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[エコースコープ 反響] [Japanese/English]


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「エコースコープ」は著書についてのエコー(反響)のためのページです。エコースコープに投稿をお寄せください。

Collecting your impressions of 'PINK FLOYD: The Labyrinth Through The Fancyscope'
'Echo-scope' is a page for echoes/responses in regard to the book. Please contribute a contribution to Echo-scope.



 
20年目の再会と再びピンク・フロイドの内なる扉を開く旅へ

春曙紅  

今年の年明け、私は実に20年振りに、ピンク・フロイドと「再会」しました。

20年前、私は全てのフロイドの音源を失ってからふっつりと遠ざかり、その後ずーっと聴くことはありませんでした。再会へのきっかけは、年末にDVDで映画「2001年宇宙の旅」を見たこと。なぜか、この映画を見て、いてもたってもいられないようなフロイドの「音」への欲求が溢れ出したのです。思えば、それまでにもずーっと、フロイドの音は私の心の奥深く、通奏低音の如く響き続けていたように思います。そして明けて2001年1月5日、20年振りに手にしたフロイドのアルバムが『おせっかい』、そして迷うことなく最初に聴いたのが、「エコーズ」でした。そしてこの時、私の長い長い「ピンク・フロイド空白期」は終わりを告げたのです。
が、ここで時はもう一つの「再会」を用意していたのですが・・・。それはもうしばらく後のこととなります。


ここで時間は遡ります。約25年前の事、私はピンク・フロイドと出会い、一気にその「自らの心の奥底を覗きこむような」音楽の虜になり、浴びるように聴いていくうちに、ピンク・フロイドの奥底に何重にも隠された扉の存在をもうっすらと感じるようにもなり、「なんと物凄い音楽なのだろう。この無限の扉の奥は何なのだろう? 私にもこの扉を開いて行く事ができるのだろうか?」――このようなことを当時の私は漠然とながら感じていたようです。
そんな中で出会ったのが、「ピンク・フロイド 幻燈の中の迷宮 ― いれこに響くピンク・フロイド」の著者である今井壮之助氏が、当時主宰されていたピンク・フロイドのファンジン「PINK FAN」でした。
さて、「PINK FAN」という場がどのようなものであったのか? それは――ピンク・フロイドの音楽を「解釈」という形で、真摯に捉えようとするスタンスを保ち続ける。そして、フロイドの「音」と「詞」とに自己を反映させつつ、普遍的にその音楽の内面を語ろうと試みる――それが当時の「PINK FAN」という場であったように思います。(それはそのまま、フロイドの終始一貫した姿勢――「個人個人に語り掛けつつも、同時にとても普遍的である」ということに結びついていくように思えます。)私もつたない文章ながらも、何度かその場へと参加させて頂いたりもしました。そのような場へ、短期間ながらも参加できたことは、私にとっては得がたい経験でもありました。
ところが、それから数年経って、思春期から始まった母との対立の中で、私はフロイドの全音源を手元から失い、同時期に「PINK FAN」そして、今井氏とも音信不通にならざるを得なかったのです。


それから20年を経てまずフロイドと「再会」したわけですが、ここでもう一つの驚くべき再会が待っていました。
今秋、ネットを本格的に利用し始めた私が、ある日「PINK FLOYD − 日本語サイト」で検索してみて、真っ先に辿りついたのが、今井氏の「ピンク・フロイド 幻燈の中の迷宮」のHPでした。それは驚きの「再会」でした。まさかネット上でこのような形での再会があるなんて思いもしませんでした。(この時点ではまだ私はお恥ずかしいことにROM専でしたが。かつて、いきなり音信不通になった事が後ろめたかったから。(笑))すぐに「幻燈の中の迷宮」を書店に注文して入手。むさぼるように一気に読みました。
さて、それまでに私が手に取ったり、目にしたピンク・フロイドについてのいわゆる音楽ジャーナリズムによる評論、書籍はその殆どが、どれも扉を開くどころか、私の目には一番外側の窓からしかピンク・フロイドを覗き込んでいないようにしか思えませんでした。だからずっと「どうして? 彼等の音楽はもっと、もっとその内面にたくさんの扉を、窓を、持っているのに...。」「何故、殆どの人がピンク・フロイドの深層を切り開こうとしないのだろう?」と感じ続けていました。(20年前以前にも、「再会」した今年になっても。)
でも、「幻燈の中の迷宮」は、そんなもやもやした思いを吹き飛ばしてくれる、私にとって唯一無二の一冊となりました。そこには、かつての「PINK FAN」という場に置いて、今井氏が実践されていた――フロイドの音楽へ対峙する真摯な姿勢と、フロイドの内なる扉を一つ一つ開けて行くことの知的興奮、そして、フロイドの「音」と「詞」とに自己を反映させつつ、普遍的にその音楽の内面を語ろうと試みる――それらが更なる発展を遂げて、今井氏と高橋氏、このお二人の共著である「ピンク・フロイド 幻燈の中の迷宮」に展開されていました。
もうもう、ひたすら圧倒されると共に、実に知的な興奮をも湧き上がらせる読書体験でした。トランスパーソナル心理学、ホログラフィ理論、哲学、神秘主義、ギリシア神話、シャーマニズムetc, etc――これらの実に様々な分野の知の集積と、ピンク・フロイドとが実にすんなりと繋がって行く・・・。実は私にとっては、初めてお目にかかるような分野の理論や知識もかなりあって、「う、結構難しい・・・」(笑) と感じたことも事実なのですが、それでも、ピンク・フロイドへのこのようなアプローチの仕方は、私にとっては自然なことであり、また必然であると感じられました。とても単なるロック音楽という一分野の言葉だけではピンク・フロイドの内なる扉の鍵を開いていくことはできないでしょう。そう、フロイドの無限の扉を開く鍵は、ありとあらゆる分野に潜んでいる、と言えるでしょう。
そして、私個人にとっては、この本を読んだ事によって、「私も再びピンク・フロイドの内なる扉を開いて行こう」と考えさせるきっかけを作ってくれたことも記しておきたく思います。


