地覆コンクリートのひび割れについて(2000.7.31)
最近早期劣化が問題となってから,温度変化,乾燥収縮などで,コンクリートにやむを得ず発生するヘアークラックまでも,施工不良だとして改善を求める発注者が目立ってきている。筆者も多くの事例で見解を求められたり,間接的に耳にする。これは筋違いな要求である。的確な判断に基づく管理を発注者に望みたい。本文はその一例で,平成12年5月に,地覆コンクリートのひび割れについて相談を受けてまとめたものである。
1.ひび割れの発生状況
全長56.2mの鋼製の側歩道橋の地覆コンクリート(上面の幅400mm,下面の幅220mm,高さ461mmの逆L型の鉄筋コンクリート)に,橋軸方向に測って,ほぼ300mm間隔に幅0.04〜0.08mmのひび割れが発生している。2.原因の推定
この地覆コンクリートは平成11年4月28日に打設されているが,その前後の気象状況は次のようである。
月/日 4/25 4/26 4/27 4/28 4/29 4/30 5/1 5/2 5/3
最高気温 ℃ 21.8 15.6 22.0 16.9 22.2 21.6 19.8 23.1 20.1
最低気温 ℃ 7.3 13.5 12.3 10.3 8.2 8.9 13.2 12.6 11.7
湿度% 26 91 51 48 36 45 62 57 44
天候 曇り 雨 晴れ 晴れ 晴れ 曇り 曇り 晴れ 晴れ
このように,コンクリート打設の翌日と翌々日は気温差が13〜14℃もあり,湿度もかなり低い。コンクリートと鋼の熱膨張係数は1℃につき,ほぼ10−5であるが,コンクリート打設直後は水分が多く,鋼との間で温度差(鋼のほうが高い)が生じやすいので,仮に温度差を10℃とし,300mmのコンクリートと鋼の伸びの差を計算すると,0.03mm(300x10x10−5)となる。またコンクリートの強度はまだ十分出ていないし,コンクリートの乾燥収縮もあるから,ほぼ300mm間隔に0.04〜0.08mm幅のひび割れが発生しても,決して不思議ではない。この推定は発生しているひび割れが全面に貫通しているようであることからも裏付けられる。3.あとがき
この種の鋼構造に付属した鉄筋コンクリート構造では,条件次第でこの程度のひび割れの発生は避けられないものである。通常この方向に発生するひび割れは強度的な心配はないし,この程度のひび割れでは,耐久性上からも特に心配はないものと判断される。他の同じような構造物でも,発生間隔と幅に若干の違いはあるとしても,ある程度のひび割れ発生が観察されるはずである。したがって,もし造り直したとしても,同様な結果になるものと思われる。因みに,鉄筋コンクリート構造では,荷重作用によって発生するヘアークラックでさえも,やむを得ないものとして容認されている。
なお筆者は東海道新幹線の建設に従事して,様々なひび割れの発生を経験し,以来コンクリートに発生するひび割れについては関心を持ち,各種のひび割れの原因推定と対策に関与してきている。また昭和61年に起きた「長野市街地の亀裂」(『長野市街地の亀裂』騒動−その1−,『長野市街地の亀裂』騒動−その2−)についても発言している。