今日のコラム・バックナンバー(2001年 8 月分)


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掲載は日付順になっています。


2001.8.1

すでに中国ではチタンのロウ付け技術を
日本からしっかりとコピーし、習得し
世界に通用する製品の生産が始っている、、。
工作機械などのマザーマシンでさえも
いつのまにやら日本国内とほぼ同等のものが
中国でコピーされ、作られ、
新たな生産行為に使われているのだ。

日本でそういった技術などにたいし
特許を取ってなかったことも、
簡単に技術移転してしまう原因としてあるというのだが、
それにしても
この状況を目の前にして驚かない人はいない。

たぶんチタンのロウ付け技術や工作機械に限らず、
日本や世界の製造技術や要素技術のコピー・模倣は
中国においてわれわれが思っている以上に
様々に進んでいることだろう。





2001.8.2

もちろん、「こりゃまずいなあ」と思う危機感は重要だし
「コピーすることはけしからん!」と思う気持ちは当然で、
わからないではないが
考えてみれば、数十年前の日本が欧米を相手に
やはり同じようなことをやってきたことを思い出せば、
「けしからん」と言っているわけにもいかない。

つい最近、中国、韓国、日本の三国で
特許の同時取得が可能になったというニュースも
なにかに書いてあったが、、
それも含め
今後は世界やアジア地域で知的所有権を
どう守っていくかということは
非常に重要な問題にもなっていくだろうが、

結局のところいくら「特許」があっても、
あるいは「けしからん」と言ったとしても
海外や中国への生産のシフトの流れは止まらない。

それにしても番組でレポートされていた
中国の「世界の工場」化の激烈さにはビックリさせられた。




2001.8.3

ともかく
そんな状況、にたいし
日本の鯖江のような眼鏡産地でも
世界の先頭を行く
オリジナルな、コアな技術を
開発しようとしているのだという、、、。

ただ、中国では
中国の工場の壁に
・ドイツの品質
・中国の価格
・日本のサービス
が重要だと標語に掲げられているのだそうだ。

すでに中国は世界の工場を目指し、
「全面的」に競争力を獲得しようと
動いていることがわかる。
けして「安い労働力」のみで
生きていこうとしているわけではない。



2001.8.4

たぶんは
オリジナルな、コアな、技術やデザインを
それらの製品や商品に
つなげていこうと
「次の技術やアイディアやデザイン」を
生み出そうとしているに違いない。

それは「クローズアップ現代」の二日目。
「中国での家電生産」の状況を
みればよりいっそうはっきりする。

中国の沿海にある地域では
家電、、
冷蔵庫、洗濯機、テレビ、エアコン、の
30%あまりが生産され
世界の各地に輸出されている。




2001.8.5

他にも電子レンジなど多くの家電製品が
生産されている。

もちろん
それらの製品の多くは日本や欧米の
家電メーカーが現地工場で生産しているものであったり
あるいは、それらのメーカーのOEMとして
中国のメーカーで生産され
輸出されていることが多いのだが

最近はマレーシアやシンガポール
などアジアの新興工業国の
新興メーカーが
すでに上昇してきたそれらの国の労働力をきらい
中国に生産を移管し、工場を作り生産を始めた場合と
また、OEMとして生産を中国の
メーカー工場に移管している場合が多い。



2001.8.6

いずれにしても
以前のように海外のメーカーが
工場を中国に作りそこで生産しているというだけでなく
中国資本の独自の工場が出来、
そこが海外のメーカーから生産を委託されているという現象が
最近は見られるようになってきている。

更に、
それらのメーカーでは
独自のブランドを持ち様々な家電を生産しはじめているし

そして更に、
海外、例えば
アメリカなどに中国資本の工場をたて
中国のブランドの製品の生産を
はじめているのだという。



2001.8.7

番組のなかでは
世界市場のなかでは
中国国内で流通しているようなデザインでは
競争できないといい
日本のデザイン会社から優れた技術を学ぼうと
デザイナーをその企業のコンサルタントとして
呼んできていることも紹介されていた。

日本の家電製品のデザインが
優れているかどうかという点では
いろいろ議論もあるだろうが

実は日本の家電メーカー、
例えばソニーや松下のデザインは
世界的な、広い市場に対して
普遍的に力を持つデザインとして
国際的にも評価が高い(高かった)。




2001.8.8

けして個性的ではないが
様々な国の様々な家庭に
違和感なく溶け込むデザインとして、
日本の家電製品のデザインの
評価はある意味で高い。

ちょっと話が横道にそれるが
デザインについては非常におもしろい
考察がある。

デザイナーなどが良く読む雑誌
「AXIS」の1998年1/2月号に
「企業ドメインの戦略論」(中公新書)で有名な
当時慶応大学の榊原清則教授が
インタビューに答えていた。



