今日のコラム・バックナンバー(2005年 5 月分)


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掲載は日付順になっています。


2005.5.9

長い連休が明けた。

お休み前は最近よく聞かれる
「新連携」という言葉の意味を考えてみたが、

その話題に戻る前にちょっと
この連休を過ごしていろいろ考えたことを
書いてみたい。

この連休は途中、
暦どおりに二日間ほど仕事はしたし
実のところ
ニ〜三日出かけた以外は
すべて家や会社のデスクに座って
いろんなことを考えたり仕事をしていた。

さすがに今回ほど
日常的に追われたような仕事から離れ
ゆったりする機会があると
放っておいてもいろんなことに考えが及ぶ。

で、いろいろと考えた事はさておいて
なにより町が静かであることに気が付いた。



2005.5.10

普段走っている仕事用の車が
走っていないことは当然ながら
夜の町に酒を飲みにいっても
どうみても客が少ない。

自分の町だけの問題かと思ったが、
観光地を抱える隣町に飲みにいっても
客が少なく飲食店は閑散としている。

飲み屋さんだけかと思っていたら
それに続く更に隣の町は
やはり観光地で成り立っている町なのだが
いくつもの大きな旅館を地域に抱えているのに
なんとその旅館まで閑散としているという話を聞いた。



2005.5.11

なぜなんだろうということで
休みが終えてから
仲間と情報交換をしたなかで出てきたのは
一つには
休みが長期にわたっていて
大型の旅行なんかに回ってしまったので
大都市に比較的近く
なおかつ
刺激的な文化の少ないわが町の観光では
客を呼び込むことができなかったのだろうというのだ。

もう一つは万博の影響である。
まあ、もともと
生物として生きていくための費用以外に
人として生きていくためのお金、
あるいはゆとりに使えるお金、
可処分所得というか
逆のエンゲル係数はどんどん増えているとはいえ
無尽蔵にあるわけではない。



2005.5.12

であればもしこの連休に
名古屋の万博に家族で行ってみようとすれば
その分ほかの楽しみに向けるお金を減らすのは
至極あたりまえの話ではある。

新聞にも
新幹線の乗降客や
他地域のアミューズメント施設への
客の入りが減っていて
どうやらそれは万博の影響かららしい
という記事が載っていた。
逆に、新幹線の名古屋での乗降数が
増えていることからすれば多分それはあたっている。

もともと可処分所得などは
無限に大きくなっていくものでもあるまい。

どこかにお金が流れれば
どこかにお金が流れなくなる。



2005.5.13

休みの長期化や
遊びにいく場所が増えることで
お金を使う場所や機会が増えて
内需の拡大には良いことだ、みたいな
話は昔からよく聞くが

少なくとも日本全体からみたら
どうやらそう簡単なものでもないことは
今回の前例のないくらい長期の連休と
万博という機会が
教えてくれているように思えるのだが、
はたしてどうなんだろうか。



2005.5.14

連休前に「連携」と「新連携」について
途中まで書いた。

「新連携」とは今年から始まった
国の中小企業の施策のことだ。

「連携」とか
たぶん「連携」が普通示す「企業間連携」という
言葉はそう珍しい言葉ではなく
言われてきた言葉ではあるが
「新連携」という言葉は
そうはいっても耳になれていない。

なにが「新連携」なのか。
「新」の意味は何なのだろうか。
これまでのような連携や「企業連携」は
「旧」なのだろうか。



2005.5.15

実は昨年、
すでに「新連携委託事業」という
今年から始まった「新連携事業」の
いわばテストケースとでもいえばいいか、

新連携事業を進めるにあたっての
最初の事業が各地の経済産業局によって
行なわれていた。

全国の産業集積を中心として
企業グループなどから
たしか70あまりの
「新連携委託事業」が提案され
国から採択され実施された。



2005.5.16

これは
ごくごく簡単にいえば
これまでの「連携」とか「企業連携」とかで
くくられていた産業集積内などに
存在する主としてものづくりを中心とした
企業などの経営資源だけでなく

