今日のコラム・バックナンバー(2005年 8 月分)


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掲載は日付順になっています。


2005.8.1

書かれている内容は
おおよそ題名のままだから
内容についてふれるのはやめるが

さて、
もうひとり
アメリカはカリフォルニア大学バークレー校の
大学院の教授で
その前は大手企業の役員でもあったという
ヘンリーチェスブローという先生がいる。

この先生の書いた処方箋の名前はずばり
ものづくりに退行することなかれ、だ。

お一人は
「自身の役割を問い直しものづくりに回帰を」

もうお一人は
「ものづくりに退行することなかれ」

・・・どう考えても
真っ向から相対する文章であることは
わかっていただけると思う。



2005.8.2

このお二人のそれぞれの「処方箋」の
題名をくらべても
これほどまでに異なるのだから

失礼ながらトップマネジメントを行なっていた
それぞれの企業のトップが反対の配置であったなら

つまり花王のトップがヘンリーチェスブロー氏で
アメリカの大企業のトップが常盤氏であったなら、

果たしてそれぞれの企業は
今はどうなっていたのだろうと
思わず思ってもみたりする。

たぶんそれぞれに、また異なる方向で
成功していたのだろうが

あらためて企業を方向づけていく場合に
道はいろいろあるものだと
強く思わされる。



2005.8.3

それにしてもこれほどまで
はっきり異なる、とういうか「正反対の意見」が
それも一流の経営者や研究者から
出てくるとなると

「自身の役割を問い直しものづくりに回帰を」
「ものづくりに退行することなかれ」
この二つの意味を
深く考えざるを得ない。

で、
常盤先生の主張する
「自身の役割を問い直しものづくりに回帰を」
だが

こういう意見に近いものは
日本の経営者からはよく聞かれる。
とくにここ数年はよく聞かれたし
「国」などの方からも良く聞こえてきたように思う。



2005.8.4

経済産業省とか国の施策として
なにやらどこかの国の大昔に言われたような
一同右へ習え式のたぶんに情緒的な
日本はものづくりが大切、という議論は
さすがにいまさら議論する気にもなれないが、
しかし
いまだに日本のそれも施策をつかさどる部分の人々が
いまだ一面的に
「ものづくり」に固執している現状は看破できない。

誤解してもらっては困るが
「ものづくり」を軽視しろと言っているのではない。

さすがに常盤先生は
  企業の存在意義は価値を生み出して
  顧客に提供することにある。
  企業活動とはいわば、
  価値を創造する活動にほかならない、
と言われているから
「ものづくり」に固執しているわけではないのだと思うが
いずれにしてもこのあたりの話は
もうちょっと中身を吟味する必要があるだろう。



2005.8.5

実は常盤氏は

  顧客が必要としている価値を生み出すには
  あるいはメーカーが驚きのある製品を作り出していくには
  技術を軸にして会社を動かしいわゆるプロダクトアウトで
  顧客の将来のニーズを先取りした製品を開発することが
  必要である。

と書かれているように
企業は企業のほうから技術や製品などを
押し出していくいわゆるプロダクトアウトで
価値を社会にむかって生み出していくことが重要だと
おっしゃっている。



2005.8.6

これは
7月13日の日経産業新聞に
あるシンポジュームに出席し講演された
シャープの町田社長が
言っていたことにも附合する。

氏はいう。

  ものがあふれた今、
  消費者を感動させるには明確なビジョン設定と
  技術オリエンテッドな考え方で、
  どこにもない商品を生み出すことが必要だ。



2005.8.7

これは
シャープが最近市場に送り出し
市場から必要としていた価値として
「歓迎」された(少なくとも売れているのだから
歓迎されたと見て良いだろう)
例えば薄型液晶テレビや
あるいは蒸気によって調理する高温スチームオーブンなどを
さしていることは間違いない。

町田氏がトップマネジメントの任についているシャープや
常盤先生が社長や会長であった花王が
業績が良いということからすれば
ある意味でお二人がおっしゃっていることは
正しいと思う。



2005.8.8

すでに様々な市場が飽和に近い状態である今日
大量にものを生産し大量に市場に持ち込み
市場からお金という財を還流させ
さらに次の新たな循環にまわしていくには
「すでに社会や市場にあるものや価値」ではだめだ。

常に新しい価値をもつものを
市場に提示する必要がある。

資本主義は
常に「差」を作り出し
「差」の部分で稼いでいかなければならないシステムだと
誰かが言っていたが
そういう言い方でも当たっているだろう。

まあ、最近は自らの成長の根幹である
「差を作る努力」を捨てて
闇カルテルだの談合だの天下りだの
法の規制だの慣例だのに助けられて
生きている大手企業なんか珍しくもないのだが、、。