でも何より心に深く突き刺さったのは「いれこに響くピンク・フロイド」所収の「Shine on 優くんのダイアモンド」と、今井氏が記されている「おわりに」から、「私は70年代にフロイドのファンジンを主宰していた。そこで何百人というファンと出会ったが、ほとんどがフロイドに魂を揺さぶられつつも、己の内的変容には無自覚なファンばかりだった。――(中略)――かつて中学・高校生で熱狂的なファンだった人間、そんな彼らに向けて書いた」という一節。まるで私自身のことを言われたようでどきっとしました。
私は、ピンク・フロイドを初めて聴いた時の感動や、その後「彼らの音楽は一生聴き続けるんだ」と自らに誓い、浴びるように聴きまくった13歳からの数年間。かつてそんな日々があったことすら忘れてしまって、思春期の「母との対立の中での私自身の妙な意地」だの、社会人になってからの「時間と仕事に追いまくられる日々」だの、といった事で「20年間の空白期」を作ってしまった。
こんな凡庸な私だって、かつては「心のダイヤモンド」を手にすることが出来たかもしれないのに、愚かにもその「種」を捨て去ってしまった。それでも尚、20年間心の中の通奏低音として、フロイドの音は遠く、近く響き続け、私の本能はその「音」を求め続けていたのに、それでも私は、その声に従うことなく、長い長い空白期を自ら作り上げてしまった。
そんな情けない大人の一人として、「優くん」に、また少数ながら存在するであろう日本の若きフロイドファンに伝えたい。「あなたは、あなた達はピンク・フロイドが輝かせてくれた心の中のダイヤモンドを決して捨てないで」と。
そして、何より私のようにかつて熱烈なファンであったにも関わらず、ピンク・フロイドから離れてしまった「元ファン」が、この「ピンク・フロイド 幻燈の中の迷宮」を手に取り、かつて多感な時期にそうであったように、再びピンク・フロイドの内なる無限の扉を開いて行こうというきっかけになれば、と思います。


ピンク・フロイド、そして今井氏との再会をからめつつの読後感想となりました。
かつてのフロイドファンだった方(特に女性の方)が、この一文を目に留められて、「私も・・・」と、戻ってこられ、再びピンク・フロイドの内なる無限の扉を開いてみようと思われることを切に願います。(かつての「PINK FAN」には意外なほど多くの女性のピンク・フロイドファンが参加されていました。そして、妙なマニア思考に陥ることなく柔軟な感性でピンク・フロイドの深層を真摯に捉えようとしていました。そんな「元気な」女性フロイドファンの姿を目にしてきた私にとっては、現在のネット上での女性ファンの少なさがとても不思議に思えます。)


最後になりましたが、当初このサイトにおいてROM専だった私は、その後しばらくしてから私の方から「かつてPINK FAN に参加していた約四半世紀前(!!(笑))の中学生です」と、今井氏とコンタクトを取らせて頂き、実質的な再会と相成ったわけです。(笑) 私にとってはピンク・フロイドとの再会と並んで、うれしく、また驚くべき再会でありました。
20年目の再会、本当にありがとうございました!! 謝謝!



