「政権交代選挙」の結果と今後について(2009.9.1,3,7,9,11.17)
第45回総選挙は文字通り「政権交代選挙」となって、民主党が圧勝した。
選挙直前には、多くのマスコミの予想通り、自民100、民主320程度になるのではないかと、筆者も 思っていた。しかし、そこまでの大差にはならなかった。とは言え、朝日新聞の社説にあるように、“衝撃的な結果”であることに違いはない。更なる大差にならなかったのは、マスコミの事前の民主党大勝予想による、いわゆるアナウンス効果があって、自民票への若干の回帰と投票率の伸びの鈍化 があったからであろう。
多くのマスコミは、今回の結果をもたらした原因は、時代の激しい変化に対応できなかった自民党の能力不足にあるとしている。その代表的なものとして、31日付け朝日新聞と信濃毎日新聞の社説の該当部分を次の“ ”内に示す。
“原因ははっきりしている。少子高齢化が象徴する日本社会の構造変化、グローバル化の中での地域経済の疲弊。そうした激しい変化に対応できなかった自民党への不信だ。そして、世界同時不況の中で、社会全体に漂う閉塞(へいそく)感と将来への不安である。”(朝日新聞)
“民主党が勝った一番の原因は自民党政治の行き詰まりだろう。自民党はいわば、反共と経済成長の党だった。東西冷戦の終結により「反共」の看板は色あせた。低成長の時代に入ったことで、「成長のパイ」を分配する手法も通用しにくくなった。”(信濃毎日新聞)
このような指摘は的を外している。最大の原因は、小泉構造改革は実は一部の日本人への利益供与とアメリカへの貢ぎがその狙いであり(他に郵政関係者への小泉氏の個人的怨念もあるが)、結果として国民に理不尽な苦しみを押しつけたことを、多くの国民が気付いたところにある。つまり4年前に似非改革に騙されたことを悟った国民の怒りによる逆襲が今回の結果を生んだのである。既にその兆候はほぼ2年前の参議院選挙で出ていた。この国民の逆襲が最大の原因であることを多くのマスコミ関係者も認識しているに違いない。だが、当時小泉改革こそが日本を救うと煽っていたので、今更言えないのである。自分たちに跳ね返ってくるようなことは、決して言わないという、卑怯千万なマスコミの体質が今回も見事に出ている。
もちろんこれだけが原因ではない。多くのマスコミのいう、“時代の激しい変化に対応できなかった自民党の能力不足”ということも遠因の一つではあろう。しかしそれよりも、根源的には自己保身と利害のために 、内容よりもその時々のムードを優先し、真正保守としての矜持に欠けた党員の集団に成り下がってしまっているという 、自民党の体質への有権者の怒りが、次なる原因としては大きい。この体質が小泉似非構造改革・郵政改革をも許したのである。当初郵政改革賛成は自民党内でも賛同者はそんなに多くなかった。それなのに最後にはなだれ現象が起きてしまった。さらにこの体質は、僅か1年間で首相職を投げ出すという無責任を2回も繰り返すという事態を生み、挙句の果てに担いだ首相がブレまくり、誤読、問題発言を連発するという醜態を演じさせてしまった。こうして多くの国民が自民党に愛想を尽かせて、今回とどめをさしたのである。
なお麻生首相の誤読や問題発言について、マスコミが針小棒大にネガチィブキャンペーンを行ったという批判が一部にある。だが、瑣末なことだと済ませられない。こ んな批判に多くの国民は返って反発している。
結局大勝した民主党への期待からではなく、負けた自民党への国民の怒りが“衝撃的な結果”をもたらしたのである。
