今日のコラム・バックナンバー(2005年 9 月分)


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掲載は日付順になっています。


2005.9.1

ソニーはアップルのiPodに負けじと
ネットワークウォークマンを市場投入し
急速に市場を奪取しはじめているが

このソニーとアップルの二強にはさまれて
下位メーカーは
激烈な、競争を強いられている、という構図だ。

このような姿は
「薄型大画面テレビの2〜3年後の姿」
か、あるいはDVDレコーダーや
スチーム電子レンジの
2〜3年後の姿かもしれない。

デジカメの業界にいたってはすでに現在が
携帯音楽端末と同じような姿であるのだろう。



2005.9.2

携帯音楽端末、
特に最近のシリコンオーディオは
情報家電の「製造物」としては
比較的簡易なアーキテクチャーで成立しているので

小さなメーカーやベンチャー企業でも
ちょっとしたきっかけを持てば
数年前から始まった
携帯音楽端末のブームに参入することが
できた、ということは言えるのではないかと思う。



2005.9.3

市場としての将来性が
ある程度見えてきたり
アップルやソニーのビジネスモデルの成功?を
横目でみていた大手のオーディオ家電メーカーが
相次いで参入してきたら
そういう小さなメーカーはひとたまりもない。

しかし、ベンチャー企業などが撤退し
大手の寡占が進みはじめたことで
この業界が安定したとは当然思えない。

むしろ価格競争をふくめた
更なる激烈な競争は
これから始まるのだろう。



2005.9.4

アップルやソニーやあるいはその後から
参入してきた大手を中心とする
オーディオメーカをはじめとした
新規参入組もふくめて合従連衡など
大きな変化はこれからおきてくるだろう。

当然大手メーカーの撤退だって
あまりに儲からない業界の構造になっていけば
当然ありうるし
たぶんそういう傾向は避けられないだろう。。

ちょうど今日、4日の毎日新聞にも

「デジタル携帯音楽プレーヤー
淘汰の時代に、」
という特集が組まれていた。



2005.9.5

内容的にはここまでここに書いてきた内容と一緒だ。

新聞では過当競争で疲弊した中小メーカーは
今後も市場からはじき出される可能性は高い、と
書いているが

中小企業はもちろんではあるが
大手企業だって
はじき出されることや
合従連衡が進むことは間違いない。

で、その記事には
今年に入ってからの
携帯音楽プレーヤーの
市場の販売シェアの変化の様子が
グラフ化されて書かれているのだが、
これがなかなか興味深い。



2005.9.6

ここまで書いてきたように
中小やベンチャー企業のようなグループは
シェアとしては小さいから
グラフの下辺にへばりついているのは
しかたないとして

3月を境にして
アップルのシェアが
急速に低下しはじめ
一方、ソニーのそれは
急速にシェアを奪還しはじめているのだ。

ここで何度も書いてきたように
新規参入組が今後も
大手企業を中心として
出てくることは考えられるが

基本的にはアップルとソニーの二者が
そのもてる別の資源、
要は音楽コンテンツとブランドだが
それを利用して二強で推移していくことは
ほぼ間違いない。



2005.9.7

状況によっては今後、
コンテンツの流通によって利益を出すために
シリコン型の携帯オーディオを
「ただ」で配る、などというモデルも出ないとも限らない。

一時、ITバブルのころに
盛んに行なわれたようなモデルだ。

そんな可能性が高まるなかで
もし他のメーカー、
大手やあるいはベンチャー企業や中小企業などが
再び参入してシェアやあるいは
シェアでなくても利益を生むことができるとするなら
それはまったく別のビジネスモデル、
アッと驚くようなビジネスモデルを
考え出さないことには無理だろう。

むしろそれは携帯オーディオの販売とかよりも
音楽配信サービスはもちろん更にその周辺にまで
範囲を広げて考える必要があるだろう。



2005.9.8

シリコンチップを搭載するだけで
簡単に製作が可能になるようなものではなく
例えば
細かな造作や作業、微細か加工技術が必要となるような
携帯オーディオやあるいはその周辺に必要な
サービスを供給するための装置などに
可能性はあると思える。

