今日のコラム・バックナンバー(2003年 8 月分)


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掲載は日付順になっています。


2003.8.1

地元で生まれる消費を
地元で吸収することも当たり前で
大事なことであって

大都市圏の周辺にあるような都市は
それだけでも相当な消費があって
無視するわけにもいかないし
それだけで「内需」ともいうべき
構造をもっているといっても良い。

ただ、そんな消費と供給の形態が進んでいくことで
それぞれに
特徴のある街や歴史のある街が
特徴のない歴史の蓄積もない街に
変化してしまうことは
寂しいことではある。



2003.8.2

地方都市でも同じように内需とも言うべき消費も
少なからず存在しているのだが

一方で大都市が
周辺の都市や地方都市から持ち込んでくるような消費
どちらかと言えば
大きな都市しか置いていないようなブランド品や
そんなブランド品がたくさん集積したことによって
生まれる集客力を持った大都市と
同じような意味での
地方都市がもっている特質として

外部から来たお客さんの持ち込む消費、というのも
充分なくらいにある場合がある。



2003.8.3

多くは観光客がそうなのだが
細かく見ていると
けしてそれだけではなく
様々な吸引人口というか吸引消費、というか
そんなものがある場合がある。

例えばその街にある企業が吸引しているお客、
というものなんかもあったりする。
技術者やユーザーなどが
遠方から打ち合わせや研修などのために
比較的長時間、その街に滞在するということも
珍しいことではない。

この場合はホテルなどがお客として認識しているのだろうが
実はそれだけではない消費を生んでいる可能性がある。



2003.8.4

あるいは場合によっては
医療や福祉が呼び込んでいる消費というのもある。

例えば湯治の客なんてのも
単なる温泉客という観光としての客というのとは
異なる客に分類されるだろう。

これも主に観光客として分類すれば
宿泊客と考えられてしますが
これを湯治の客と考えればまったく異なる消費を
生み出す可能性がある。

当然そのなかでは
宿泊に関係する衣食住に限らない消費もあるだろう。



2003.8.5

実はこういう内需ではない
いわば外需ともいうべき消費は
案外目を向けられていないのではないか、と筆者には思える。

むしろそういう外需を生み出す戦略や仕掛けも
もっと考えていくべきなのではないか。

企業の経済活動の関係から
その街に来た、などというのは
経費を削減したり
サラリーマンとしての枠から離れるわけにもいかないだろうが

もっと積極的に「お金を落としてもらう」ための
方策はあってもいいのだろうと思う。

少なくとも
旧来からの温泉のある地域とか
旧来からの観光のある街などというのは

そこにちょっとしたアイディアを盛りこめば
違った消費や需要や市場が」
現れてくる可能性がある。



2003.8.6

アイディアなんてべつに特別なものである必要はない。

観光だとか温泉だとか以外に
その街にあった
「旧来」からのちがった資産を
うまく探し出してつなげてみれば良い。

例えば製造業なんていうのも
あるいは漁業だとか農業だとか、というのもあって良い。

製造業と観光なんかとをどう組みあわせるのだ、
という意見も当然あるだろうが

実際、製造業の現場に立ってみると
それが案外製造業以外の人々から見れば
観光資源ともいうべき力をもっていることに驚かされる。




2003.8.7

筆者の住む諏訪地方には
オルゴールとか時計の博物館があるのだが
最近のそういった博物館は
体験型と称して
工房を設置して
時計づくりたオルゴールづくりを体験できるように
したところがある。

これはこれでおもしろいのだが
よくよく聞いてみると
毎年同じ人が
何度もやってくるのだという。

いわば「リピーター」である。
それも結構な「ヘビーユーザー」である様子だ。

こうしたお客にもっとお金を落としていっていただくことは
もっと考えてもよかろう。




2003.8.8

いや、ただ、ろくでもないサービスを漫然と
提供するのではなく
もっと高度で長期の滞在を必要とするような
滞在型体験型の観光製造型「時間消費サービス」、
それもいろんなオプション付き、が考えられていい。

そう、いわば
それをその地域に来ていることで
楽しい時間を消費することが演出されていくビジネスが
必要なのではないかと思う。

で、できれば
消費するだけではなくて
そこから何かを生み出してあるいは自分自身が受け取って
帰っていくことができればなお良いのではないか。




2003.8.9

例えば時計やオルゴールの製造工房での
体験がもっと高度化すれば
「ミニマイスター」の免状を提供したっていいだろう。

こんな時代だから
手に職をつけたい、という若者や
大手企業でリストラの対象者になった人々は
たくさんいるわけで
そんな人達がその街に来て
観光ではなく手に職を付けていく可能性は充分にある。

