今日のコラム・バックナンバー(2004年 6月分)


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掲載は日付順になっています。


2004.6.1

ただ、いったん町の商店街に入ってしまえば
これはどこも同じような町並みで
北海道も四国も仙台も長野も
そう変わるものではないところが
もともと衣食住がそう変わるものではないのだから
当たり前とはいえ
なにか日本中で享受できる便利さのうらに
ぽっかりとあいた穴みたいなものが
見えるような気もしないでもない。

日本中どこでも同じような「消費の行動」が
取れるわけで、一見便利ではあるのだが
深みや豊かさが失われているようでならない。

まあ、これはこれでしかたのないことなのだろうと
思いつつ、



2004.6.2

一方、
東北大学を中心に素材開発や工業やプロセスの技術開発で
世界的なレベルの成果や人材を生み出しているというのは
そういう話題を知っている人にとっては
周知の事実なのだが

街中を行く若者が多いことや
いたるところに「学都」という文字があることを思うと
仙台の学問や知識や技術に対する
熱と目線の高さが見えてくるような気がする。

きっとそのあたりや
なんとなく町のたたずまいのなかに
町の意思を感じることになったのだろう。



2004.6.3

ところで
岩手県の北上市が
誘致型の産業政策をとって
「成功した」という話をたまに聞く。

しかし一方で
ここ10年あまりの
国内生産の中国・アジアへのシフトの影響もあって
せっかく東北地方に誘致した企業が
中国・アジアに移転してしまい
工場閉鎖や縮小を余儀なくされた、などという話も
ここ数年よく聞く話だ。

東京とかに勉強にいっていた学生が
東北に戻ってきてそんな企業に就職して
会社が閉鎖や縮小することになって
でもアジアや中国へ企業がシフトするのに
一緒になっていくわけにもいかないで困っている、
という話もきいたことがある。



2004.6.4

そんな話を聞けば
誘致で栄えた産業も
またどこかに誘致されていけば
永続的に繁栄するわけではないのだろうな、とは
思えるのだが、

でも一方でせっかく呼び込んできたり帰ってきた
学生や技術者が
アジア中国にいかずに
地元に残っていけるように
うまく制度を作っていけば
そんな学生や技術者が
ベンチャー企業や新たな産業の礎になっていくことは
考えられるだろうと思う。



2004.6.5

仙台周辺も
製造企業、それも比較的小さい企業の集積という点では
大田や諏訪や東大阪のようではないだろうけれど
それなりにある程度の数と質も持った
企業の集積はあるとのことだから

岩手も宮城も仙台も
そんな企業の集積と
学生や技術者とのネットワークを
うまく作っていけば
今後ベンチャー企業や
新事業の創出も起きてくると思える。



2004.6.6

一方、同じ東北でも
岩手の花巻は誘致ではなく
「内発型」ということで
地元の中から産業を創出するのだ、ということで
ベンチャー企業なんかの創業支援を行っている。

そんなノウハウを東北全体で共有することも
大事かもしれない。

ただ、素材や製造プロセスなどの開発の分野は
飯が食えるようになりまで
お金がかかる、時間がかかる、という問題はあって
小さな規模のベンチャー企業や
中小企業では厳しい。




2004.6.7

比較的お金をかけずに
比較的時間もかけずに
製品なり技術なりで成立することをやりたいのは
やまやまだけれど
実際のところその分野にいくと
日本中には競争相手ともいえる地域はごまんとあって
優位を誇るのはそうそう簡単ではない。

山形なんかは有機ELを中心にすえた
産業クラスターの形成を目指すといっているのだが
有機ELにしても
素材にしても製造プロセスにしても
そんなに超先端でなくても
かといってサポートインダストリーとまで広げなくても
中間的なレベルのところに
お金になりそうなアイディアはありそうな気もする。




2004.6.8

実際、山形の有機ELバレー構想などには
先端的な分野だけというわけではなく
「家庭用の照明器具」とかに
とりあえず需要がありそうだから
まずはそのあたりを耕してみよう、という雰囲気も
あるようだ。

