2013/07/14
森宮 照
小噺的小説
十数行くらいの、短めのお話。或いは続刊する、かも。
※取りあえず12本に成ったんで、一区切り
2013/09/29 極短編小説「確認飛行物体」
2013/09/22 極短編小説「着地点は猫の額」
2013/09/15 極短編小説「スマホスタンドにもたれかかる鉛筆」
2013/09/08 極短編小説「月がいっぱい」
2013/09/01 極短編小説「猫に擬態」
2013/08/25 極短編小説「薫風と菫の動物園」
2013/08/18 極短編小説「荒廃した世界のベースボール」
2013/08/11 極短編小説「イパネマのドラ息子」
2013/08/04 極短編小説「黙れ大仏!」
2013/07/28 極短編小説「イカした車は東へと向かう」
2013/07/21 短編小説「目詰りを起こした感情論」
2013/07/14 怪奇短編「蓮子等」
2013/09/29
極短編小説「確認飛行物体」
ある意味で、夢オチ?
★
・・・その鳥の行動は、正直良く解らなかった。
ともかく近くに寄っては、少し見回して、それから飛び去っていく。
しばらくするとまたやってきて、トコトコと、周囲を何故かうろつき廻る。
餌を求める鳩・・・ちょっとそんな気分はしたが、今は仕事中、餌など持っていない、
付近に巣でも有るのだろうか?と見回したが、それは発見できなかった。
・・・ふと頭上を、影が横切る。見上げると・・・鳶、それが飛んでいった。
ふと、不自然な気分がした。羽ばたかない・・・、風に滑空する紙飛行機の様に、
翼は微動だにせず、尾羽根が少し左右に・・・機械的に?・・・動いて、そのまま、
それは全く羽ばたかないまま、向こうの林へと消えていって、見えなくなった。
−ラジコン飛行機みたいだ−
そんな風に感じた・・・その時に、不意に「ヘタだな、もっと演習してから乗れよ」、
そんな空耳?が聞こえた、その気配にふと振り返ると、そこに同じ方向を見ていた、
さっきの鳥がいた。まさか、そう苦笑していると、また空耳。
「おいおい、周波数下げすぎだぞ?全部聞かれてるっつーの」
「おめーみたいに下手な乗り方しねー限りわかりゃしねーよ。なあ、そこの人?」
そう言ってから?その鳥はなんだかお辞儀をしてから、飛び去っていった。
2013/09/22
極短編小説「着地点は猫の額」
とある、航空機の目線
★
…今はもう、いつ戦争が始まって、俺がこんな状態になっちまったかさえ覚えてない。
解ってる事は。自分は今は核兵器を抱えてた爆撃機に乗って発進し今は抱えたそれは、
載ってない事だけだ。何度目の、こいつに”載って”の爆撃かもう忘れた。それでも、
数十回でしかない筈だ。今の自分はもう。1、2、たくさんとか?計算してたらしい、
そんな原始人と大差ない。体がスティックを操る度に、それでも聞こえる駆動音が、
なんだか眠気を覚ましてくれる。乗っているんじゃない、俺は、”載っている”のだ。
戦争が始まって直ぐ、世界は核兵器の打ち合いになった。良くも悪くもだ。幾つか、
双方だ、敵に命中して壊滅的な被害を出したが。殆どは途中で撃ち落とされた。原爆、
その重さや精度へそれまでに十二分な防衛網が構築されていた両国はやがて全面的な、
物理的衝突へと発展。自分も最初は歩兵だった。気づいた時には被弾し四散していた。
自分は運が良かったのかどうなのか。体の半分以上を吹き飛ばされても生きていて。
国はそんな俺へ、わざわざ機械の体を与えて蘇生させた。蘇生に対して条件は出てた。
戦闘機へのパイロットに転職しろと言われた、二つ返事だ。だから俺は、今日も空を、
この”体”と共に飛んでいる。良くも悪くもだ、放射能に汚染された水を飲む必要は、
今はない・・・もっとも、”補給”されるそれが汚染されてないとは。思ってないが。
既に、地表の生命の8割近くは滅んでしまったらしい。高濃度の放射能汚染だ。
死の雨なんか日常茶飯事で、多分、人間と言える存在ももう居ない。殆どが俺の様な、
半分機械で出来た体で暮らしている・・・自分は特にひどい有様だ。人型の体は、
この戦争が終わってからで無ければ貰えないと来た。放射能にまみれた世界の空を、
今日も任務をこなし帰っていく。雨あられと飛んでくるミサイルや敵機をかわすのは、
まだ楽しい。猫の額ほどのターゲットにブチ込んでやった時は。スカッとする。
今、眼下に見えるのは空母だ。それでも、幾つか被弾した機体で正確に降りるには。
流石に不具合が出てる。着艦にこんな緊張するのは久しぶりだ。ゲームの難易度がずい分、
上がっている。空母の滑走路が見える、博打をするには狭すぎる。危険だ。
ふと思った。目の前に麻雀の牌。安牌は無い。降りたくても今はもう自殺も出来ない。
猫の額と、空疎な期待と。結果が同じなら…どっちがマシだろう?
