民主党のマニフェストについて(2009.8.1,7)

1.はじめに

 民主党は7月27日に、衆院選マニフェスト(政権公約)を発表した。評価すべき内容もあるが、一番肝心な未曾有の経済危機と財政再建にどう対応するかという問題についての意識に欠け、これに対する景気施策がまったく欠落している。

 

2.日本沈没を招く民主党の経済施策

 民主党政権が新しく採用する政策を実行するために、今後4年間に総計49.7兆円(H22:7.1兆円、H23:12.6兆円、H24:13.2兆円、H25:16.8兆円)が必要だとしている。その財源として、平成25年度では、公共事業の見直し、人件費の削減、ムダづかいの根絶などで9.1兆円、埋蔵金の活用で5兆円、租税特別措置などの見直しで2.7兆円(合計16.8兆円)を充てるとしている。

 財源の大半が公共事業の見直し、人件費の削減、ムダづかいの根絶、租税特別措置などの見直しなどとなっている。こうして捻出された財源を別な施策に回しても、政府の支出の性格が異なるために富の配分に質的な差はあるものの、量的により多くの新規の需要を生む効果はない。したがって、マクロ経済的には、景気にこれまで以上の影響を与えない。つまり景気対策効果の増分はない。仮に埋蔵金活用の5兆円が純増だとすると、4年間で20兆円が経済危機と財政再建に対応した財政支出ということになる(毎年これだけの埋蔵金が充てられるかという疑問はあるが)。この程度の財政出動での需要増では、未曾有の経済危機と財政再建を乗り切ることは不可能である。つまり、民主党には未曾有の経済危機回避と財政再建が必須という意識がないと言わざるを得ない。尤も自民党も未曾有の経済危機と財政再建に対する施策は中途半端で、ほとんど対策になっていない。しかし、一応未曾有の経済危機と財政再建に対処しなければならないという認識はある。

 今度の選挙で、仮に民主党が政権を獲得しても、最も肝心で喫緊の対策である、未曾有の経済危機と財政再建に対する対策が欠落していて、日本沈没のピンチを迎えようとしている。各政党やマスコミを含む世論が 、将来の増税を伴わない国債発行か政府通貨発行による思い切った財政出動をするしか、危機を避け、財政を健全化する方法はない(拙文「日本経済再生への唯一の方策」、「丹羽春喜氏の「政府貨幣発行特権活用論」について」参照)と、一刻も早く気付かなければならない。今のところ国民新党だけがこのような認識を持っている(注参照)。もし民主党政権が誕生し、国民新党もある程度議席を確保して、連立に参加できれば、若干の希望がある。取り敢えずこれに期待したい。

 国民新党が3月に発表した「緊急提言」

(http://125.206.121.105/seisaku/20090313.shtml参照)

 この「緊急提言」の冒頭説明の部分を次の《 》内に示す。

《国民新党の経済対策は200兆円。毎年、30兆円の公共投資と10兆円の減税を5年間継続するものです。世界第2位の規模を持つ日本経済には、大規模な対策が必要。また複雑な経済へは継続的に対策を打たなくては効果はありません。小額で短期的な経済対策は、政治家が社会への責任を忘れた単なるパフォーマンス、選挙目当てでしかないのです。》

 なお、はっきりとした財源があり、将来の増税も伴わないことが明記されている。是非全文を上記サイトで確認してほしい。

 

3.小泉改革の総括の不徹底

 民主党のマニフェストでは、後期高齢者医療制度の廃止、医療崩壊の食い止め、郵政制度の抜本的見直しなどの、小泉改革の個々の施策についての改善を挙げている。だが、そもそも小泉改革が日本の一部の人たちやアメリカのために、日本社会を破壊し、多くの日本国民に犠牲を強いた、犯罪的施策であったことを総括すべきであった。そうしてこそ、自民党に代わって政権を担当する意義を国民に訴えられるし、個々の施策の内容を深めることができるというものであろう。

 

4.あとがき

 民主党のマニフェストについて、必ずしも正確に報道されていない。民主党のサイト(http://www.dpj.or.jp/special/manifesto2009/)「民主党の政権政策Manifesto2009」の中には、かなり重要な政策がある。例えば議員の世襲禁止、企業団体献金の禁止などである。しかしほとんど報じられていない。これらは自民党政権では実質的には不可能であろうから、民主党政権に期待したい。ただし、これまで企業団体献金を受けていた 各民主党議員及び党として、心からの反省が欠かせない。これがなければ、抜け道が残される懸念が残る。

 自民党関係者は、民主党の4年間 に必要とする総額49.7兆円の“財源が無責任で極めてあいまいだ”と批判している。ところが自民党自身が国債発行への間違った認識を持ったまま、これを財源としていて、説得力に欠ける。批判するとすれば、本文で指摘した、“未曾有の経済危機と財政再建にどう対応するかという問題についての意識に欠け、これに対する景気施策がまったく欠落している”と言うべきである。

 その上で、自身の策も中途半端であることを反省し、思い切った財政出動施策を提唱してほしい。エコノミスト・菊池博英氏の近著「消費税は0%にできる」(ダイヤモンド社)に詳述してある日本経済分析を的確に理解すれば、こうした施策に自信が持てるはずである。

 

追加 民主党、年末にも財政再建の基本方針をまとめる?2009.8.7
 本8月7日付けの信濃毎日新聞朝刊に、「財政再建 民主、年末にも基本方針 4年後の数値目標も」という記事が載った。この記事にもあるように、“「財政再建に触れないのは無責任」との与党などの批判にも配慮したとみられる。”選挙後には政権担当の可能性の高い党の衆院選マニフェスト(政権公約)で財政再建に触れないでいて、批判を受けて、慌てて新たな財政再建の基本方針をまとめる方針を固めるという体たらくである。これだけで、政権担当能力を疑う。しかも、無意味な「プライマリーバランスの黒字化を図る」としている。思い切った財政出動による有効需要の創出でしか経済危機と財政再建には対処できない。選挙後は与党になる可能性のある国民新党の「緊急提言」をじっくり勉強してもらいたい。

 

< ホームへ >