今日のコラム・バックナンバー(2000年 1 月分)


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掲載は日付順になっています。


2000.1.5

あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。


いよいよ「西暦2000年」を迎えた。
細かなトラブルはあったようだが
Y2K問題も致命的なトラブルというようなものもなく
世界中がなんとか無事に新年を迎えることができたようだ。

それをビジネスにしていた人や企業ももちろんあったのだろうが
それぞれの部署や企業や組織の懸命の努力で
結果的には「たいしたこともなくなんとか乗り切れた」、
ということなのだろう。

これから新たにトラブルが起きる可能性は皆無ではないし
緊張感は必要だというのももちろんわかるが、
しかし、年末を乗り切ってしまえば無責任にも
「いったいこの何年かの騒ぎはなんだったのだろう」
と思わず考えてしまう。

よくよく考えると
世界中が踊ったのであんまり「損」をした感じがしないのが
なにかしら今回の「味噌」でもある。




2000.1.6

「備えあれば憂いなし」、であることはもちろんわかるとしても
全世界が似たりよったりのこの大騒ぎに踊りまくって、
、、済んでしまえば、、、結局、「ああいうこと」だ。

おばあちゃんや家庭の主婦がY2K問題の意味もわからず
ガスコンロやミネラルウォーターを目一杯購入しただのと
テレビのインタビューに答えているのをみていれば
首相がテレビでY2K対策を広報宣伝したのも手伝って、
笑ってしまっていいのか、深刻な表情で聞かなくてはならないのか、
どう今回の問題を捉えていけばいいのか、、
正直言って、なにかとても複雑な心境に追いやられた。

みんなが一緒に踊ってしまったからいまとなっては
あまり「損」をした感じがしないから(苦労した人、ごめんなさい)
「しょうがねえなあー」という気持ちや
問題を過少評価する気持ちにもなるのだが

しかしやはり、、、間違いなく深刻なはずの「問題はあった」のだ。
これは忘れてはなるまい。




2000.1.7

世界中を覆ったということでは
太古の昔に恐竜たとを絶滅させた「巨大いん石の落下」による
気候の変動に類するものなのかもしれない。

地球にぶつかる可能性が少々あると言われて
いん石や彗星を避けるために地球規模でいろんな
試みを行ってみた、というSFまがいのシナリオが
状況としては結構近い。

違うとしたら、いん石や彗星と異なり、
自分たちで生み出したはずの「もの」や「ものづくり」が
自分たちの制御の手が行き届かないところまで
社会との関係を簡単に追いやってしまう可能性、あるいは危険性、
があるということだ。

今回の事件から我々が学ぶべき「メッセージ」があるとしたら
そのあたりかもしれないと思うのである。



2000.1.8

「ものづくり」はこれから「モジュール化」や「標準化」を
ますます強めていく。

もしかするとものづくりに携わる人々も
ますます分断され「モジュール化」や「標準化」していくのかもしれない。

そのなかに、、「人」や「ものづくり」のなかにたった一つでも
間違った進化の法則を含んだ「遺伝子」が埋め込まれてしまったとしたら
これは取り返しのつかないことにもなる可能性がある。

これを防ぐにはどうしたらいいのか、、

ものづくりの根本から見つめ直す必要があるのか、、、
あるいは手元の部分で解決できる問題なのか、、、
これはしばらく考えてみる必要があるように思う。




2000.1.9

新年の新聞を読んでいて
あまり通常は目には入らないが
今年に限ってだろうか
時々目にする「目新しい単語」があったように思う。

「共生」という単語だ。
生物学や生態学の世界ではよく出てくる言葉だろう。

それが今年は新聞の経済欄に何回か登場していた。

あまり詳しい説明は素人の筆者にはできないが
異なる種がお互いに生きていくために補いあって
いく関係を「共生」とでもいうのだろう。
蜜蜂と花の受粉の関係など、生物の世界では
様々なところでひろくおこなわれている現象ではある。
お互いがお互いに助け合う、恵みあう、関係とでも言えばいいか、、。
英語ではsymbiosisというらしい。
そういえば一時流行ったゲームで(今でも流行っているのかな)
シムシティーというのがあったけれど共生の町とでも
、、そういう意味だったのかな、、。




