鳩山民主党政権批判(2009.11.18,19,12.3,4)

 

 鳩山民主党政権の発足直前、直後の段階で、筆者は民主党批判を展開した(拙文「「政権交代選挙」の結果と今後について」参照)。その中で、“国民の大多数が民主党を選んだのに、筆者のように、いきなり民主党批判をするのは、国民を愚弄する行為であるという批判があるであろう。しかし “お手並み拝見”するまでもなく、結果は分っている。”とした。その予言は、鳩山内閣発足2ヶ月ほどで、ほぼ完璧に事実で証明されたと言ってよい。

 

 “新総理となる鳩山由紀夫代表の資質にかなり問題がある。…ブレ発言を追及される…大事なことを日ごろからきちんと整理して考えていない…総理となれば、この欠点は随所に出てくるであろう。”、“総理・代表としてのリーダーシップ発揮にもかなり疑問がある。…他人の意見をよく聞いて理解した上での決断を不退転の決意でやり抜く意思の強さがあるようにはとても見えない。特に個性の強い小沢一郎氏を抑えて、自身のリーダーシップを発揮しなければならないが、できないであろう。”と指摘したが、その通りになっている。

 

 象徴的な事例は幾つかある。普天間基地を巡って、オバマ米国大統領と早期解決を目指すという約束をしながら、閣内の不統一を許したまま、自身は約束違反の勝手な発言をしている。リーダーとしての自覚はまるでない。また鳩山総理自身が「必殺事業仕分け人」と激励した、行政刷新会議の事業仕分けチームのメンバーから新人議員を外せという、小沢幹事長のごり押しを認め、平野官房長官や仙谷行政刷新相が小沢氏に陳謝までしている。一国の総理の発言に、与党の幹事長の横槍を入れることを認めるとは、どこにリーダーシップがあるというのであろうか。そもそも人間としての矜持が鳩山総理にはないのである。まるで子供である。自身の巨額の資産報告漏れ問題でも、“恵まれた家庭に育ったものだから”などと、他人事のような弁明をしている。呆れた正に「宇宙人」である。

 記者クラブ開放問題や官房機密費問題もそうである。

総理になる前までは、政権を取って官邸に入ったら記者クラブを開放すると公言していたのに、未だに実行されていない。これについての鳩山総理自身の釈明もないようで、平野官房長官の公約不履行を黙認している。

官房機密費の支出の内容が全く公開されないことに関しては、野党時代の民主党は批判していたが、鳩山総理は「相手があることなので(情報公開は)難しい面がある」と平然と言い、平野官房長官に至っては「私が適切に判断しているのでご信頼いただきたい」と開き直っている。

 いずれにしても、総理自身は過去の発言への責任をまったく感じていない。

 蛇足だが、仙谷行政刷新相は、「事業仕分け」について「予算編成プロセスのかなりの部分が見えることで、政治の文化大革命が始まった」と意義を強調したそうである。「文化大革命」をポジチィブに評価しているとは!! 常識を疑う。

 

 “喫緊で肝要な施策は経済再生策である。しかし、民主党にはそのような認識はなく、経済危機突破の緊迫感が欠落している。これが欠けては、どんな施策を採ろうとも、泥沼に嵌るだけであろう。マニフェストで掲げている、人件費の削減、ムダづかいの根絶、租税特別措置などの見直しなどの施策を強行しようとしている。これは手術を受けられないほど体力が落ちている状態で、無理やり手術をしようとしているようなものである。結果は確実に死に至る。このことに一刻も早く気付いてほしい。…日本を救うには、思い切った財政出動と減税しかない。”と指摘した。

この状況はむしろ強まっている。事業仕分けを公開して、マスコミと世論の高い支持を得ているが、経済危機の今、こんなことをやるべきではない。こうした節約とは桁違いの損失をもたらし、日本経済を死に至らせること必定である。悪者を探して血祭りにして、溜飲を下げて、仮に節約できたとしても、国民の生活が破綻したのでは、元も子もないではないか。政府として最優先に取り組まなければならない施策は何か。それは“思い切った財政出動と減税”である。これで日本経済が正常な成長路線に回復できる。そうすれば、政府の借金も減る。不景気な時に、借金を減らそうとする政策は必ず失敗していて、逆に正しい施策で景気を立て直したという、世界と日本の多くの貴重な経験に何故学ぼうとしないのか。ともあれ、連日マスコミで論じられているような、事業仕分けのやり方がどうかという、矮小化された議論に現(うつつ)を抜かす時ではない。