今回の総選挙の前に、一部、特にインターネットの世界で、民主党に天下を取らせないために、様々な陰謀が企てられている可能性が高いと騒がれていた。例えば人工地震や北朝鮮による ミサイル攻撃などによる国内の混乱と政治空白回避ムード醸成謀略、あるいは投票の組織的な不正集計行為などである。前者の謀略が実際に起きなかったことに対して、それを主張した人は、流石にそこまでやれば、やぶ蛇だと謀略を控えたのだと弁明している。しかし本当に謀略者がいたとすれば、民主党政権樹立を絶対に阻止しようとしたはずである。筆者は謀略がこの世にないと思っているわけではないが、今回指摘されたような謀略は初めからなかったと思う。日ごろから、その主張に筆者も賛同している、かなり 多くの良心的な方々が陰謀説に基づく注意を喚起していた。用心するに越したことはないという心境からだろう。だが、少しでも自分と違う考えの人にも、日ごろの主張を理解してもらうには、逆効果であったように思う。軽率に陰謀説を唱え るのは賢明ではない。
さて、果たして民主党は国民の怒りを的確に理解して、日本を救うことができるであろうか。お手並み拝見とすべきところだろう。しかし、結果はほぼ明らかだと思っている。
新総理となる鳩山由紀夫代表の資質にかなり問題がある。選挙中記者らとのぶら下がり会見を約束していながら、実際にはほとんど実行しなかった。これは選挙を前にブレ発言を追及されるリスクを避けるためであった。ことほど左様に、大事なことを日ごろからきちんと整理して考えていないのである。総理となれば、この欠点は随所に出てくるであろう。このブレという点では、若干質的な違いはあるものの、麻生さんに似ている。このブレとも関連するが、総理・代表としてのリーダーシップ発揮にもかなり疑問がある。お坊ちゃま育ちの人の良さは長所ではあるが、逆に欠点でもある。他人の意見をよく聞いて理解した上での決断を不退転の決意でやり抜く意思の強さがあるようにはとても見えない。
特に個性の強い小沢一郎氏の院政的行為を抑えて、自身のリーダーシップを発揮しなければならないが、できないであろう。西松問題を受けての代表辞任以降、現在までの展開は、小沢氏にとっては理想的なものであるに違いない。別拙文「小沢一郎民主党代表の辞任表明に関連して」で指摘したように、自分が表に出ないで、影で思いのまま他人を動かせる立場を小沢氏は最も願っている。現在はそれが完全に確保されている。皮肉なことに、西松問題がそうさせたのである。鳩山代表は小沢氏の幹事長起用を考えているとの報道がある。しかし、余程のことがないかぎり、小沢氏は受けないであろう。
こうした小沢氏が最も望む 状況下では、鳩山氏が小沢氏の影響を排除するには至難千万の状勢である。早晩その実態が数々露呈してくるであろう。既に当面の基本方針に関して、小沢氏が主導しようとしていることが報道されている。
なおごく一部に、実質的には「小沢政権」であるべきだとする意見がある。こんな国民を馬鹿にした主張はない。闇将軍の存在を認める、こんな歪な主張を認めると、やがて独裁を認めることになる。注意しなければならない。
別拙文「民主党のマニフェストについて」で指摘したように、喫緊で肝要な施策は経済再生策である。しかし、民主党にはそのような認識はなく、経済危機突破の緊迫感が欠落している。これが欠けては、どんな施策を採ろうとも、泥沼に嵌るだけであろう。民主党がマニフェストで掲げている、人件費の削減、ムダづかいの根絶、租税特別措置などの見直しなどの施策を今すぐ強行するのは、手術を受けられないほど体力が落ちている状態で、無理やり手術をしようとしているようなものである。結果は確実に死に至る。このことに一刻も早く気付いてほしい。上記拙文でも触れたように、国民新党だけがまともな考えを持っている。民主党は国民新党と連立を組むそうであるから、国民新党の経済施策の考え方の基本を是非取り入れてほしい。だが上記拙文で予想したように、国民新党は選挙で議席を減らした。国民新党の主張がどこまで新内閣で採用されるか疑問である。しかし日本を救うには、思い切った財政出動と減税しかない。エコノミスト・菊池博英氏著「消費税は0%にできる」(ダイヤモンド社)を新内閣の 経済政策立案者にはバイブルとして活用してほしい。
