第3編
   

 赤沢自然休養林は、日本三大美林の一つ。
樹齢300年以上の天然木曽ヒノキが林立していますが、原生林ではありません。
1600年代の半ばに、当時の尾張藩が厳しい森林保護政策をもって護り始めたのが、この森の始まりです。

第3編では、森林浴や森林セラピーについてご案内します。


● 森林浴って何だろう?

 美しい森を見たり歩いたりすると、爽やかだったり、清々しいと感じることはありませんか? この感覚には、自然の風景や香りなど、様々な要素がはたらいています。
 植物が発散する「フィトンチッド」と呼ばれる物質や新緑の色彩、澄んだ空気や水など、森林の環境は人々の健康に良い作用があるといわれてきました。実際に森林の中を歩いて、健康増進に活用しようというのが「森林浴」の由来です。

 森林浴の誕生は、1982年の日本。そして、初の森林浴大会が赤沢自然休養林で開催されました。

 森林浴という言葉が一般的になった頃、それまで漠然としていた健康増進効果が医学的に解明されていきます。これが森林セラピー事業です。
 2006年、全国10か所の森林で、世界初の被験者実験が行われました。この調査で森林のリラックス効果が明らかになると、続く翌年、NK細胞による免疫機能の強化・向上が確認されました。
 2015年にはアメリカでも森林浴という言葉が報道され始め、森と健康の関係に注目が集まっています。



(千葉大学 日本医科大学 森林総合研究所 森林セラピーソサエティ)

 森林セラピー事業で明らかになった、森林浴の効果

 森林セラピー事業や、森林浴の健康増進に関する調査では、様々な方法で生理的な調査が実施されています。全国の森林で解明が進む森林浴の健康増進調査のうち、赤沢自然休養林で明らかにされた研究結果をいくつかご紹介します。

 2006年の森林セラピー基地認定調査では、男性大学生を被験者として、都市と森林で同じ時間、同じ行動による比較実験が実施されました。内容は心理的なアンケートから身体の反応速度、血圧や唾液中ストレスマーカー測定などです。その結果、都市部と比較して心身ともリラックス状態であることが明らかになりました。特に森林の散策後は、都市と比べて大きくストレスマーカーが減少していました。

 翌2007年には、東京から選抜された「お疲れサラリーマン」12名が2泊3日で訪れ、赤沢に滞在しました。この調査では血中成分や尿検査も含まれ、がん細胞に作用する免疫機能の調査など、より臨床的な視点が加わりました。
 同じ被験者で都市から都市へ2泊3日の散策旅行をした時には、NK細胞に大きな変化は見られませんでした。ところが森林へ旅行に来ると、3日目の朝にはNK細胞に56%の機能向上がみられ、その効果が4週間後まで持続しつつ、ゆるやかに減少していくことも判明しました。この調査により、予防医療やがんのリハビリなどにも希望が広がりました。

 2013年から15年にかけては、千葉大学や日本医科大学の調査研究委員会が編成されて、赤沢で3年間の調査が実施されました。中高年の男女を対象に、生活習慣病や健康増進に向けた可能性を探っています。これらの結果は、2015年から海外の学会誌で発表されています。



 赤沢園内には、以上の結果を解説する案内も設置されています。内容を抜粋してご紹介します。



「医師と歩く森林セラピーの森」イベントでも効果を解説
 被験者を都市と森林に分けて実施した、心理的状況の調査です。
 森林では都市と比べ、混乱や不安、疲労といったネガティブな要素が低くなり、活気が都市より高まりました。
 被験者を都市と森林に分けて、1kmの散策をした前後の唾液中コルチゾールの濃度を測定したものです。
 コルチゾールは疲労に比例して増えることが分かっていますが、森林では散策により濃度が低下しました。
 12名のお疲れサラリーマンが被験者となった調査です。
 森林への滞在により、がん細胞を減少させるNK細胞の活性度が高まり、4週間後も持続していました。都市から都市への比較では、変化がありませんでした。

● 赤沢自然休養林の森林浴メニュー

 赤沢自然休養林には、年間約10万人の皆様が訪れています。初めてお越しになるお客様だけでなく、リピーターが多いのも特徴(日本旅行のアンケート調査では、夏休みのリピート率が40%に達しました)。
 楽しみ方もそれぞれ。初めて森林浴を試してみたい、という方に、赤沢の散策メニューをご案内します。

滞在時間の目安

 (1) 貸し切りバスツアー およそ90分〜120分
 (2) 森林散策       およそ100分〜180分
 (3) ガイド付き散策    およそ120〜150分   …ご希望によって90分前後も可能です。 
 (4) 森林セラピー    日帰り健康相談から、1泊2日 …1日目、木曽病院の健康診断  2日目、赤沢でガイド付き散策
 (5) 森林鉄道だけにご乗車  およそ60分