たぶん仙台にも岩手にも
そんな方向があるのではないかと思えた。

せっかく素材や半導体や
いろんな先端的なプロセス開発なんかをやっていて
それなりの高度な知識が集積しているのだから
それを時間と金をかけてやっていくという方向も
重視しながら、
一方で
地元の既存の産業とうまく組み合わせることで
比較的金をかけずにわりと早めに
飯になっていくやり方もあるのではないかと思える。




2004.6.9

以前から筆者らは日本の産業の向かうべき方向を
高度化と多様化の二つではないか、主張している。

これまで日本の産業を牽引してきたのは
自動車や家電などの大量生産・大量販売・大量消費と
それを実現するための
優れていて安価で大量に供給される部品生産と
それを支える様々で多様で高度な技術や製品だといえる。

しかし、大量生産物でも労働集約的な分野は
アジアや中国にシフトしたり
世界中に「現地生産」されていくことになったから
とりあえず日本国内では残念ながら
その分野の産業の存立の意味が徐々に失われてきた。



2004.6.10

一方、高度な技術や製品などの分野は
今後も重要ではあるから
国内にとどめておかなければならないだろうし
開発進化もすすめなくてはならないはずだ。

大量生産の分野でも
高度な技術や高度な技能に
裏打ちされてはじめて実現が可能になるような
分野では最近は国内回帰が見られるし
もともとそういう性格のものだろうと思う。

しかしその分野はお金と時間がかかる。
中小企業のだれもが容易に選択できる方向ではない、と思う。

付加価値の高い高度な技術や製品開発へ、という標語は
無駄ではないが実際にそのまま適応できる中小企業は
そう多くはない。



2004.6.11

というわけで
筆者らはこれまで作り上げてきた
中小企業の多様で優れた技術を
うまく需要や市場とつなげていくことで
大量生産大量販売大量消費に組み込まれなくとも
比較的少量であっても
付加価値の高い生産物の生産と供給が
成立すると考えている。

同時に
高度な技術開発と
多様なものや技術・価値の創出は
矛盾するものではなく
互いに補完しあうべきものだろうと思う。



2004.6.12

実際、市場や産業を見回してみても

そうした大量生産部品の供給においても
お金と時間と力のある企業の一部には
高度な技術力を蓄積して
低下する単価に勝る技術力にうらうちされた
コスト対応力と営業力、コア技術の評価を
勝ち得ている企業すら登場してきているし、

一方で小さな市場であるが
高い付加価値を生み出し
驚くほどの業績をあげている
小さな市場を制覇している小さな大企業も
存在している。



2004.6.13

それらがそれぞれの市場を切り開いていくのと同時に
それぞれが互いに影響を及ぼしていることも
本当のところだ。

中小企業が
比較的少量ではあっても
様々なものや部品や製品を作り供給することが
できるからこそ
大手を中心として
高度な生産プロセスや開発を可能にした
機械や製品やを作ることができる。

俗に「サポートインダストリー」という
役割を日本の中小企業群は担っているのだ。




2004.6.14

逆に
高度な技術開発がなされたり
大量で安価で集積率の高いデバイスやモジュールが
開発されたりそれらが市場に出回ってくることで

市場が要求する様々な製品をたとえ少量ではあっても
付加価値の比較的高いビジネスとして
中小企業などが始めることができる。

中小企業が部品や製品の
開発を最初の一歩からすべてを行っていかなくては
ならないとしたら
「芸術品」のようなものはできるかわりに
市場が要求する金額とスピードに応えた
製品や部品や技術を開発して
供給することは困難になる。



2004.6.15

しかし、残念ながら
日本においては
大手企業などを中心にして
生産したり市場に供給する
高度で集積率が高く安価なデバイスやモジュールなどを
うまく利用したり応用して

中小企業やベンチャー企業が
それぞれに市場が小さくても
おもしろいものや付加価値の高いべんりなものなどを
様々に開発しビジネスとして成立させる、
という試みや方向への模索がまだまだ不足しているとは思う。