例えば優れた知見を持つ大学や研究機関や
あるいは切実であったり
これまで日の当たっていなかったような
マーケットなどと
地域の経営資源などとが「新たな連携」を
深めていくことによって
これまでなかったような「高い付加価値」を
生み出していくようなビジネスを
創生する「新たな仕組みづくり」である、と
筆者は考えている。



2005.5.17

前述したように今の日本の製造業には
儲かる仕組み、や
付加価値の高いものやサービスを生み出す仕組みと
その「仕組みづくり」が重要なのだ。

しかしその「新たな仕組みづくり」が
進んでいるとは残念ながら到底思えない。

なんども言うが
産学協同も重要だし
企業間の連携も重要だ。
市場との連携も欠かせない。

しかし必要なのは
それらが持続的に連携でき
価値を生み出す新たな仕組みを
生み出すことなのだ。



2005.5.18

残念ながら日本の、特に中小企業の活性化の施策の現状は
仕組みづくりやシステムにしていくことではなく
単発的に成果をあげることを目標に進めてきたように思う。

企業や企業グループに
興味深いものづくりや開発のテーマが
生まれそうな場合に
そこに国や自治体や産業系団体から
補助金や助成金を出すから
これでなんとかテーマを形にしろというわけだ。

しかし、残念ながら
実際にそれがビジネスにつながることは
皆無に近かったように思う。



2005.5.19

もともと「アイディアやテーマを形にする」ことが
目的であって
ビジネスにしていくことや
それを成功させていくことを目標にして
行なわれてきた施策ではなかったのだから
あたりまえといえばあたり前だ、と思う。

そういえば5月11日の日刊工業新聞に
中小企業庁長官のコメントが載っていた。

福井で行なわれた講演会で
「新連携」について触れたのだそうで、記事には

  ・・前略
  △「かつての中小企業の異業種交流や
  産学連携は「交流ができた」、
  「研究開発ができた」で終わっていた」
  と強く指摘、しかし「売れてナンボまで
  やって、本当の成果だ」と手厳しい。
  △そのための支援が新連携とか。
  後略・・

と書かれていた。



2005.5.20

失礼ながら言わせてもらえば
「売れてナンボまでやって、本当の成果だ」
というのはその通りだと思うが
そこまでできないような仕組みを
ながながと行なってきたのは
中小企業庁や経済産業省ふくめ日本の産業施策そのものだ。

産学協同も重要だし
企業間の連携も重要だ。
市場との連携も欠かせないが
しかしそれが持続的に連携し
価値を生み出しそれを最大化させていくことができる
「新たな仕組みやシステムを考え生み出していくこと」が
更に大事なのだと強く思う。



2005.5.21

で、下手をすると
今度の「新連携」も
単に制度の設置や人的配置で終わる可能性もある

例えば
販路を開拓するアドバイザーという言葉と役割が
地方の産業施策のなかで
ここ最近よく出てくるようになった。

商社などに在籍していた企業OBに
地域産業の技術や製品を市場に
売り込んでもらおうという発想だ。



2005.5.22

いわば地域産業の営業マンの選定と配置を
行なうというものだ。

しかしこの役割の配置によって
マーケットとものづくりの現場が
単純につながるとおもったらたぶん間違いだろう。

地域産業などは
都市部や地域に点在する大手企業の
下請けを行なってきたことは
誰もが認めることではある。

大手企業が日本全体や地域経済や産業の
牽引力になってきたことも
間違いのないことだ。



2005.5.23

それがこの10年以上にわたる
日本のものづくりを取り巻く変化や
産業再編のなかで
大手企業などにすがらずに
地域産業や中小企業であって自分たちの力で
世界や国内の市場にむけて
技術や製品をつなげていこうという方向に
少しづつではあるけれど変わってきた。