「周辺」という言い方がちょっとあいまいではあるが
音楽配信というサービスが
ただちに音楽そのものを聴きたい、という
ユーザーむけのものだという単純な理解ではなく
その「周辺」にもっと違った価値を求める声は
ないのだろうか、という視点だ。

例えば音楽コンテンツそのものの囲い込みなども
仕組みとしてはほぼ出来上がってしまっているわけだが
そのあたりにニッチなマーケットを探すということもある。



2005.9.9

さて、こうした競争と結末は
デジカメ、レンジ、薄型大画面テレビ
DVDレコーダ、携帯音楽端末
など規格大量生産される
様々な新製品やビジネスのうえでおきている。

どれもいままでになかった
比較的新しい技術なり新規性を
取りいれた製品である、という特徴をもつ。
なぜそうなのかはここまで
なんども書いてきたとおりだ。



2005.9.10

比較的「枯れた技術」「枯れた製品群」であっても
そこになんらかのきっかけで
新技術や情報技術のような要素が
組み合わされることで
新しい製品群として
登場してくることも多い、が
これもまたしばらくすると
同じような競争と結末になっていく。

いや、むしろ
最近はまったく新規のものは比較的少数で、
デジカメ、レンジ、薄型大画面テレビ
DVDレコーダ、携帯音楽端末
どれをとっても
昔から基本的な製品というのはあって
それが新しい技術を組み合わさって
新製品と新分野の業界として投入され
拡大してきたもののほうが
多いかもしれない。



2005.9.11

逆に
もしもっと独自性の高いビジネスや製品であれば

技術から、製法から、特許から、市場の構築から
最初に苦労して牽引してきた
メーカーが作ったものや市場は

後発メーカーが後追いするには時間がかかり、
その間に先行メーカーは
先行逃げ切りをめざせたのだろうが

ちょっと工夫すればできてしまうようなものであれば
後発組が後追いを始めるタイミングも早いし
間髪をおかず追い上げることが
可能になったから
先行組が作って儲けて初期投資のもとを取るための
時間もどんどん縮小してしまったのだろう。



2005.9.12

こういうビジネスは
大手企業だからこそできるビジネスで、
というか、
大手だって本当はやりたくはないビジネスなのだろうが

企業そのものが巨大になってしまったり
もっぱらそんなやり方を行なうような
仕組みができてしまったり
馴れてしまったりで、
大手企業は
そんなやり方で先行逃げ切りで儲けるように
出来る限り頑張るしかない、というわけだ。

それでさえ、近頃はなかなか儲けることができないし
ややもすると
初期投資の回収までままならないということが多い。



2005.9.13

もちろん中小企業がそんなビジネスを
大手と対抗して行なえるはずがない。

もしできるとすれば
すべての技術や資源を手中におさめて
追随を許さないところまで
独占的にビジネスを進めることができれば
可能であるかもしれないが

現状、そんな分野ややり方があるとも思えない。

お金も資源もないから「中小企業」というのだ。
それがあるのは「大手企業」という。



2005.9.14

さてさて、常盤先生や町田社長の言われる
「プロダクトアウト」「技術オリエンテッド」に
ついての議論が長くなってしまったが

一方のヘンリーチェスブロー氏は

顧客が必要としている感動を提供したり
体験を提供したりする、手法として
「プロダクトアウト」「技術オリエンテッド」ではなく
それを製品の周辺にサービスを生み出す
顧客を含めた外部との関係に求めている。

ちょっとわかり難いが
製品とその周辺に必要なサービスを
顧客を含めた外部との関係から
生み出していくべきだと考えているのだから
いわばこれは
とても個別的であり、1人ひとりとの関係の中に
源泉を求めているのだといえるだろう。



2005.9.15

あるいは
常盤先生やシャープの町田社長の言われる
技術オリエンテッドなものづくりに
源泉を求めるのではなく
いわば顧客の個別のニーズに沿っていくなかから
感動を提供したり体験を提供したりする
という考え方といって良いだろう。