2000.1.10

というわけで「共生」ということばが今年の新聞にはなぜか
多く見られたように思うのだが、
それには本来とても深く考えるべきことがらがあると思った。


たしかに20世紀の世紀末の今
(一応正確には今のところは世紀末であって、
正しくは21世紀は来年から始るのであるから、、)
情報技術・インターネットや科学の発達によって
価値や富がたくさん、それこそ、天文学的な数字が
出るほどに生まれてきた。
そしてそれを基盤にした競争とその勝者から
アメリカなどのハイテク産業を中心に「ミリオネア」が
たくさん生まれてきているのはご存知の通りだ。
が、市場のし烈な競争は富の偏在やあるいは、
持つ者と持たざるもの、、それも強烈な格差を
生み出しているのも確かだろう。




2000.1.11

企業であれば、勝ち残ったものが人材やお金やものを
圧倒的に独占していく。

価値や創造をお互いに積み重ねていくのではなく
人よりも多く配分を取得することで
一方の勝者は一方の敗者を生んできた、、
残念ながらそういう部分もある。

20世紀は、そういう競争とそれによって生まれる
企業の収益力とキャピタルゲインの最大化を
企業が追ってきた世紀と言えないこともない。

社会的な使命や理念を掲げて
社会や人々から出資や収益などの替わりに
財とサービスを供給することを託されるのが
「企業」であったはずだし、
そういう企業の本来のあるべき目標は
現代でも少しも変わっていないと思うのだが、、、





2000.1.12

しかし、残念ながら、20世紀の後半に
世界中で起きてきた企業と社会と人々の
間で起きてきたことがらは
もちろんすべてではないにしても
掲げていたはずの社会的な使命や理念を忘れ、、
本来の企業が社会や人々から託されていたはずの
財とサービスの供給による社会との契約を忘れ、、
「企業の収益力とキャピタルゲインの最大化」を
「自己目的化」してきたように見える。
そしてひたすらそういう事業を進めてきた「つけ」が
いたるところで噴出してきたようことのようにも思える。
「良いこと」もあったのだが「つけ」もたくさんつくってしまった。




2000.1.13

科学技術や情報技術の発展によって社会や環境や人々に
得られたこと、すばらしいこと、はもちろんある。
一方で本来はあるはずの企業やその事業と
社会や個人や人々との暖かな関係や濃密で豊かなコミュニケーションが
失われてきたようにも思える。
本来であればあるはずの、社会を構成するお互いに対する互恵や感謝をも
置き忘れてきてしまったようにも思える。

、、例えば、「ものづくり」であれば
「使い手」と「作り手」との間に本来はあるはずの
「創って届けて使ってもらって喜んでもらった感激」や
「ほしかったものを創ってもらって使うことができてうれしかった感激」が
いつのまにか、失われてきたように思える。

安くて標準的ではあるし、所定の性能は持ってはいるが
没個性的で本当に欲しいものなのかどうかも
自分でもわからないような「もの」を
いつのまにか「消費者」という名のもとに消費させられていて、

作り手も「メーカー」とそこから仕事を与えられる
「下請け」という関係にいつの間になっていて
自分の創るものや技術がどう社会に位置付き、還元されていくか、
いまでは知ることもできない。




2000.1.14

当たり前の話しだが、人と人の間や人と社会との間には
関係や関連というものがあって
多様で様々な「ありよう」でその「関係」はなりたっているはずだ。
むかし昔は、支配し、支配される関係や、
いじめ、いじめられる、関係もあった。
持つものと持たざるものがあることも同じかもしれない。
そして、いまでもこれらの関係はまだ存在している。

本来、お互いをよりよく生かすために
お互いがお互いの欠けている部分を補ってやっていける
関係もあったはずなのだが
なぜか、最近はそういう話しを聞かなくなってしまった。




2000.1.15

むしろ生物であればお互いが互恵の関係で共生し、
進化・成長しあうことも可能なはずだが
支配し、支配される関係のなかでは、
一方から奪い、奪われる関係のなかでは
互いの進化や成長などありえない。

むしろ、一方から「奪ってしまう」ことで
自分自身も生きられなくなる可能性さえある。

ダイヤモンド社の
「アウトソーシングの実践と組織進化」という本がある。
そのなかで一橋大学の西口助教授の書かれている論文
「共生進化の組織間マネジメント」には
生態学から社会科学に応用することができる重要な概念として
これらの「共生」や、そして「共生進化」について
詳しく書かれている。
社会科学に応用することができるのだから
経済にももちろん応用できる。




2000.1.16

「共生進化(co−evolution)」という
概念はあまり聞いたことがないが
「生態学的に相互依存する2つ以上の種が並行して関連しながら
進化する過程を表す」、のだそうだ。
co−evolutionを直訳すれば「共進化」「共・進化」
となるらしいが、まだ日本語として馴染んでいない
ということで「共生進化」と言っておられる。
(本来は「共生進化」はsymbiotic−evolutionの
直訳になるのだそうだ。)

