今日のコラム・バックナンバー(2004年 11 月分)


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掲載は日付順になっています。


2004.11.1

この「スペースシップワン」を上空まで
運ぶ「搬送の役割を果たした飛行機」が
実はこのとき無着陸世界一周を成功させた
「ボイジャー」という機体に
非常によく似た形状をしている。

もしかしたらそのままもう一度
使ったのではないかと思えるほど似ている。

ちなみにこのときの無着陸世界一周チャレンジは
ルータンを含む3人の搭乗で
世界一周4万244キロあまりを
平均時速164キロで
9日と3分44秒で飛んでみせた。

見事なものである。




2004.11.2

「スペースシップワン」を上空まで
運ぶ「搬送用の飛行機」も
「ボイジャー」も

宇宙までの到達させるだけの燃料を
大量に積んだ燃料が大部分を占める
「スペースシップワン」のような
重い機体を上空に運んだり

世界を一周するために9日間もエンジンを
回しているだけの燃料を大量に積み込んだ
「ボイジャー」のような重い機体を
飛ばすのだから

両方の機体とも
非常に低速でエネルギーを効率よく
使っていることがわかる。



2004.11.3

もう一つついでに書くと
このときに同乗していた
ルータンの兄のディック・ルータンと
同じく同乗していたジーナ・イエーガー
はフィアンセ同士だったこと、
そしてそのジーナ・イエーガーは

音速を超えることに挑戦するために作られた
「X-1」という機体で世界ではじめて
音速を飛行機で超えた
かの有名なチャック・イエーガーの「またいとこ」に
あたるらしい。
ちなみにチャック・イエーガーの
この音速突破のチャレンジは
映画「ライトスタッフに詳しく描かれている。

この三人で創立した会社
「ボイジャーエアクラフト」が
多くの人たちから支援をうけ
5年がかりで200万ドルをあつめて
世界無着陸一周のチャレンジを企て
機体を作りチャレンジを成功させた。



2004.11.4

ある意味では
単なる冒険とかの範疇では
捉えることができない
いわばベンチャー企業の
事業計画とでもいえばいいか、

実はあとでも書くが
こういうチャレンジそのものが
機体の開発やチャレンジのやり方とか、
もともと世界無着陸一周などという
ビジネスにはあまり関係もなさそうな
ことを始め成功させることを通して
どんなことを実現させていくかのい一連の流れ、
いわばベンチャー企業のビジネスモデルを
構築していく布石というかスタディーになっている。



2004.11.5

今度の懸賞へのチャレンジは
このチーム以外にも
20以上のチームが参加している。

当然、とでも書いていいか、、
アメリカやイギリスなどのチームが多く、
残念ながら日本のチームはいまのところ
参加していない。

それにしても
これまで国を挙げて行っていた
宇宙開発のような大事業に
民間が国の補助をあてにせず
なぜチャレンジをはじめたのだろうか。



2004.11.6

国がその国の威信をかけて
チャレンジしてきた宇宙開発は
どうしても費用や規模の点で
大規模になりがちだ。

それを悪いことだとは言わない。

月へ行くことがどれほどの
波及効果をあげたかはわからないが、
しかし、国をあげて月や宇宙への旅行に
チャレンジしてきたことを
否定はしないし、たぶん
宇宙開発が本格的にはじまった
いまから50年ほど前の時代には

技術開発のレベルや
それにかかるコストからいっても
国を挙げての
チャレンジで行うしかなかったとも思う。



2004.11.7

冷戦の影響もあって
一刻もはやく宇宙の軍事利用を
目指す必要もあったから
余計にあのようなチャレンジは
国が中心になって行うことになったのだろうと思う。

50年まえに飛行機を
民間で作ってビジネスにすることは
すでに産業として
行われてはいても
さすがにアメリカといっても
ロケットを民間で作って
ビジネスにするにはいろいろ
考えても無理はあっただろうし
考える人も企業もいなかったし
やっても成功することは非常に
難しかっただろう。



2004.11.8

そういう意味では
アメリカが国をあげて
宇宙開発を行い
国家がその先導者になってきたのも
無駄ではないし
それなりの役割を果たしてきたことも間違いない。

しかし時代は変わった。

科学技術も格段に進化したし

科学技術や知識の
社会や産業への蓄積や普及は
宇宙開発を始めとした
様々な先駆的チャレンジへの参加コストを
低下させることも成功させてきた。



2004.11.9

アメリカの宇宙開発は
たとえば最近で言えば
火星へ無人探査機「マーズパスファインダー」を
送り込むチャレンジにおいても
民間の知恵や資材をうまく活用することを
学んだようだ。

