財政出動と減税こそが日本を救う(2009.12.1,3,8,2010.23,27)

 

 鳩山内閣は、先月末来の急激で異常な円高や株安に慌てて、新しい経済対策を採ると言っている。そもそも今回の急激な円高や株安は、きっかけは「ドバイ・ショック」だが、鳩山内閣の経済再生への無策と、予算の一部執行停止や 事業仕訳けという景気減退行為が背景にある。この自身の責任を自覚していない。しかも国債発行抑制という間違った思想が根底にある。そのために、施策の規模は極めて小さい。10兆円規模でも足りないのに、僅か数兆円の補正予算で対応しようとしている。ほとんど焼け石に水である。

 本HPでも既に何回か紹介したが、昨年7月に発刊された、エコノミスト・菊池 英博著「消費税は0%にできる」(ダイヤモンド社)の「まえがき」の中に、次の< >内のような記述がある。

 

<本書で国民の皆さんにお伝えしたいことは、「日本は財政危機ではない、財源はいくらでもある」「われわれ国民のおカネでデフレを解消し、経済成長を復活させれば、消費税はゼロ%になりうる」ということだ。日本は経済成長を忘れたシーラカンスになりつつある。これでは国家が衰弱するだけだ。「こうすれば日本は甦る」という政策を本書で提案している。>

 

世間一般、すなわち多くの学者、政治家、マスコミ、庶民には、将来の増税は避けられないと考えられている。この誤った認識を改めなければ、日本の将来はない。著者の言われているように、日本はシーラカンス、すなわち「過去の遺物」になってしまう。

鳩山内閣と民主党に、経済再生施策が必須という危機感が欠落していて、日本沈没の事態を迎えようとしている(拙文「民主党のマニフェストについて」、「「政権交代選挙」の結果と今後について」参照)。これからでも遅くはない。多くのマスコミや御用学者の無責任な主張に惑わされないで、この著者の日本経済分析と経済再生対策提案を新政権関係者は真剣に学んで、具体的な政策に反映してほしい。

 以下、著作権侵害や営業妨害にならないと思われる範囲内で、主な指摘を原文のまま、“ ”内に紹介する。もちろんこれだけで本書を紹介し尽せるわけではない。是非本書を購入して熟読してほしい。そのためのガイドになっていれば幸いである。

 

“実は、日本の国は世界一豊かなのだ。しかし、国民は騙されて、国から富(預貯金)を吸い上げられ、国民の富が国民のために使われていないのである。日本国民の預貯金一五00兆円のうち三00兆円が余っており、それは日本国民のためではなく、海外に流れるような政策(「構造改革」)が取られてきたから、惨めな日本になってしまったのである。”(3132ページ)

“日本に蔓延する財政の誤解のうち、おもなものを挙げると、次のとおりである。

@新規国債の発行額を金額で「○○円」とすべきだ(金額で国債発行額を抑える)

A粗債務だけの残額を見て、日本の財政は破綻状態だ

Bこのままいけば、日本はアルゼンチンのようになる

C政府の債務は全額返還すべきである

D日本は小さい政府を目指す、だから予算を圧縮すべきだ

E赤字国債を発行すれば、いずれ増税で回収するしかない

F財政赤字の削減には、財政出動の削減と増税以外に道はない

G国の財政赤字は家計の赤字と同じである、収入を上回る支出は削減すべきだ、国債は将来世代の負担になる

Hこれからは高齢化社会になる、だから国債の発行は抑えるべきだ

I人口が減っていくから、経済規模を拡大する必要はない” (137138ページ)

“預貯金があり余っている日本で、遊休資源(失業者、活用されていない工場設備、資本など)を活用するには、国債(とくに建設国債)を発行することが、経済成長を促す上で最も有益な政策なのである。” (176ページ)

“現在とるべき財政改革は、「法人税の引き上げ、高額所得者への増税、低額所得者への減税、消費税の減税」である。さらに、社会的生活基盤を強化するために政府投資の拡大と投資減税による民間投資の誘発を行えば、景気を上昇軌道に誘導することができる。” (189190ページ)