多くの国民が民主党に不安を持ったまま一票を投じたのは間違いない。上記したこと以外に大きな問題点は二つある。
一つは、党の理念にまとまりがなく、思想的にも真反対の者が一緒になっていて、いざ施策を実行するという段になって、果たしてまとまるのか 、まとまってもどちらに向かうのかという疑問である。もう一つは、国家観の危さによる外交施策への懸念である。鳩山氏は総選挙直前に、米紙ニューヨーク・タイムズにも紹介され論文で、アメリカから自立する意思を鮮明にしている。そのこと自体には異論がないどころか、筆者もこれまでの政府の過度なアメリカ依存姿勢を批判している。しかし、中国、韓国、北朝鮮に対する毅然とした姿勢を取った上で、同盟国であるアメリカへの注文をすべきであると思っている。 だが、民主党には国家観に、しっかりとしたバックボーンが欠落している。特に民主党の中国への対応姿勢には危さを感じている。
鳩山新内閣の先行きは多難で、まともな経済再生施策を採用して、成功する可能性は極めて低い。やがて行詰るであろう。その際に世論の動向次第で、予断を許さない状況を迎えるであろうが、政界再編という方向に向かう可能性が一番高いと思っている。しかし今の政治状況では、個々の政治家の大部分は自己保身と利害を優先させるであろうから、単なる離合集散に終り、更なる混迷を招くであろう。そうなってしまっては、日本沈没は確定する。そうならないように、日本の将来を見据えて真の政策を立案し、それを実行できる政党の誕生に向けて、国民はそれぞれの立場で最善を尽くす以外に道はない。
最後に蛇足を一つ。別拙文「新党日本代表田中康夫氏のサプライズについて」の「追記」で、新党日本代表の田中康夫氏の冬柴氏に勝つ可能性はかなり高いとしたが、その通りとなった。それほど自公への逆風は凄まじかったのである。なお、ペテン師田中氏の当選は日本にとって嘆かわしいことではあるが、今回の総選挙の結果で最も評価すべきは、公明党議員の激減である。宗教団体の政治参加は許されるべきではない。
追加 本日の動きとそれに関連して(2009.9.3)
上記文で、“鳩山代表は小沢氏の幹事長起用を考えているとの報道がある。しかし、余程のことがないかぎり、小沢氏は受けないであろう。”としたが、本3日深夜、小沢氏は鳩山代表 からの幹事長就任要請を受けたそうである。多分闇将軍批判を避けるためであろう。これで、逆に小沢民主党であること、つまり鳩山氏は表看板にすぎないことがはっきりした と言えよう。
さて、マスコミ報道では、民主党は社民党と国民新党との連立を組もうとしているが、新党日本とはそうしようとしていない。だとすると、田中康夫氏を入閣させないつもりなのであろうか。そうではないと筆者は見ている。 民主党が大勝したために、反故にされるかもしれないが、田中氏は入閣する約束を小沢氏から得ているはずである。連立とは無関係に他党の人を入閣させることができるのかもしれない。あるいは新党日本を解党して、田中衆議院議員と平山参議院議員が民主党に入るのかもしれない。これには、新党日本に現在2億円も交付されている政党交付金がどうなるかにもよっている。そもそも政党交付金は5人以上 の国会議員がいることが分配される要件になっているが、この要件を満たさなくなっても政治団体として存続する場合には、政党であった期間に応じて交付されるとされている。もし今回の総選挙によって、新党日本がその要件を失うのであれば、党を解党する のではなかろうか。その場合は何の障害もなく、田中氏は入閣できることになる。
追加2 2年前の参院選との違いと民主党批判について(2009.9.7)
2年前の参院選の時、筆者は拙文「参院選結果に思う」の中で、次のように指摘した。
“自民党支持者のかなりの人が民主党に入れたと報じられているように、本気で政権交代を望んでいるのではなく、こんなことをしていると、民主党に政権を取らせるぞという、自民党への裏返しの期待感による善意の意思を、その可能性がないので安心して(ジャーナリスト林信吾さんが朝日新聞の記事で言っているように)表明したものと解釈すべきである。”
