今日のコラム・バックナンバー(2004年 5 月分)


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掲載は日付順になっています。


2004.5.6

こういうものをしかけていくようなプロデューサーが
まだまだ日本には
圧倒的に不足している、ということなのだろうと思う。

一方で日本のアニメや漫画や映画やゲームの「産業構造」は
先端産業のようなイメージのわりに
むしろ日本の「系列下請け構造」「劣悪単価受注仕事」
の最先端をいく?ような産業構造であることが
あまり理解されていない。

これは以前
日本の中小企業を中心とした製造業の状況とこれからを議論する
NHKのラジオ番組で
中小企業論で有名な一橋大学の関満博先生と
三井物産戦略研究所の寺島実郎氏が
「アニメ産業」について触れていてなかなか聞き応えがあった。



2004.5.10

新宿から国分寺あたりまでの中央線沿線は
アニメ産業の集積地といわれている。
しかし、実際には
一握りのトップをいくイメージリーダーのような企業と
それから下請け的に仕事を受注する圧倒的大多数の
「下請企業・下請け個人事業者」によって
なりたっているというのだ。

安い受注単価と短納期を実現するための
受け皿としてこれらの
「下請企業・下請け個人事業者」
が機能している。

筆者の住む長野県でも上田地方が
「アニメ産業」を起こそう官民一体になって
しかけているが、
実際のところは「下請企業・下請け個人事業者」として
大都市圏の受け皿になっているのが今のところの現実だろう。



2004.5.11

劣悪な単価と短納期の受け皿としての
「下請企業・下請け個人事業者」と
欧米や海外からやってきて
高度でありながら安価な日本の漫画やアニメを
安く買って高く世界中に売って
利益をあげていくプロデュース企業、、
そんな図式が見えてくる。

まあ、そんな図式で作り上げたビジネスは
良質な製造業者や創造業者がいなくなったら
プロデューサー企業の存続まで危うくなるはずだから
たぶん先を見る能力があるプロデューサーは
人材を育てたり環境を整えたりもしようとしているとは思う。



2004.5.12

逆に
ベンチャー企業もアニメも技術者も
こういうなかからこそ優れたアイディアや技術が
生まれてくるのだというところに
落着けようとする話も多い。
苦労をしなくちゃいけない、という議論も多い。

いかにも日本らしいといえばいえるのだが

さて、
ここで思い出すのはイタリアのコモを中心とする
衣料繊維関係の集積地の話だ。

ここには良質な衣料や繊維や布を織る技術者や中小零細の企業を
まとめて世界に売り込んでいく
「プロデューサー」「コーディネータ」が存在している。

彼らはそれぞれに持てる力をうまく組み合わせることで
持続的にそのビジネスを継続し成功させることができているらしい。



2004.5.13

こういう「モデル」が日本のアニメ産業にも必要ということだろう。
これは最近どこかで盛んに言われている
「セールスレップ」とかいうレベルのものではないはずだ。

またこのイタリアのモデルは
アニメに限らず日本の多くの中小企業が集積する集積地域に
必要なものだろうと筆者は思っている。

さてさて、いささか長くなってしまったが
新聞記事の
第二回は「人づくり「暇がない」」「製作技術、迫る韓国勢」
第三回が「かみ合わぬ振興策」「「産政一体」実効性カギ」
ということなのだが

この人材の輩出やその施策や方法論についても
優れたプロデューサーの存在があるかどうかが非常に関係してくる。



2004.5.14

零細なアニメや漫画のビジネスを行っている事業者を
単に安価な下請け作業と納期を間に合わせるための
「下請企業・下請け個人事業者」として使おうとしているなら
人材も企業も育たなければ、いずれは自らの
プロデューサー企業の成長さえも保証されなくなっていくだろう。

ある意味で官などによる甘やかし政策や助成策などではなく
真面目な競争や成長を促す施策は必要なのだ。



2004.5.15

アニメに限らず産業界全体としても
真面目な競争や成長を促すには
官などによる下手な助成や甘やかし政策などを行うよりは
放っておいてくれたほうが良いくらいなのだが

そうはいっても何をしないでいるのではなく
有効な助成や施策はあるのこしたことはないと思う。

韓国や中国あたりが3DCGなどの技術を高めるために
業界の応援をしているのは
人によってはそんなことをやっていれば力のある産業にならない、という
意見もある一方
最近ではやはり着実に実力を持ってきたとも聞く。



