博愛新聞 平成17年 6月号 (第73号)
緑内障禁忌薬剤とは、緑内障の人に良くないと注意書きされている薬剤のことです。しかし、本当に使用不可なのは、未治療の閉塞隅角(ぐうかく)緑内障や狭隅角緑内障に対して散瞳(瞳が拡大する)効果のある薬剤を投与する時のみです。 散瞳効果は、交感神経刺激か副交感神経遮断作用で出現し、効力は目薬が最も強く、注射、飲薬、張り薬の順に弱くなります。隅角が非常に狭い目に散瞳薬を点眼すると、少なからず急性緑内障発作を誘発し、強い眼痛・視力低下・充血を引き起こし、眼科治療をしなければ数日以内で失明してしまいます。吐き気・嘔吐をほぼ必ず伴いますので、急性消化器疾患と間違われ、眼科受診が遅れがちです。眼科治療が間に合えば失明は回避されますが、一旦、急性緑内障発作を起した目が元通りの視力や視野に回復することは、まずありません。
緑内障でも眼科で治療中か定検中で経過良好なら、緑内障禁忌薬剤の2週間以内の投与なら何ら心配いりません。この場合に急性緑内障発作を起す頻度は極めて低いからです。しかし、緑内障の経過が悪く、特に急性発作予防のため虹彩にレーザー治療が必要な場合で、他科のお薬で緑内障禁忌薬剤が出れば、服用する前に眼科医に相談して下さい。
目が良く見えていても、いつのまにか緑内障になっている可能性は0%ではありません。従って、緑内障禁忌薬剤を服用中に、強い眼痛・視力低下・充血が出現したら、すぐに眼科受診して下さい。緑内障経過が良好で緑内障禁忌薬剤を長期継続使用中に、緑内障経過が不良化するようなら、一時的に禁忌薬剤を中止して眼圧の反応をみることもあります。
つれづれ思うこと
副主任 I.Y
私は看護師になり、6年になります。私がこの道を選んだ一つの理由は自分が小学生のころ入院したのがきっかけだと思います。その時の看護婦さんが印象的で自分もあんなやさしい看護婦さんになりたいと思いました。今でもあのやさしい笑顔が頭に浮かびます。そして私はこの博愛眼科に勤め始め4年目となります。この医院は毎日毎日たくさんの患者さんが来ます。検査をしながら、待合室の患者さん、山積みのカルテを見ていると、すごく気持ちがあせってきてしまいます。あまりにも忙しくて、患者さんの訴えを最后まで熱心に聞いて上げられない事もあり、家に帰ってから“きつい態度をとってしまった”と反省することも多々あります。この間、入院患者さんに『あなたはもう少し自分の名前をきれいに書いた方がいいよ』と指摘されました。『せっかく両親がつけてくれた名前なんだから』と言われ、その紙を見てみると、走り書きした汚い自分の字の名前でした。とても恥ずかしく思いました。気持ちのあせりは、態度、顔、字に出てしまいます。私の憧れて目標としてきた看護婦さんにはまだまだ程遠いですが、博愛眼科を信頼して来て下さる患者さんのため、“初心、忘るべからず”で、日々、精進あるのみです。
院長のひとこと
私が気持ちだけはゆったりしないと、皆が余計あせってしまいますね。医療に本当に必要なのはリスクの説明ではなく、やさしい笑顔なのかもしれません。