今日のコラム・バックナンバー(2005年 12月分)


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掲載は日付順になっています。


2005.12.1

さて、その経営学者P・F・ドラッカー氏が書いた
「ネクスト ソサエティ」だ。

この中に、こんなことが書かれている。

 今日の組織のコンセプトと構造は、八十年前に
 GMが発展させたものである。トップマネジメ
 ントのコンセプトを生み出したのもGMだった。

 ところが、そのGMが多様な組織モデルを模索中
 である。GMは所有権に基づく管理権限によって
 事業活動の統合を図るモデルから、マネジメント
 によって統合を図る連合体へと変身しようとして
 いる。所有権については小数株式の保有にとどめ
 ている場合も少なくない。

 GMは車を設計し、エンジンをつくり、組み立て
 を行なう。そして自らのディーラー網を通じて販売
 する。加えて、GMは自社製品にこだわることなく、
 ユーザーのための最適の車を探す自動車商人になろ
 うとしている。

    PFドラッカー「ネクスト ソサエティ」



2005.12.2

まさに今回の株売却は
「マネジメントによって統合を図る連合体へと
変身しようとしている」最中におきているわけだ。

あるいは「変身しようとしている」のをあきらめた
結果が株の売却なのかもしれない。

しかし、たぶん思うに
GMはまだまだ変身の最中ではないかと思われる。

今度の株売却はその過程でおきた出来事に過ぎない。



2005.12.3

たしかに
ドラッカー氏のいうようにまだ模索中ではあるのだろう。

しかしなにか次の時代、
新たな資本と企業とマネジメントのありかたに
1歩を踏み出そうとしているのではないか。

そうそうに
「連邦経営の終焉」であり
「緩やかな提携機能せず」である、
と結論を出さないほうが良いと思う。

たしかにこのままいけば数年後には
トヨタは世界一の「自動車メーカー」になるだろう。

しかしもしかしたら
GMは数年後には世界一の「自動車商社」になっているかも
しれないのだ。



2005.12.4

「ネクスト ソサエティ」のなかに
GMに関してこういう記述もある。

 情報をもつ者が力をもつ。
 こうして、いまや最終消費者であろうと企業で
 あろうと、買い手に主導権が移行した。
 要するに、供給者たるメーカーは、売り手で
 あることをやめ、消費者のための買い手になら
 なければならなくなったということである。
 これはすでに起っていることである。

 昨年、世界最大のメーカーGMは最終消費者
 のための買い手となることを発表した。
 GM出資のその子会社は、GMだけでなく、
 ユーザーの好みと予算に合わせてどのメーカー
 の車でも扱うという。

    PFドラッカー「ネクスト ソサエティ」



2005.12.5

そういえば
ここで最近よく触れる
アメリカのIT企業「グーグル」だが、
トヨタは世界一の「自動車メーカー」になるだろうし
もしかしたら
GMは数年後には世界一の「自動車商社」に
なっているかもしれない時代に
いったいIT企業「グーグル」は何を目指しているのだろう。

最近の新聞などでも
グーグルが一体なにを目指しているのかを
論評し研究する記事が多い。

いわく

マイクロソフトのようにITを売って儲けるのではなく
ITを使って儲ける商売を考える時代になったのだと。



2005.12.6

たしかに
地球全体を自分のパソコンになかで覗くことができる、
あの驚くような仕組み、グーグルアースとか
地球上にあるありとあらゆる文字データを
デジタル化してネット上において検索可能に
してしまおうとか
あるいはそれらを無料で提供してしまおうとか

とんでもないビジネスモデルであることは間違いない。

たしかにマイクロソフトや既存のITビジネスや
インターネット通販企業のようなモデルとは全く異なる
ビジネスモデルを目指しているように思える。

胡散臭げな雰囲気に包まれているのは
最近感じるとしても
ともかくもこれまでとは
どうやら異なるビジネスモデルを目指しているであろうことは
ほぼ間違いない。



2005.12.7

これにたいして新聞などの論評は
たぶんグーグルは
それらの「サービス」を、無料で提供し
一方
検索広告連動型の検索サービスで広告料金で
儲けようとしているのだ、という話が多い。