2年前は確かにそうしたことが言えたと思う。しかし、今回は本気で民主党に政権を取らせようとした人がかなりいたのは間違いない。何がそうさせたのか。
自民党はこの2年間、“こんなことをしていると、民主党に政権を取らせるぞという、自民党への裏返しの期待感による善意の意思”を理解するどころか、まるでこの期待を裏切るような逆なことばかりをしてきた。小泉改革の誤りを気付いていても、小泉改革の総括をしないまま、政策的には一部転換を図りながら、本気で小泉改革を否定しなかった。鳩山邦夫前総務相から郵政改革のカラクリを指摘されながら、カラクリ推進者を麻生首相は温存した。さらに二代に及ぶ僅か1年での政権投げ出しと麻生首相の数々の呆れた負のパフォーマンスが重なれば、自民党に愛想を尽かす人が続出しても、決して不思議ではない。
総選挙後の自民党の負けっぷりの悪さと再生への情熱のなさが浮き彫りになり、ただ混乱ぶりだけを見せつけられると、もう自民党の再生は不可能ではないかと思う。離合集散の過程で、自民党はほとんど消えて行く運命にあるのではなかろうか。こうしたことも日本が本当に生き返るためには必要なのであろう。
いずれにしても、相対的な評価とはいえ、筆者はこれまで自民党に期待し過ぎていたのかもしれない。真の意味の政界再編成を願わずにはいられない。
さて、国民の大多数が民主党を選んだのに、筆者のように、いきなり民主党批判をするのは、国民を愚弄する行為であるという批判があることは十分承知している。このことについて触れておく。
上記本文でも、“お手並み拝見とすべきところだろう。しかし、結果はほぼ明らかだと思っている。”とした。このように、民主党への懸念、特に経済再生危機感の欠如を指摘して、それを少しでも改善する努力をすることは誰かがしなければならない。この行為を押えつけられる所以は何もない。単にケチをつけているのではない。4年前の小泉郵政選挙の自民党の圧勝に警告を発することが国民を愚弄したと言えるかについて考えてみていただきたい。日本が一日でも早く正しい道に歩むことを願う行為を否定されるべきではない。もし筆者の過ちが将来明らかになれば、どんな形でも責任を取る覚悟はできているつもりである。
追加3 民主党の“温室効果ガス排出量25%削減目標施策”について(2009.9.9)
先ず、時事通信が7日午後に載せたウェブ記事を次の【 】内に示す。
【民主党の鳩山由紀夫代表は7日、環境問題に関する会合で講演し、日本の温室効果ガス削減について、2020年までに1990年比で25%削減するとした同党の中期目標を堅持する考えを明らかにした。麻生太郎首相が6月に発表した20年までに05年比15%削減(90年比8%削減)するとの政府案より厳しい内容だ。鳩山氏は22日に米ニューヨークで開かれる国連気候変動会合で、こうした考え方を表明する。
鳩山氏は目標達成に向けて「あらゆる政策を総動員して実現を目指す」と強調。さらに「世界のすべての主要国に対し、意欲的な目標設定を強く呼び掛けていく」との考えを示した。
途上国支援について、鳩山氏は「意欲的に温室効果ガス削減に努める途上国に対し、先進国は資金的、技術的支援を行うべきだ」と指摘。その上で「支援の具体策について『鳩山イニシアチブ』として国際社会に問うべく、新内閣発足後ただちに検討を開始したい」と述べた。】
この民主党の施策も間違っている。マスコミ報道に惑わされて民主党の施策になっているものが他にもあるが、この施策もその一つである。
そもそも科学的には地球温暖化に温室効果ガスは関連がないと最近されてきている。「地球温暖化詐欺」とまで昨今は言われている。しかも、日本はずっと以前から省エネに努め、かなりの水準にある段階で、さらに削減目標を高めるのは、諸外国に比べてコストが掛かり過ぎる。また二酸化炭素取引という馬鹿げたことまでしようとしている。こんな施策は決して日本のために、また世界のためにもならない。即刻引っ込めてもらいたい。