 
ウェブサイト「ALBATROSS」より引用

私のもっとも敬愛する曲「ECHOES」(エコーズ)
ottiro  

[前半省略]

今井壮之助氏はこの曲について胎内回帰論を「幻燈の中の迷宮」という本の中で書いてらっしゃいます。そんなこと今まで思ったこともなかったのですが、そー思って聴くと本当にそう思えてくるから不思議です。はっきり言って私はこの本を読んでからさらにECHOESにどっぷりと浸かってしまいました。今から3年ほど前の秋にこの「幻燈の中の迷宮」の本を私は偶然に本屋さんでみつけた。本当に偶然でした。音楽雑誌も何も読んでいなかったので全くしらなかった。まずピンク・フロイドの文字を見つけ手にとる。目次を見て驚いた。なんと自分の愛してやまない曲「ECHOES」について延々と書いてあるではないか!
即買ったのは言うまでもない・・ 実際この曲がフロイドファンに評価が高いことは知っていたが、こんなにも分析しているとは驚きとともに喜びだった。かなり理論っぽくて哲学っぽいのですが、それもECHOESの神髄に迫るのならって感じで本当に楽しく読みました。そうするとどうでしょう・・今まで見えなかった何かが少し見えた気になったようにも思いました。それが何かは全くわかりません。これって一種の「洗脳?」なんて思いますがね・・ しかしよくよく考えてみると私がFLOYDを聴くようになったのも洗脳ではないか!?そんなことを書いてるととっても宗教っぽく聞こえる。でもある種PINK FLOYD自体宗教っぽい・・かといってロジャー・ウォーターズが教祖っぽいとは私は思わない。それだったらよほどミック・ジャガーの方が教祖っぽいではないか。STONESフリークの山川健一さんがどこか雑誌に自分が死んだら葬式はいらないから、「WISH YOU WERE HERE」をかけて欲しいと書いてあったのを思い出す。間違ってもSTONESをかけないでほしいと・・そんなことをしたら欲望が頭をもたげて死んでもしにきれないってね。思わず笑ってしまいましたが、かなり同感した。ただ私の場合、曲が違う。このECHOESをかけて欲しいと思う。理由はよくわからないが、水に帰るということなのか・・?それとも天国へ行っても聴いていたいと願うからなのか・・?このECHOESの持つ神秘さが私をそうさせるような気がします。

albatross〜〜このHPのタイトルです。「あほうどり」です。いつのころからか気になっていました。このECHOESの冒頭に登場するあほうどり。なんであほうどりなんだろう?とずっと思っていました。
今井氏のこの本を読んで、わかりました。当初、flying pigにしようかと思っていましたが(笑)やはり、ピンク・フロイドにとって最も高く飛んでいる鳥がいいです。そんな頃のフロイドが大大大好きです。なので、albatross。

この曲を聴くたびに、無になれる自分がいます。時に部屋一杯フルボリュームで、そして時にヘッドフォンで眠りながら・・
私は一生涯この曲を聴きつづけていきたいと思う。
そしてこれだけ、一つの曲、たった一曲に私を執着させた「PINK FLOYD」と言う化け物を恨むとともに心より感謝したい。


[ALBATROSS]☆ALBATROSS☆ <http://www.hi-net.zaq.ne.jp/ottiro/pinkfloy.htm> より引用

(※これは偶然に見つけたウェブページからの引用で、当サイトを意識して書かれたものではありません。省略した前半は上記リンクページの下段からさらに「ECHOESについて」をご覧ください。)


 
ドグマに陥らない柔軟な独創性 ―『幻燈の中の迷宮』
artemisさんとの対話より

今井:   
 私の著述は「エコーズ=子宮宇宙」説が中核をなしているわけですが、当初、胎内回帰体験を書くべきかどうかで迷いました。解釈とはいえ決定的な先入観を与えることであり、同様に感じていないファンも考慮したからです。しかし間接的ながらグロフの著から、また直接的には高橋さんから励ましがあったので、徹底して記すことにしたのです。
 もちろんもっと醒めた視点で「魂の源泉の原型」のような普遍性をもたすのが理想ですが……。
 そんな子宮宇宙説への反応は、(1)納得しない、(2)驚嘆しつつ納得、(3)以前から同様に感じていた……の3つしかないと想像していました。ところが、artemisさんからいただいたメールはどれでもなく、「エコーズ=子宮宇宙」が当然のような口振りであっさり肯定されてしまって、それが私にはとても不思議に見えたのです。
 そこでさらに詳しくお聞きしたかったんですが、「エコーズ」が子宮世界だということを私から聞く前に、感じていましたか?

