整備新幹線の並行在来線問題について(2007.12.19,25)

 長野(北陸)新幹線の長野以北の在来線の扱いが問題になっている。そうした中で、九州新幹線長崎ルートの並行在来線の運行を引き続きJR九州が担う方向で佐賀、長崎両県の三者で合意されたと、17日付けの信濃毎日新聞夕刊は報じた。見出しが「新幹線長崎ルート 在来線経営分離せず」とあったので、好ましい方向に動き出したものと早合点したが、記事を読んでみて、がっかりした。

 筆者は別拙文「新幹線開業に伴う在来線のJRからの経営分離施策は誤り」や「整備新幹線開業に伴う在来線経営分離施策は誤り」(「建設オピニオン」平成18年8月号)などで、この施策は国の責任を地方に押し付けているし、整備新幹線以前の新幹線沿線との公平の原則にももとり、間違った施策であると指摘した。また諸外国で採用されている、上下分離方式(下のインフラ部は公で上の営業活動は鉄道組織で運用する)を検討するように提案した。
 今回の合意は、確かにこの上下分離方式を採用し、線路など鉄道施設を佐賀、長崎両県が保有し、JR九州が運行を行うとなっているが、国の責任の部分はまったく欠落したものとなっている。これでは抜本的な解決にはなり得ない。依然として、国として考えなければならない部分を両県とJRに押し付けている。

 報道によると、政府・自民党は並行在来線の扱いを見直しているようである。長野県の村井知事も陳情し、その行方に期待をしているようである。しかし、今回の長崎ルートの並行在来線での合意のようなものでは、ほとんど意味はない。国の財政施策という基本と社会資本施設の整備という根本的な観点から、整備新幹線建設を位置付けて、抜本的な見直しを是非行ってほしい。

追加1 信濃毎日新聞「建設標」への投稿について(2007.12.25)
 本ページを載せた同じ日(12月19日)に、信濃毎日新聞の「建設標」へ、下記の文を投稿した。これまで何の連絡もないから、掲載不可となったようである。

整備新幹線の並行在来線問題の解決を
 長野(北陸)新幹線の長野以北の在来線の扱いが問題になっている。そうした中で、九州新幹線長崎ルートの並行在来線の運行を引き続きJR九州が担う方向で佐賀、長崎両県の三者で合意されたと、17日付の本紙夕刊は報じた。見出しが「新幹線長崎ルート 在来線経営分離せず」とあったので、好ましい方向に動き出したものと早合点したが、記事を読んでみて、疑問を感じた。
 新幹線開業に伴う在来線のJRからの経営分離施策は国の責任を地方に押し付けているし、整備新幹線以前の新幹線沿線との公平の原則にももとり、間違った施策である。諸外国で採用されている、上下分離方式(下のインフラ部は公で、上の営業活動は鉄道組織で運用する)などを導入すべきである。
 今回の合意は、確かにこの上下分離方式を採用し、線路など鉄道施設を佐賀、長崎両県が保有し、JR九州が運行を行うとなっているが、国の責任の部分はまったく欠落したものとなっている。これでは抜本的な解決にはなり得ない。
 国の財政施策という基本と社会資本施設の整備という根本的な観点から、整備新幹線建設を位置付けて、抜本的な見直しを是非行ってほしい。

追加2 JR九州、佐賀、長崎両県の三者合意内容について(2007.12.25)
 合意内容の骨子は次のようである。
(1)JRは長崎線を経営分離せず、特急の運行本数削減と非電化などを行った上で、運行を20年間継続する
(2)佐賀、長崎両県は並行在来線区間の鉄道資産を14億円で買い取る形で、運行経費の一部を負担する
 なお、試算によれば、新幹線開業後には年間1億7千万円程度の赤字が発生し、このうち1億円をJRが、7千万円を両県が負担し、20年間で14億円になるということから、40億〜50億円と見られている鉄道資産の簿価を大幅に下回る額での譲渡にJRが応じている。
 いずれにしても社会資本整備という国家的観点から整備新幹線建設が必要なのだという認識が欠落し、関係する地方とJRに負担をしわ寄せした、理不尽なものとなっている。これまで何度も指摘しているように、鉄道のような社会資本を運賃収入だけによる採算性で議論するのは間違っている。

追加3 建設事業費について(2007.12.25)
 国交省は平成20年度の整備新幹線の総事業費として3069億円を予定している。財源内訳は、国費706億円、地元自治体負担分1023億円、既設新幹線の譲渡収入724億円、借入(将来の譲渡収入を返済原資)616億円となっている。ここでも約3分の1を地元に負担を強いていて、整備新幹線までの新幹線にはなかった無理を地元に強いている。在来線の扱いと共に、早急に改めるべきである。
 ほぼ3年前の平成17年の1月に、拙文「新幹線着工に関する平成16年12月18日付けの朝日新聞の社説について」で事業費の大幅増を指摘した。当時より増えたとはいえ、事業費はまだ3000億円強で、道路に比較して少なすぎるし、例えば北陸新幹線の長野以北への投資が長年に亘って行われ、それでも金沢までの開業はまだ7年後で、投資効果の観点からも極めて問題である。増税なき財政再建と景気回復のため、思い切った財政出動の目玉として整備新幹線への投資を位置づけるべきである。

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