企業や組織間における「共生進化」とは、、つまりはこういうことらしい、。

「元請けと下請けは、主従関係ではなく、広義のパートナーシップに
よって結びつけられ、リスクや行動を互恵的に規律する共同ルールによって
「共生」する。
特定取引や顧客専用の資産によって生ずるリスクは、長期的継続取引き
によってあがなわれる。
・・・中略・・・
組織間関係はこのような共生と共創を通じて共生進化する。」

    「アウトソーシングの実践と組織進化」ダイヤモンド社
         「共生進化の組織間マネジメント」一橋大学西口敏宏助教授




2000.1.17

「パートナーシップ」とは「協力会社」とかの言葉といっしょに
よく言われるから、企業間ではそんなに珍しい話しでもないのだが、、。
親会社の繁栄のために身を捧げるような意味での「協力会社」の話しも
実際には珍しくないから、ここらで本来の意味を考えてみてもいいかもしれない。


その「共生進化の組織間マネジメント」のなかでは
某自動車メーカーの話しが載っていて興味深い。
詳しい話しはぜひその本を買って読んでいただきたいが

「共生進化型アウトソーシング・モデルが企業間関係を律するようになると
互いに手の内を隠し合って相手の出方を探りあうバーゲニング(駆け引き)型の
対峙から、互恵的コミットメントに基づく情報共有型、問題解決型、さらには
問題探求型の協業を志向するようになる。・・・」

つまりは
企業間の買いたたきのパワーゲームではなく
相互の互恵的なふるまいによって
お互いに良く生き、自分自身も良く生きることが可能になり、
組織間のなかから創造的な価値を生み出していくことが
可能になっていく、ということなのだ。




2000.1.18

ところで少し古くて恐縮だが、
日経産業新聞の1月7日に「組み変わる自動車産業−5−」
という記事があった。
正月から始った連載の記事で
最近の自動車産業に起きている変化をレポートした
なかなか興味深い記事なのだが
この5回目の
「部品調達の王道とは」
「サプライヤーを厳選・最適調達へ情報も共有」
という記事がとても勉強になった。

といってもこの回は実際は自動車産業のレポートではなく
あのパソコンで有名な「デル」の社長マイケル・デル氏の
話しで書かれている。

米ウォールストリート・ジャーナル誌は「ヘンリー・フォードの
後継者たちが彼の助言を求めている」というのだ。




2000.1.19


「自動車メーカーの首脳がデルから学ぼうとしているビジネスモデルを
語る上で欠かせないのが部品調達だ。
デルはネットを通じてサプライヤー(部品メーカー)と部品の品質や
コスト構造、需要予測などの情報を交換し受発注や配送管理にも活用する」
      日経産業新聞1月7日「組み変わる自動車産業−5−」

その調達の方針はデル会長の著書「ダイレクトフロムデル」(邦題「デルの革命」)
という本に書かれているという。

1、部品は専門企業から購入し、自らはソリューションやシステムの構築に集中する。

2、サプライヤーの数はできるだけ絞り込み、関係を単純化する。

3、従来の「入札・調達」というサイクルをやめ、サプライヤーとの
    関係は継続的なコミュニケーション、情報の共有に基づくものに改める。

 実はこれを読んでびっくりした。
前述の「アウトソーシングの実践と組織進化」ダイヤモンド社  の
「共生進化の組織間マネジメント」一橋大学西口敏宏助教授
に書かれていることと、ほぼまったくといっていいほどに
同様の話しなのだ。



2000.1.20

つまり、3、は西口先生のおっしゃっている

「元請けと下請けは、主従関係ではなく、広義のパートナーシップに
よって結びつけられ、リスクや行動を互恵的に規律する共同ルールによって
「共生」する。
特定取引や顧客専用の資産によって生ずるリスクは、長期的継続取引き
によってあがなわれる。
・・・中略・・・
組織間関係はこのような共生と共創を通じて共生進化する。」

のことであるし、

2、は
「共生進化の組織間マネジメント」に出てくる
「クラスター管理」の話しにそのまま当てはまる。




2000.1.21

以下に書く。

「・・・
  けれども、市場と技術の複雑性と不確実性が増した結果、外注関係が
次第に脱境界的になり、共生と共創がより重要になってくると、
腕をいっぱいに拡げた下に外注先を直接全部ぶら下げた腕長型管理方式は
組織的にミスマッチになってくる。
  代わって、タスク別にいくつかの最良サプライヤーを選択し、
彼らに、サブシステムの開発・製造を大幅に移管するとともに、
二次下請け以下を一つの房(クラスター)として
管轄してもらう管理方式のほうが、よりフィットしたものとして浮かび
上がってくる。」