“政府投資の三0兆円と減税枠の10兆円(投資減税、定率減税復活、消費税減税)を合わせた四0兆円(GDPの八%)を景気対策として毎年実施し、とりあえず、五年間にわたって継続させるのである。四0兆円はすべて新規の財政支出(真水)とし、五年間で予算総額は二00兆円になる。景気が回復していくと、三、四年目からは税収の増加額でおカネが政府に戻ってくるので、五ヵ年計画の財源はほぼ120兆〜一三0兆円あれば十分であろう。” (235236ページ)

 

 郵政民営化の是正が、アメリカに日本の富が奪われることを防いで、日本を救う試金石の一つである。これを成功させなくてはならない。同時に、財政・金融政策についても、国民新党の言うような主張が日本沈没回避施策の正解であり、それを果敢に実行しなければならない。これが正解であることは歴史が証明しているし、現在も同様に証明されつつある。中国とアメリカが逸早く不況を脱したのは、このような施策を果敢に行ったからである。これまで度々指摘してきたように、民主党に日本経済への危機感がない。今は節約だけを行うべきではない。先ずは日本経済の回復である。そうすれば、一時的な国債発行増を補う税収がある。緊縮財政では却って、財政赤字が増えることは、初期の橋本内閣と小泉内閣の緊縮財政施策で証明されているではないか。

 日本の危機を本当に救うためには、民主党政権の基本的な欠点や問題点を積極的に指摘すべきである。積極財政の必要性を民主党に促しながら、それが必要なのは麻生政権の尻拭いのためだとする、一部のエコノミストの主張には同意できない。麻生政権の失政もさることながら、歴代の自民政権の不景気な時の緊縮財政の間違いと、それによる危機を避けようとした中途半端な施策こそが問題であったのである。それを的確に認識していない鳩山政権の頓珍漢さも指摘すべきである。したがって、尻拭いと言えば、自身の尻も含まれるのである。筆者は一貫してそのことを指摘している。こうしたことに目を瞑って民主党を支持するのは、決して日本のためにならない。

 

追加 追加経済対策について(2009.12.3)

 上記本文で、“僅か数兆円の補正予算で対応しようとしている”と指摘したが、その追加経済対策の中身がほぼ明らかになった。

 新聞などの報道によると、鳩山政権は本年度第2次補正予算に盛り込む追加経済対策の事業規模を20兆円程度とする方針を固めたとのことである。しかし、国の財政支出である「真水」は4兆円程度である。これに麻生政権が本年5月に成立させた14兆円の第1次補正予算を見直し、執行停止にした2兆9000億円分を財源に優先して充当するとしている。合計の「真水」は約7兆円であるが、そのうち鳩山政権としてのものは4兆円である。これではやはり焼け石に水である。

 なお、事業規模が20兆円程度だと強調するのは、過大宣伝である。また財源調達のために赤字国債を発行しない”としている。これは建設国債は発行するという意味なら、分るが、どうもそうではないらしい。両国債とも発行しないということのようである。このようなやせ我慢は、いずれ破綻するであろう。鳩山政権は本文で紹介した菊池氏の指摘を理解して、自信を持って国債発行を国民に訴えるべきである。

 

追加2 追加経済対策について−その2(2009.12.8)

 本8日のマスコミ報道によると、昨7日夜政府は、国民新党と社民党に対し、建設国債発行を財源とする1千億円を上積みした総額7兆2千億円追加経済対策案を提示し、これで本日決着する見通しとなったそうである。この案だと鳩山政権としての「真水」は4兆3千億円である。これではやはりやらないよりは増しな程度で、その効果は極めて限定的である。

 なお、上記「追加」で、“建設国債は発行するという意味なら、分るが、どうもそうではないらしい”としたが、1千億円という小額ではあるが、建設国債を発行するそうである。小額であっても、従来の主張と違うことをするのであれば、その主張の誤りを認め、今の日本を救うのは国債発行によるしかないと、次の【 】内のように、きちんと説明すべきである。その上で、来年度予算で実行してほしい。説明がないから、早速テレビで、借金を増やす自公政権に先祖返りしたと揶揄されている。

 

【今の日本はデフレギャップが顕著で、潜在的余剰能力がある。国債発行や政府貨幣発行特権活用による弊害、特にインフレ発生の懸念はない。日本は実は金持ちだから、国債が暴落するという脅しが現実になったこともない。

不景気な時に借金を減らそうとする政策は必ず失敗している。緊縮財政では却って、財政赤字が増える。これは歴代内閣の緊縮財政施策で証明されている。景気が回復すれば、政府の借金は税収増で減らせる。