2013/09/15
極短編小説「スマホスタンドにもたれかかる鉛筆」
今は昔か、今も昔か。イメージはなんだか
★
目の前には、コピー用紙がある。
もちろん。・・・いやそれじゃ困るが、白紙だ。
締切の時間はまだ結構、ある。だから、焦る必要はそれほど無いのだが。
いつもの事だ。時代錯誤、だ。シャーペンでさえない。鉛筆と、コピー用紙。
「デザイナー」と言う仕事は、なかなか仕事と言う認識に成らない。肩身の狭さが切ない。
サブカルチャーの業界なら尚更か、コピー用紙に描いたラフスケッチで数億?とか、言うのだ。
実際、実は仕事?の大半は、健康維持に費やされる。ロボット玩具が何故大概人型をしているか、
それは自分の中では一つの答えは出ている。作中で敵と戦い逃げ回るそれは、”誰か”だ。
現場の扱いはひどいモノだ、カタログスペックを盲信しすぎる気はする、そもそもロボットであって、
消耗品でしかない。昔の歩兵の気持ちが解る。”上”の連中は、勝手な事しか言わない。
昔は、パイロットが頑張ってくれたが。今はスマホ片手に乗るような感じ。現場の苦労は絶えない。
もっとも、最近は。そういう感じでもなくなったか。昔みたいに一人が全部創るような事が無いからだ。
システムが整備され、かなり軽く?は成っている。昔はウルトラマンだが、今は本当にロボットの様だ。
とは言うが。そのロボットに載って戦っているのは自分だ・・・、そこは変わってない気は、する。
今回も。流石にスペースコロニーを一機で運ぶのは・・・、骨だ。何機いても同じ事かもしれないが。
今の所スマートフォンは、この局面では当てにならない。検索してる時間にやられそうだ。
結局、白紙のコピー用紙に鉛筆を走らせるのが一番、正解に近い。パワーも出る。
今回の作品では、主人公機は強力な槍一本で戦う。万能の槍を手に、世界を救うそうだ。
スマホを脇に置いたまま。ついでに買った、スマホスタンドに鉛筆を立て掛ける。
鉛筆は偉大だ。何度世界を救ったか解らない最強の兵器。まだ、ここに有る。
2013/09/08
極短編小説「月がいっぱい」
そろそろ月見の季節ですか
★
その扉の向こうには、月の世界が広がっている。
月の世界、そこは地球とは異なる環境だ。地球の月は重力が1/6だが、”月”
への扉は幾つかあって。ともかく解っている事は。そこは地球とは違う環境だと
言う事だ。独自のルールがあって、独自の生態系とかがあって。美的感覚も微妙
に違う。とある月には猫しか居なかった。誰かがそこに白い犬を持ち込んでみたが。
やっぱり、その犬も居心地が悪くなって吠えてばかりいて、連れ戻してもらったらし
い。
月は、いっぱいある。月への扉が見つかったのは最近の事だ。訳知り顔で「ず
っと昔からあるよ」そんな事を言う奴もいるが。月への扉はごく最近見つかったモノ
だ。それまで夢だった事が、現実だと解った。知らずに迷い込み、地球から消え
た人々が見つかったりもした。喜んで帰ってきた者もいれば、そのままその月の
世界で暮らしている人も居る。
月の世界は、現実と大差ない。ただ今でも、”そこ”がどこなのか、解っていない。
調査が続いているが、今の所は芳しい成果は出ていないらしい。地球の月の表面は、
相変わらず殺風景なクレーターが広がり大気も無いが。地球の月の世界は、綺麗