2001.8.9

当時出たばかりのトヨタのアリストのフロントマスクが
ベンツのフロントマスクに似ているとかで
(筆者にはそうは思えないが)
なぜ日本の車は会社に似てしまうのか
という批判があることにたいして

たしかに似ているのだろうが
トヨタという企業の企業ドメインからは
これで正解なのだ、たぶん、アリストは
結果的に売れているだろうし
それによってトヨタのドメインは
世界に向って表現され
市場を開拓しているのだから、、
、、というような話だった。



2001.8.10

まさしく
日本の家電もそういうことであって
没個性だと、批判があることはじゅうじゅう承知で
それによって
世界的な市場を獲得していったわけだ。
ただ、これはこれからも必要なやり方であるとは思わない。
あくまで中国が国際市場に打ってでるために
必要とする技術、デザインに対する考え方、ということだ。

中国ではそんなデザインのエッセンスを
取り入れようと日本のデザインの技法を学ぼうとしている。

すでにそこまで戦略的に考えていこうとしていることに
脅威を感じないわけにはいかない。

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おっと、いつのまにか10日です。
というわけで、今日のコラムはお盆あけまでお休みです。
では。



2001.8.20

長いお盆休みが終わりました。
いくらか猛暑も穏かになったように思いますが
西日本ではまだまだ続くようです。

いまだ経済の動きは鈍く、株価も低迷していますが
いったいこの先、日本の経済や産業はどうなっていくのか、、

さて、続きです。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−

無国籍で、どの国にも通用する
デザインを身につけた世界市場にむけた製品を
中国は展開しようとしていることに
われわれは
「問題の大きさはむしろこれから現れてくる」
のであることを感じとらなければならないのではないか。

今、国内生産から中国工場への生産のシフトが
問題になっているが、
いずれ遠くない日に世界の市場が
「made in japan」ではなく
「made in china」によって
席捲されることが
現実になる可能性が高いことを
われわれは危機感をもって
感じ取らなければならないのではないか。




2001.8.21

そう言えばこの休みの間に
どこかの国の経済担当の大臣が
この2年の間に
生産活動の中国へのシフトが思ったよりも
急激に進んだことは誤算だった。
ここまで急激だとは思わなかった、、
と言っていたが、

、、、言わせてもらえば、、、
なんでそんなことが予測出来なかったのか。

その動きははるか15年も以上前から
始っていたことであって
思ったよりも急激に進んだ、と言っているよりは
急激に進むことがいつでもありうることと予期しながら
そこからどうすすむべきかを常に考えるべきであったのだと思う。
まして経済学の先生出身の大臣なのだから。



2001.8.22

振り返って、、
じゃ、こういった眼鏡や家電に現れてきているような
生産行為がドンドン中国へシフトしていく状況のなかで
いったいわれわれ日本のものづくりは
どうしてこの難問に遅々向って行けばいいのだろうか。

前にも書いたが、中国の工場の壁には
・ドイツの品質
・中国の価格
・日本のサービス
が重要だと標語に掲げられているところまで
事態は進展しているのだ。

これは中国は安い人件費を提供するから
品質やサービスは欧米や日本と手を結んでいこう、、、
という意味ではない。
中国も欧米や日本のような高い品質と木目細かなサービスを
自前で身につけ、「世界に通用するため」に
競争力を高めようということなのだ。



2001.8.23

いわば「フルサービス」でものづくりを行うということだろう。

多くの日本の評論が
中国の安い人件費は脅威だ、と言っているが

いずれ近いうちに
日本がまだまだこれからしばらく
高度化していかなければならない
サービスや品質などについても
同じ方向をむいているわけで
近い将来においては
日本のものづくりと中国のものづくりが、
言わば全面的なぶつかり合いに
なっていくだろうことは容易に想像できる。

日本の木目細やかなものづくりに
中国が追いついてくるにはまだまだ時間がかかるだろうとか
一部分だろうとかいうのは非常に危険で安易な発想だろう。



2001.8.24

どうすればいいのか、
ここに明快な答えを出すことは難しいように思える。

しかし、
今の日本のものづくりがどこまで到達しているのか
世界のなかでどんな役割を担っているのか、
世界のものづくりは全体としてどういう方向に
向っていて何を必要としているのか、を
われわれ自身が認識することによってのみ
それははっきりと見えてくるはずだ。