来るからには長期間にわたりとりあえず週末だけでも
宿泊していくことやその間の生活をしていくことが必要になるわけで
旅館とか宿泊業界との協力関係も必要になる。

そういうあわせ技がこれからは必要なのだ。



2003.8.10

いやそんなカッコウ良い産業はない、と
言う人もいるだろうが

例えば最近筆者が視察に行ってきたある地方都市は
金属加工などの昔からの比較的「重工な産業」が
今でも街の主要な製造業をしめている。

「重工な産業」といえば
例えば油や金属や加工の匂いが匂ったり
音や振動や熱が工場のなかにこもっていたり
そんな産業、
一時は「キツイ」「汚い」「危険」の「3K産業」などと
言われていたのを思いだすのだが
これらが「物を生み出す」という
直接的な価値以外に
ほかの価値はないのか、というと
とんでもない、他にも思ってもいなかった価値が
たくさん其の中にはある、と思うのだ。


2003.8.11

体験型にはさすがにちょっと壁が厚いとは思うが、
これらのものが実は観光資源として
充分に価値のあるものだ、ということを
言う人はいない。

しかし、実際に
これらの「迫力のある製造業」が
いままでものが加工され、形が変わっていき、
価値となっていく工程をみたことのない人々
、、多分世の中の大部分の人々がそうなんだろうが、、
にとってもしかして価値のあるものだということは
誰も考えたことがなかったと思う。

地方都市に限らず
そんな旧来の産業をうまく組み合わせて
お客さんにとっての
価値ある時間を提供するサービスを
創出する可能性は充分にある。



2003.8.12

製造業なら
例えばその街の名産物を
観光客が自分で体験して作るなんていうのは
充分に可能だろう。

眼鏡だって
自分のデザインした眼鏡を
その地元の産業界を訪れて
一からすべて作ることができる、そんな贅沢な
「時間消費サービス」もありえる。

衣服だって同じようなことも考えられないこともないだろう。

こういった形態は
観光でもなければ製造業でもない、、
あらたな産業の形態と言えるかもしれない。

同じような発想は農業もあっていいだろう、
漁業にもあっていい。



2003.8.13

そういえば先日、テレビでやっていたが
宮城県では
「みやぎ寿司街道」という
イベントを始めたようだ。

都市圏から
新幹線でお客に来てもらい
三陸海岸沿いの漁業で有名な街によってもらって
美味い海産物を食べていってもらう。

当然宿泊していくだろうし
すし屋のはしごをすることになるだろうが、

もっと考えれば
昼間の時間はどうするのだろうか。

ずっと寿司を食べているわけにはいかないだろうから
昼間はそれなりに「「時間消費サービス」を
考えなければならない。

魚を取る「ミニ漁業体験」もあっていいだろうし
魚を料理する体験もあっていいだろう。



さて、というわけで、、続きはお盆明けに、、



2003.8.18

漁業でそうなら
農業だってもっといろいろ考えることはできる。

漁業と異なり
農場は生産物がその場で待っていてくれるから
はやりの「貸し農場」も可能だし
農業体験も充分需要があると思う。

どうしても「製造業」とか「ものづくり」とかいうと
「もの」が工場から出て来ないといかんような
思いがあるのは理解できないこともないが、

「価値」の作られかたや
もっと言えば「価値」の意味だって
「もの」ではないこともこれからはおおいに
ありうることなのだと思う。
であれば、それを生み出す工程そのものの意味だって
これからは変わっていかざるを得ないだろう。

あえて「ものづくり」の言葉にこだわったとしても
その意味するところはもっと柔軟であって良いと思う。



2003.8.19

雑誌の日経サイエンス9月号は
なかなかおもしろい記事が満載だ。

「疾走する中国の頭脳」という記事は
清華大学の招聘教授を務める紺野さんというかたが
書かれている。

で、内容は
まあ、いつも通りの(失礼)
中国でも先端産業に従事する研究者が
その待遇が恵まれていることなどもあり
増えていたり、環境も恵まれていることなどが
報告されているのだが、

実は後半のほうでは
逆に
そんな中国が抱える課題を紺野氏があげていて
これがなかなか興味深いのだ。



2003.8.20

紺野氏が十年あまり中国に通ってきたなかで
見えてきたことに、
科学技術を中心に中国の将来の重要な課題として
「真の意味のメイドインチャイナがないこと」
があるのだという。

   「中国の高度経済成長は
   世界的に見ても特筆すべきことなのだが
   しかし科学技術の内実を冷静に分析すると
   中国人の頭脳が生み出した本当に独創的な成果は
   1、2の例外を除きいまだほとんどみあたらない」

   「大半の知識、知見、知財の出所は
   欧米や日本である。
   科学や技術が文化のレベルまで達するには時間が
   必要だが、中国が世界で本当の指導力を
   発揮していくには”メイドインチャイニーズブレイン”が
   強く求められる。」




2003.8.21

少し引用が長くなるが更に続ける。

   「こうした科学技術の根幹にかかわる議論は、
   国家発展計画委員会でもかなり真剣に
   進められているようだ。
   ただ、6000年の歴史を通じて、
   模倣し遜色なく作り上げること自体が
   立派な技術・芸術であるという文化を有してきた
   中国社会でチャイニーズブレイン製を
   問うことは、ある意味で自己否定にもつながる。
   今後非常な苦闘が予想される。」