もっと簡単に、
「プロダクトアウト」「技術オリエンテッド」
に対抗して聴きなれた言葉で言うなら
「マーケットイン」「ニーズオリエンテッド」
といっていいだろう。

もう少し突っ込んで言えば
それももっと1人ひとりに個別的で多様な
「マーケットイン」「ニーズオリエンテッド」
だ。



2005.9.16

で、
ヘンリーチェスブロー氏はそういうわけだが
実はこのやり方が
日本の大手企業や大手メーカーにできるのかというと
そこが難しい、ということなのだ。

前にも書いたように
日本の大手メーカーや大手企業は
大量に同じもの・製品を作り出し
市場に供給する、ということでは
卓越した実力を持っている。

しかし、それは一方で
個別の顧客ニーズに応えていくという
ヘンリーチェスブロー氏の言うような?やり方には
なかなかそぐわないやり方であるという
ことでもある。



2005.9.17

なんども書くが
日本の大手企業でもそんなビジネスモデルを
目指している企業もないでもない。

しかし残念ながら?
日本の大手家電メーカーではそんなやり方を
目指しているところはそうはない。

あるとすればもっと小さな市場を相手に
しているニッチマーケットを目指した企業や

メーカーというよりは
通信販売ビジネスのような
あらかじめ市場につながっている企業が
大手メーカーなどができなかった
ビジネスモデルを
構築し始めていると言っても良い。



2005.9.18

もともと以前からよくここで書いてきたように
少なくとも昔と異なり
市場にあらゆるものが
豊富に提供されるようになった現代では
巨大な単一のマーケットなどというものは
簡単に存在しない。

個々の小さな顧客のマーケットがあって
それが重なって巨大に見えるだけ
といったら言い過ぎだろうか。

そんな個々の顧客のもつ
ニッチなマーケットへの接触を目指した企業や

通信販売ビジネスのように
市場に直接つながっている企業を
目指し始めているというわけでだ。



2005.9.19

しかし、
今回の話題の起点である
今後ソニーが目指すべきビジネスモデルということでは
このヘンリーチェスブロー氏がいうようなモデルが
できうるのかというと
実際のところはなかなか難しいと筆者には思える。

しかしあえて言わせてもらえば
そんな日本の大手企業であるソニーであればこそ
困難なビジネスモデルに
引きつづき挑戦をしてもらいたい、と思う。

今のところそんなビジネスモデルに挑戦している企業は
ものづくりを起点としている企業としては
日本のなかではソニーくらいしかない。



2005.9.20

実はソニーがそういうモデルを目指して
こなかったわけではない。

いや日本において
大手メーカーや大手企業のなかでは
唯一最初にこのヘンリーチェスブロー氏が主張するような
ビジネスモデルを目指した企業ではある。

ソニーは大手メーカーのなかでは
珍しくそれらの可能性を目指してきた企業
といっていいだろうし、
前社長である出井氏が
この10年ほどで行なおうとしたビジネスモデルは
まさにそれだったと思える。



2005.9.21

インターネットのプロバイダー事業や
ウェブサイトによるロボットや情報家電などの直接販売。

ウェブサイトなどインターネットのインフラに上部に
製品やサービスを支援する機能をもたせようとしたこと。

そしてなにより
映画や音楽など関連企業の買収など
コンテンツビジネスをソニーというビジネスのなかに
位置付けようとしたこと。


こう考えてくれば
ヘンリーチェスブロー氏が言うような
ビジネスモデルを
ソニーはまちがいなく目指してきたのだとわかる。




2005.9.22

もともと今回の日経ビズテックという雑誌のなかで
ヘンリーチェスブロー氏が書いた文章の題目は

「ものづくりに退行することなかれ」

だった。

ということであれば
ヘンリーチェスブロー氏の理解と主張は
ソニーはものづくりからどこか新たな方向に
向かっていたのだが
最近は「退行しようとしている」のではないかと見ていて、
「退行するべきじゃない」と言っていることになる。



2005.9.23

たぶんソニーがそんな企業の新たなあり方を
目指してきたことは
評価するべきだと思うが
実際に日本の大手メーカーや大手企業が
その方向を
目指せるのかどうかというのは
実際には難しいと筆者には思える。