なお、上記の本文では民主党の施策については批判だけをしてきたが、もちろん、郵政民営化見直し、企業・団体献金の禁止、世襲制限など、期待したい施策もないわけではない。中でも最も期待したいのは、郵政改革の抜本的見直しである。国民新党が連立への条件として提示し、合意されたようであるから注目していきたい。
追加4 ある方とのやり取りについて(2009.9.9)
筆者の掲示板http://www67.tcup.com/6714/chohp.html に、ペンネーム「不名誉教授」という方から、本文についてのご意見(下の【 】内)を頂戴した。筆者の回答(下の《 》内)と共に示す。
【読ませて頂きました。先生のご意見は全般に渡って言える事ですが、常に核心を突いており、大変参考になりました。
ただ、一点だけ思う所があります。政権交代が起こる背景には必ず、政治不信や社会の混乱があると言います。今回は正に、これらの条件を満たしていた。しかし良い悪いは別にして、小泉氏に対して国民は、不信までは抱いていない様に思えます。私はこの点について、以下の様な仮定に基づき考察してみました。
仮に今回の選挙で小泉純一郎元総理が出馬を表明していたとして、また総理・総裁に意欲を燃やしており、それを公に表明していたとして、果たして今回同様の結果となっただろうか?もし仮に先生の言われる通り、今回の敗因が、
>小泉構造改革は実は一部の日本人への利益供与とアメリカへの貢ぎがその狙いであり(他に郵政関係者への小泉氏の個人的怨念もあるが)、結果として国民に理不尽な苦しみを押しつけたことを、多くの国民が気付いたところにある
のだとすれば、ほぼ同じ結果になっていたでしょう。しかし思うに、私が設定した仮定の下で選挙が行われていたならば、全く違う結果になっていただろうと思いますし、小泉氏のご子息が当選しているという事実は、それを示唆している様にも思えます(無論、政治的な地盤の強さ、即ち衆愚的な側面は考慮に入れなければなりませんが…)。
私は、小泉元総理の舵取りが正しかったと考えている訳ではありません(そういった判断が下せる程に、政治に詳しい訳ではありません)。ただ、今回の敗戦の主要な要因が現行の政治への不信にあったにせよ、小泉氏の関連は薄いのではないか?小泉氏が政治から遠のいた事が、自民党にとってより深刻な事態を招いてしまったのではないか?…そう思うのです。】
《大変貴重なご意見を頂戴し、有難うございます。厚く御礼申し上げます。
ご指摘のように、“小泉氏に対して国民は、不信までは抱いていない様に思えます” という考え方もあり得るとは思います。確かに、小泉改革の似非性を明確に意識していない人は多いでしょう。しかし、潜在意識的には小泉改革を疑っているように思います。“政治不信や社会の混乱”をもたらした、大きな要因に小泉改革がなっていると、薄々気付いているのではないでしょうか。例えば、数々の弱い者虐めや経済施策の失敗に伴う失業率の増大、自殺者の過多や将来不安の根底には小泉改革があるのではと疑っているのではないでしょうか。また鳩山邦男前総務相による郵政改革のインチキ性の暴露をかなりの人は見逃してはいないように思います。
“仮に今回の選挙で小泉純一郎元総理が出馬を表明していたとして”という思考実験的問題提起は面白いと思います。私の結論は、今回の実際の結果ほどの敗北にはならなかったかもしれませんが、自民党が敗北し、野党になっていたことに相違はないように思います。理由は4年前の小泉人気はもうなく、2ヶ月前の横須賀市長選で、地元の小泉さんが全面支援した現職は敗北しましたし、小泉氏の次男、進次郎氏自身は父親の応援を断っています。また今回小泉さんが直接応援に行った候補者はほとんど落選しています。もちろん現職の総理総裁として応援すれば、少しは違ったかもしれませんが。