2004.6.16

もっと中小企業やベンチャー企業は
大手企業なんかが作ってくれて
「世のなかに供給してくれる」部品や
技術やデバイスやモジュールなんかを
貪欲に利用して
いろんなものをすばやく構想し作って
世に問えば良いのだ、と思う。

大手企業が莫大な金を使って開発し
産業界に供給してくれるのだから

それを大手企業が利用するだけでなく
中小企業もうまく利用させてもらえば良いじゃないか。

まだまだそんな貪欲な姿勢が中小企業には
かけているように思う。




2004.6.17

しかしいずれ
その方向をたどる中小企業やベンチャー企業も
増えてくるに違いない。

市場規模が小さく、小回りが効くことを
要求する市場分野は実際数多く存在するが
ありがたいことにそういう分野は
大手企業では手を出したくても
逆立ちしても手を出せない

もともと「市場規模が小さい」ことは
大手企業にとっての市場としては
最初から選択肢がありえないことだからだ。

が、大手企業では小さくぎて手を出せない市場でも
中小企業やベンチャー企業にとっては
手にあまるほど大きい市場がたくさん存在しているはずだ。




2004.6.18

地方の自治体の産業施策で
よくあることの一つに
大手企業からOBの人材に
アドバイザーのような役割として
来ていただくようなことが多い。

大手企業との接点があるから
仕事でも持ってきてくれるだろうとかいう考えから
来てもらうことが多いように思う。

でもそんなことは
官の天下りとは違い
今の時代の民間では関係のないことだ。



2004.6.19

むしろ大手企業のOBには
企業内の様々なプロジェクトや
課題にむかっていろんなことを経験してきたこと、
その蓄積を持っている人が多い。

そんな人たちの経験を生かしてもらって
開発や技術開発などのプロジェクトを
牽引してもらうことを目標にしてアドバイザーに
協力してもらうというのは
天下り風の関係に比べたら
なんぼか筋の良い試みではある。




2004.6.20

実際、大手企業で永い間
ものづくりや営業や企画などのプロジェクトに
携わってきた人と話をしてみると
経験の積み重ねのなかでしか得られないような
なかなか含蓄のある言葉などを
聞くことができてはっとすることがある。

ただ、そんな場合でも
中小企業が集まってなにかやろうというときに
逆に大手企業のやり方や目標を設定してしまう場合が
たぶん多い。
それではうまくいかないだろう。



2004.6.21

誤解を恐れずに言えば
長い間、大手企業を中心にして
ビジネスを構築してきた人には
安価に製品を作り大量に販売する、ことを
目標にしていくことが
ある意味ではあたりまえのこととして
染み付いているからだ。

けして、そういうビジネスモデルを
中小零細企業は目指すべきではない、
と言うわけではないが、前にも書いたように
先端の技術の開発や生産設備など、莫大な費用と
時間がかかるようなビジネス分野、
大手企業がやってきたようなビジネスのやり方は
中小企業が参入するには荷が重い。




2004.6.22

大きな市場と売り上げが見込めなければ
それだけの先行投資も回収できないと考えるし
他社と異なる付加価値をつけるためには
研究開発や先行投資も大きなものになる。
いきおい大量に販売し大きな市場を目指すことになる。

逆に中小企業なら
そんなに大きな市場を目指さなくても
中小企業にとっては
充分過ぎるほどの市場というものはたくさん存在する。

研究開発や先行投資もそんなにはいらず
むしろ自分が保有する
個々の技術やそれなりのノウハウなどを生かせば
充分に製作可能だったり
参入可能、というものもたくさんある。



2004.6.23

あるいは
先端的な研究とか設備投資とかをしなくても
ある意味では「大手企業が開発して供給してくれる」
デバイスやモジュール部品を
うまく利用して
大手にはできないような
市場は小さく、でも利益も大きく取れて
付加価値が高い製品やサービスの
市場を生み出したり探しだすこともできるはずだ。