2004.5.16

要は効率が高く、本当の意味での成長に結びつく
助成や施策が必要なのだろうということだ。

むしろ技術者そのものを育てる施策よりも
プロデューサーが人を育てられるための
環境や施策や制度を
設計したほうが良いのかもしれない。

人材は育てるものではない
育つものだ、という議論がある。
一見もっともな話に聞こえるが
人材と環境や施策の関係を
もっと深く考える必要があるだろう。

長期的な戦略がないからこういう話になる。



2004.5.17

知的財産とか知的戦略とか言われる。

いろんなところでこの言葉を聞くようになった。

最近は大手企業などに限らず
大学もその知識とかで自ら食っていかなければならないと
独立行政法人化したから

知的財産云々を盛んに言い始めた

もともとはアメリカの産業が
10年以上前に日本の製造業に痛い目に合わされて
それに対抗することを考えた一つの
対抗策、産業政策の一つが
プロパテント政策で
これはヒトコトで言えば
特許戦略を持つことで
ものづくりではなく知識、特許でアメリカの
産業を守ったり、儲けていこうというものだ。



2004.5.18

日本もこの10年にわたる景気の低迷と
その裏にある製造業のアジア中国への海外シフトがあって

ものづくりは基本的には日本から離れていく傾向にあって
そこをなんとか補填するためには
基本的には
アメリカのようにプロパテント政策というか
知的戦略をもたなければならない、という方向にある。

で、基本的には日本も
自らの独創性のある技術やアイディアを特許で
海外や他の企業から守っていこうという戦略ではある。

これは日本の産業界全体の方向ではあって
最近は企業に限らず大学も個人も
地域も小規模企業も同じような考え方にたっている。

みんな特許によって
自らの技術やアイディアを守っていこう、
独占していこうという構えである。




2004.5.19

これが知的財産の戦略と
盛んにいわれているのだと思うが、
筆者は最近のこの「ブームのような」
雰囲気にちょっと不安を持っている。

たしかに企業や大学のなかにある
独創的技術やアイディアを
特許等によって守っていこう、
あるいは外に出さないでおこうというのは
わからないではない。

むやみに無防備にオープンにしてしまえば
狼のような企業や人々にパクラレてしまったり
自らの競争力を低下させてしまうことは目に見えている。



2004.5.20

しかし、一方で
すべての技術やアイディアが独創的であるから
守らないといけない、のかといえば
たぶんそうでもなく

ちょっと誤解を生む言い方かもしれないけれど
地域や業界には
先端的技術や独創的アイディアとはいえないような
あるいみで「よく枯れた技術やノウハウ」と
言えるものがたくさんある。

こういったものは
最近では特許になるようなものでもなく
どちらかといえば
技術者の頭の中やノウハウとして蓄えられているもので
聞いたから、文書になっているのを読んだから、
誰でも簡単にできるというものではないはずだ。




2004.5.21

むしろ目の前にやってきた仕事や課題は
想像できないほど多岐にわたり複雑で多様であって
そこに技術者のノウハウや姿勢が反映されて
そのたびごとにその仕事に向けた解決策を
生み出しているはずで
これなどはそうそう真似のできるものではない。

むしろそういう需要というか
技術やノウハウが役に立つ仕事や場合に
出会うことのほうがその技術やノウハウが
進化していくためには重要ではないか。




2004.5.22

ノウハウや技術は門外不出だから
と、どこにも見せない、教えない、では
むしろその技術やノウハウの進化を送らせてしまうのではないか。

特許を取ることや他に公開しない教えないことを否定はしない。

繰り返すがすべてそうだということではない。

基本的には
先端的な技術やアイディアなどで
オープンにしないほうが良いものとか
特許をとって使わせない、というものも多い。
特許をとってそれを使わせたりしてお金にするのも
一つの方法だとも思う。




2004.5.23

しかし多くの場合、
それも中小企業の技術やノウハウなどは
むしろ特許になりづらいものや
たとえ特許になっても
それだけではお金にならないもののほうが多い。

であればむしろ
需要や仕事によってその技術やノウハウが
進化したり多様性を見せるほうが得策ではないか。
その蓄積によって
自分の持つノウハウの進化が
他の追随を許さないことのほうが
特許をとったりしているよりも
よほど自分のためにもなりお金にもなると思う。