なウサギ達が暮らしていて、おとぎ話の何かの様に、緑広がる奇妙に牧歌的な世
界だ。
猫の居る月に送られたその白い犬は、それ以来すっかり、猫が嫌いになった、らしい。
2013/09/01
極短編小説「猫に擬態」
文芸ですから、と言うのを前提にしても、このくらいの猫は居そうな
★
目の前で寝ている猫は、賢い。
どのくらい賢いか?と言うと、今が危機的状況である事を理解しているくらいだ。
猫の向こうでは、花瓶が割れている。花が活けてあって、インテリアとして飾ってあったモノだ。
花が散乱し、水は散らばって辺りを濡らしている。猫を飼う前は気にもしていなかった事を、
今は気にせねばならないと。解っていても、今まで通りと言うのは甘美な響きだったかもしれない。
うっかりはしていたのだ、ともかく目の前の猫は、寝ている。
本人は、そのつもりはないだろう。自分がちょっとドジを踏んだ事を理解しているくらいだ。
ここは、ノラだったこの猫を飼い始めた酔狂な奴の部屋の中で、部屋のインテリアはそいつの私物であり、
それが壊れたとしたら、それは猫にしても、自分が捕ったネズミを横取りされた位には許し難い事だ、
そのくらいの理解はしているのかもしれない。
じゃなければ。目の前の光景を説明はし難い。
何だか、腹を出して。ぐったりしている様にも見える。口を半開きにして、薄目を開けて、じっとしている。
もしかしたら、これで助かった事が有ったのかもしれない。ともかく近づいて、少し揺すってやる。
最初は強情だったが、やがて眼を開いて起き上がり、一度自分の顔を見てから、餌場の方へ歩いて行った。
相手が人間なら、何か事件でもあったのかと疑って良いシーンだ。花瓶が壊れ、散乱し、
その前で寝ている奴は、動かない。殺人事件か何かが発生したのか、そう考えても良いシーンだが、
寝ている犠牲者?それは猫だった。あの猫が何を考えてぐったりと寝ていたのか、想像するに怖くなるが滑稽でもある。
ともかくあの猫は。賢いかもしれないが少しドジで、うっかり部屋主の花瓶を倒して壊してしまった。
その気まずさを何とか、回避しようとしたのだ。
ともかく、不思議な猫かもしれない。”擬態”の技を持ってる。
あまり意味も無さそうだが、飼っておいて、損も無いだろう。
2013/08/25
極短編小説「薫風と菫の動物園」
油断は禁物、的な
★
薫風(くんぷう)は、今日も、動物園に出向いた。
そこは普通のそれとはちょっと違う。みんな、少女の姿をしている。
薫風には、良く行く檻がある。そこには”菫(すみれ)”と言う名のキリンがいて。
薫風は金を持って居るので。その檻の中に入る事が出来る。楽しいひと時だ。
その夜も、薫風は菫と楽しく遊んで、そして二人で、眠りについた。
次の朝、薫風が首筋の痛みで目を覚ますと。隣で寝ていたはずの菫は姿を消していた。
気付くと、首に奇妙な”首輪”がされていた。ワイヤーが少し食い込んでいて、
首の後ろには箱状のモノがあり、激痛はそこから発せられていた・・・刺さっている。
動物園は、もぬけの空・・・だ。そして薫風は檻の中に居た。檻には鍵が掛かっている?
ともかく、檻を破る事が出来ない。そのまま狼狽えつつ、気づく。ワイヤーが少しずつ締まってくる。
様々な事が頭をよぎる。後ろの”それ”が、爆弾だったら?自分だったらどうするだろう?