検索広告連動型の検索サービスから得る広告料金は
細かいものの量が積み重なれば大きな収益源になるというのだ。

たしかにそうかもしれない。

しかし、だいぶ以前から
問題意識のなかにあるのだが、
果たして今後も
「広告」とか「広告料金による収益」というのが
インターネットの世界で成立するのか、
筆者にはちょっとまだ理解できない。



2005.12.8

インターネットのような双方向で個別的な仕組みが
一番の特徴であるシステムであるはずの一方で

いまでも良く言われる
「広告」とか「広告料金による収益」というのは
これまでの時代の大量生産大量販売の仕組みの
一部でしかないはずだ。

だからいまだにどうしても
「広告」とか「広告料金による収益」というのが
インターネットビジネスの大きな分野になっていたり今後も
それが続いていくというのも
納得ができない。

グーグルもそんなビジネスを目指しているとは到底思えないのだ。



2005.12.9

しかし、よくよく考えてみると
通常一般的な「広告」という文字の意味するものと
検索「広告」連動型の検索サービスから得る
「広告」料金ビジネスと
根本的にことなることに気がつく。

果たしてグーグルが行なっていることは「広告」なのか。
問題はそこにある。

結論的にいうなら
グーグルが目指す「広告」とか「広告料金による収益」
というのは
「広告」とは名がつくものの
旧来からの「広告」とか「広告料金による収益」とは
全く異なるものであろうと思う。



2005.12.10

もともと「広告」とか「広告料金による収益」
とかは
大きく構えて考えれば

20世紀の産業が編み出した
最大の産業での特徴である
「規格大量生産」とその「大量販売」
という仕組みに
関連したシステムである。

いわば
「規格大量生産」された「商品」を
「大量販売」するために「大量の消費者」に
その商品の存在を告知するために
広く公に告げることが
必要になったわけであろうからこそ
そのために作られた仕組みではあろう。



2005.12.11

初期のインターネット黎明期から
予想された「e−コマース」という
ビジネスモデルは
ここに来て
ほぼ「あたりまえ」の存在にはなったのだが

そうはいっても
これまでの「e−コマース」では
そこで行なわれてきたことは
ウェブ上の電子カタログによる
「広告」と「販売」と
「販売収益」であったと思える。

途中からビジネスのうえに追加的に登場した
「広告料金による収益」を目指した
「広告エージェントビジネスを目指す企業」も
基本的にはその延長であり補完的なビジネスだ。



2005.12.12

しかし、知らず知らずのうちに
インターネットの広報性や広域性や
知らしめることが安価でできることや
速報性など初期に言われていたこと以外に

じつはインターネットの本来の特徴である
個別性や双方向性が
e−コマースのうえにも
影響を及ぼしてきたと思える。

ここでちょっと話を変えるが、
実は筆者が持つ雑誌に
「宣伝会議」という雑誌があって、
その1996年12月の増刊号
「デジタルコミュニケーション」というものがある。



2005.12.13

まさにインターネットの黎明期に
まだそもそもインターネットとはなんぞや、
それで一体何が可能になるのかが
わからない、認知もされていない頃に
出た雑誌で
すでに刊行されて10年近くになろうとしている。

この「デジタルコミュニケーション」
そんなわけでとてもふるい雑誌ではあるのだが
しかし、この雑誌にかかれているいくつかの文章が
今になっても
いや今になってみればこそ
非常に示唆的なことがかかれていて興味深い。



2005.12.14

ここに当時の有名コンサルティング企業で
マーケティングやインターネットビジネスを
研究をされていたY氏という人が

  「デジタルコミュニケーション・
      広告ビジネスはこう変わる」

という雑誌の特集に沿って

  「コンシューマーウィンドーが
       これまでの広告概念を変える」

という文章をかかれている。

「コンシューマーウィンドー」・・・
あまり聞いたことのない言葉だろうと思う。

筆者は当時、この文章に刺激をうけて
いろんなところでこの文章を元に
仲間たちや先輩かたと議論したことを
思い出す。



2005.12.15

筆者はこのコンシューマーウィンドーという言葉の
意味することの重要性から
当時はいずれもっとメジャーな用語になる
と思っていたが残念ながらまだそうではない。

「まだ」、というのは
コンシューマーウィンドーという言葉が
メジャーになるかどうかは別として
その意味するところは
むしろこれから
脚光を浴びる可能性があると思えるからだ。