 (1) 貸し切りバスツアー

 各旅行会社のツアー商品です。木曽エリアや近隣の観光地に立ち寄ったり、赤沢の散策だけを目指してお越しになるなど、プランは様々。
 お弁当をお持ちになって滞在する場合は、およそ120分前後、お昼を挟まない場合は90分前後の滞在時間が多いです。
 滞在プランや料金は、各旅行商品によって様々ですので、ツアーサイトなどをご参照ください。



 (2) 森林散策


 個人団体問わず、赤沢の散策路を歩くためにお越しのプランです。
 赤沢の散策コースは、1周2〜3km前後。組み合わせることで最長10km前後のコースを設定することも可能です。
 「歩く会」などの団体様は、コースを3つほど組み合わせ、途中で昼食をとりながら滞在することが多いです。
 コース設定によって難易度も変わります。

 現地の費用は駐車料金+昼食代くらいで、とてもリーズナブルなツアーです。
 周りに縛られず、自分だけの時間を大切にしたい方にも。
 森林浴の効果を持続するために、ぜひ特産の木工製品・ひのき精油製品もお勧めします。



 (3) ガイド付き散策


 赤沢自然休養林では、地元の森林インストラクターやガイドが活動しています。
 赤沢のセラピー体験館を維持管理しているのが、NPO木曽ひのきの森。
 個人・団体のお客様から、ガイド依頼の業務も行っています。

 散策ガイド付き滞在プランは、平均120分。昼食を含めて150分前後のケースもあります。
 ご希望で90分ほどのご案内もできますが、慌ただしいツアーになるので、ゆとりのある滞在時間をお勧めします。

 ガイドのご予約は、お問い合わせ先の上松町観光協会へお寄せください。
 またガイド手配ため、1週間ほど前にご予約ください。


  ■NPO木曽ひのきの森 ガイド料金

    参加者10名様まで、1班5,000円
    参加者10名様以上で500円×参加者数となります)



 (4) 森林セラピー


 赤沢の散策メニューのうち、特に健康分野のサービスに特化したプランです。
 県立木曽病院の協力で、医師が健康診断を行い、ご利用の方々の健康状態に最適な滞在プランを提案します。
 長らく闘病され久しぶりに旅を楽しむ方、森林浴の健康増進効果に興味のある方、なにより健康志向の旅行を楽しむ方にお勧めです。
 唾液によるストレスチェックもできますので、昨今のメンタルヘルスにもご利用ください。


 
■まずは体験

  「森のお医者さん」健康相談 開園期間中、5月から10月までの水・木・金曜日、無料
  医師、保健師、看護師など医療知識のあるスタッフが健康相談に応じます。

 ■ちょっと専門的に
  「医師と歩く森林セラピーの森」 開園期間中、5月から10月までの第3日曜日
  県立病院機構・久米田名誉院長が、散策に同行。森林セラピーの肝をご紹介。
  各シーズンの日程が決まり次第、旅の発見サイトで販売します。

 ■いっそ本格健康診断も
  「森林セラピードック」 開園期間中の平日、要予約。
  長野県立木曽病院が、全国に先駆けて商品化した健康診断プラン。
  がん検診や脳ドックなど、様々なメニューの人間ドックと森林浴が組み合わされます。
  健康状態によって、翌日ご案内するガイドが森林滞在プランを医師からリレー。
  それぞれの健康度に適した森林浴を提供する、マンツーマンに近い専門プランです。
  詳細な検査項目は県立木曽病院のサイトから
  ご相談・ご予約は、お問い合わせ先の上松町観光協会へお寄せください。



※ 現在は保険適用外なので、保険証はご利用いただけません。

※ お客様がご利用になる人間ドックの推進制度、企業健康保険組合の割引制度については、事前にご相談ください。


 (5) 森林鉄道だけご乗車

 滞在時間をギリギリまで削って森林鉄道だけ乗りたい! というお問い合わせも寄せられます。
 混雑シーズンでなければ、次のようなプランになります。

 ● 赤沢に到着、トイレ休憩 15分
 ● 改札が開き、入場〜乗車 15分
 ● 森林鉄道運行 往復25分       …合計 およそ60分

 …とても慌ただしい上、赤沢の天然林や渓谷美も楽しめませんので、ちょっとお勧めできないかも?

