今日のコラム・バックナンバー(2004年 7 月分)


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掲載は日付順になっています。


2004.7.1

大企業や都市部ばかりが景気が良くて
地方や中小企業はけして景気はよくない、という
テレビや新聞がよくインタビューなんかで
展開する「地方と中小企業はまだまだ景気は悪い」論は
たしかに大手や都市部に比べれば
まだまだではあるのだろうけれど
やはり大手企業や都市部に牽引されるように
すこしづつではあるけれど
地方も中小企業も景気は好転してきつつあることも
事実だろうと思う。

それはそれでまことに結構な話だし、
その要因が構造改革によるものなのか
日本の真面目さによるものなのか、は
今後ずっと将来の経済学者の分析に任せておけばいいのだが
実際、この状況に死角はないのだろうか。



2004.7.2

こんなに景気がよくなるのなら
ここしばらくすれば
たぶん日本の景気は
どんどんよくなっていくのだろうと
たかをくくりたくなる気持ちにもなる。

今のうちにいけいけどんどん、でもある。

しかし、都会の夜の状況をみれば
大都市における景気の好転は確かだろうが
その急激な変化は地方にくらべれば尋常ではない。



2004.7.3

これが本当に
持続的な景気の拡大にむかっていくのか
一部の企業だけではなく
日本全体に波及していくのかは
まだなんともいえない。

できればいっそのことこの景気拡大を
なんとか地方や中小企業にまで広げていければと思うが
とりあえずは
これをきっかけやバネにして
足元をもう一度みつめなおして鍛えておく、ということが肝要だろう。




2004.7.4

残念ながら日本の産業界は
いつまでたっても学習効果があがらない。

作りすぎと価格の低下は
自由な企業が競争しながらものを作って販売する
現在の経済システムでは
しかたのないことではあるのだが

それにしてももうすこしなんとかならないものか。

すくなくとも
ものを真面目に作って供給している
中小企業の人たちに
もうちょっと先行きの不安を持たず
豊かな生活を見出せるような日本型システムが
ほしいと思う。

現下の景気が良いとするなら
そんなタイミングをうまく使って
新しい仕組みを考え出すことが必要だと思う。



2004.7.5

ちょっと前に
「商業資本主義」と
「産業資本主義」と
「ポスト(産業)資本主義」の違いを
日本海のある都市の明治時代から最近までの
地図の何枚かを見ることによって
見出すことができる、という話をここで書いた。

日本海側にある比較的大きな地方都市の地図なのだが
日本海の商業都市と港湾都市の役割を果たした
「商業資本主義」を形にした明治中ごろから
昭和初期の地図にかけての地図と

工場立地によって工場と工場労働者による生産物の価値によって
まちが大きくなっていったのを現した
「産業資本主義」を形にした
昭和30年代の地図と1990年ころの地図の
4つの地図を同縮尺で同じ大きさで区切った地図の話だ。



2004.7.6

実はこの都市とは富山のことなのだが
インターネットなどを使って
富山の歴史をしらべてみると
ほぼ前述のような歴史や産業史を
たどってきたということが確認できて
非常に興味深く、おもしろいと思った。

しかし、
工場立地による「産業資本主義」から
今後目指すべきであろう
「ポスト(産業)資本主義」への変容を
この4枚の地図につながる
つぎの時代の地図の上に描く必要があるのだが
これは残念ながらまだ描けてはいない。

それは富山に限った話ではなく
日本の産業集積やなんらかの産業を担ってきた地域では
おおかれすくなかれ抱えている
産業史と歴史と問題点なのだと思う。



2004.7.7

ところで先日、仙台にいく用事があったときに
新幹線のなかで無料で配られている雑誌に目を通す機会があった。

中部から関東に生活の拠点がある筆者には
東北の町や地域の情報などはまず知らない。

その雑誌ではじめて
青森の竜飛岬の近く、日本海と接するように存在する
十三湖という湖と十三湊という古代貿易都市が
あったと紹介されていて、知った。

今から700年もの昔に
日本海沿岸の貿易や通商を行う
巨大都市が青森県の一部に繁栄し存在した、というのだ。

はじめて知った話であったから少々驚いた。



2004.7.8

たしかに日本海は
今のように国や国権によって
細かく分断されてしまったような現代では
地図を見ても日本の領土を中心に見ることになれていて
日本海全体を俯瞰することになれていない。

