博愛新聞 平成19年 6月号 (第97号)

マイボーム腺梗塞について


 マイボーム腺は、涙の油成分を産生する分泌腺で、上下のマブタの中にあり、開口部はマブタの縁にあります。分泌物は、通常、液体ですが、何らかの原因で固体化(写真Aの矢印)し、開口部を塞いだ状態がマイボーム腺梗塞です。
 臨床的には、
小さなモノモライ(メカゴ)が目の縁にできた状態(写真BやCで目の縁の突出した発赤)で、痛み・カユミ・メヤニ等の症状はあまりありません。1カ月ほどで自然に治ることもありますが、一般には治りづらく、外見も気になりだして、発症後1~3カ月してから受診される方が多いです。
 治療は、時に点眼や内服などが有効ですが、基本的には針で開口部を塞いでいる固体化した分泌物を取り除く手術(マイボーム腺梗塞摘出術)が必要です。手術と言っても10分以内で終了し、瞬間的な少し強い痛みがあるだけです。これで閉塞が解除されれば、通常約2週間できれいに治ります。


トップページへ

 


私の医療体験   視能訓練士     原田 宏美 

 専門学校を卒業し、勤めた病院の眼科には視能訓練士は私一人でした。検査一つとっても、教科書や学生時代の実習ノートを引っ張り出しては調べる毎日でした。
 文字通り私が四苦八苦していた頃、ある中学生の男子が部活でボールが見辛い、と受診しました。視力を測ると確かに裸眼視力は良くなかったものの、屈折異常(近視や乱視等)は認めませんでした。その後何度か受診し様々な検査をして、最終的には心因性の視力低下である事がわかりました。原因不明でしたが、母親の意向で本人にはその事は伏せておく事になりました。しかし、理由がわからない彼にとって、見辛いのに何故眼鏡を作らせてくれないのか、それが一番納得できなかったのです。とは言え屈折異常が無いに等しく、色々と試して最後にはありのままほぼ素通しの眼鏡をかけ、眼鏡をかけても見え方は変わらない事を理解して貰おうと考えたのです。しかし結果は、私の考えとは全く逆で、彼は良く見える!と言って後日眼鏡を作り、ボールもよく見える様になったと喜んでくれたのです。
 医療に限らず、基本はとても大切で全ての前提になります。しかしその事にこだわり過ぎない事も必要なのだと気づかせてくれました。自分の考えを押しつけるのではなく、より患者さんの為になる医療ができていけたら・・・と思います。

院長の一言 本人が眼鏡をかけたい時は、なるべく眼鏡を作る方向で対処する方が結果も良いようです。しかし、かけたくない時でも、屈折異常が強ければ眼鏡は必要です。