2004.5.24

特に大手企業やベンチャー企業ではない
中小企業とか零細企業の場合には
そんな方法をとるほうが実際的なように思える。

知的戦略というと
どうも「外に出さない」、
「特許をとって容易には外に出さない」、
「そのほうがお金にもなる」、というのが
その意味するところに考えられがちだが

しかしそれがすべてではなく

むしろ「良く枯れた技術やノウハウ」を
需要や仕事につなげて
より多様で競争力のある技術やノウハウに進化させていくほうが
少なくとも中小企業などの場合には
懸命であるように思う。



2004.5.25

知識を内部に囲い込む戦略もあり、
オープンにネットワークして知識を進化させていくやり方もある、

そういういろんな方策もふくめて
全体としての「知的戦略」だと思うのだがどうだろうか。

特に日本では
知的戦略や知材戦略というと
囲い込むことを指すように思われている。

アメリカのプロパテント戦略も
たぶんは「囲い込む」、それも「アメリカに囲い込む」ことを
一義的なものにしていたように思えるが、
はたしてアメリカ内部も含め
すべてに「囲い込む」ことを
目標や唯一の方法論としているのか
よく検証してみる必要がありはしないか。



2004.5.26

日本も海外にたいして先端的な知識や技術を
国内に囲いこむ必要はあると思うが、
国内の中小企業を中心とした知識を
囲い込むことが有効な手立てなのかは
よく考えないといけないと思う。

一方、
中小企業の持つ知識を過小評価する
雰囲気も最近の国内産業には
少なからずある。

中小企業の持つ知識を
一方では囲い込んで他の知識とつなげたり
価値を創出することを行いたがらない。
その一方では中小企業の持つ知識を過小評価する、、
そんな状況だ。



2004.5.27

これは日本の中小企業の持つ
技術や知識を中小企業自身も含め
産業界全体がきちんと評価できていないからだと思える。

国内の、特に中小企業を中心として
持っている知識や技術が

果たして価値のないものかどうかを、

価値があるとしたらどういうことが価値があるのかを、

あるいは潜在的な可能性があるにも
関わらずまだ価値が生み出されていないのなら
どうすれば価値が生まれてくるかを

考える必要があるように思う。



2004.5.28

この10年ほどのアメリカの産業発展のうえで
プロパテント政策の一方で
オープンソースの動きや
ネットワークで知識を進化させていくやり方なども
これもまた
アメリカの中から主になされてきたことを思えば
アメリカでは
プロパテント政策ばかりが重視されているように
見えているが、実際のところは
むしろ囲い込むことと
オープンにネットワークし
知識を進化させていくことを
うまくつかいわけているように思えてくる。



2004.5.29

繰り返すことになるが
日本の大手企業だけではない
中小企業や個々の熟練した技能など
「良く枯れた技術やノウハウ」は
けして陳腐化したり
過去の技術やノウハウではないのである。

しかし、それをただしまっておくだけでは
なににもならないことの事実だ。

うまく火をつけたり
着火物と組み合わせれば
驚くような状態の変化を見せるはずである。



2004.5.30

日本の中小企業や個々の熟練した技能など
一見「良く枯れた技術やノウハウ」が
どんな価値を持つのかを評価すること。

同時にそれを更に価値あるものに高めるには
囲い込むことが優位を築くのか
他の知識や技術とつなぎ合わせることで
進化させるのか

これらの戦略や戦術が必要なのだろうと思う。

ある意味で一面的一義的にも見える日本の
知的戦略や知財産略をもう一度考え直す時期に
きているのではないかと強く思う。



2004.5.31

先日、東北仙台で産業クラスターの成立のために
いろいろ研究するグループの研究会があって

そこで筆者の住む長野県諏訪地域の
産業活性化や産業クラスター構築に向かって様々に
動いている状況の話を聞かせて、
、、という要請があって仙台まで行ってきた。

東京、大阪、名古屋、それに北海道や神戸や北陸方面には
下手な講演になんども呼んでいただいたことはあるのだが
仙台ははじめてだ。

きれいな町だ、とは聞いていたのだけれど
本当に美しく整備された町だと駅舎の前にたって思う。

歴史の浅い、まったく最初からの青写真通りに作られた町と異なり
それなりに歴史の深みと蓄積を持つ町なのに
雑然としたところがなく
なんとなくまとまりと清潔さを感じる町だ。
ある意味で「意思を感じる町」と言えばいいか、、。



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