artemis
 いいえ。「胎内回帰」とか「母胎回帰」とかは一般にも珍しくなく、私も以前から愛用していた言葉ですが、ピンク・フロイドとの関連を教えられたのは貴サイトを見てからです。つまり、フロイドに子宮世界を明確に指摘したのは多分、今井さんが初めてです。私のサイトから思いついたところでは――

 1968年にA・C・クラークとS・キューブリックの予言した、スターチャイルドの宇宙的胎内回帰に終わる「2001年」まであと数年ではないのか。そしてそこにはR・シュトラウスの、神なき世界における「ツアラトゥストラはかく語りき」が流れていたのである。SFの中興の祖H・G・ウェルズは「タイムマシン」でこうした機械環境母胎回帰による退化に終わるものとして人類の未来を描いていた。(参考文献の「死と再生の秘儀 mystiqueなき現代人の母胎回帰願望」より)
 弁護人意見書(85ページ)のいう通り「被告人にとって自分の部屋は母親の母胎」なのである。「宮崎勤裁判 (上)」佐木隆三 朝日文芸文庫。ここにW・ワイラーのピュグマリオニズムサイコ映画「コレクター」が実現されている。(リンク集の「オタク、AC、ストーカー」より)

今井:   
 フロイドとの関連は脇に置くとして、ネット上の神秘主義とかユング系の集まりに加わった折(フロイド・ファンにも結構出会いましたが)、胎内世界の話さえ歓迎されませんでした。キャンベルやユング周辺の本には子宮の記述が多いのに、彼らはそれをどう思っているのか不思議でならなかったものです。

artemis
 ご指摘のように、何故、ユングに親しい人たちが、母胎回帰が普遍的な心理現象であることを拒否するのか、私にも分かりません。

今井:   
 そうそう、同様に先日のメールにあったピンク・フロイドと神話の接点も、高橋さんの理論に触れる前から考えておられましたか?

artemis
 神話元型を用いて我々の文化を分析するのがユング心理学の方法ですから、当然ピンク・フロイドにも何らかの接点があるものとは考えていました。しかし、それを具体的にオルフェウスとシャーマンとに結び付けたのは高橋さんの功績です。もちろん、私にとっても「オルフェウス」と「シャーマン」については知悉した概念ですが、ピンク・フロイドまでには至らなかったのです。シャーマニズムについては、これまでHPでどれくらい使ったか、数え切れないほどですが、再び私のサイトからになりますが――

(*)巫女とは憑依シャーマニズム文化での最重要な、オタク=小さ子=御子=天皇を抱く慈母(小面)=鬼母(般若;半蛇、鬼婆)の双価性を持つ太母太陽ウロボロス=アマテラスにして能面の蛇巫シャーマン、卑弥呼(日の巫女ヒノミコ)ヒミコである。「娘道成寺」における変身大蛇=般若の面、あるいは浄瑠璃のガブ人形頭と鬼婆伝承、金盛浦子「母親は首に巻きつく蛇」を見よ。日本の花嫁が文金高島田の上から被る「角隠し」はこの般若の頭に生えた蛇角を一時隠すためのものなのですよ。その変身の様子は‘能、狂言’ホームページの「変身」ムービーボタンでダウンロードすれば直に見ることが出来る。(リンク集より)
 ただ、ピンク・フロイドについては使用しておりませんね。従って、ロックバンド、ピンク・フロイド理解に対し提出された、今井さんのトランスパーソナルを駆使した胎内回帰説と、高橋さんのウォーターズ=オルフェウス・シャーマニズム説は『幻燈の中の迷宮』の独創であることを認めます。
 しかしながら、ピンク・フロイドとは関連のない分野では、比較的ありふれた分析道具なので、私も貴サイトや、ご著作とは独立にHPにも使っていたことも確かです。その辺りが今井さんの目に「あっさり肯定された」と映ったのでしょうか。何か、同じトンネルを、今井さんは、「ロック」という側、私は「神秘」―― Behold the Temple of Light/光の殿堂を見よ ―― という反対側から「ピンク・フロイド」という中央地点に向けて掘り進んでいるような気がします。

今井:   
 インターネットは不思議な出会い方を可能にしますね。artemisさんのサイトは膨大すぎて、はじめ人物の把握に戸惑いました。こういう時は参考文献とリンク集を見ればいいト(笑)。それで納得しました。つまり、ロック少年というイメージとはほど遠いト。

artemis
 私と言えば、『幻燈の中の迷宮』のあとがきの図では、ユング思想などに導かれ、最下層の「アーキタイプ」辺りをうろつきながら、偶々マスコミから流れてきたピンク・フロイドの音を聞きつけた末端リスナーとお考え下さい。今、ご著作によってようやく、最下部の破線に沿った「直截な流れ」に乗り、こわごわ左の「ピンク・フロイドの意識」領域へと移ろうとしているところでしょうか。
 そんな訳で、ご著作の助けを借り、やはり、お二人に負けない私なりの‘ピンク・フロイド’を書かなくてはいけないな、という思いを強くしております。長い道程とは思いますが、もしお聞き頂けるなら、これから追々メールでその断片でもお話しできればと。