正しい財政出動施策で景気を立て直したという、世界と日本の過去と現在の多くの貴重な経験に学ぶべきである。一昨年のリーマン・ショックによる世界経済危機に際して、中国でさえも思い切った財政出動施策を採り、成功している。日本だけが取り残されている現状を正視しなければならない。

 また日本政府は国民の持っている金融資産という財産を活用する義務がある。政府が活用しなければ、結果として日本のお金が外国に回ってしまうのである。

 これまで国債を発行して何回も財政出動をしたが、効果はなかったではないかという意見がある。一定のそれなりの効果はあった。しかし規模が中途半端な上に、すぐ緊縮財政に戻ったから、結果として借金が増えたのである。成長率が安定して数%以上になるまで、思い切った財政出動施策を継続して採るべきである。】

 

追記3 あるテレビ番組を見て2010.1.23

 昨22日の夜、偶々日本テレビの「石田純一&森永卓郎国民全員50万もうかる夢の法案!」という番組を途中から見た。政府がお金を刷って国民にばらまけということである。考え方の基本は間違っていないが、単に紙幣を刷るのではなく、丹羽先生が指摘されているような工夫がいるし、また単に国民にばらまくのではなく、景気回復に確実に繋がる投資に活用しなければならない。

 上記で指摘したように、“今の日本はデフレギャップが顕著で、潜在的余剰能力がある。国債発行や政府貨幣発行特権活用による弊害、特にインフレ発生の懸念はない。日本は実は金持ちだから、国債が暴落するという脅しが現実になったこともない。”という視点からの議論がまったくなく、一部の人から、インフレを招くという頓珍漢な意見が出されていた。

 まともな議論が起きるきっかけを作る意図が番組にあるのであれば、的確な視点からの議論を望みたい。バラエティ番組であっても、今の日本では与える影響は小さくないので、慎重な姿勢で臨んでほしい。

 

追記4 日本国債の格付け見通し引き下げ?(2010.1.27)

 本27日付けの信濃毎日新聞の一面トップ記事に「日本国債 格付け見通し引き下げ 米S&P 財政悪化受け」が載った。その趣旨は“米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は26日、日本の長期国債の格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ(弱含み)」に引き下げた。今後格下げの可能性がある。同社が日本国債の格付けや見通しを引き下げたのは約8年ぶり。国債の大量発行に依存した鳩山政権の財政運営に懸念を示した形で、市場では長期金利が上昇する恐れもある。”ということであった。

 一面トップの8段を使った過剰な報道振りである。ところが、他の主要紙である朝日、読売、毎日、産経、さらに経済専門紙日経までもがこれについて3〜5面の小さな記事で報道しているだけである。ただ、中日新聞がやはり一面トップの、しかもカラーの図面入りの記事を載せている。 また短いながらも、朝日新聞は“市場では、日本国債の9割超を国内投資家が保有することもあり、影響は限定的との見方が大勢だが…”とある。しかし、長文にも拘らず信濃毎日新聞、中日新聞には、そのような指摘はない。結局共同通信配信の記事を載せた地方紙が飛び抜けた煽り報道をしているようである。こうしたところに、今回の報道の異常な側面が露呈しているように思う。

 つまり、アメリカが日本を支配しようとしていることを知ってか知らずか、殊更に日本国債の不安を煽るキャンペーンに加担しているのが共同通信社を始めとした報道機関なのである。

 これまでS&Pは2001年2月に日本国債の格付けをAAAからAA+に、11月にAAに、さらに2002年4月にAA-に下げ、2007年4月にはAAに戻している。そして今回の再引き下げである。しかしこの間国債は増加の一途を辿っているが、国債は暴落していない。これは朝日新聞の記事にあるように、“日本国債の9割超を国内投資家が保有する”からである。アメリカは日本に不安感を煽って、日本の力を殺ぎ、結果としてアメリカに貢がせようとしているのである。そのお先棒を担ぐ役目を臆面もなく演じているのが、一部の日本のマスコミなのである。それに惑わされて、必要以上に国の借金を気にし、先ずは景気回復のための積極財政こそが正解で、結果として借金が減らせるという正しい認識が妨げられている。今回のような無責任な報道こそが糾弾されなければならない。

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