しかし、冷静になって日本海全体を見渡せば

中国の上海から黄海をへて朝鮮半島を縦断し
沿海州にまで達する巨大なベルト地帯が存在し

それに沿うようにして日本の沖縄から九州、
北陸、そして十三湊から北海道にいたる
ベルト地帯が存在している。

我々にとっては日本海の向こうは
他の国、それも政治的には真っ向から反対の政治勢力の国だから
あまり存在そのものや距離を意識することはない。

しかしよく見れば
これほど経済圏として固まっている地域もない。



2004.7.9

そんな近代の歴史に縛られていない昔の人々のほうが
距離や国の隔たり意識に縛られていなかったのだろう。
むしろ自由に
自分たちと日本全体と中国や朝鮮やその向こうの世界を
日常的な意識に乗せていたような気さえする。

ちなみに
いくらインターネットだとか
ジェット機のように
物理的な距離とかにあまり左右されない、
コミュニケーションが可能になってきた現在においても
むしろ、地域全体を俯瞰することができたり

産業などの面でその地域全体を物理的にイメージできる能力は
今後はむしろ重要であるような気もする。

遠くて近い国、などという言葉があるが
それを地でいく感覚が今後はもっと必要になるのではないか。




2004.7.10

ところで十三湊であるが
栄枯盛衰と言う言葉があるとおり
繁栄の時代も長くは続かなかったようだ。

日本海の港運ビジネスの変化というよりは
自然からの影響、土砂などの堆積による
港湾条件の変化や
あるいは政治的な変遷などによって
15世紀には十三湊は衰退していく。

どんな都市でもそれが永遠に繁栄することは
時の為政者たちにとっては
望ましいことではあるのだろうが
でも実際にそうなることはめったになく

むしろ不確定の要素によって
町や地域も急速に繁栄したり急速に衰退していく。




2004.7.11

そう考えれば今の日本の産業をふくめ
日本型システムも
ずっとこのままでいけるのか、といえば
それは難しいと考えるほうが妥当だろう。

それも案外、思ってもいなかったような要因で
変化をよぎなくさせられる、ということはありえる。

長野県の諏訪でいえば
農業から生糸産業へ
やがて精密機械工業へ
そして電子部品とそれを生産するシステム製造へと
変化してきたのだが

これは内的要因の変化というよりは
外部の要因の変化によるものだということだ。




2004.7.12

内部に起因する要因であれば
それまでの地域の資源をみつめていれば
ある程度将来が見えてくるものもあるのだろう。

たとえば少子化とか老齢化は人口の動きをみていれば
必ずやってくることであるかは
事前に予測できる。

しかし外部からもたらされるものであれば
何が決定的な要因として近寄ってくるかは誰にもわからない。

今の日本経済も
この数年先に、再びどんな状況になっているかは
だれにもわからない。

外部の予測不可能な要因に簡単に翻弄されることなく
着実に持続的に
経済の繁栄なり社会の豊かさが得られるように
少なくとも国の内部をかためておくことは
重要なことだ。




2004.7.13

今だからこそ、
現下の経済の動きに簡単に慢心することなく
足元の経済の今後を考えた動きが重要なはずだ。

と、そんなことを考えていたら
新聞によれば
アメリカの経済が早くも減速をはじめているという。
すぐ右往左往するのもいけないが、
やはり時代は常に変わることが常態なのだと考え
自らの位置と役割を検証していなければならないと
きもに命じておく必要があると思う。

そんなアメリカの経済ではあるが
先日新聞にアメリカの
インターネットオークションサイト「イーベイ」
のことが載っていた。

これがなかなかおもしろい。




2004.7.14

なんでも昨年一年間に
イーベイで取引を行った人の総計は
3000万人にのぼり
取引額総計は2百4十億ドルにのぼり
40万人がイーベイでの取りひきを継続的ビジネスとして行い
そのうち14万人はこれだけで生計をたたているんだそうだ。

これもどこかで書かれていたが
「グーグル」「アマゾン」そして「イーベイ」の三つを
インターネットの発明した三大ビジネスとしてあげていた。

たしかにこれらのビジネスをよくよく思いうかべれば
「オールドエコノミー」のビジネスとならべてみても
立派な「大きさ」や「影響力」を持つビジネスに
成長してきていることは
もはや誰も否定しない。



2004.7.15

これらのインターネットビジネスの
特徴を考えるとき、
グーグルを除いては
基本的には既存のビジネスにインターネットを使って
新しいやり方に変えてみた、という点であるだろう。

グーグルは
インターネットそのものに付帯した、あるいは
生み出した、といえるビジネスで
だからお金のやり取りや収益モデルも
ちょっと考え付かないようなビジネスモデルを
考えているようだ。