 

 さて、改めて民主党政権の一貫性の欠如、ご都合主義的なやり方について指摘する。

 民主党はマニフェストで、「官僚丸投げの政治から、政権党が責任を持つ政治主導の政治へ」、「天下り、渡りの斡旋を全面的に禁止する」と謳った。ところが、政府は日本郵政社長に元大蔵事務次官の斎藤次郎氏を、坂篤郎元内閣官房副長官補と足立盛二郎元郵政事業庁長官をそれぞれ副社長に選任させた。これについて鳩山総理は、「公務員が、法令に違反することなく、府省庁による斡旋を受けずに、再就職先の地位や職務内容等に照らして適材適所の再就職をすることは、天下りや渡りには該当しないことから、否定されるものではなく、今回の人事については、問題ないと考えている」と説明している。つまり「府省庁による斡旋」による再就職は「天下りや渡りには該当」するが、政府を含む省庁以外からの斡旋もしくは推薦による再就職は「天下りや渡りには該当」しないということになる。ならばマニフェストに何故そう書かなかったのか。まったくの詭弁である。

そもそも、天下りの問題点は、官民の癒着、利権の温床化、退職金の重複支払い、生抜き職員のモチベーションの低下、業務らしいこともしていないのに、極めて高額の給与が支給さているということで、これを解消することこそが求められているのである。形式的にどこが斡旋するかという手続きの問題ではない。自分たちすなわち自分の任命した大臣が斡旋するのは正しいが、自分たちの指揮下にある省庁が斡旋するのは正しくないとするのは、理屈になっていない。正直に、「省庁が斡旋する」かどうかに拘わらず、「再就職先の地位や職務内容等に照らして適材適所の再就職をすることは」認めるとすべきである。なお、鳩山内閣は人事院の人事官に江利川毅・前厚生労働事務次官を起用する国会同意人事案を示している。そんなに、「適材適所の再就職」可能な人材がいるのであれば、官僚批判の仕方を改めるべきである。

 

 上述で、“事業仕分けのやり方の賛否という、矮小化された議論に現(うつつ)を抜かす時ではない”とした。しかし、そうした意味合いからではなく、政府民主党の基本姿勢として、財務省の手のひらの上で、つまりそのお膳立てで、「公開の人民裁判」を行っていることについて、敢えて指摘しておきたい。先の人事における財務省退職者を優遇していることと共に、排除すべき本丸を優遇していることに、国民は気付かなければならない。さらに、政府民主党は、市場原理主義や小泉似非構造改革の間違いを総括しないばかりか、基本的にはその考え方を踏襲している。その具体的な表れが、鳩山総理を始めとする経済危機認識の甘さを持つ大臣の存在や小泉礼賛の民間人から選ばれた事業仕分け人の採用である。

 もう一つ、基本的な問題点を指摘する。八ッ場ダム建設中止では、形式的にはマニフェスト至上主義に一見徹しながら、拙文「八ッ場ダム建設中止問題について」で指摘したように、マニフェストの趣旨を逸脱したご都合主義に陥っている。またマニフェストにも掲げていない、もっと言えば掲げられなかったのに、外国人への参政権付与を推進しようとしているのは、マニフェスト至上主義に極めて矛盾している。ご都合主義そのものである。民主党のいい加減さを痛感せざるを得ない。

 

 最後に、一国の総理としての自覚の欠如を端的に示す、国際会議での発言を取上げる。

 鳩山総理は1114日、アジア太平洋経済協力会議APEC)関連のフォーラムで講演し、アジア太平洋地域の協力促進策の一環として、海外での災害救援などのため、自衛艦に外国人や民間人を乗せて災害地や紛争地に派遣する「友愛ボート」構想を明らかにした。自衛艦に外国人や民間人を乗せて任務を行わせるという発想をする総理には、日本国民の命、財産、領土を守る覚悟が欠落している。こんな「宇宙人」を総理に選んだ国民も大反省しなければならない。

 

補足 普天間問題を巡る鳩山総理とオバマ米大統領との間の齟齬について(2009.11.19)