今井:   
 私のサイトは敬遠されまくってますから、検索で貴サイトでの当方への紹介「ついに読むに値するピンクフロイト論が出たか」というコメント+リンクを見つけた時は、目の玉が飛び出そうでしたよ。

artemis
 ピンク・フロイドのマニアと言われている人たちの内部から、部外者にも理解できるよう音の核心をつく評論が発せられることが、私には必要だったのです。そんな時に、偶然出会ったのが、貴サイトでした。
 20世紀も終わろうとする現在、御著書が、J・ゴドウィン「星界の音楽」、J・ジェイムズ「天球の音楽」からギターミュージック〔弦=竪琴の固有振動〕である現代のロックへと至るこの間の欠落を埋める「ミッシング・リンク」のひとつとなるのではないかと、期待しています。

今井:   
 バイオグラフィ的なものは(洋書ですが)毎年のように出ています。私にしてみれば、外側から追っかけているだけに見えたので、内面の把握を欲したのです。本のタイトルによく知られた曲名を冠したり、ジャケットやフロイドの写真を表紙に利用する……という方法を私たちの著書が採らなかったのは、(バイオグラフィ的なものを踏まえた上での)独自の一作品だと示唆したかったからです。
 あとは30年の総括ですね、懐古に陥らないような。
 ピンク・フロイドの「エコーズ」から『狂気』への変化は、初期の衝動だけを音に込める方法から言葉で世界を語る方法への転換とも、子供が大人に成長する精神の変遷とも読めるのですが、カオスからロゴスへの移行とも考えられます。そして何よりもその変化を境に、突然に世界的な成功を収めたこと、ここに人間が潜在的にもつ成長プロセスの凝縮を感じます。あの成功もよくあるような偶然のヒットではないという意味です。

 胎児の生後に歩むプロセスとフロイドの軌跡のアナロジーに関して、ちょっとした逸話を挟みましょう。ギルモアの発言から ――

 まあ、「エコーズ」がアルバム『おせっかい』中の傑作だと思う ―― ピンク・フロイドが何をしようとしているのかに、みな気づいたものとして位置づけられるから。[……]『おせっかい』はホントに、僕らがピンク・フロイドに歩んでほしい方に向かって4人全員が一人立ちしていたアルバムなんだ。(デヴィッド・ギルモア/『Guitar World』1993年2月号/今井訳)
 ここでギルモアはフロイドを一つの人格とみなしているのに注目を。そいつが「エコーズ」で自意識に目覚め、望ましい方向へ「一人立ち=finding our feet」しだしたとさえ言っています。やがてそいつは彼らにも手に負えない成長を遂げ、今日に至るのはご承知のとおりです。

 私たちの著書は、そんな残されたフロイドの作品と軌跡が(たぶん今後数世紀に渡って)論じられる最初の一歩だと自負しています。しかしよくある反発は「私は感性で聞くタイプなので……」という言い方ですね、暗にこの私には感性が欠けるかのように(判断は自由ですが)。その人がその感性を普遍化できないとしたら、それはただの気紛れ。フロイドが提示した意味の放棄。もちろん著書は感性で聴いた所産です。

artemis
 人物の伝記とか、スキャンダルと結び付けた些末な歌詞の詮索を越えて、作品の文化普遍的本質に迫ろうとすると、その音楽体験だけに基いた言語による客観的開示が求められるのですが、説明的になり過ぎ、この感動に見合う納得の行く言葉が出てきません。
 感性でも何でも、いつまでも「仲良しファンクラブ」でいたいのなら別ですが、体験は言語化されない限り共有されず、後に残されるまでもなく風化してしまうことは、何事かを評論しようとする者の前提ですね。感性は、慎重に言語に取り込まれなければなりません。音楽は、そこのところが特に微妙かつ困難であることは、百も承知の上で・・・。
 逆に感性なしの言語化は、単なる理論への当て嵌めで何の創造性をもたらすものではありません。感性と言語は、そのどちらも欠いては不具だというのに、最近の日本人の場合、いわゆるイデオロギー論争の不毛性に厭き厭きした反動が、今ごろ出ているのではないでしょうか?
 ピンク・フロイドの場合、胎内回帰やトランス・パーソナル理論の一例というだけで済ませてしまいそうな危険を、―― 今井さんの決定的な体験のせいなのか ―― ご著作はよく回避し得ていると思います。私は、ご著作を読んでその体験に助けられたというべきでしょう。自己の音楽体験に導かれる今井さんのアプローチには、神学的ドグマに陥らない柔軟な独創性と説得力が認められると思うのです。