ちなみに「広告モデル」「広告宣伝で稼ぐモデル」は
たぶん将来的に相対的にインターネット関連ビジネスの
総量に占める割合は減少していくだろうと思う。



2004.7.16

一方
「アマゾン」は本やCDの販売を
インターネットを使って行った、というものだし

「イーベイ」は中古製品を中心として
インターネットでのマーケットを開催した、というものだ。

商売そのものはけして「新しいもの」ではない。

いやしかし、
よく考えてみると
インターネットを使ったことによる
形はいっしょでもまったく異なる意味を持つ
ビジネスにした、という点では
実はまったく新しいビジネスなのかもしれない。



2004.7.17

前述の新聞でも

「2001年にイーベイのCEOメグ・ウィットマンが
「イーベイはダイナミックで自律的な経済だ」と
アナリスト向け発表で語ったがほとんどの人はそれを聞き流し
「ちょっと大規模な蚤の市」くらいにしか思っていなかった」

「しかし、イーベイは圧倒的な規模により
個人の零細事業者にも大企業並みに顧客に到達することを可能にし
主婦や障害者といった人たちにも新たんば機会を与えつつある」

と書かれている。

形は昔と同じようなビジネスであることは
たしかにそうなのだが
実はインターネットの双方向性や広域性や即時性などが
既存のビジネスと同じように見えるビジネスを
その性質上まったく異なる次元や本質まで
変化させてしまうところまできているのだ。



2004.7.18

筆者も以前このコラムで
ヤフーオークションなどの台頭が
「中古経済」を立ちあげていく、と言った。

中古経済といってもけして
「ちょっと大規模な蚤の市」というのではない。

実はよく考えてみると
「イーベイ」も「ヤフーオークション」も
その中から「新しいもの」は生まれていない。

新製品や技術の開発は行われず
流通しているものは
新品ではあってもバッタ品か
圧倒的には中古品やコレクションなのだ。



2004.7.19

これまでのビジネスの概念から言えば
いろいろ言っても
あくまで
「ちょっと大規模な蚤の市」や
「中古品・バッタ品の市場」
の域を出ない。

しかし
インターネットがそれまで
それぞれの自宅や企業に蓄積しておいた
バッタ品や中古品、あるいは
大事なコレクションを
それを相対的にお互いの納得できる価格
たとえそれが高価であっても
必要とする人にものとお金を使って
交換することやつなげることのできる
新たな「回路」を生み出すことに成功した。



2004.7.20

つまりものを交換したり
モノと金を交換するという表面的な作業ではなく
そのうらで
一人一人の持つ「価値」の交換を
広範囲に行っているし
その量が半端ではなくなってきている、ということだ。

そしてさらに大事だと思うのは
その作業の裏で少なからぬ人々やお金、
巨大なお金とサービスが
「自律的」に動いている、ということだ。

単純に「物を生み出す」のではなく
価値を交換することで少なからぬ財が自律的に動き
それを可能にしたこと(イーベイやヤフオク)に
すくなからぬ社会的評価とお金が集まる、、、
今おきていることはそんなことだ。



2004.7.21

これはたしかに
新しいビジネスにとどまらず
新たな経済のモデルが生まれていく一つの過程なのかも
しれないとも思う。

そういえば
日曜朝のテレビを見ていたら
富士ゼロックスの社長が出てきた。

コピー機で有名な同社だが
最近はテレビ電話のシステム開発や
紳士服の型紙をコピー機でデジタル化して
保管するシステムを開発するなど
新たなビジネスを模索しているのだという。

これらはまったく新しいビジネスで
これまで市場もないのだが
しかしだからこそ新たな市場や顧客を
今から創っていかなければならないのだとする
社長の主張は説得力がある。



2004.7.22

もともと同社は
コピー機を販売する、というよりは
レンタルする、というビジネスモデルを
40年も前に始めたことで有名だ。

このあたり話は様々な高名な学者も
著作で取り上げていてよく知られている。

たとえば榊原清則慶応大学教授が
だいぶ以前に書いた「企業ドメインの戦略論」でも
アメリカのゼロックスの戦略について触れていて
これがなかなかおもしろい。

同書は書名の通り
企業ドメインのなんたるか、
企業ドメインの大きさや構想の大きさと
企業の戦略のつながりについてかかれている。



2004.7.23

ゼロックスは
コピー機製造では昔から有名ではあったのだが
1970年代に入ってからは
日本のコピー機メーカーに
市場を少しづづ奪われていく。

これにたいしてゼロックスが考えたのは
コピー機を作って売る商売ではなく
「未来のオフィス」を企業に提示することだった。

「未来のオフィス」というコピーフレーズは
コピー機のメーカーから
オフィスシステムの総合商社を目指した同社の
考えを示している。



2004.7.24

そして「未来のオフィス」を経由して
最後にこのゼロックスの企業ドメインは
「ドキュメントカンパニー」に結実する。

これは日ごろのテレビなどでも頻繁に
目にするゼロックスをあらわす言葉で有名だ。

「ドキュメントカンパニー」に呼応するように
最近はタイプライターや卓上ワークステーションや
音声データコミュニケーションネットワークに
いたる「未来のオフィス」を実現するためのあらゆる機器を
提供しようとする方向から
文書の作成、複写、保管、伝送、検索に関連した
より特化した機能に経営資源を集中してきた。