・ドイツの品質
・中国の価格
・日本のサービス

のその向こうにまだ目指すべき領域があるのではないか
実はそれはきっとすでに見え始めているのだろう。
答えは現在のものづくりや生産と消費のなかに
産業社会の現状のなかこそある、のではないか。



2001.8.25

例えば、
少量多品種生産を可能としている
日本の工業集積の到達点は
世界のなかでも特異な状況まで
進化している。

問題ありと言われながらも、しかし、
平均的な教育制度によって
誰もが自分で考え行動できるレベルの
教育水準を少なくとも持っている。

ものづくりの一場面一場面において
自分で判断でき良いものを作ったり
良いサービスを構築できるレベルの仕事ができる。





2001.8.26

この事実は意外と評価されていない。

数年で働く人が交代していってしまう中国では
ものづくりを行うひとり一人の自律的に動けるレベルは
そうそう高まってはいかないだろうが
日本では
ある程度、それ、、工場の現場における
働く人達の生産活動に対する
自律的な進化や高度化の取り組みができるはずだと思える。

最近聞いたところでは
中国でも現場の管理者クラスになってくると
最近はそうそう就業する企業を変ったり
しなくなってきているそうだが
そうはいってもこの先しばらくは
現場の人達の就業は流動的ではあるだろうから
相対的に日本のものづくりやサービスの
ひとり一人の自律できるレベルが
重要な部分にはなっていくだろうと思う。





2001.8.27

それは例えば
ひとりショップ生産や一個流し方式や
屋台方式、と言われるような組み立て工程の
生産方式においてもいえる。

大量生産のおいては優位にあると言われた
「ベルトコンベア方式」に代わって
多品種少量生産や多様な製品製造が
重要となるこれからの時代においては
ひとりショップ生産や一個流し方式や
屋台方式などが優位になると言われているし
実際、それなりに結果を生み出している。





2001.8.28

今年初めのNHKテレビでも
この「ひとりショップ生産や一個流し方式や
屋台方式」を特集した番組があって
業界にある意味で衝撃を与えた。

実際はこの、
ひとりショップ生産や一個流し方式や屋台方式は
もうすでに十年も前から
試行されてきたことであって、
なにを今更、という意見も
識者のなかで、ないこともなかったし
「組み立て工程」はすべて、
「ひとりショップ生産や一個流し方式や屋台方式」が
優位であるといった
番組内の主張に対する疑問も
実はあの番組を見た識者のなかに
ないではなかったが、、

それでもベルトコンベアしか組み立て工程を
知らなかった人達には結構な衝撃だったようだ。




2001.8.29

ともかく、
「ひとりショップ生産」や「一個流し方式」や
「屋台方式」が、今後日本のものづくり
(とりあえずは組み立て工程の分野でだが、、)のなかでは
重要な方式になっていくのではないか、
もしかしたら
海外での組み立て産業に対して
重要な「日本の優位性」になっていくのではないか、
、、、という考え方はあって
これはその通りだと思う。

いずれ中国でもそういった生産様式が始まる時代は
くるんだろうが、とりあえず、しばらくは、
同じようなものを大量生産するために
仕事を細分化・単純化して
ベルトコンベアで流して
ものをつくっていくことになるだろう。





2001.8.30

前述のように
「組み立て工程」はすべて、
「ひとりショップ生産や一個流し方式や屋台方式」が
ベルトコンベアのような生産方法に比べて優位である、
、、という理解はたぶん一面的にすぎるはずで

たぶんそうではなく
やはり状況によっては
ベルトコンベアで流したほうが優位なこともある。
大量生産にはそれがむいている。

そして中国ではそういうやり方が
しばらくははばをきかせるだろうが
逆に日本では中国や過去の日本などの大量生産の在り方と
まったく異なるやり方が今後は重要になってくるだろうし
実際、世界に先駆けて
この日本の中からそういう「挑戦」が始っているわけでもある。




2001.8.31

日本の「多様なものを生産していくノウハウ」の
強み・アドバンテージは
もともと、多品種少量、多様な生産、でできる
「生産品」「製造物」に対する需要があること、、
つまりみんなが一個づくりや少量生産の
ものに対する需要を持っていること、

、と同時に
生産現場の人達が一個生産や少量生産に
フレキシブルに対応できる自律性と知識を
持っていなければならない、
つまりは多能工である必要がある、と言われている。

これはきっと、しばらくは日本のお家芸だ。



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