2005.8.9

で、
それには今のところ、すくなくとも
大手企業、大手メーカーは技術オリエンテッドで
これまでなかったようなものを作り出すことが
たぶん最善の策なのだと思う。

実はこれが
市場の多様性というか
市場や顧客が持つ
最終的には個に帰着するなずの
一つ一つのニーズにつながることで
高い価値を目指すことになるモデルの場合、

例えば中小企業や通販モデルなどの場合は
異なる道を選ぶことになるはずだ。

少なくとも中小企業の多くが選択する方向は
技術オリエンテッドな方向では「ない」はずで、
たぶんそれは「文字通り」
マーケットオリエンテッドや
ニーズオリエンテッド
な方向であるはずだ。



2005.8.10

大手企業やメーカーも
マーケットオリエンテッドや
ニーズオリエンテッドな方向を
目指すべきであるのは
長期的には間違った方向ではないと
誰もが思ってはいるはずだ。

インターネットや情報技術などの
技術進化によって
個々のニーズと物を作る場とが
直接つながる回路が可能になってきたこの時代、
よくよく冷静になって考えてみれば
そんなとんでもない変化がおきているこの時代には、

いくら大手企業やメーカーといえど
そんな基本的は社会システムの大変革に
対応していかなくてはならないと
気の利いた経営者なら当然考えていることだ。



2005.8.11

さてさてちょっと話が寄り道してしまったが

もうひとり
カリフォルニア大学バークレー校の大学院の教授で
その前は大手企業の役員でもあった
ヘンリーチェスブローという先生が書いた処方箋

「ものづくりに退行することなかれ」

はどう考えるべきなのか。

「ものづくりに退行することなかれ」の意味は
ずばり書けば
ソニーはサービス産業の方向に
認識を転換するべきだと言っている、のだ。

サービス産業の方向に展開する際に
重要になるのが顧客との関係であり

そのサービス産業を具体的に説明すれば
顧客も参加し顧客が欲している「体験」を
提供できるソニーを目指すべきだ、と言っている。



2005.8.12

あれあれ?常盤先生も町田社長も
ヘンリーチェスブロー氏も
結局同じようなことを言っていないかな?

・・・・話が佳境にはいってきたけれど

いやはや今年も暑いぞ、

というわけで・・

★今日のコラムはお盆あけまでお休みです。




2005.8.17

お盆休みもあけて今日のコラムを再開します。


どうやらここまで書きながらいろいろ考えてくると
常盤先生も町田社長も
ヘンリーチェスブロー氏も
顧客が必要としている感動を提供したり
体験を提供したりする、という点で
先生方の主張はそうは隔たっていないようにも思える。

ただし顧客が必要としている価値、
感動や体験を生み出す方法は
常盤氏やシャープの町田社長は
技術オリエンテッドなものづくりにあるとし

ヘンリーチェスブロー氏は
それは製品の周辺にサービスを生み出す
顧客を含めた外部との関係にあるとする。

つまりは顧客が必要としているものはほぼ同じであろうが
それを生み出すアプローチがことなるということだ。



2005.8.18

一見、求めるものは同じであって
アプローチが異なるだけであるのなら
なんとか折り合いがつくようにも思えるのだが
しかし、

これほどアプローチがことなれば

たぶん今回の論文の題名以上に
実現する中身と手法は異なっていくものに
ならざるを得ない。

で、結論的にいうのなら

この二つの意見の相違、あるいは
ソニーの再建の処方箋の違いは

実はソニーだけでなく
日本の製造業全体が置かれていて
判断しなくてはならない状況を
そのまま写し取っている問題なのだ、と思う。




2005.8.19

この話はまたいずれの機会に
更に突っ込んで考えてみたいと思うが

とりあえず言えると思うのは

常盤先生や町田社長が言われるように
「顧客が必要としている感動を提供したり
体験を提供したりする手法」として
技術オリエンテッドで
製品を生み出していく、、、というのは

大手企業だからできる方法である、というか、
大手企業だからそういう手法を
とらざるを得ないのであろう、ということだ。



2005.8.20

本来
「顧客が必要としている感動を提供したり
体験を提供したりする手法」は

顧客1人ひとりにむかって
とても個別的であり多様であるはずだ。

ちょっと過激に考えれば
最終的には顧客や社会の個々の
状況ひとつひとつにあった
「超」のつくほど個別的なものにならざるを得ない。



2005.8.21

しかし、
この50年ほど日本の生産システム
特に大手企業や
大規模なメーカーがめざし
あるいは求めてきたビジネスは

規格大量生産品を
市場に大量に送り込み
大量に消費してもらうプロセスを
繰り返してもらう、ということを
目指したものだ。

最近になって
個別的なニーズに個別的に応えようとする
動きはないでもないが
できれば
その大きな体に必要なエネルギーを
まかなうには
規格化された大量生産品を
大量に市場に消費してもらうことを
繰り返すことを前提にしなければならない。