2004.7.25

先日、日曜朝のテレビを見ていると
最近の同社は
「ドキュメントカンパニー」を核にしながら
再びテレビ電話など「未来のオフィス」を
目指しているように思える

こうしてゼロックスを見ていると
コピー機をつくり販売する企業から
コピー機を通じて価値を提供する企業に
移行したということなのだと思える。

当然、そこまでいけば
コピー機の機能や役割も
たんなるコピー機ではなくなる。
コピー機の形をしていても
その企業にとっての役割は
「未来のオフィス」を実現する道具に
変わってきたということなのだろう。



2004.7.26

時代とともに
新たなビジネスや事業を
考え出して
果敢に事業化していく
そのダイナミズムには
凄みを感じるではないか。

さて、コピー機から話はミシンに無理やり変わる。

先日新聞を読んでいたら
一時の半分に市場が減少した「ミシン」の市場が
再び復活してきているのだという。

筆者も実はミシンのファン?である。
もともとあんな小さな機械なのに
精緻なメカニズムが凝縮されていて
ある意味では産業革命や資本主義の勃興を支えた
蒸気機関や印刷機に並べてもいいほど
存在感のあるものだと思う。



2004.7.27

数ヶ月前によんどころない事情?で
ミシンを使わねばならない状況になった。
といっても布をミシンで縫う仕事ができて
人に頼むよりは自分でやってみようと
思い立っただけなのだが、

まあ、もともとメカものだいすき人間なので
ここぞとばかりに
いろいろ操作を覚えてみた。

最初は動作する原理がわからずに苦労したが
そのうちにメカの仕組みや
自分でそれを操作して
布を縫い合わせていく作業自身に
面白さを覚えていた。

よく見ると機械としてみても
なかなか面白い形だし、
なにより機能的で無駄がない。

あらためてミシンのメカニズムの精緻さにおどろかされた。




2004.7.28

その後はヤフーオークションで
ちょっとしたビンテージものの
ミシンを探すのが日課になっている。

あまりプラスティックしていないで
金属でできたまさに「ソーイングマシーン」という
名前がぴったりくるようなミシンがないものかと
探している。

なかには外国製でとりあえず直線縫いの
ミシンなどでカッコウ良いやつが
とんでもなく安価にでている時もあって
そろそろ相場もわかってきたことだから
一台落としてみようかなどと考えている。

話は戻るが
やはり最近再びミシンを買う購買層は
「普通のユーザー」ではなく
パッチワークキルトなどが趣味の
「ヘビーユーザー」なんだそうだ。



2004.7.29

で購入するミシンも
20万円を越える高級なものらしい。

それも海外メーカーのものが多いらしく、、
というか、このミシンブームの立役者は
海外のミシンメーカーなのだという。

ミシン全体の市場に占める割合は
まだ高級ミシンは小さいが
確実に伸びている、ということらしい。

で、ここからが問題だと思うのだが
この状況を見て
国内ミシンメーカーも高級機に乗り出しているらしい。

さすがに国内メーカーだから
すぐに高品質で安価なものを作り出してしまうから
たぶん今後も伸びていくのだろうが
商売のやり方は
海外メーカーと国内メーカーでは
まったく異なるらしい。



2004.7.30

国内メーカーはどちらかといえば
「売りっぱなし」であるのに対し、
海外メーカーは
「顧客の組織化」に力を入れているのだという。

たとえば海外メーカーは
自社製ミシンを使った講習会を全国で実施しているのだという。
当然、それには消耗品の拡大ももくろんでいるのだが

なにより顧客の組織化、という観点は
前述のゼロックスの「機械を販売する」ビジネスから
「機械をリースしたりレンタルするビジネス」へ
変化した話を思い出させる。



2004.7.31

こういうのも「プラットフォームビジネス」といえばいいか、

プラットフォーム財をユーザーを取り込んでいく材をとして
使いユーザーをロックインしてしまう、そんなビジネスのやり方を
なぜか欧米のビジネスやメーカーは
考えて行うことが多い。

一方なぜか国内メーカーは
機械を売ってしまってそれで儲かったとして
終えてしまう。

実はユーザーは生涯にわたって
いろんなものを購入するのだから
ユーザーの動向は
ミシンメーカーに限らず
重要な情報になっているはずだ。


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