以前ここでも書いたことがあるが

アメリカの人工衛星などを構成する
宇宙開発に必要な「部品」は
「宇宙開発専用」として
とんでもなく高いコストをかけ
開発されたものを使うのではなく
一般産業用として広く生産され流通し
使われている民生品を
使うことを前提にし始めている。



2004.11.10

昔であれば
設計から製造まで
すべてその宇宙開発のために
専用で作られた部品を
使って進めることがあたりまえとして
考えられてきたのだが

前述の
火星へ無人探査機を送り込むチャレンジあたりから
民間の知恵と資材を上手に利用して
劇的にコストを低下させることに
成功している。
それも信頼性を低下させずにだ。


宇宙開発にお金を無尽蔵に投資できる
ような状況にいまのアメリカという国はない、と
いう事情もあるのだが、
なにより
宇宙開発に対する
「やり方」や「考えかた」自身が
根本から変わってきつつある。



2004.11.11

今度のXプライズにしても

ここから学んだやり方として
国はむしろ
民間が中心となって
行っていくのを
どうやって応援支援していくべきなのかを
考えはじめているようだ。

しかしなにより
今回のチャレンジを可能にし成功させたのは
アメリカの民間資本の健全性だろうと思う。

宇宙へいく、という志をたて
それを成功させた、というと
格好良いことばかりが
先になって、ヒーロー扱いされてしまうが、

実際はその裏には
宇宙旅行という新たなビジネスを成功させようという
したたかな、でも健全な資本の志がある。



2004.11.12

そう書くと
なにやら
金色の色彩が強くなって
今度のチャレンジのすがすがしさが
薄れてくるような気がするが
そんなことはない。

むしろ宇宙へ民間で行こうなどと
普通であれば考えもしない大きな野望を
成立させるための方法論まで
考えてここまでいたった
冷静でありながら
熱い意思の両方を持って挑んだことに
驚かされるとともに
感動さえ持つ。



2004.11.13

もともと今度のスペースシップワンの挑戦にしても

古くはチャールズ・リンドバークによる
大西洋単独横断飛行のチャレンジを
あるいは
ライト兄弟による
飛行機の発明による
人類の初飛行の実現を
思い出す。

これらのチャレンジにしても
たしかに高邁なチャレンジ精神の賜物なのだが
それとともに
健全な資本の精神ともいうべきものが
その裏というか、
基本のところにあったと思う。



2004.11.14

これは以前新聞に書いてあったのだが

1927年にリンドバークが大西洋横断を
目指し成功させたことが
1926年にはアメリカの航空旅客数が
5800人だったのに
三年後には17万人に急拡大した
きっかけになったといわれている。
たしかにそうだろうと思う。

リンドバーク自身も
自分の行動が
航空産業の未来への礎になることを確信し
自分の使命としてチャレンジした。



2004.11.15

当時、映画俳優などへの転身の誘惑を断り
飛行航空路の探索と開拓を
自分の使命とし後半生をかけた。

大西洋横断のあとには
日本にも航空路の開拓のため
婦人とともに二人乗りの飛行機で
訪れているのは知る人ぞ知る話だ。

そしてリンドバーグが
大西洋横断のプロジェクトを
立ち上げる際に必要な飛行機、

大西洋横断を成し遂げた際の
かの有名な飛行機
「スピリット・オブ・セントルイス」
を製作するための金銭的な用意は

セントルイス商工会議所が
リンドバークに「投資」した。



2004.11.16

これは単なる酔狂でもなく
あるいはリンドバークに対する個人的応援でもなく
(それもあったのだろうが)
いずれこのチャレンジが
アメリカに航空旅客産業が勃興する礎となることを
確信しての投資だったのだろうと思う。

もともと今回の宇宙旅行のチャレンジを
多数の民間が始めるきっかけとなった
Xプライズ懸賞も
こうしたリンドバーグの大西洋横断のチャレンジと
そこへ将来の産業へ広がる可能性を見た民間の投資が
実際の産業や雇用を生み出したやり方に
ヒントを得て創設されたとされている。