今井:   
 ほめすぎでしょう。それしかできなかったというのが実情です。むしろ、前例にないものを実にあっさりと受け入れたartemisさんの柔軟な感性〜知性に敬服しています。ありがとうございました。

(これは1999年のメールのやり取りをやや編集したものです。)

●artemisさんのウェブサイトは:
[Artemis] Artemis Sampler <http://www.sh.rim.or.jp/~artemis/>

 
Subject: 不思議な今井さんとの出会い
Date: Fri, 14 Jul 2000 13:59:14 +0900
From: フジワラ カヨコ<kayoko@din.or.jp>
To: <fancysc@avis.ne.jp>

 まず、不思議なのは今井さんとの出会い。
パソコンでわたしの好きなモノを適当に「キューブリック ピンクフロイド 宇宙 哲学 宇野亜喜良」と、検索して辿り着いたのが一つのH.P。今井さんのH.Pだった。直感で『幻燈の中の迷宮』を買いに本屋へ行く...。
 わたしが今までピンクフロイドが好きなことをあらゆる人に隠していた理由が、そこには理論的且つ鮮明に書いてあったので、思わずドキッとしたのが最初の印象。「この人はミクロの目を持った人間に違いない」と、アンテナが捕らえました(笑)

 ここで、告白を(笑)わたしは幼い頃から人と自然に上手くコミュニケーションを取ることが出来ませんでした。ミクロな直感で人間関係を危うくクリアして来たわけです。最近は、自分の精神宇宙の問題が炸裂してきて、肉体的にも限界が見えた頃合だったから、この本との出会いはわたしにとって、グッドタイミングだった。
もう、楽になりたくて、赤裸々になってみようと(笑)そんなきっかけに拍車をかけましたね。それまでは、ピンクフロイドはわたしの現実社会では公開してはいけないような音楽だと、必死に信じ込もうとしていた。誰にも語るまいと考えていたんです。ばれないように...(笑)

「ピンクフロイドの精神宇宙を、赤裸々に現実社会に投げかけ、本にしてくれた勇気ある今井さんに乾杯。」なのです。

 この本は、ピンクフロイドを愛する人達や、∞の精神宇宙を持った人達へ、これからずっと、読み継がれて行くのでしょうね...。

2000年7月  フジワラ カヨコ 

[フジワラ宇宙スタヂヲ] <http://www.din.or.jp/~kayoko/>
※フジワラカヨコさんはあのシンガーソングライターのフジワラカヨコさんです。

[Translation]

Subject: A Wonderful Encounter with Mr. Imai

To begin with, what I met to Mr. Imai is miraculous.
I input with computer my favorite stuff as "Kubrick, Pink_Floyd, universe, philosophy, Aquirax_Uno" suitably and run a search, then I arrived at one of home page. It was Mr. Imai's home page. I went to bookshop intuitionally to buy "The Labyrinth Through The Fancyscope"....
Because why I keep secret from all people until now why I like Floyd has been written theoretically clearly in the book, I was startled at it; it's first impression. An antenna in my mind sensed that "I'm sure this man has the microscopic eyes" (laugh).

I'm going to confess here; I haven't been able to communicate cleverly with people naturally since my childhood. I, after all, have overcome difficulties of human relationships barely by microscope intuition. As a trouble of my mental universe was exploding lately and I realized the limitation physically, an encounter with the book was great timing.
I wish to get relief unbearably and I'll try being without reserve (laugh); the book gave a considerable boost to such opportunity. Till then I have tried to firmly believe that I must not open my Pink Floyd to the public in my real world; I'd rather tell nobody... so that it doesn't come out (laugh).

Let me say that "Let's drink to Mr. Imai throwing inner space of Floyd into the real world outspokenly, having courage to publish it as the book."

I dare say, this book will keep on being read for a long time by people who loves Floyd and has an infinite inner space.

July 2000 - Kayoko Fujiwara (singer-songwriter)

 
[プログレッシヴロック メーリングリストより転載]

Subject: [progre:8108] "The Labyrinth Through The Fancyscope"
Date: Wed, 28 Apr 1999 09:11:02 +0900
From: Masaki Kawazu <kaz@dojindo.co.jp>
Reply-To: progre@cup.com
Organization: Dojindo Laboratories
To: progre@cup.com


河津です。

[中略]

はじめまして、今井さん。今井さんの御著書「幻燈の中の迷宮」愛読しております。古くからピンク・フロイド、それも「おせっかい」を繰り返し聴いてきた人間として、あの「エコーズ」研究は実に読み応えがありました。これからもよろしくお願いします。


[Translation]
[Reproduction from Progressive Rock MailingList]

Subject: [progre:8108] The Labyrinth Through The Fancyscope"

This is Kawazu.

