炭酸ガスレーザーによる乳児の舌小帯切除の意義 山平義之(秋田県)

当院では,これまでレーザーによる舌小帯切除(局麻下で小帯に限局する切除)を30症例ほど行ってきた。その殆どは発音障害を主訴とする幼児や成人であった。
炭酸ガスレーザーによる予備照射、局麻,フォーカスでの切開,蒸散に加え,小帯付着周囲にもデフォーカス照射することによって術後疾病の軽減,治癒促進効果を期待できている。
HLLT(High reactive Level Laser Treatment)とLLT(Low reactive Level Laser Treatment)を同時に行えることが炭酸ガスレーザーの優位点と言えよう。
殆どの患者は苦痛を伴うことなく,発音障害の改善を見ることが出来た。
ただ、恐怖心の強い幼児の場合は体幹安定に困難を来たすこともあった。

舌小帯短縮症の患者の殆どが,睡眠障害やいびきの問題をも抱えていることは興味深い事実である。新幹線の居眠り運転やスペースシャトル事故等で社会問題となった睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)と舌癒着症一ADEL(Ankyloglossia with Deviation of the Epiglottis and Larynx)との関連もあるのではないかと考えている。


乳幼児突然死症候群(SIDS:Sudden Infant Death Syndrome)の基本的な病態が睡眠時無呼吸からの覚醒反応の遅延であることが明らかにされ,耳鼻
咽喉科医の向井はADELとSIDSの関連を発表している1-2)。

今回の私の発表は,「舌小帯異常が後天的なものではないと考えるなら,乳児での症状が見られた時点で積極的に切除することが母子にとって益となろう」というスタンスで行います。
理由は、
1.小児の舌小帯異常による吸畷障害を改善できるだけではなく,その後の発音障害,歯列不正,
肉体的精神的な成長阻害を事前に回避できる事。
2.生後四ヶ月までの乳児は,体幹安定が出来,無麻酔で短時間の処置が可能。
3.術後の吸畷運動が必然的な故に,この運動が後戻りを防止できる
4.母親の授乳時の疼痛,乳児の睡眠障害の改善による精神的苦痛からの解放。

症例報告
舌小帯短縮症による吸畷障害の生後一ヶ月程の乳児(男児と女児)。

症状:
吸畷障害による授乳時の乳首の痛み,睡眠障害,哺乳障害による低体重。
使用機種:炭酸ガスレーザー(OpelaserO3SII,OpelaserLite)
照射条件:2.OW連続,3.OWSP2連続,フォーカスの後デフォーカス耶射
舌小帯切除手術前後の症状の変化とその後の成長記録をグラフ化・乳児の舌小帯切除め効果的な切除法をムービーで説明する。双方の母親の協力によって母子手帳の情報提供及び術後の授乳等の貴重なビデオ撮影の許可が得られた。
炭酸ガスレーザーによる舌小帯切除の優位点。
1.切開,止血,殺菌効果(従来のハサミでは,出血,感染,腫脹が生じる)。
2.デフォーカス照射による鎮痛消炎,治癒促進効果。
3.術直後に授乳させることができる(脱水症状を回避できる。)
4.手技が簡単,短時間。

潜在的な患者の掘り起こしをどうするか?
1.メディアの活用と情報提供(新聞,HP,広告,健康相談)
2.保健婦,母乳マッサージ・整体師との連携及び教育。
3.院内の環境整備(院内の禁煙化,インフォームドコンセント,診療時間)
生後一ヶ月ほどの小さな乳児の舌小帯切除が,その後の母子のスキンシップ,体重増加,歯列,発音,対人関係にどのように大きく貢献するかを発表する。

文献
1)向井将,向井千伽子,浅岡一之.先天性舌癒着・喉頭蓋・喉頭偏位症一新生児・乳児の呼吸不全一耳鼻臨床1990;83:7.
2)S Mukai,C Mukai,K Asaoka et al.Prevention of SIDS-correction of ankyloglossia with eviation of The epiglottis and larynx.Third SIDS International Conference,Stavanger,Norway 1994(ポスター発表).