切ったとたんに爆発する様にする。もちろん止められない様に、万全の対策はするはずだ。
これは、気まずい状況だ。薫風は悩んだ、とにかく首輪を、直ぐに、外さねば、ならない。
何故、こんな事になったのか。とにかく、首輪を外す方法はある筈だ。
2013/08/18
極短編小説「荒廃した世界のベースボール」
遊びは何をもたらすか、ある老人の視点
★
今から数百年も前の話だと言う。その穴から、巨大な怪物らが現れて、人々の生活圏を脅かした。
人類は当初、彼らを恐竜の様な存在だとしか、思っていなかった。重火器やヘリ、戦闘機、ミサイル、
数多存在する兵器を駆使して殲滅出来る存在だと、そう考えていたが。「大崩壊」と今は呼ぶ、
大規模な掃討作戦の結果。恐竜達は違うモノへと変化していた、口から炎?を吐き、空を飛び、
異様な触手を伸ばし、人間を狙い、食い始める。防壁は恐竜達の火力に全く意味を成さず、
核兵器は奇妙なバリアー?に防がれ、逆にそれを糧にでもしているのか・・・、より、増殖を始めた。
近代兵器が意味を失って、なのに、それでも人類は何故か・・・滅びはしなかった。
ふと目の前を、バットとグローブを持った少年らが、走っていった。
今は、「ハンター」と言う人々が、人類の生活圏を守る”仕事”をしている。最早「怪獣」だ、元は、
子供らのあこがれでも有った恐竜が”変質”したそれは。何故か人類が手にする刀剣などの武器、
そういうモノなら倒す事が、出来た。怪獣共は、人類の文明を食い尽くそうとしていて、それは今も、
彼らの主な行動原理ではある様で。だから”ここ”は、その近代文明を捨てた村は、それでも奇妙に、
牧歌的な日常が続いている。
村の外に出れば、そこは怪獣共の暮らす荒れ果てた荒野だ。村から村へ移動するにも命がけ、
そんな世界で今日も、子供達は広場でベースボールを続けている。この新しい時代に生まれた、
彼らはこの世界を狂っているとは思わない、らしい。子供らは、真剣に、球を追い掛け、投げる。
それは奇妙な真剣さ、だ。この村は平和だ。怪獣共が襲ってくる事が何故か、無い。
ただ自分の目からすると、子供らの野球への真剣さは、少し度が過ぎている気は…する。
彼らには、自分には見えない何かが見えていて、”解っていて”、或いは戦っているのか?
何故かふと、そんな事を思った。
2013/08/11
極短編小説「イパネマのドラ息子」
その人は、そこに居る
★
自分は今は、イパネマの海岸でサーファーショップを経営?してる。
親は近くにデカいホテルを持ってる、リオデジャネイロでデカい銀行の頭取でもあり、
やり手だ。とは言うが一応、店の資金は自前で出した。そのくらいは。金を持ってた。
イパネマの波は今も穏やかで、ウチも、サーフショップと言うより殆ど貸ボート屋だ。
にもかかわらず経営は順調。唯一の懸念としてはサーフボードが売れない事くらいで。
毎日起きて、定時まで店に座り、客の要求に応じてボートを出し、軽いモノを売る。
店を閉めたら趣味の時間だ。店の裏に置いてある自分のボードで、海へと漕ぎ出す。
大波は、無い。天気の悪い日じゃ無ければ小波も無い。夕暮れに成れば陽も赤く、
居るのはまあ。夕日に何かのロマンを求める若いカップル位だ。そういう連中には。
自分のボードなど、自分も含めて見えていないだろう。ジョーズでも来ない限り、
ここには何の問題も無い。水をかいて沖の方へ向かう。波が自分を揺らし始める。
ふと波に揺られつつボードの上で仰向けになる。夕日は照らし、空は夕焼けに染まる。
ここには、何の問題もないのだ。この空の果てから何かが襲来するとしても、
その何かは見えない。突き抜ける夕闇に、やがては星空もきらめいてくる。
今はただ、浮かんでいるだけだ。ただ、それだけの時間。それが過ぎて行く。
サーフボードと共に引き上げつつ、ふと海の方へと視線を向ける。
”ここ”は楽園だ。ただ多分、若い奴が居る場所じゃない。
自分は何故ここに居るのか?それは今は、考えたくない事だ。
いろいろ、あった。自分は今は、楽園に居る。
2013/08/04
極短編小説「黙れ大仏!」
あるアメリカ人から見た、日本の風景
★
昨夜のそれは、夢だ。