2004.11.17

なにかにつけて政府の支援や補助がなければ
先端的な開発研究はできないとか

もともと先端的開発や研究は
国が主導するものだという思い込みも

こういうアメリカの精神に学ぶべきではないのか。

もちろんアメリカだって
国に頼ったり補助や支援を前提に
進めているプロジェクトもあるだろうし
逆に日本だって
民間がばりばり進めているプロジェクトだって
多いだろうと思う。
成果をあげているプロジェクトだってあるはずだ。



2004.11.18

アメリカの、特に軍需産業と民間企業の間の
癒着や官僚的支配の話は
ロッキードの先端的航空機開発を行っている部門
「スカンクワークス」のこれまでの
数々の名機の開発の歴史を
スカンクワークスの社長だった
故ベン・リッチ氏が書いた
著書「スカンクワークスの謎」
に詳しい。

これを読めばアメリカの産業や国の姿勢が
日本で思っているほど
みんなオープンで先進的で民間が官とともに
創意を出して先駆的な製品や技術を生み出して
いると思いきや
結構笑ってしまうほど官僚的なものであって
特に軍などが絡んだ技術開発や産業の広げ方は
そんなに組織的に進んだものであるとは
いえないことがわかって結構安心したりする。



2004.11.19

が、やはり一方のアメリカに
今度のスペースシップワンのチャレンジや
Xプライズ懸賞のような取り組みが
あることは
アメリカの一方の健全性だと思う。

先日アメリカのウェブ雑誌「ホットワイヤード」の
日本版を読んでいて思わずにやっとしてしまった。

http://hotwired.goo.ne.jp/news/news/technology/story/20040622301.html

ここにはこう書かれている。

  ロケット機が格納庫まで牽引される間、メルビル氏は機上に登り、
  見物人からもらった「スペースシップワン、政府の関与はゼロ」と
  書かれた看板を掲げた。

こういう記事を読んで
さすがアメリカだわい、と思う。



2004.11.20

一方、最近刊行された単行本に
「ゲノム敗北」という本がある。

最近まで出ていた雑誌「LOOP」で特集されたものが
単行本になったのだが

アメリカのゲノム解読と先行していたはずの日本のそれが
どこで逆転されてしまったのか
問題点はどこにあったのかが
内容の中心となっている。

やはりこれを読んでいて
にやっとさせられた一節がある。



2004.11.21

日本の民間を中心として
ゲノムに関係する研究会を立ち上げたときに
最初のたちあげの会に
官を招待しなかったことに
官がクレームがついたというのだ。

深刻な話題であるにもかかわらず
あまりにこっけいで苦笑させられる。

官がすべてそうだとはもちろん思わないけれど
でもこういう出来事がそうとうあって、
民間の自律的でそこそこ軽やかな動きを
規制、あるいは自己規制、してしまうことも
たぶん多いのだろうな、と
思わざるを得ない。

まあ、これは官と民間の間のことに限らない、とは思う。



2004.11.22

ここに大学という組織も
最近は絡んでくることも多いし
あるいは民間のなかだけだって
先輩と後輩とか
地域のなかでの「重鎮」と「若手」とか
「うるさがた」と「若手」とかが
いろいろ重圧や規制や自己規制になっていることも多い。

「出るくいは打たれる」というやつだ。

「出すぎたくいは打たれない」というのもよく聞くけれど
「あんまり出ると抜かれてしまう」とかいうのも最近はある。

日本だのアメリカだのという前に
こういうことがまかり通っていることは
技術や社会の深化や進化にとっては
ゆゆしき問題だと思うのだが
まだ、残念ながらそんな文化や状況を払拭するのに
後ろ向きのエネルギーを
相当量使わなければならない時代でもある。



2004.11.23

まあ、
アメリカも今回の大統領選挙の様子を見ていて
複数の文化や価値観も
いまだに存在しているのだということが
見て取れて興味深かった。

けしてアメリカだからといってすべてが
先進的、先駆的、自由主義、独立的、自律的でもないようだ。

アメリカには二つの価値観や
文化がどうやらありそうだという気はする。

いまから300年も前に
新天地を求めてヨーロッパから移り住み
荒野を開拓し街を作り国を築いてきた
そのときの文化や価値観は
いろいろな意味で受け継がれているような気はする。