さすがにモジュール部品やデバイスの
単なる組合せだけでは
誰もが出来ることなのだから
早晩、同じようなものができてくる可能性は高いが、
固有のノウハウやアイディアで付加価値の大事なところは
なんとか抑えておくか、あるいはすばやく駆け抜ければ良い。



2004.6.24

こうしていろいろ考えてみると

大手企業のOBの人たちに
たとえばものづくりのプロジェクトの
マネジメントをしてもらいながら
大手企業の作ってきたアーキテクチャーというか
生産技術や部品やデバイスなどをうまく利用させてもらって
中小企業の独自なビジネスモデルを
作り上げていくことが今後重要だろうし
できる可能性は高いと思う。

もともと中小企業には
独自の技術やノウハウをそれぞれにもってもいるのだから
それに上記のような資源をつなげていけば良い。

中小企業独自のビジネスモデルの創出というと
難しい話のようだが
こう考えてみれば難しいことでもないはずだ。



2004.6.25

ところで話は変わるが、
ここのところ
中国アジアと国内の生産の「すみわけ」が
再び議論に上ることが増えてきたように思う。

1985年のプラザ合意以降、
急速に進んだ円高に対応するために
中国アジアにシフトされていった
特に大量生産の仕事も
最近は分野やものによって
日本にかえってきたものがある。




2004.6.26

あるいはアジア中国の産業の繁忙状況に
なかばひっぱりあげられていく状況のなかで
日本国内も忙しかったりする。

こうしたことから
日本がふたたび以前と同じように
製造業、製造産業が
元のように栄華を取り戻す、という意見だ。

しかし、これらの意見は一面的に過ぎる、と思う。



2004.6.27

たしかにいったん外へ出ていった日本の産業が
そのまま国内に戻ってきたように思われるが

いまだに労働集約的な大量生産分野は
中国アジアにシフトしているのだし、

高度な技術に裏打ちされた少量生産や
大量生産であっても
高度な技術が必要になるものや
あるいは高度な技術によって
中国やアジアとくらべても
コストで対応できるものも国内に現れてきたりして

それらを見つめ直してみると
結果的に最近のような状況になっているだけということがいえる。

要は国際的な状況の変化によって
そのときに最適な状況に落ちつく、ということなのだろう。



2004.6.28

実際、たとえばここ数年、
比較的安価な労働賃金が魅力ということで
国内の別の地域から誘致されていた国内の、
特に組み立て作業などを中心とした地方工場などが
再び中国アジアなどに再シフトされてしまった問題が
国内回帰といわれる最近の状況のなかで
解決されているのかといえば
けしてそうはなっていない。

やはり冷徹に
日本で作ることが有利なものやことは日本で行い、
海外で行うことが有利なことやものは海外で行う、
ただそれだけの原理が働いているのであって
ものづくりの日本回帰、と
言えるものではないということだ。



2004.6.29

そういえば
最近週末夕方の新宿を歩く機会があったのだが
これが不景気日本だとはどう見ても思えない。

実際、賃金やものの動きなどを見ていても
国内の景気の実態はけして悪くはない。

大手企業などは過去最大の利益をあげている企業も
ちらほら出ているし
賃金やボーナスも過去最高、などというニュースは
ここのところのテレビニュースなどで流れるのは
そう珍しい話でもなくなってきた。

一時期の大手企業が
はじからリストラや賃金カットや
工場閉鎖を行っていた時期から見たら
まるで数年前の同じ日本かと思う。



2004.6.30

東京の夜の賑わいは
それはもう「景気の悪い日本」は
すでに過去の話で
好景気を謳歌しているように見える。

一時期行われていた不良債権処理や
大手企業のリストラが最終曲面になり
同時に
ここにきて海外の景気に引っ張られるようにして
急速に景気回復している、という
経済評論家の議論は
たぶん正しい、とは思う。

じゃあ、一方で地方の経済はどうかといえば
やはりそんな状況を反映して
いろいろいっても
とりあえず目の前の景気が好転していることもたしかだ。


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