 本1119日付けの朝日新聞の一面に、『普天間問題「私を信頼して」 首相、米大統領に』というタイトルの記事が載った。内容は13日に行われた日米首脳会談での両者の普天間問題に関するやり取りとその後の両者の発言の齟齬に関するものである。記事の一部を次の【 】内に紹介する。

 

13日に開かれた日米首脳会談で、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題への対応をめぐり、鳩山由紀夫首相がオバマ米大統領に対し、「私を信頼してほしい」と伝えていたことが分かった。日米外交筋が明らかにした。オバマ氏は翌日の演説で、閣僚級作業部会を通じて日米合意を履行するとの認識を示した。首相の発言を聞いて合意通りに進むと受け止めた可能性がある。…

 首相は会談後の共同記者会見の冒頭で「『バラク』と『由紀夫』という呼び方も定着してきた」と発言し、オバマ氏との信頼関係の深さをアピールしていた。しかし、オバマ氏が翌日の演説で示した認識に対し、首相はアジア太平洋経済協力会議(APEC)に出席するため訪れたシンガポールで、作業部会は「日米合意が前提ではない」と記者団に指摘。両首脳の認識の食い違いがあらわになった。

 オバマ氏の発言を直後に否定したことで、米側に不信感を与えた可能性もある。】

 

 日米首脳会談を報じた、14日付けの朝日新聞は、『米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題では、首相が閣僚級の作業部会の設置により「早期に解決する」と述べ、大統領は「作業を迅速に終らせたい」と応じた。』としている。

 鳩山総理の「私を信頼してほしい」、「早期に解決する」という首脳会談での発言を受けて、オバマ大統領が、「閣僚級作業部会を通じて日米合意を履行するとの認識を示した」のは、極めて自然である。鳩山総理が「日米合意が前提ではない」と言ったことで、「米側に不信感を与えた」に違いない。記事にあるような「米側に不信感を与えた可能性もある」という程度のことではない。

 「日米合意が前提ではない」とすれば、誰が考えても「早期に解決する」ことはできない。しかも「日米合意が前提ではない」ということを会談では言わないで、「私を信頼してほしい」と発言すれば、日米合意を双方で履行すると、オバマ大統領が受け取るのは当然である。

 

 やはり鳩山総理は、自分の言っていることの意味やその重みについて理解しないで、極めて独り善がりの発言を軽率にしていている。非常識を通り越して、精神分裂症的でさえある。こんな人が総理で、大事な外交を行っているのである。恐ろしいことである。「宇宙人」と揶揄するだけでは済まされない。

 

追加 鳩山首相の発言(2009.12.3)

 本3日の社民党の福島党首の「辺野古沿岸に基地をつくるなら重大な決意をしなければい」という発言を受けて、鳩山首相は、「重く受け止める」としながらも、「日米合意も重く受け止めねばならない」と述べたそうである。上記したように、オバマ大統領との会談後に「日米合意が前提ではない」と日米合意を軽視してることと、整合性をまったく欠いている。しかも両方を「重く受け止め」て、どう決着しようとしているのであろうか。毎度のことながら、総理としての資質を疑う。

 

追加2 鳩山首相の本日の発言(2009.12.4)

 本4日の信濃毎日新聞の夕刊は、普天間移設問題で、次のように報じている。

 

 鳩山由紀夫首相は4日午前、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設問題で、日米合意のキャンプ・シュワブ沿岸部(名護市辺野古)以外を検討するよう指示したことを認める一方、「当然のことながら辺野古は生きている」と述べた。公邸前で記者団に語った。
 さらに「社民党の問題も出ている中、(岡田克也外相らには)積極的に力を入れて検証してもらいたいと申し上げた」と述べ、指示の要因が移設に絡み連立離脱を示唆した社民党の動きであることを明らかにした。
 その上で「日米合意は重い。他の地域もないのかということは前から言っている」と指摘。「(辺野古案も含め)あらゆるものを検討しなさいと申し上げた」と述べた。

 

 本日とこれまでの、この普天間移設問題に関する鳩山首相発言を理解できる人はまずいないであろう。ひょっとすると、ある程度時間を掛けて、一生懸命に努力した姿を見せれば、どんな結論になっても、仮に基本的には日米合意に沿うことになっても、国民は理解してくれると思っているのかもしれない。このように考えると、一連の発言は辻褄が合う。こんなことで首相が務まると思っているとしたら、呆れる他はない。だがこの宇宙人には、あり得ることかもしれない。

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