 森林鉄道が混雑するときには整理券を発行いたします。
 赤沢は山奥なので、ぜひお時間に余裕をもってご利用ください。

● 赤沢森林浴大会

1982年から続いている森林浴イベント。 春と秋の2回、恒例の行事となっています。


  2016年 赤沢森林浴大会開催予定

  第51回 春の部  5月29日(日)
  第52回 秋の部 10月 9日(日)

   ※ 要予約制のイベントです。
 
 
 赤沢自然休養林に集合し、ガイドさんとともに森林浴を楽しみます。コースは学術研究コースとふれあいコースの2つ。脚力に合わせてお選びいただけます。

 予約開始の目安
   (春の部)  5月のゴールデンウィーク明け
   (秋の部)  9月13日(火) 9:00〜

 参加料 …秋の部は2,400円、来年は改訂の予定です。

 予約方法 …お電話にて承ります。

  上松町観光協会    0264−52−1133
  上松駅前観光案内所 0264−52−4820

 平成28年秋の部のチラシは、こちらからご覧ください。

  …9月29日現在、お申し込みは定員に達しました。
 
   


● 赤沢自然休養林 四季の見どころ


【春】

 雪が解け、新緑の季節を迎える頃。
 赤沢自然休養林も春の花々が咲き誇ります。

 例年の開園時期は、4月29日(祝)。気候によって寒暖の差がありますが、この時期の森林には、バイカオウレンとショウジョウバカマが咲いています。

 そしてゴールデンウィークも半ばを過ぎる頃、渓谷の下流からアカヤシオ(右画像)の淡い桃色が並びます。

 5月の連休が過ぎる頃から、森はミツバツツジのシーズン。ツツジの仲間はそこから相次いで開花を迎え、ドウダンやツリガネツツジなどが続きます。

 木々の新芽が開くと、山々は濃淡様々な緑色に色分けられます。ひのきの森林が日光を好み、広葉樹と共存している姿がよくわかります。
 真夏になると緑色は見分けにくくなりますが、この季節の山肌はパッチワークのような賑わいを見せてくれます。


【夏】

 赤沢の夏は、6月に入ってから。
 ひのきの若葉が、森林を爽やかな芳香で満たし、森林浴に最適な季節が訪れます。

 梅雨時は外出を控えたくなりますが、森林浴に最適な森は、実は雨上がりの午前中。地元でも、なかなか狙って訪れることはできません。
 木々がたっぷりと水分を蓄え、豊富なフィトンチッドを発散、また香り成分は揮発性なので、早朝の方が豊かな森の香りを楽しめます。気温が上がるに従って、香り成分は上空へ。向山コースなどの中腹を歩くコースでは、午後も香りが楽しめます。

 この季節、赤沢で代表的な花は、何といってもオオヤマレンゲ。天女花とも呼ばれ、清楚で純白、とても美しい姿が楽しめます。
 開花の季節は6月20日前後から。間違いのない見頃は6月の月末頃になるでしょう。

 オオヤマレンゲの花は変化が大きく、3日も経つと黄ばんで美しさを失います。一本の木にいくつも花が咲くので、美しく咲いた花を狙って出会うのが秘訣です。

 夏の赤沢には、オオヤマレンゲやヤマアジサイ、ヤマボウシ、ノリウツギなど白い花々が目立ちます。


【秋】

 赤沢自然休養林が、森全体でもっとも鮮やかに色付く季節。

 赤沢は基本的に針葉樹林なのですが、ひのきは日光を好みます。その性質から広葉樹との相性がとてもよく、背の高いひのきの下に、様々な広葉樹が群生しています。

 アカヤシオやドウダン葉は紅色に、シロモジやミズナラの葉は黄色に染まり、赤沢の秋を楽しませてくれます。

 紅葉シーズンは、10月10日頃から。夏の暑さや雨の量などにも影響されますので、ニュースや新聞記事をご参照ください。

 上松町ぶらりブログでも、季節の花々や森の情報を随時更新しています。


 11月に入ると紅葉シーズンも終焉を迎え、11月7日を目安に赤沢も開園シーズンを終わります。
 やがて森林は寒気に包まれ、厳しい冬に向かいます。


 【冬】

 冬の赤沢自然休養林は、静寂の世界。積雪は多い時には1m50cmに迫り、最低気温は氷点下15℃に達します。

 この季節は、すべての施設が閉じています。

 現地までのアクセス道路は、国有林の造林作業がない限り除雪されず、近づくこともままなりません。
 また厳しい最低気温は水道管を凍結させてしまうため、水洗トイレをはじめとする施設にダメージをもたらします。凍結は埋設深度1m近くに達することがあります。

 冬季の赤沢周辺は、オフシーズンのため造林作業が本格化し、また猟期に入っています。入園を妨げるゲートなどはありませんが、遭難すると命にかかわりますので、安易に入園しないようお願い申し上げます。

「こちらを選ぶと、第1編に戻るのだ」   「そして第2編は、森林鉄道と夏休みイベントだぞ」