アメリカにおいて
ものづくりを行なっていると標榜している企業は
実際にはものを作る事業部分を外部企業に
アウトソーシングしている

日本は幸か不幸かそうではない。
自社やあるいは自社の関連企業や系列の企業で
ものづくりを行なっている。



2005.9.24

本来それは強みなのだが
結果として日本の大手企業やメーカーは
外注企業や自らもものづくりのための工場など
多くの資源を持つことになっている。

そう簡単に
外注を切るわけにも工場を切るわけにもいかない

ソニーがEMSに工場を売ってしまったことも
附合する。

どちらが良いか悪いかということではない
しかしすくなくとも
ものづくりに退行することをしないとすれば

コンテンツ産業を買う一方で
工場を閉鎖したりあるいはEMSに売ってしまったり
ということを選択せざるを得ない。



2005.9.25

そういう意味で
ソニーは日本の企業だから
そんな中途な道を選択さざるを
得なくなってしまったということだろう。

今度の社長の人選をふくめ
ソニーはどんな方向にいくかは見えてくる。

先週末の多くの新聞に
ソニーの今後の方針、みたいな記事が
盛んに掲載されていて
ストリンガー社長のコメントなんかも
載っていて興味深いのだが

基本的にはこれまでここで書いてきたことが
当たっているように思える。



2005.9.26

日曜日の日経新聞には
ソニーのストリンガー会長が
イギリスのフィナンシャルタイムズ紙の問いに
「ソニーには利益を生まない事業を
整理しようという熱意が全くない」
と強い不満を表明したと書かれていた。

「職場の士気の低さ」と
「人員削減に対する文化的な反発」のため
思い切ったリストラが
できなかった、と述べたのだそうだ。

国外の新聞に対するコメントだからか
この間の国内新聞に何度も載ったようなコメントとは
ちょっと異なる感じがして
ちょっとびっくりするというか
奇異な気もした。



2005.9.27

要はソニーはものづくりに戻るべきだという
ここしばらくはどちらかといえば日陰だった意見が
「熱意の全くない勢力の声」として
たぶん復活してきているのだろうと思える。

でもそういうところには
収益性の悪い部門があったり
ソニー全体のビジネスモデルには寄与しないことが
明らかになってきていて
今度のトップ、ストリンガー氏の考え方としては
リストラや売却などをしていく方向だったのだろうが

いろいろな軋轢からそれが容易に進まないことに
氏は苛立ちを感じているのだろう。



2005.9.28

一方、最近、売却かと話題になった金融部門は
実際には売却はしないという。
収益率が結構高い、ということも理由の一つらしい。
これはたぶん
「熱意の全くない姿勢」や「守旧派」の選択ではなく
新経営陣が選択した方向だろうと思う。

今後も
収益性の高い部門に力をいれていくことや
今後新たなソニーのビジネスを
かたちづくっていく部門
例えばコンテンツだとか
ゲームだとか映画だとか音楽だとか
金融だとかネットワークだとか
それと
お家芸ではあるいくつかのデバイスに関しては
新経営陣であるストリンガー氏は
重要視していくことになるだろう。



2005.9.29

日本のマスコミのほうも
ソニーに対する評価としては
いろいろに揺れているように思える。

ちょっと前まで
ものづくりだけでなく
コンテンツや金融やいろんなものを
つなげて価値創出を目指すという
ソニーの「多角化経営?」を
持ち上げていたはずなのに
最近になったら「多角化経営?」を
揶揄する論評に一気に振れる。

たしかに
コンテンツが重要だというのは正しいとしても
コンテンツを持つレコード会社が
CDを売って商売していて
そんなレコード会社をグループに抱えていたら
音楽配信サービスには
二の足を踏む、乗り切れない、というのは
わからないではない。



2005.9.30

日経ビズテックに書かれた
ソニーの処方箋には
ものづくりに回帰する方向と
元に戻るな、という方向の
二つの処方箋が書かれていたのだが

結局
ものづくりへの回帰と
ものづくりからの脱却、
この二つのハザマで
ソニーは揺れているように思えるし
今後もしばらくは揺れていくように思える。

日本の産業界全体もどちらが正解なのか
まだ結論は出すこともできないでいるのだろう。

で、実はこの一連の出来事は
ソニーのみならず
日本の製造業全体、特に大手企業に
突きつけられている問題なのだということを
しっかりと認識する必要があると思う。


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