博愛新聞 平成17年 3月号 (第70号)
複視(ふくし)とは、物が2重にだぶって見えることです。片目ずつで見ると一つに見えますが、両目でみると二つに見えます。そのため、目がくらくらし、片目をつぶらないとテレビも見えず新聞も読めません。車の運転は非常に危険です。複視は、両目の位置のバランスが急に悪くなったためで、いわば急に斜視となった状態です。ゆっくり斜視となる場合は、どちらかの目の像を脳で無意識に消すことが可能になるため、通常は複視を自覚いたしません。
その原因は、脳病変(脳幹の小さな梗塞が多い)、眼窩病変(眼球とその周囲の顔面骨との間のスペースを眼窩という)、副鼻腔病変(炎症や癌など)、内科疾患(糖尿病、重症筋無力症、多発性硬化症など)等が考えられます。したがって、急に複視がでたら、一度は脳外科・耳鼻科・内科へ紹介することが多いですが、30%は原因不明です。
治療は、原疾患が明らかになれば、その治療です。原因不明なものでも、半年以内はかなり自然改善が期待できます。必要に応じて、眼科として点眼や内服の治療をすることもあります。半年以上、原疾患を治療しても良くならない場合や、原因不明なもので自然改善しない場合は、斜視として、手術(成人なら局所麻酔、約一時間、一泊入院)すれば、かなり良くなります。しかし、完全に良くするには複数回の手術が一般に必要です。手術できるまでは、とても不自由なら、片目の眼帯や眼鏡(片眼の視力をわざと落とす・プリズムいれる)で対応します。また、3〜6ヶ月たつと、どちらかの目の像を脳で無意識に消すことが可能になるため、実際には斜視が良くならなくても、複視は軽くなることもあります。
つれづれ思うこと
主任 H.N
”名は、体を表わす”といいます。私の法子という名は、真言宗を広めた弘法大師から、一番目の弘という字は、もったいないので、二番目の法という字を頂いて付けたと幼い頃、親に教わりました。私は、名前負けして恥しいので、いつも「弘法も筆の誤り」で誤りなんだと弁明してきました。しかし、三人の子供が生まれた時、名前を考えるにあたり、名前に込められた親の思いを恥じずに、むしろ誇りにして、その願いに応えようと思うようになりました。
ここ博愛眼科に勤めるようになって五年が経ちますが、まだ一度も院長先生に院名の由来を正式に聞いた事がありません。しかし、博愛の意味を引いてみると、「広い心ですべての人を平等に愛すること」とあります。「博愛眼科クリニック」という名に込められた先生の思いを大事に、すべての患者さんを平等に愛し、患者さんのためになる医療をモットーに医院の名を誇りに思っていきたいと思います。