以上の指摘は私の偏見と独断に基づくものでして、もし歴史に再試行が許されるとすれば、とんだ思い違いだったということがはっきりするかもしれません。どんな問題でもそうですが、私の主張が絶対に正しいとは思っていません。参考になればしていただきたいと思って、駄文を発表しているだけであります。》
追加5 長野経済新聞掲載拙文「政権交代選挙と今後」の再録(2009.11.17)
上記の拙文記述と重複する部分も多いが、それ以降の状況も踏まえて、9月25日、10月5、15日の3回に亘って、長野経済新聞に執筆した拙文「政権交代選挙と今後」を以下に再録する。再録が遅くなってしまった不手際をお詫びする。
政権交代選挙と今後
第45回総選挙は文字通り「政権交代選挙」となって、民主党が圧勝した。
選挙直前には、多くのマスコミの予想通り、自民100、民主320程度になるのではないかと、筆者も思っていた。しかし、そこまでの大差にはならなかった。これは、マスコミの事前の民主党大勝予想による、いわゆるアナウンス効果があって、自民党票への若干の回帰と投票率の伸びの鈍化があったことによっているのであろう。とは言え、朝日新聞の社説にあるように、“衝撃的な結果”であることに違いはない。
多くのマスコミは、今回の結果をもたらした原因は、時代の激しい変化に対応できなかった自民党の能力不足にあるとしている。 このような指摘は的を外している。最大の原因は、小泉構造改革は実はごく一部の人への利益供与とアメリカへの貢ぎがその狙いであり、結果として国民に理不尽な苦しみを押しつけたことを、多くの国民が気付いたところにある。
つまり4年前に似非改革に騙されたことを悟った国民の怒りによる逆襲が今回の結果を生んだのである。既にその兆候はほぼ2年前の参議院選挙で出ていた。この国民の逆襲が最大の原因であることを多くのマスコミ関係者も認識しているに違いない。だが、当時小泉改革こそが日本を救うと煽っていたので、今更言えないのである。自分たちに跳ね返ってくるようなことは、決して言わないという、卑怯千万なマスコミの体質が今回も見事に出ている。
もちろんこれだけが原因ではない。多くのマスコミのいう、“時代の激しい変化に対応できなかった自民党の能力不足”ということも遠因の一つではあろう。しかしそれよりも、根源的には自己保身と利害を優先し、真正保守としての矜持に欠けた党員の集団に成り下がってしまっているという 、自民党の体質への有権者の怒りが、次なる原因としては大きい。
この体質が小泉似非構造改革・郵政改革をも許したのである。当初郵政改革賛同者は自民党内でもそんなに多くなかった。それなのに最後にはなだれ現象が起きてしまった。さらにこの体質は、僅か1年間で首相職を投げ出すという無責任行為を2回も繰り返すという事態を生んだ。挙句の果てに、担いだ首相がブレまくり、誤読、問題発言を連発するという醜態を演じてしまった。こうして多くの国民が自民党に愛想を尽かせて、今回とどめをさしたのである。
なお麻生首相の誤読や問題発言について、マスコミが針小棒大にネガティブキャンペーンを行ったという批判が一部にある。だが、この麻生首相の負のパフォーマンスを瑣末なことだと済ますのは無理があり過ぎる。
結局大勝した民主党への期待からではなく、負けた自民党への国民の怒りが“衝撃的な結果”をもたらしたのである。
今回の総選挙では、一部で、特にインターネットの世界で、民主党に天下を取らせないために、様々な陰謀が企てられている可能性が高いと騒がれていた。例えば人工地震や北朝鮮によるミサイル攻撃などによる国内の混乱と政治空白回避ムード醸成謀略、あるいは投票の組織的な不正集計行為などである。このような謀略が実際に起きなかったことに対して、それを主張した人は、流石にそこまでやれば、やぶ蛇だと謀略を控えたのだと弁明している。
