村上龍氏の小沢一郎観について2010.1.16

 

 インターネットの世界の一部で、テレビ東京が201014日に放送した、カンブリア宮殿:「村上龍 × 小沢一郎 〜ニュースが伝えない小沢一郎〜」が高く評価され、話題となっていたので、その紹介ページを先ず見た。そこには、次の【 】内に示す村上龍の編集後記」が載せてあった。

【小沢一郎ほど、誤解されている人はいないのではないだろうか。日本の政治家には珍しく論理的だが口下手で、経済から外交まで3次元的な構想と戦略を持っていながら演説は苦手で、頭は切れるが社交的ではなく、基本的にシャイな人だ。本当は政治家には不向きかも知れない。きっと孤独なのだろうが、決して孤立はしない「最後の政治家」だと思った。】

 放映模様が動画で公開されているというので、「2010.01.04 小沢一郎 小沢革命の全てを語る(カンブリア宮殿)」を見た。ただし、番組は8分割され、その内3/86/87/8の動画は著作権侵害の申し立てにより削除されていて、見られなかった(現在はすべて削除されている)。見られた1/82/84/85/88/8の範囲では、「村上龍の編集後記」は、初めからの村上龍氏の思い込みによるもので、村上氏が聞いたことも小沢氏が答えたことも極めて表面的で、説得力はまるで感じられなかった。そのことを具体的に指摘する。なお、村上氏の小沢氏への質問の要点をM:以下に、サブの小池栄子氏の質問の要点をK:以下に、小沢氏の回答の要点をO:以下に、筆者のコメントをC:以下に示す。

 

2010.01.04 小沢一郎 小沢革命の全てを語る(カンブリア宮殿)1/8について

 先ず導入部で、村上氏は鳩山氏を操って、小沢氏は何のメリットがあるのか、小沢氏はどうして怖がられたり、恐れられたりするのかと問題を提起している。

M:何故怖がられたり、恐れられたりするのか。

O:多分メディアの伝え方でしょうね。顔付から何から男前でもありませんし。

K:影の権力者とか嫌われる男とか言われていますが、スルーしているのですか。

O:気分が良いわけはない。メディアを含めて例外なく僕がいやなんですよ。ただ、旧来の利権の仕組を変えようとしている、無血革命をしようとしているから、時間が掛かる。

C:小沢氏は独裁者だと言われ、民主党内から自由な意見が出ていない現状を指摘して、食下がらなければ、小沢氏の実像は浮かんで来ない。また利権の仕組みをどう変えようとするのかを具体的に聞かなければならない。これでは問題を提起した意味がない。こんな遣り取りで、村上氏が小沢氏は“誤解されている”と言えると思っているとしたら、呆れる他はない。

最後に、次の2/8への導入として、小沢さんの考え方は伝わり難いところがあるから、ディテールを聞きながら、立体的に小沢さんの考え方を解明したいとしている。

2010.01.04 小沢一郎 小沢革命の全てを語る(カンブリア宮殿)2/8について

陳情を民主党幹事長室に一元化することについて、次のような説明がなされた。

 各議員、各省庁と結びつく利益誘導型の政治、政官業の癒着の政治を生み出す大きな原因の一つだったが、それをなくそうとしている。民主党県連、民主党国会議員、全国団体の陳情に幹事長室が応じ、3000件以上が幹事長室に集められた。要望の多いもの、マニフェストに沿っているもの、より切実なものに限って選んで官邸に届けたが、最終判断は幹事長だと、細野幹事長が語った。官僚を通さない陳情システム 民主党というよりも全国民からの要望だと小沢幹事長が政府に訴えた。

C:小沢幹事長のほぼ独断で判定され、説明責任が果たされていない。選挙の応援を強いたり、野党関連の事業は露骨に外したり、減額するのが目立っている。こうした点をまったく指摘していない。陳情に基いてまとめたと言うが、陳情にはまったくなかった、暫定税率や子供手当ての問題などの項目への注文が盛り込まれていた。こうしたことに質問で触れないのは極めて客観性を欠いている。

