば
このビジネスはやがてきつくはなるだろう。



2006.2.18

やはりこういう分野は
よほど付加価値が高く
生産数量が小さくて
中小零細企業には参入メリットがあっても
大手企業にはメリットがないような
位置をしめる製品でないと難しい。

前述の「枯れた技術」「枯れた製品」などは
まさにそういう分野なのだろうと思う。

新規参入者がいまさら参入しようとしても
開発費などを考えればメリットはないし

先に市場を握っている先発メーカーに対抗して
市場参入するメリットは見つけ難いだろうし
市場が細分化してしまえば
なおさらメリットはない。



2006.2.19

だが
「枯れた技術」「枯れた製品」とても
磐石ではなく、

それらの製品や技術を根底から必要としなくなるような
技術や製品やビジネスモデルが登場すれば
一夜にしてお役ごめんになる可能性もあるのだ。

有線の家庭で使われていた電話も
今日ではこれ以上の市場拡大は望めないように

あるいは自動車の電子制御があたりまえになって
キャブレターが必要でなくなってきたように

あるいは
テレビがデジタル化されていけばアナログテレビに
必要であるものが必要でなくなるように、だ。



2006.2.20

「プロダクトアウト」か
「マーケットイン」か
という話は
あるいは
シーズか、ニーズか、という話は
そんなわけで
ここで何度も書いてきたけれど

中小企業は
「プロダクトアウト」ではなく
「マーケットイン」だ、と
単純に言うつもりはない。

「プロダクトアウト」でもうまくいく分野もあるだろうし

「マーケットイン」で行なっても
大手企業と同じように
コストと手間ばかりがかさんで
中小零細でも細かな対応ができず
ビジネスにならない、ということはある。



2006.2.21

ここでまた、ちょっと話が変わるが
東大の藤本隆弘先生の日本の製造業の強みや
産業モデルやビジネスモデルに関する研究の内容や
付随した話が
ここ数年、いろいろなところで
話題になるからちょっと触れてみたい。

「プロダクトアウト」「マーケットイン」
のことにも関係する。

藤本先生の考え方はこうだ。

ちょっと自分なりに曲解していることもあるし
言葉足らずになっている部分もあるので
興味があったら藤本先生の著作を本屋で購入し読んでいただきたい。

最近は結構ベストセラーに近いからどんな本屋でも
一冊や二冊は見つけることができると思う。



2006.2.22

ものの作り方には
擦り合わせ型とモジュール型の
二種類があるという。

擦り合わせ型は
例えば携帯電話やノートパソコンのように
いわば内部の構造が小型で濃密で
内部の部品などの相互の関連性が高く

開発するプロセスでも
たとえば設計者や開発者やデザイナーや
あるいは市場に近い人々などと
緊密な連携プレーが必要となるようなものをさす。



2006.2.23

開発だけでなく
生産現場でも
緊密な連携や高度な連携などが必要になるものだ。

最近では
松下のドラム式洗濯機などは
ただ部品を組み合わせていくだけではなく
高度に効率化した生産ラインを構築することが
ドラムを横にしてまわすことを可能にした。
これも擦り合せ型といえるだろう。

そして、日本では
自動車産業がこの擦り合わせ型ものづくりでは
一番先端をゆくものであり
戦後の日本の経済の成長をにない達成してきた
原動力は自動車産業の擦り合わせ型の
技術やものづくりによる、というものだ。



2006.2.24

一方、
モジュール型のものづくりとは最近で言えば
パソコンに代表されるような
すでに一つの部品として社会に供給されている
部品などを利用しそれを組み合わせることで
製品化することができるような製品分野を指す。

すでに社会や産業界に供給されているということでは
他の部品などと連結する際に
連結する部分の規格などが
一般的な規格として共通化されている、ということだ。



2006.2.25

そういう点では
JISやISO規格で共通化されている
ネジなどの部品だって
モジュール部品といえないこともない。

で、こういうモジュール部品は
社会的に共有され供給されている「公共財」
最近の言葉で言えば「コモンズ」みたいなもので
全体に供給されているから
コストもそこそこ安いし
供給も品質も安定している。



2006.2.26

世界中から必要なモジュール部品を
設計データや機能にあわせて調達してきて
組みあわせればものができる、
とまあ、そう簡単な話ではないが
いわばそんなイメージではある。

デスクトップパソコンは
そんなモジュールの集合体だし
最近のデジタル家電は
そんなモジュール型で作られているものが多い。
そしてなにより
最近はこんなモジュールによる組あわせ型の
ものづくりが増えてきているように思う。



2006.2.27

そういえば有名な
ドイツのスポーツカーメーカーのポルシェは
いわば擦り合わせ型の車づくりだ。

部品はほぼすべて自社の車のために
自社で作るか、あるいは部品メーカーに
作ってもらう。他社の車に自社の部品は使えないし
逆に自社の部品を他社には使えない。

一方、同じスポーツカーのメーカーでも
特にイギリスには
年産数百台とか数千台ほどの
小さな規模のスポーツカーメーカー、が
1960年代に多く生まれ
いまだにそんなメーカーが存在している。



2006.2.28

こういったメーカーは
ボディーやシャシーを
自社で設計・開発し作ることはできても
部品の多くまでポルシェのように
自社で作るわけにはいかない。

特にガラス部品やプラスティック部品などは
高価な金型などが必要になるし
エンジンなどは開発費用が莫大になるから
もっぱらこういったものは他社が作ったものを
流用することになる。

ボディーも鋼板を巨大な金型で打つ、などということは
小さなスポーツカーメーカーではできないから
もっぱらそういうものは
グラスファイバーなどによる少量生産に頼ることになる。


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