しかし本当に謀略者がいたとすれば、民主党政権樹立を絶対に阻止しようとしたはずである。筆者は謀略がこの世にないと思っているわけではないが、今回指摘されたような謀略は初めからなかったと思う。日ごろから、その主張に筆者も賛同している、かなり多くの良心的な方々が陰謀説に基づく注意を喚起していた。用心するに越したことはないという心境からだろう。だが、軽率に陰謀説を唱えるのは賢明ではない。
さて、果たして民主党は国民の怒りを的確に理解して、日本を救うことができるであろうか。お手並み拝見と言いたいところだが、結果はほぼ明らかだと思っている。
新総理となる鳩山由紀夫代表の資質にかなり問題がある。選挙中記者らとのぶら下がり会見を約束していながら、実際にはほとんど実行しなかった。これは選挙を前にブレ発言を追及されるリスクを避けるためであった。ことほど左様に、大事なことを日ごろからきちんと整理して考えていないようである。総理となれば、この欠点は随所に出てくるであろう。このブレという点では、若干質的な違いはあるものの、麻生さんに似ている。
このブレとも関連するが、総理・代表としてのリーダーシップ発揮にもかなり疑問がある。お坊ちゃま育ちの人の良さは長所ではあるが、逆に欠点でもある。他人の意見をよく聞いて理解した上での決断を不退転の決意でやり抜く意思の強さがあるようにはとても見えない。
特に個性の強い小沢一郎氏を抑えて、自身のリーダーシップを発揮しなければならないが、できないであろう。現に、当初鳩山代表は小沢氏を来年の参議院選挙のために、代行留任を構想していたようだが貫ききれず、民主党の幹事長に指名した。指名後の記者会見で、“いずれは小沢さんに重要ポストをやってもらいたいと思っていた”と語っている。今回すぐ幹事長にするつもりはなかったという本心がつい出ている。また、党務だけを任したとも言ったが、小沢氏はそれを否定している。いずれにしても、鳩山氏が小沢氏の影響を排除するのは至難なことである。もっと色々な小沢支配の実態が露呈してくるであろう。
なおごく一部に、実質的には「小沢政権」であるべきだとする意見がある。こんな国民を馬鹿にした、歪な主張を認めてはならない。
本紙8月15、25日号掲載の拙文「民主党のマニフェストについて」で指摘したように、喫緊で肝要な施策は経済再生策である。しかし、民主党にはそのような認識はなく、経済危機突破の緊迫感が欠落している。これが欠けては、どんな施策を採ろうとも、泥沼に嵌るだけであろう。マニフェストで掲げている、人件費の削減、ムダづかいの根絶、租税特別措置などの見直しなどの施策を強行しようとしている。これは手術を受けられないほど体力が落ちている状態で、無理やり手術をしようとしているようなものである。結果は確実に死に至る。このことに一刻も早く気付いてほしい。
上記拙文でも触れたように、国民新党だけがまともな考えを持っている。民主党は国民新党と連立を組んだのであるから、国民新党の経済施策の考え方の基本を是非取り入れてほしい。だがどこまで新内閣で採用されるか疑問である。日本を救うには、思い切った財政出動と減税しかない。エコノミスト・菊池博英氏著「消費税は0%にできる」(ダイヤモンド社)を新内閣の経済政策立案者にはバイブルとして活用してほしい。
多くの国民が民主党に不安を持ったまま一票を投じたのは間違いない。上記したこと以外に大きな問題点は三つある。
一つは、党の理念にまとまりがなく、思想的にも真反対の者が一緒になっていて、いざ施策を実行するという段になって、果たしてまとまるのか、まとまってもどちらに向かうのかという疑問である。
次は、国家観の危さによる外交施策への懸念である。中国、韓国、北朝鮮に対する毅然とした姿勢を取った上で、同盟国であるアメリカへの注文をすべきであると思っている。 だが、民主党には国家観に、しっかりとしたバックボーンが欠落している。特に民主党の中国への対応姿勢には危さを感じている。鳩山首相は9月21日の中国の胡錦濤国家主席との会談で、チベット問題について「内政の問題と理解している」と述べた。人権感覚が欠落している上に、外交のイロハが分っていない。