昨日の夜、窓の外では怪物と、”大仏が”戦っていた。
怪物は”自分が描いたモノ”で、それを大仏が、街中で派手にねじ伏せていた。
朝起きた時、外は何事も無かったが、アメリカの方では、爆発事故があったらしい。
外を見る。窓から良く見えるところに、巨大な大仏がある、ここからは小さく見える。
自分はアメリカ人だ。日本よりはアメリカの方が好きだ。何故か日本に暮らしてる。
自分の描く物はネットでは相応の評価を受ける、ツイッターやFacebookの評価も良い。
しかし何故か、日本のメディアでは、今の所はウケた売れた採用された事は…無い。
大概、いつもの様に、だ。笑みが浮かぶような傑作が出来た夜は、あんな夢を見る。
日本の街を蹂躙する巨大な怪物、それは、自分の描いた物だと解る。
それはパワフルに光線やら火炎やらを吐きつつ街を蹂躙するのだが。
そんな事をしているうちに、大仏が現れて、倒してしまう。
夢を見た後、大概はアメリカの方で何か事件がある。そして作品は、売れない。
遠目に見えるあの大仏は、コンクリート製の、なんというか安っぽい奴、だ。
しかしそれに、自分の作品はことごとく破壊されてしまう訳だ。仏像光線!とか、
聞こえた時は。うっかり起きてから、目覚まし時計を投げ壊してしまった。
結局あの仏像に勝てない限り。自分の作品が日本で受け入れられる事は無いのだろう。
負ける度に、本国の方では被害が出る。関連性とか、夢での立場とか、自分の罪とか、
いろいろ考えはするが。自分はアメリカが好きだ、日本はそれほどでもない。だから。
何となく、TVを付ける。あの仏像が映っていた。桜祭りの会場から見えるらしく、
それには集客効果もあるらしい?にぎわう人々の向こうで、それがTVを通して、
自分を見下ろしている。相変わらず何か言いたそうだ。ただ、黙れとは、言いたい。
2013/07/28
短編小説「イカした車は東へと向かう」
とある人々の、とある日常風景
★
街で買い物をして。その紙袋を抱える私の隣に、一台の奇妙な車?が止まった。
”そいつ”は、私に車を見せつつ言う。やたら車体からごちゃごちゃと突起が出て、やかましい。
「ヘイ彼女、面白いレースが有るんだが一緒にイカないかい?このイカした車と一緒にさ?」
レース場までイカす音楽を聴きながらのドライブはサイコーにイカしてるぜ?とまで、言う。
レースの事は知っていた、正直、イカれた連中のイカれたレースだ。排気量に上限なし、
4輪で有ればジェットエンジンだろうが亜空間ドライブだろうが。何を積もうとかまわない。
バカバカしいくらいにチューンした車で、生死不問で走る。荒っぽいじゃすまないレース?だ。
もちろん相応金は出る。それで生活するプロも居ると言う話だ。目の前のこいつは違うだろうが。
毎年、そこで何人も死人が出ると言う。目の前のこいつはそれを知っているのかどうか。
「貴方、勝てる自信があるの?」
「もちろんだよ?見ればわかんだろ?この車に勝てる奴は、居ないね」
私はため息をついた。そういう事なら。答えは一つだ。
「遠慮しとくわ、まだ命が惜しいから」
「・・・そりゃ、残念だ」
それで、一瞬顔を歪ませた後、そいつは苦笑しながら。
バカみたいな排気音を立てながら、走り去って行った。
また、溜息をついた。苦笑も混じる。そういう奴も居ないと、盛り上がらない。
進路は東、私は今は、巨大な橋を渡っている。この橋を渡る奴は、その目的は一つだ。
そこに有るのはイカれたレース。現実と空想の狭間を隔てる先に、見えるモノ。
ゲートをくぐればもう、世界は変わる。その時から始まるサバイバルなスリル。
さっきの男と、ゴールで会えるかどうか。それは、賭けてはみようか。
2013/07/21
短編小説「目詰りを起こした感情論」
思い付いた小話的なお話2。毎日、何となく過ごしてますが。
★
1.
電車は今日も、駅のホームにやってくる。ごった返す雑踏、けたたましく鳴る警笛、発射の合図。
感情論的に、歩を進めながら思う。押し込まれる様にその電車の中に入る。席には座れそうも無い。
幸い本当に押し込まれるほどの混雑、それは無いにしても。流石に、退屈だ。ふと思う。何の為に?