あるいはそれに代わるものは
違う形で登場しているのかもしれない。

、、というか、
たぶん以下を読んでいってもらえれば
コンシューマーウィンドーに代わる
ウェブの上の仕組みがすでに登場していることに
気が付いてもらえるはずだ。



2005.12.16

結果的に
コンシューマーウィンドーについての予測や
インターネットの仕組みが
氏の予測や洞察力に感慨を覚えることにもなるのだが、

それが何であるかは後に書くとして

そもそもコンシューマーウィンドーについて
ごく簡単に書いてみる。

Y氏の言う話に筆者なりのコメントや
考えを追加することになると思うが
ご容赦願いたい。


そもそもY氏はすでに約10年前の当時、
インターネットは広告には役立たないのではないか、
という市場・業界の声があることを指摘している。



2005.12.17

Eーコマースが喧伝されている一方で
せっかくのインターネットの特徴が
ただ広報性や広域性が高いこと
そのわりに情報の発信が比較的安価であること、

そんなことばかりが中心的に捉えられていて
充分にその本来の優位性や特徴が使い切れず、
その可能性も見えない、

結果的にインターネットで
ものを売ろうとしてそうおもったほど
売れない、商売につながらない、
ということはあったのだろう。



2005.12.18

1996年といえば
日本においては
インターネット、少なくとも
電子コマースにおいては
黎明期ではあったし、
今、インターネットにつながっている人々の数から比べれば
たぶん数十分の一、
あるいは数百、数千分の一くらいであっただろう。

インターネットの人々の生活に対する影響力は
今とは比べ物にならないくらい小さなものであったから
商売やビジネスにまだ直接大きな影響や
可能性が生まれてくるような状況ではなかったことは
間違いない。



2005.12.19

そんな当時の状況からみても
インターネットが本当に
商売やビジネスにつながっていくのか、という
声が出てくるのはしかたなかったのだろうと思えるが、

なんらかの可能性はたしかにありそうに思えるし
世界中をつないだコンピュータネットワークの存在というのは
それまでの世界観からは想像もできなかったような
存在ではあったものの

それが自分らの生活に
どれほど影響力のある存在になるのかを
見通したひとや主張はそうはなかったように思う。

が、しかし、すでに当時に
その状況をさらに超えて
コンシューマーウィンドーなる概念を
主張していたY氏の洞察力には
ある種の感銘を受ける。



2005.12.20

氏は10年前の当時
以下のような大胆な予想をする。

これほど個人や企業がホームページによって
いろいろな主張や情報を
インターネットの上に発信できるようになったのだから
将来は各家庭が
ホームページを持つようになるだろう。

で、そのホームページの上には
各家庭の年齢や職業、家族構成、趣味、近況、
あるいは
その家庭や個人が今後欲しいものや
過去に買ったもの、とかが掲載される。

こういった各家庭の持つ価値ある情報が
インターネット上にとてつもない量と質で
蓄積されていったら
いったいどうなるか。どんなことがおきるのか。



2005.12.21

目ざとい企業は検索エンジンを使い
自社の製品やサービスを
購入してくれそうな確度の高いユーザを
インターネットの上に公開された
ホームページのなかから探し出し
そのユーザに連絡をとり
自社の製品やサービスを売り込むことができるはずだ。

当然、消費者としては
情報を公開したぶん
それをしない消費者とは異なるメリット、
安価であるとか、クーポンをもらえるとか
自分にとって有益な情報を優先的にもらえるとか、
違ったサービスを受けられるとか、
そんなメリットを受けられることが必要となる。