もう一つは、民主党の施策の多くは誤ったマスコミ報道に阿ったものであるということである。先述した経済施策もそうだが、環境問題においてもそうである。鳩山総理は9月国連で、日本は温室効果ガスを2020年までに1990年比で25%削減することを目指すと表明した。
科学的には、地球温暖化に温室効果ガスは関連がなく、「地球温暖化詐欺」とまで昨今は言われている。しかも、日本はずっと以前から省エネに努め、かなりの水準にある段階で、さらに削減目標を高めるのは、諸外国に比べてコストが掛かり過ぎる。また二酸化炭素取引という馬鹿げたことまでさせられている。これまでにも日本が年間数千億円分買っている。これが数倍になるそうである。
しかも、EU諸国にとって1990年基準は非常に有利である。彼らが喜ぶのは当然である。国際的に高い評価を受けたとするのは、お人好し過ぎる。日本を尊敬して評価しているのではない。こんな施策は決して日本のためにならない。景気をさらに悪化させもする愚策である。
もちろん、郵政改革見直し、企業・団体献金の禁止、世襲制限など、期待したい施策が民主党にないわけではない。中でも最も期待したいのは、郵政改革の抜本的見直しである。国民新党代表の亀井静香氏が担当大臣になったので注目したい。
鳩山新内閣の先行きは多難で、まともな経済再生施策を採用して、成功する可能性は極めて低い。やがて行詰るであろう。その際に世論の動向次第で、予断を許さない状況を迎えるであろう。政界再編という方向に向かう可能性が一番高いと思っている。しかし今の政治状況では、政治家の大部分は自己保身と利害を優先させるであろうから、単なる離合集散に終り、更なる混迷を招くであろう。そうなってしまっては、日本沈没は確定する。そうならないように、日本の将来を見据えて真の政策を立案し、それを実行できる政党の誕生に向けて、国民はそれぞれの立場で最善を尽くす以外に道はない。
2年前の参院選の直後、筆者は拙文「参院選結果に思う(本紙平成19年8月15日号)」の中で、次のように指摘した。
“本気で政権交代を望んでいるのではなく、こんなことをしていると、民主党に政権を取らせるぞという、自民党への裏返しの期待感による善意の意思を、その可能性がないので安心して表明したものと解釈すべきである。”
2年前は確かにそうしたことが言えたと思う。しかし、今回は本気で民主党に政権を取らせようとした人がかなりいたのは間違いない。何がそうさせたのか。
自民党はこの2年間、“善意の意思”を理解するどころか、まるでこの期待を裏切るようなことばかりをしてきた。
小泉改革の誤りを気付いていて、政策的には一部転換を図りながら、本気で小泉改革を総括し、否定しなかった。鳩山邦夫前総務相から郵政改革のカラクリを指摘されながら、そのカラクリ推進者を麻生首相は温存した。さらに二代に及んでの僅か1年での政権投げ出しと麻生首相の数々の呆れた負のパフォーマンスが重なれば、自民党に愛想を尽かす人が続出しても、決して不思議ではない。
さて、国民の大多数が民主党を選んだのに、筆者のように、いきなり民主党批判をするのは、国民を愚弄する行為であるという批判があるであろう。
しかし “お手並み拝見”するまでもなく、結果は分っている。警告を発するのは早いほうがよい。民主党への懸念、特に経済再生への危機感の欠如を指摘して、改善を促すことを誰かがしなければならない。この行為を押えつけられる理由はない。単にケチをつけているのではない。居酒屋に出掛けたり、夫人とファッションショウに出て浮かれる暇がどうしてあるのか。4年前にも筆者は小泉郵政選挙の自民党の圧勝に警告を発した。国民を愚弄したと言えたかについて考えてみていただきたい。