2010.01.04 小沢一郎 小沢革命の全てを語る(カンブリア宮殿)4/8について

O:無血革命を目指している。官僚の国会答弁禁止、国会から官僚支配をなくす。選挙活動の古い規制を捨てる。選挙活動の自由化が必要。お上が規制するという発想で法律ができている。これまでは政治家でなく官僚がやってきた。議員が渡航でファーストクラスの乗るのはけしからん。

C:官僚支配の改善や選挙活動の自由化が必要であるのはその通りである。ただし、その中身が詳しく説明されていないので、賛否は留保せざるを得ない。

次いで、小沢流の新人の政治家の育て方の紹介がなされている。

C:新人は次の選挙だけに専念しろというのは、選挙民を愚弄している。

2010.01.04 小沢一郎 小沢革命の全てを語る(カンブリア宮殿)5/8について

M:新人選択の基準は?

O:一つは人間としての資質、次は選挙で国民に理解されやすいタイプ(会えば分る)、もう一つは民主主義を理解して一生懸命に努力するかどうかということである。

C:こんな子供だましの回答に何も言わない村上氏が、“頭は切れる”と感心しているのであるから、言うべき言葉もない。口では民主主義と言うが、やっていることは独裁である。

M:3才の子供に政治家についてどう説明するか

O:自分の能力を生かしていい人生を過ごせるような社会、仕組みを作ること。

M:もう少し具体的に。

O:勉強して学校を出て就職できなければ困るでしょ、就職できても途中で首になったら困るでしょ、病気したときでも困らないようにする、農業やってても将来安定して仕事ができるようにする…と言う。

C:まるで凡人の回答である。さすがに村上氏も耐えかねて、次のように聞き方を変える。

M:古いパラダイムを変えるのが小沢さんの狙いか。

O:そうだ。

C:こんな遣り取りしかできないのに、“3次元的な構想と戦略を持って”いるなどとよくも言えたものである。 

2010.01.04 小沢一郎 小沢革命の全てを語る(カンブリア宮殿)8/8について

M:聞かなきゃいけないから西松問題を聞くが、利権と小沢さんが関係あるようなイメージで取られるのは非常に損かなと思うが。

O:政治家は政治献金を受けなければやっていけない。でなければ金持ちしか政治家になれない。ハガキを何万人に出すにも大変な金がいる。私自身も秘書も違反していない。裁判で無罪になる。

C:ハガキを何万人に出すにも大変な金がいるというが、それで何億円も要るということにはならない。ハガキ代など、国民の税金から出ている政党助成金では足りないはずはない。西松問題に関しては、具体的な根拠の説明はない。村上氏の質問も、“聞かなきゃいけないから西松問題を聞くが”と、極めて消極的である。何故政治資金で土地を購入したのかなど、聞くことは幾らでもある。つまり初めから、小沢氏は素晴らしいという思い込みがあることが、聞き方にも露呈している。

M:総理大臣にならないのか。

O:形式的ポジションに関心がないが、皆さんが思ってくださる時がくれば、拒む必要はない。だがエライポジションは好きではない。

M:幹事長は?

O:幹事長は実務ですから。公務、大臣は形式だから。

C:実務を指揮して自分の夢を実現すべきではと、何故聞かないのだろう。直接矢面に立たずに、権力を行使できる立場にいたいのが、小沢氏の本音であることが村上氏には分っていない。

M:小沢さんは誰のために働くのか?

O:みんなのために働くことを何時も心がける。

C:こんな優等生的な、だが無意味な回答に、何も言わない村上氏。ここにこの番組の杜撰さが象徴されている。こんなことで、“立体的に小沢さんの考え方を解明”するとした村上氏の作家としての見識を疑う。

 結論として、この番組を見た範囲内では、小沢氏が“論理的…で、経済から外交まで3次元的な構想と戦略を持って”いる場面は、ほとんど感じられなかった。一部でこの番組が絶賛されているが、番組の内容よりも、歯の浮くような“村上龍の編集後記”に惑わされているとしか言いようがない。

 

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