2005.12.22

一方、
個人情報の保護を重視する時代に
ここ数年でなってきた。
だから
そんな仕組みを始めたら
どんな問題がおきるかわからない、という声が
あがるだろう。

今から10年も前の個人情報に対する考え方とは
だいぶ異なる、ということはあるにしても
やはり個人情報の取り扱いには
神経質になるし、そんな時代であるというのはわかる。
当然、そんな個人情報を公開することを
前提にしたようなビジネスモデルはありえない、という
意見がたぶん多いだろう。



2005.12.23

しかし、逆に、であればこそ

それを公開するとしないも
個人の選択肢の自由であるから

むしろ積極的に自分や家庭の
情報を積極的に開示し
メリットを積極的に享受する、という選択肢も
あって良い時代なのかもしれない。

たぶん個人情報が重要視される今ではあるが
何年後かには
逆にそんな個人情報を積極的に使う、やり方が
登場してくるのだろうと思える。



2005.12.24

というか、すでに実は
通信販売やネット通販企業などは
個人の購買情報やそこから得られる様々な情報を
うまく使おうとしているわけで
ところがセキュリティーのレベルが低いがために
情報漏洩などの問題を起こし
結果、個人情報保護法などの強化が
進んだと見るべきでもあろう。

実際、通信販売では
ウェブ上に情報を蓄積しているかどうかは別にして
少なくとも
商売を積み重ねていくたびに
顧客情報は加速度的に量と質の面で
増えていくはずだ。



2005.12.25

コンシューマーウィンドーの話を
いろいろな人に話題をとして話をして紹介すると
みながみな、怖い技術だとか
そんなとんでもない技術はだめだ、とか言う
人のほうが多い。

これもみんな最近の個人情報の取り扱い云々からきた
社会的な影響だろうと思うが、
しかし、何度も書くが
こういうものを乗り越えて
社会の利便性や豊かさと
テクノロジーは折り合いをつけていくはずであって
とっぴでもないものだからといって
あるいはちょっと危険性があるように思われるからといって
すぐ否定されるべきものでもないだろう。



2005.12.26

コンシューマーウィンドーだが
各家庭がホームページを持つようになる、という
Y氏の予測は
今後当たるかどうかは未知ではあるが
しかしそれに代わる
「コンシューマーウィンドーの機能を持つもの」は
たぶん近いうちに姿をあらわすだろう。

いや、実はすでに
コンシューマーウィンドーという概念を
実現する仕組みは登場している。

それは最近いたるところで耳にする
インターネット上の新たなシステム「ブログ」だ。



2005.12.27

各個人が自分の趣味や考えかたを
インターネット上に広く公開していく
ここで公開されている情報は
多岐にわたりそして深い。

これが、一説には4百万人もの人々が
ブログをもっているという。

4百万人というのはいかにしても
多すぎる統計だとは思うが、

それにしても多くの人々が
自分の情報をある程度公開したブログを
インターネット上にもっているということは
個人情報保護だとか言われているわりに
事実は個人の情報をオープンにして
それと引き換えになんらかの「価値」を
得ようとしている人々が実際には
多いという証左でもあると思う。



2005.12.28

コンシューマーウィンドーという言い方ではないが
実際にはコンシューマーウィンドーに
類似した仕組みである「ブログ」が
インターネットの上ではすでに動きはじめ
その役割や可能性をめぐって、
特に社会や家庭に財を超効率的に
供給するための試行錯誤が
始まっているということなのだ。

そしてたぶんそれ各個人がもち
それも急速に社会のインフラやサービスを
展開し供給する道具となりつつある道具・・・
そう、「携帯電話」に
その役割はたぶんいずれ持たされるだろう
と筆者は大胆に予測してしまおう。



2005.12.29

すこし先行ぎみの予測だが
将来は
各個人が持つ携帯電話に
各個人が個人の責任と利益の享受の契約のもとに
各個人が持つ様々な情報を
コンシューマーウィンドーの形で
掲載するようになる。

企業やたぶんそれに代わって
個人の情報集めを担う企業が
検索エンジンやエージェントによって
公開されているコンシューマーウィンドーの情報を
集めてくる。

ここからの話は
年明けから再開するとして、、、


さて、年末も押し迫り
今日のコラムも今日からお休みです。

今年もご声援ありがとうございました。

それでは良い年をお迎えください。


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