非常に規範的で
自らを律していくことに価値を置く人々も
いまだアメリカのなかに多いことも
今回の大統領選挙の一連のマスコミ報道を
見ているなかで見えてきた。



2004.11.24

だが、それは一方で
よその国や人々に対してその自らの文化や価値観を
押し付けようとする力が強いようにも
どうやら見える。

一方で
自ら荒野を切り開き街を作り上げたように
宇宙開発のようなチャレンジも
自ら挑戦する価値観を貴しとする価値観も
失ってはいない。

そこからビジネスや産業を起こそうという
したたかさやたくましさもなくしてはいない。

このように
二つの文化や価値観を持つ人々が別々に
存在しているのではなく

渾然一体になって
アメリカという国を構成しているのだろうということも
どうやらなんとなくわかってきた。



2004.11.25

今度の大統領選挙で
明白になったといわれていることとして

地域的にはアメリカの内陸に位置する州などは
比較的保守的で宗教を重んじ、
一方海岸に近い州を中心として
革新的?でオープンであるようなのだが

実際はそう簡単な話ではなく
いろんなしがらみや価値観が
複雑に絡んでいるように思える。

たとえば「自由」はどちらが実現しているかと問えば
たぶんどちらの人々も
自分こそが自由にむかっているというだろう。

けして我々が単純に感じていたような
文化や価値観が一枚岩でできた簡単な国ではなく
どうやら非常に複雑な国でもあるようだ。

それも二つの価値観や文化が
根底から分かれて存在しているのではなく
わりと表層的なところで
二つやあるいはもっと複雑に分かれているような気がする。




2004.11.26

ところでアメリカの産業政策についてだが

アメリカの大統領がブッシュ再選となって
国際的な方針はいままでの延長上を
更に強く進めたものになるだろうとされている。

円高も進む気配を見せているから
この間一年ほどなんとか一息ついていた
日本の産業界も
今後どうなるか予断を許さない。

それにしてもアメリカの産業政策は
どうなるのだろう。



2004.11.27

クリントン時代には明確に
産業政策を表に出してきたが
ブッシュになってからは
あまり産業政策について
見えてはこない気がする。

ないわけではないだろうが
9.11事件から始まった
アフガンやイラクの問題など
国際政治や紛争がともかくも
中心的課題になっていて
産業については表に出てこない。



2004.11.28

そのせいかどうか
紛争の費用等でお金が大量に出ていく一方
明確な産業政策がうたれなければ
ドル安をうたわなくたって
自然とドルは安くなり
円は上がっていくことになる。

残念ながらというべきか
しばらくはアメリカの産業政策が
どんなものになっていくかを見る機会は
しばらくはないだろうと思う。

アメリカの産業界や資本は
それとは関係なく独自に進んではいるのだろう。
状況によってはアメリカの産業界と
軍や政治が一体となって進んでいく様子も
見て取れる。

まあ、うがった見方をするのなら
力による世界中への「覇権」で
アメリカの産業やビジネスを
広めていこうとする力も
裏側では働いているのが明白になりつつあるが
それが産業政策そのものといえないこともない。



2004.11.29

喜ばしい話ではないが、
日本の産業界も資本も
その動きの一挙手一投足を見ながら
自身の方向性も定めなければならない状況でもある。

日本の政治がなにかにつけ
アメリカと同調する方向に
進んでいるのもその動きと無縁ではないことは
明白だろう。

いままで何度も書いてきたが
アメリカの持つ病も、逆に健全性も
保守的な方向も革新的な方向も
クローズドな方向もオープンな方向も
それらのどちらもが
今のアメリカの持つ両面性であるということ
なのだろう。
アメリカの文化や価値観が
単一的でどちらか一方である、というわけではなさそうだ。



2004.11.30

ただし比重は同じではなく
どちらか一方に傾いていく状況にはある。
今後注視していく必要はあるだろう。


まったく話はかわるが
以前なにかの本に書かれていたが
日本とアメリカの特許の出願件数の違いを
県別、アメリカでいえば州別にくらべたものがあった。

明確な違いが一点ある。

アメリカの特許出願件数は
各州ごとに平均していて
どの州もそこそこ特許が出願されている。

ところが日本のそれは
東京や名古屋や大阪などに
集中していて、グラフで言えば
そこだけが突出している。
逆にそれ以外の県では出願件数は
「グラフの下の方でどっこいどっこい」なのだ。


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