           「疾走する中国の頭脳」清華大学 紺野大介
                     日経サイエンス9月号
                       
日本の製造業にもけして楽観もしていないし、
中国の今後に高いポテンシャルを感じているのではあるが
一方で中国の産業が持つ弱点も
ずばり指摘していると思う。

清華大学の招聘教授を務める紺野氏だからこそかける
なかなかおもしろい分析だと筆者は思った。




2003.8.22

これは良く指摘されていることだが
この日本の産業も
はじめから
「メイドインジャパン」があったわけではない。

多くの産業は海外、特にアメリカやドイツの
模倣から始まったものが多い。

戦前の製糸業だって
けして日本オリジナルの産業というわけではないし、

明治以降の産業の多く、
例えば造船や住宅や素材産業だって
海外からもたらされたものだと言っていい。




2003.8.23

まして
戦後の
自動車や家電や半導体などの産業の
技術的な基盤の多くは
海外からもたらされたり
海外に学んだものが多い。

基本的には海外から学んだりもたらされた
技術や知識を
製品や商品、経済的な財に変えること、
それも安価で、品質の安定したものを、
サービスまでしっかりつなげて
世界中に供給したことが
「メイドインジャパン」の名声に
なっていた。




2003.8.24

だからメイドインジャパンだって
それなりの時間と努力があって
ようやくと確立してきたものなのだから

中国にだって
まだ始まったばかりの経済成長のなかで
すぐに「メイドインチャイナ」をのぞむほうが
焦りすぎで(日本からすれば楽観のし過ぎで)
いずれ必ず「メイドインチャイナ」も
そして
「メイドインチャイニーズブレイン」も
自前で用意する時代が
くることは間違いない。




2003.8.25

まして
日本の戦後も
「模倣」から始まり
そこを基盤に
独自の産業を育てていったことを考えれば
現在の中国が
「模倣」をひたすら真面目に行っていることは
なんら不思議でもないし
たぶん、方法論としても間違いではないと思う。

、、当然日本としてはそんなやり方に
「クレーム」をつけるのは当然でもあるのだが。

で、その模倣から独自の技術や製品を
生み出すのもそんなに遠くないような気もするのだ。



2003.8.26

ただし、
産業や其の国の持つ文化は
その国の持つ歴史やその蓄積の上に
構築されるものでもあるのだろうから
まだ「資本主義」が始まった?ばかりの
中国で
果たして「資本主義の先端のような消費の形態」が
起きるのか、
あるいはそこから
先端的な資本主義が生み出すようなものやサービスが
生まれてくるか、というと
ことはそう簡単でもあるまい、と思う。

中国の経済発展をレポートしたテレビ番組などを
みることがある。
このなかでは
上海あたりの高層マンションに暮らす
新しい階層の人々、
事業を起し儲けた若者や若夫婦などが
よく取上げられたりする。



2003.8.27

だいたいそうした新しい階層と言われる人々は
中国では相当に高額だろうと思われる
高層マンションの広い部屋に
家電製品や日用品や雑貨などが
多数すえつけられていたりして

多分日本でも
相当な高額所得者でもない限り
そろっていないようなものばかりのなかでくらしていて
それが中国の成功者であるように捉えられている。

たしかにうらやましい限りの生活ぶりで
そうそう日本でもそんな生活や備品を備えている家庭なぞ
そうはないだろうと思うのだが
でも、果たしてそれが
先進的な生活ぶり、といえるかどうかはわからない。




2003.8.28

「先進的な生活ぶり」とは
もちろん「エコライフ」の度合いや
例えばボランティアやNPOへの参加など
「社会参加」の度合いを引き合いに出しても
いいのだが
そういう意味だけではなく

消費そのものの意味合いの高度化や
先端的な資本主義のみが生み出すような
ものやサービスが生まれるかどうか、という視点から言えば
それは中国においてはまだこれからなのだろうと思える。

だから
「メイドインチャイニーズブレイン」にしても
「メイドインチャイナ」にしても
それを生み出すのに苦労はあっても
いずれは創りあげていくのだろうが
むしろそれよりも時間がかかるのは
中国の社会そのものの資本主義としての成熟度なのだろう。




2003.8.29

ところでそんなことを考えていたら
中国をめぐる別の問題が
新聞などで取上げられるようになった。

新幹線の中国への売り込みやそれに伴う
技術移転の問題である。

日本の大臣が
中国に売り込みを図ったことが
新聞やテレビで
報道もされていたから
結構話題になった。



2003.8.30

ことは日本の技術や製品を
海外、特に成長著しい中国に
売っていくかいかないかという問題であるように見え
簡単そうに思えるのだが
果たしてそうか。

これは新幹線に限った話しではなく、
中国へ日本が蓄積してきた
製造業やサービスの高度な技術移転が進む
象徴的なことといえば言えるだろう。

その新幹線だが、
それぞれに高速鉄道を開発し
営業運営している
ドイツとフランスと日本の三者で中国への売り込みが
争われている。



2003.8.31

まだ今のところ
日本の新幹線が採用されるかどうかは
わかってはいない。
この前のテレビのニュースによれば
三者にそれぞれ分担してもらうという話しも
出ているようだが
安全面などから
それはあまり受け入れられるようなことではない、
という日本側の考えらしい。

今後どうなっていくか注目している必要はある。



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