博愛新聞 平成15年 1月号
多田 博行
平成9年8月の開院以来、一日たりとも患者さんのことを考えない日はありませんでした。どういう診療が一番患者さんのためになるのか、いつも考えてきました。治療しても、なかなか良くならない患者さんもいます。そういう患者さんは、診療時間が終わってから、いままでの私の体験とあらゆる情報を整理して、次回の所見がAだったらBを、CだったらDを・・・・・・とあらゆる変化を想定しておきます。ひとりの患者さんについて3時間以上に及ぶこともあります。そうしておかないと、限られた診療時間で多くの患者さんの診察を行ない、短時間で最善最良の診療方針を決定することは難しいのです。
3時間待ちの3分診療がマスコミで取り上げられ、問題になっています。米国では、予約診療のみで、一日の患者さんの人数を制限している医療機関が大多数です。ゆっくりと時間をかけて診療できるので大変結構なのですが、人気のある医師の診察を受けるには、半年待つことも希ではありません。また、世界一高い医療費のため、お金がないと十分な医療が受けられません。全米で4千4百万もの人が、無保険のため医療を受けることが困難なのです。
WHO(世界保健機関)は、日本の医療制度が世界一効率的で優れていると認めています。比較的安い医療費で世界一の長寿を達成できたのは、国民皆保険制度の賜物です。
日本でも、米国式の自由診療・規制緩和を是認する意見もあります。10年前に世界一の経済繁栄を誇った日本が、米国式の経済自由化を模索しているうちにガタガタとなってしまいました。医療も、結局、強者が得をし、弱者切り捨てになるのではないでしょうか。そもそも、私が博愛眼科を設立した目的は、すべての患者さんを友人として、お金や地位に関わらず平等に診察することなのです。私のこの考えを支えているのは、誰よりも患者さんのことを思い、最善の治療ができるという自負心(思い上がり?)です。他の医師が診るより、私が診た方が、その患者さんが幸福になるという自負心です。それ故、当院での治療を希望している患者さんを平等に診ていく責務が、私にはあると思うのです。
典型的な麦粒腫(ものもらい、めかご)を一瞬で診断できないようでは、良医ではありません。その診断に20分もかかるようでは、他の病気の診断も的確にできるか、不安がつきまといます。麦粒腫の診断は一瞬で行ない、その後の20分は心の交流に当てるというのも良い医療ですが、私の診察を希望する患者さんが大勢いる場合は、全員を診ることが不可能となってしまいます。この場合、医師の診療は短時間で終了し、その後のケアは時間をかけて他の医療スタッフが行なうのが、患者さん全体の利益につながると考えています。