これも最近では
あたりまえのように言われてきたことだ。

問題はどうしたら
そうした変化に対応できる仕組みやアイディアを
作っていけるかということだ。



2005.5.24

その一つとして
大企業になりかわって
市場と地域産業の間を取り持ってくれる
ビジネスや役回りの人が
必要であることもたしかなのだが、

しかしそれが
その役回りができそうということで
大手商社などの出身の営業マンを配置すれば
それで単純にことたりるのかというと
そうではないのだと思うのだが
そんな話は今日本中いたるところで聞く。



2005.5.25

しかし重要なのは
これまでの大手企業などに関わってきた人物が
製品や技術を売ってきてくれるというこではなく
ものづくりとマーケットとをしっかりつなげていくことだ

マーケットとかマーケティングとかいうと
どうも企業の一方的な市場への販売というイメージが
ついてまわるがそうではなく
市場や使い手が必要としているものは何なのか、
作ってもらいたいものが何なのか、
何を作り出し生み出したら
その対価としてのお金をもらえるのかを
聞き出し作業に着手する作業であって
「販路アドバイザーが売ってきてくれること」
ではたぶん、ない。



2005.5.26

しかし新連携の意味を取り違えて認識すれば
販路開拓アドバイザーを雇い入れて
どうやって売るか、をしか考えず、

グループのなかに販路開拓アドバイザーを
入れればそれが「新連携」になってしまう。

それでは販路開拓アドバイザーと
製造企業との連携に過ぎない。
それを全面的に否定はしないが

本来「新連携」という施策の意味は
ものづくりの現場と
必要としているものや財やサービスがそこに見えて
いるはずの市場そのものと
あるいはそこにつながることによって
はじめて価値になる研究機関や大学などの
知識や知見との連携によって
これまで日本ではあまり見られなかったような
少量でも高い付加価値を持つ製品やサービスを
生み出すことにあるはずだ。



2005.5.27

必要なのはそうした
市場やマーケットや知識との連携により
より高い付加価値の創出であって
そのために
そこにどういう仕組みを作れば良いのかを
考えることだろう。

そこに結果として
商社の介在だとか
販路開拓アドバイザーとか
いろんな選択肢が出てくるならそれで良い。



2005.5.28

大事なのは
「何」と「新しい連携」を行なうのかを
間違えないようにしなくてはいけない、ということだ。

そういえば
最近問題になっている談合事件をめぐり
公共事業のことを誰か識者が
こんなことをいっていて
なるほどと思った。

 日本の政策では例えば公共事業のありかたも
 橋が必要なのか
 橋を作る仕事(公共事業)が必要なのか、
 それを取り違えているんじゃないのか。



2005.5.29

たしかにその通りで

まあ、マクロ政策の考えから
公共事業に向けたお金が
循環して景気対策になる
というのも昔のことなら理解もできるが
それがうまく機能しなくなった時代でもあることも
小渕さんからのこの10年ほどの経験で明らかになってきた。

どうやら日本だけでもないと思うが
ものごとが進んでいくときに
目的と手段を取り違えることがよくある。



2005.5.30

新連携がそんなものだとはもちろん思わないが、
しかし、何のための連携なのかを取り違えることの
ないようにしなければならないことは
当然のことではある。

そんな「新」連携がうまく動き出し、

大学や市場や製造業の間に
優れたコーディネータが介在し、つなげ、
思わぬ高い付加価値をもつ
商品やサービスや財を生み出す可能性は十分にある。

残念ながらこれまでのところそんな作業は
不足してきたと思うが
今後、これからでも試行してみる重要性と必要性は高い。



2005.5.31

さてちょっと視点を変えて、
一方によく聞かれる意見として
中堅大手企業が頑張れば
中小零細企業を引っ張ってくれるという意見が
昔からまことしやかにいわれているが
はたしてそうか。
実際、そんなことがだいぶ昔から言われていて
産業政策のうえに反映されてきたように思う。

これまでであればたしかにそれも
一つのやり方として成功したかもしれない。

しかし、
大手企業は中国アジアに仕事を移転し
一方で市場は多様化し、飽和し、
国内の中小企業を牽引していくなどというシナリオは
とっくに昔の話になっていて
現在に通用するとは思えない。


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