「アウトソーシングの実践と組織進化」ダイヤモンド社 
「共生進化の組織間マネジメント」一橋大学西口敏宏助教授


そしてもともと

1、部品は専門企業から購入し、自らはソリューションやシステムの構築に集中する。

は、もともと、「アウトソーシングの実践と組織進化」というこの本の
文脈そのものだ。



2000.1.22

もっとも日本では以前から 1、や、2、は、
当然のごとくやってきていてそんなに珍しい話しでもない。

大きなメーカーが自前ですべて生産するのではなく
すそ野のひろい工業集積のピラミッドの上に大量生産の完成品を
作りあげていく仕組みは戦後の日本のものづくりでは
当然のごとくに行われてきた。


「共生進化の組織間マネジメント」のなかでも紹介されているが
日本のある自動車メーカーが
数百名あまりの購買部によって、数百社あまりのサプライヤーから
部品を購入し360万台の車をつくっているのに対し、
アメリカの自動車メーカーは
6000名のバイヤーが37000社と直接取引きして
600万台の車をつくっているんだそうだ。(1986年当時)
そして「しかも、あらゆるデータは前者の生産性と品質が断然後者のそれよりも
優れていたことを示していた」、んだそうで、
「どちらが効率的かは論を待たない」




2000.1.23

こうして見てくるとデルが行っている資材などの調達の方法に関して
アメリカの自動車メーカーが学んでいるというのは
実際の話しは、日本で行われている(行われてきた)こと
そのものではないか。


そしてたぶんこのデルの調達モデルのなかでの一番肝心の部分だと思われる
3、についても
実はデルがそういうことを言う前から
日本のいくつかの分野の先駆的なメーカーでは
とっくに行われてきたことだ。
すべての企業がそうであったわけではないが、
最近、注目を浴びているような創造的で安定した製品開発や
新しい市場や顧客を作りだそうとしてきた企業は
ほぼ、だいたい、、、そういう「サプライヤーとの関係は
継続的なコミュニケーション、情報の共有に基づくもの」
から生まれてきていると言ってもいいのではないか。





2000.1.24

ところで、一方、
日本にはこれとはまた別の資材や物資の調達のありかたが
喧伝されはじめているようにも見える。

最近のインターネットを使った資材調達の話しをすると必ず出てくる

「世界中に優良なサプライヤーを見つけ、そこと取引きすることが可能になる。」

という話しと

「世界中から安価で良い製品や部品を競わせ調達することができる。」

という話しは、盛んに言われる話しではある。


しかし、考えてみると、以前から日本でもある部分で行われ、
最近ではデルやアメリカの自動車メーカーで
取り入れていこうとしている今回の話し、、、たぶん最先端の、、

2、サプライヤーの数はできるだけ絞り込み、関係を単純化する。

3、従来の「入札・調達」というサイクルをやめ、サプライヤーとの
    関係は継続的なコミュニケーション、情報の共有に基づくものに改める。

の考え方とはまったく反対のものではないのか。




2000.1.25

これはいったいどういうことなのだろう。
もちろん、

2、サプライヤーの数はできるだけ絞り込み、関係を単純化する。

にしても、世界中から優良なサプライヤーを見つけてくることを
否定しているわけではないだろう。
次代が必要とする新しい技術や部品を常に世界中から見つけてくることは
もちろん重要で、必要なことだ。

そして、こうして作り上げられた自分の取引先のなかには
常に優れたサプライヤー群がいることが必要だが、
同時に、それは、継続的なコミュニケーション、情報の共有に基づき
成長し、進化していくものでなければならないのではないか。

もしも買いたたきのパワーゲームでのみ
資材や部品の調達が行われていくのならば、
早晩、サプライヤーはそことの関係において
技術開発の意欲やモチベーションを失っていく可能性が高い。

逆に、継続的なコミュニケーション、情報の共有に基づき
互恵的で創造的で正当な評価が得られ作られる関係であれば
そこには意欲やモチベーションも生まれていくだろう。





2000.1.26

問題はこういう議論が今、日本のなかで行われず、
ただインターネットを利用した買いたたきのパワーゲームを
指向しているようにも見えることだ。

もちろんアメリカでもそういうやり方が指向されていないわけではない。
世界中から安く標準化した部品をインターネットを利用して
競争的に入札させようという仕組みは
もともと以前より、アメリカから始った話しだ。