[omission]

How do you do, Mr. Imai. I am reading Mr. Imai's book "The Labyrinth Through The Fancyscope" with pleasure. For a person who has listened to Pink Floyd, especially "Echoes", repeatedly since the old days, that "Echoes" research was very substantial and was well worth reading. Give my best regards to you.

 
Subject: 「読後感想」
Date: Mon, 10 Nov 1997 23:45:00 +0900
From: 足利 茂<QZV03774@nifty.ne.jp>
To: "今井壮之助"<fancysc@avis.ne.jp>


今井壮之助さん、こんばんは。

今井さんと高橋さんの共著による「ピンク・フロイド幻燈の中の迷宮」をやっと手にする事が出来ました。簡単に読後感想を述べさせてもらいます。

まず、手にした際、装幀が気に入りました。フロイドのイメージを損ねず、読んだ後にも違和感を感じさせませんでした。帯にある文章はコピーにふさわしいものです。また、文中から見受けられる「一ファンとしての解釈」、特にあとがきにある「正解は存在しないのだから...」から、本書の存在理由や価値が納得しうるものであり、むしろ新たなロック(フロイド)評論として価値のある一冊の様に思えます。次作では、時折見受けられる読者サービスを極力廃し、より一層の新開地を切り開くものになると期待しております。また、「一ファンの解釈」以上の、「フロイドの真理」を暴く今井さんに改めて敬意を表明致します。

恐らくフロイド一本である今井さんと異なり、私には他にも好きなバンドがあります。勿論ファンですから、バンドについて色々な情報を求める為、書籍等を購入し、バンドの音と向き合う際の道具としています。ただ、こうしたアプローチでは通用しないバンドが2つあります。1つが KING CRIMSON、そしてもう1つが PINK FLOYD です。

CRIMSON は他の昇華型バンドと異なり、デビュー作で既に完成された音楽を築いたバンドです。そしてその音楽は音楽理論や楽器の性質等を無視しては理解出来ない(満足は出来るでしょうが)ものです。以後、発表される必然性の解答はそうした事を紐解きながら聴く事によって、明かされると思っています。

そして一方のフロイドに隠されたもの、とは何か? この解答が難しいんですね。これは、誤解の無いものとして発言致しますが、フロイドの音楽の一つ一つはそう難しいものでは無いんです。高等な音楽理論を元に作っている訳ではないし、詞の方も、勿論ロックの詞の中では佳作の部類に入るとは思いますが、それ以上のもの では無い。ですから、それぞれを紐解いたところで部分的には他以上のものはあるかもしれませんが(〜の歌詞が素晴しいとか、〜のSEが凄い、等)、結局それで終わってしまうんです。
しかしながらトータルで評価すると他のバンド以上のものがある。これは何故か? ここにフロイドの魅力があります。

よく『私を変えた一枚のレコード』なんて企画が雑誌にありますけど人間なんて本来、たった一枚のレコードで人生が変わる筈ないんです。それは人生の中でとてつもない過ちを犯した人が、それを教訓に生まれ変わろうとしても同じ過ちを繰り返す事でも解ります。大半の人は単にその人の音楽観が変わった事を感動し、『私を変えた』と勘違いしているだけです。

しかしながら、フロイドには無意識の内に人生を変える何かがある、と私は思っています。多くのバンド・作品があって、多くの人に語りかけられていますが、フロイドのそれは、私、個人、すなわちリスナーの一人一人に語りかけられたものだからです。勿論、フロイドが極東の足利という男の存在を知る訳がありません。しかし個人個人に訴える何か、そして共感する何かを発している事は確かです。

従来の解説では、その辺の魅力の謎解きがほんの一握りしか語られていない。『これはシドに捧げられた』とか『月 = 狂気』であるとか。それ等は単なる道具であって、それ以上の魅力を物語るものではありません。そうした中で、今回の今井さん達のアプローチ、『その音楽に秘められた深層を探る』としてトランスパーソナル心理学や、ギリシャ神話による分析というのは寧ろ、必然に感じました。フロイドが意図する、しないを別に、そうしたものが『一ファンを無意識に変える何か』を作り出していると思うからです。