2005.8.22

しかし、そうはいいつつ
巨大ではありながら
一つの市場のなかに
複数の企業が競争しながら
製品を押し込んでからには

それが似たようなものや
同じようなものであては
市場から飽きられすぐに売れなくなってしまう。
価格もどんどん安くなっていく。

最悪の場合にはそこまでもいたらず
最初から市場に拒否されてしまう可能性もある。

いやむしろ最近は
最初から市場から拒否されてしまう製品の
ほうが多いようにも思える。



2005.8.23

大手メーカーや大手の企業は
そうはならないように
常に市場を刺激するような
新しいものを作り出す必要があるのは
当然わかってもいるし目指してもいるのだが
しかし
できるだけ大量に市場に押し込まなくてはならないという
目的も達しなければならない。

つまり
市場に対して刺激的で、
なおかつ大きなマーケットを実現できる製品を
うみださなくてはならない。

が、そういうものが
そう簡単に生み出せるものではないのは
ここ10年ほどの日本を含めた大手企業や
大手メーカーの苦闘ぶりをみていればよくわかる。



2005.8.24

まして、もしそんなものが生み出せたとしても
日本や世界中の競争相手が
同じような製品を作って
一気に市場に投入してくるから
せっかく苦労して見つけた金鉱であって、
当初は
利益率もそれなりに高かった市場であるはずなのに
すぐに利益は減少し
そのうちに不良在庫の山となる。

最初に戻るが
そんなわけで
常盤先生やシャープの町田社長は
少なくとも大手企業や大手メーカーは
その企業のいわば宿命として
つねに
「技術オリエンテッド」「プロダクトアウト」に
市場になかったようなものを
生み出していかなければならない、ということを
言っているのだと思う。



2005.8.25

このあたりの話は
実際にはちょっと前にシャープが
初の製品化を行なって有名になった
「ヘルシオ」というスチームオーブンのことや
ここ数年にわたって業界で
熾烈な戦いを行なっている
液晶やプラズマやプロジェクター型の平面大型テレビ
あるいはデジタルカメラの激烈な競争を、、

そして最近ではDVDレコーダを巡る
ソニーと松下の競争などを
思い浮かべれば容易に想像ができると思う。



2005.8.26

ちょうど昨日、25日の毎日新聞には
業界で始めて
スチームで焼くというオーブンを実現した
シャープの高温スチームオーブン「ヘルシオ」に
電子レンジの機能を付加した製品を
発売したというニュースが載っていた。

いわく、
競合他社が続々と電子レンジ機能付きのタイプ
(基本はヘルシオのようにスチームオーブンで)
を発売したため「元祖」にシャープも
同様の機能を付けて巻き返しを図る、というわけだ。



2005.8.27

そしてその横の記事では
日立製作所が
業界最大の容量になる
1テラバイトのハードディスクを
搭載したDVDレコーダーを
発売するという記事が載っていた。

いわく
DVDは競争激化で年3割の勢いで
価格が下落しているため、
付加価値が高い製品を投入して
収益改善を目指す、
というわけだ。



2005.8.28

DVDレコーダーが
ソニーや松下から
お茶の間の新しい家電製品として
登場してまだ何日もたっていないように思えるのだが
すでに
「年3割の勢いで価格が下落しているため、
付加価値が高い製品を投入して
収益改善を目指す。」
という状況なのだ、と新聞記事を読んで
改めて驚いた。

こういう話題は
実は日々の新聞などを読んでいると
驚くほど、ほぼ毎日のように
話題となっていることに驚かされる。

8月26日の読売新聞には
「大画面」本格戦争へ
という記事が大きく載っている。



2005.8.29

松下が市場投入した65型で99万円という
大型プラズマテレビが
いよいよ業界が薄型大画面テレビ等の「本格戦争へ」
入っていくきっかけと
なっていきつつあるというような
記事なのだが

多くの人々は65型の大型液晶テレビを
いよいよシャープが希望小売価格168万円で
市場に投入するという記事を
ちょっと前、たしか8月の初旬に読んだばかりなはずだ。

薄型大画面テレビの市場価格の下落は
一気に進みつつあるのだろう。

それにしてもことの進み具合の速さは
いったい何なのだろう。驚かされるばかりである。



2005.8.30

記事は、今、業界は薄型大画面テレビ等への
巨額の投資をつづけており
プラズマテレビの場合
07年には需要予測の740万台に対して
供給能力が1000万台に達することから
一時的に供給過剰になることを
懸念材料としてあげている。

最終的に
「今の勝ち組み企業も2〜3年後には
どうなるかわからない」
というのはたしかにそうだと思える。

で、その「薄型大画面テレビの2〜3年後の姿」は
実は他の業界ではすでに実際に起きている。



2005.8.31

翌8月27日の日本経済新聞には
「携帯音楽端末 早くも淘汰」
という記事が載っている。

ここ数年、若者を中心にして
市場を広げてきた携帯音楽端末だが
早くも撤退するメーカーが出てきたというのだ。

アップルのiPodが
独自のビジネスモデルをひっさげて
この業界の圧倒的なシェアをとり
その余波をかって日本にも入ってきたのが
つい先日の話である。

一方日本国内で
懸命に新製品を市場投入してきた
どちらかといえばこの携帯音楽端末の業界では
ベンチャー企業にあたるメーカーが
ここで携帯音楽端末から撤退するという。


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