だが、その同じアメリカで
ちょっとその方向とは異なる考え方が
むしろ今のアメリカを牽引しているコンピューター産業や
自動車産業から試みられている、、
(そしてその原形がむしろ日本から始っていく)ことに
我々は深く注意を払わなくてはならないと思う。


情報技術によって世界中から安い部品を買いたたき
集めることによって安価な製品を市場に投入することによってのみ
企業・メーカーが生き残れると考えていたら
それはたぶん、大きな間違いだろう。




2000.1.27

、、安価で、優れて安定し優れて立派な部品や技術を
市場に投入するために、日夜奮闘している無数の小さな企業が
日本を支えているのが今の製造業の現状だと思う。

しかし、、こうして生み出された部品や技術が
組み合わされ、信じられないようなべらぼうな値段で
投げ売りされているような現状はちょっとおかしいのじゃないか
と思わずにいられない。

、、それでも売れればまだいい。
でも、売れないからと、ただの投げ売り同然では
あまりにつまらないではないか。
ものづくりに対する確信も、やる気も、誇りも
これでは「もて」というほうが無理だ。

消費者が安くて良いものを望んでいることは確かだろうが
作り手の気持ちや志が使い手に伝わらないものづくりの仕組みに
どこか割り切れない気持ちになる。
使い手だって作り手の情熱が伝わってくるようなものに
魅力を感じるはずだとも思うのだ。





2000.1.28

この前、「モノマガジン400号記念特大号」という雑誌を
買って読んでいて面白いなあ、と感じたことがある。

正直いって、最近よく本屋にあるような
こういう「モノマガジン」ふう雑誌、は
既製メーカーのお先棒をかついでいるような
ふしもあって、あまり興味もないのだが、
こんな話しがのっていてこれは考えてみれば深い話しなんだと思った。

バイク雑誌の編集長の小野さん(バイクの世界では有名な人)
という方の話しなんだが、
ヤマハの単気筒のバイク「SR」について
こんな話しを書いている。

ヤマハの単気筒のバイク「SR」というのは
発売されてからすでに20年以上がたっている有名なバイクで
基本的な設計を変えることなくずっと生産されている。
数年でモデルチェンジを繰り返す自動車やバイクの世界では
奇跡のようなバイクなのだ。




2000.1.29

これにはわけがあって、さすがにバイクの世界にだって
様々な趣味の人がいるわけで、いや、バイクだからこそ
実用一点ばりのバイクはあまりない一方
バイクに趣味がある人の、趣味の多様性によって
様々なバイクが存在している。

イギリスにその起源があるんだろう、単コロと呼ばれる
「単気筒バイク」も熱心なマニアがいて
そういう人はイギリス製の単気筒バイクを欲しがる。

国産で、一番雰囲気がそれに近いヤマハSRにも
熱心なマニアがいるというわけだ。

ほかのメーカーにも同じようなバイクがないわけじゃないだろうに
なぜかヤマハSRは高い人気と支持に永く支えられている。



2000.1.30

このヤマハSRにはさすがにその趣味性を反映して
ヤマハSRのオーナーによるオーナーズミーティングがあるんだそうだ。
たぶんオーナーズクラブなんかもあるんだろう。
同じ車やバイクを所有する人々の仲間で集まる「集まり」である。

で、このヤマハSRのオーナーズミーティングが
先日ヤマハであったんだそうだ。

当然ヤマハからも開発担当者が出席して
SRオーナーといろんな話しをすることになる。

SRオーナーにとっては自分の大切にしているバイクを
考え、つくってくれた人達だから
言わば「神様」のような立場だ。



2000.1.31

実はこういうことは特に趣味性の高い乗り物なんかには特にあって
車であれば日産のスカイラインが近い、、。

筆者の住む信州の岡谷市にはスカイラインミュージアムという
博物館があって、歴代のスカイラインが展示されている。
ときおりオーナーズクラブによるオーナーズミーティングも
盛大に開かれていて熱心なマニアが全国から集まってくる。

このスカイラインのミーティングにはスカイラインの生みの親である
あの櫻井真一郎氏がやはり参加されるのだが
当日に参加者にとっては自分の大切な車をつくってくれた
やはり「神様」のような人としてみているのだ。

また、こういう話しは車はバイクだけの話しでもなくて
趣味的な「もの」はこういうことがよくある。
ミーティングまであるかどうかは定かではないが
特定の開発技術者を個人的に「崇拝」まではしていなくても
その「メーカー」に対して「崇拝」の気持ちを持つオーナーに
よって構成されている仲間意識が醸成されたコミュニティーはよくある。

高級カメラやオーディオ機器、それも素人の世界でよくある話しではある。



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