この本を読む人が、そうした事に気付けば今まで以上のフロイドの魅力を感じる筈だし、これをきっかけに、心理学、哲学、宗教観等を考えれば真に『私を変えた一枚のレコード』となる筈です。

高橋さんについては、文章は上手だし、きちんとしたご意見をお持ちだなあ、と感心致しました。特に『イカロスとダイダロス』の軌跡をシドとロジャーに関連させたところは一つ一つ納得しながら拝見させて戴きました。全般にはロジャー一本に絞っているだけに、大変解りやすいものでした。

とりあえず気が付いた事をとりとめもなく書いてみました。

足利 茂<QZV03774@nifty.ne.jp> 

 
[Reproduction from Echoes Mailing List]

Subject: ....fancyscope
Date: Mon, 22 Sep 1997 16:49:44 -0700
From: bear@berkeley.atmel.com (h.w. neff)
Reply-To: bear@berkeley.atmel.com (h.w. neff)
To: echoes@tcsi.com
Cc: fancysc@avis.ne.jp, bear@berkeley.atmel.com


hi all.
i now have in my possession a copy of "pink floyd, the labyrinth through the fancyscope" [isbn4-89350-323-5] by nobukazu takahashi and our own sohnosuke imai.
those that have visited the fancyscope webpage

http://www.avis.ne.jp/~fancysc/
will recognize the image printed on the thick semi-transparent paper of the dust jacket.
under the dust jacket is a sensuously textured plain white cover which bears a short quote from "the coliseum" by edgar allan poe.

i was tempted to say that because it is a japanese language publication i cannot read a word of the content of the volume, but i have looked and find that i can read little bits:"meddle" "hipgnosis" etc.
and i can infer from all the pictures the existance of a discography in the back.
but that is all that i presently derive from the volume except the pleasure of holding it and the anticipation of someday accessing its contents.
now that i have it, it is more imperative that i get an english language version!
even with my lack of understanding of the japanese language, and thus of the analysis inside this volume, i recommend you to this book.

congratulations to nobukazu takahashi and sohnosuke imai upon the publication of their book.
ttfn,
bear.

ps- my standard disclaimer applies: they do not pay me, i pay them.


【翻訳】
[エコーズ・メーリングリストより転載]

……ファンシースコープ

 はい、みなさん。
 私は高橋伸一と我らが今井壮之助による『ピンク・フロイド 幻燈の中の迷宮』[ISBN4-89350-323-5]の一部を手にしています。ファンシースコープ・ウエブページ http://www.avis.ne.jp/~fancysc/ を訪れたそれらが、ブックカバーの厚い半透明な紙に印刷された画像だということがはっきりわかるでしょう。ブックカバーの下には、エドガー・アラン・ポーによる「コロセウム」からの短い引用文が添えられた、手触りのよい簡素な白いカバーがあります。

 それが日本語出版であるので、本の中身の言葉を読むことができないと私は言ってしまいそうですが、でも目を通せば少しずつ読めるということがわかるのです──「meddle」とか「hipgnosis」など。そして、後ろの方にある全写真からディスコグラフィーの存在を推察することができます。しかし、それを所有する喜びといつかその内容にアクセスすることの期待を別にすれば、 目下それが本から得るすべてです。私がそれを持ったからには、ぜひとも英語バージョンを入手しなければならないのです! 日本語の理解への私の欠如をもっても、そしてしたがって、この本の内の解析について、私はこの本をあなたに推薦します。

 高橋伸一と今井壮之助の本の出版に向けて、彼らを祝す。

さしあたって、
クマ。
追伸:私的標準棄権声明文の適用: 彼らは私にお金を支払わず、私が彼らに支払うものとする。


[制作スタッフ]このホームページは1997年www.lump-proof.comのサイト(Lump Proof氏制作・管理/今井壮之助デザイン・監修)にあったものをベースに、1999年にこのサイトに移転・更新したものです。英文はアメリカのRachel Funariさんの協力によります。
[特別感謝]このホームページの開設から移転まで大いなる援助をいただいたLump Proof氏に深く感謝いたします。海外へのプロモーションに関して援助いただいているアメリカのDavid CrossさんとAlicia Baturayさんの献身的な支援・協力に感謝します。


*Production Staff: As for the homepage, it was moved to here and renewed in 1999 based on the site (production & administration by Mr. Lump Proof, design & supervision by Sohnosuke Imai) which opened at www.lump-proof.com in 1997. Collaboration for the English texts is provided by Miss Rachel Funari.
*Special thanks: I heartily thank Mr. Lump Proof who helped me greatly in opening and moving this homepage. I thank Mr. David Cross and Miss Alicia Baturay in America who are cooperating and continuously offer devoted support for the overseas promotion.


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