営業と言う仕事。自社では製品を創ってない。外部の製品をかき集め、客のオーダーに合わせ、
提案し、売る。販売目標がある、それでも年商50億円の会社だ。自分は先日の給料日には、
約20万円の振り込みを得た。入社してまだ日は浅く、最近ようやく月に20セットほどの販売を達成。
一つの純益は、数%に過ぎない。20セット売っても、10万に届かない。電車が次の駅に付く。
ドアが開き、人々がさらに入ってくる。都心まではまだ少し遠い。これから、この混雑に耐える時間。
感情論的に、お金の為、だ。働かなければ。秋葉原にBDやゲームソフトも買いに行けない。
電車はカーブに差し掛かる。荷重が人々を揺すり、思索を邪魔する。それは、どうでも良い事だ。
ともかくお金が無ければ。
・・・お金を、稼いでいるのだろうか。
商品は膨大で、可能で有れば。全ての商品の個性や特徴を踏まえて最善のセットを提案する、
それが出来れば良い。勉強する必要はあり、今はWEBなどに仕様が細かく載っているから調査、
それは容易い。それでも期待通りには行かず、不具合も多く。先輩が言う。商品は膨大になったが、
”雑さ”が出てきた、粗製濫造。利益と機能性の板挟み、サポートや不具合の調査に時間を取られる。
月に10万の利益と、手取りの20万円と。感情論的に。自分は、良い会社に居るのだ。
2.
電車はやがて、次のホームへとやってくる。都心に近付いてきて、降りる人々が増える。少し空間。
ただ、運が悪いのかどうか。目の前に座って雑誌を読む中年は、まだ立とうとはしてない。最悪、
後10分程度はこのつり革だけが自分の支えだ。再びドアが閉まり、電車が発車する。この中に、
自分と同じような境遇は何人いるのだろう。自分は上か下か。自分の様な人ばかりだったら大変だ。
国家が破たんしてしまう。
毎日、これは、何事もなく続く。問題は起こっていないのだ。人々は自分の様にお金の為に働き、
何だか疲れつつ家に帰って、得たお金を使い何かを買っている。社会はそうやって回っていると誰か。
・・・何かどこかおかしい、気はする。
自分の成績は、しばらくはそれほど伸びはしないだろう。年商50億円の会社だ、それだけの売り上げ、
それがあって、自分がこうしてつまらない話を考えていられると言う事は。問題は起こっていないのだ。
単純に、自分の営業成績がそれほど芳しくないだけの事だ。しかし、どうやれば20万円の利益を、
得る事が出来るのか。社長や先輩方には違う世界が有るのだろう、多分そうだ。
ふと電車の中を見回す。一様に、或いは。自分と同じような顔に見えた。漠然とした不安の様な、
違う様な。そう言えば、何年か前だ。電車が線路を脱線してビルに突っ込んだ事故が有った。ここは、
その線路ではない。ただ、自分が乗った電車は。果たしてどこへ向かっているのか?
窓の外を、昨日と殆ど変らない景色が流れていた。そこに、自分の顔が映っていた。
3.
電車は、やがて、目的の駅に付いた。多くの人々がそこで降りる。自分も流れに流される様に、
電車から押し出される。混雑する駅の改札に並びつつ、定期を取り出して。雑踏は同じ向きに、
進んでいる。やがて駅ビルを出ると、人々はやがてちりじりに、街の中へと消えていく。
横断歩道の前で、信号を待つ。行き交う車、立ち並ぶビル。問題は起こっていない。単純に、
自分の営業成績は振るわず、会社は年商50億円で、月の手取りが20万円なだけだ。僕は。
信号が、青に変わる。スイッチが入った様に、僕は歩き始めた。
スイッチが入った様に、歩いている。スイッチだ、それで、僕は動いている。目詰まりを起こした、
何かのロジックは今は。特に何も言わなかった。だから僕は、ただ前に歩き続けた・・・なんだ、これ?
2013/07/14
怪奇短編「蓮子等」
ちょっと思い付いた小話的なお話。暑い夜にどうぞって言うか、ちょっとざわぞわするアレ。
★
先日、ふと街で偶然同級生に会って。昔は良く遊んだ仲だったから喜んだんだけど、
でも彼は、奇妙にやつれた顔をしているから。どうしたの?と聞いたら、彼は、
ちょっと相談に乗って欲しい事があると言う。二人で近くの喫茶店に入って、
それで話を聞いたのだが。実は彼は、今はもう解散した宗教団体の教祖の側近として、
暫く傍にいた、らしい。その教祖の言う事は何もかも正しく、事業の助言を求めれば、
絶対に上手く行く事を教えてくれる。彼もまたそんな教祖に教えを貰い救われた者で、
いろいろあって彼は、教祖の身の回りの世話をするようになった、と言う。
それで教祖から様々な事を聞いたらしい。教祖は「蓮の芽」と言う指輪を持って居て、
それは拾ったと言うが、ともかくそれを付けてる限りは、間違いをしないのだそうだ。
ただ、教祖は夏でもズボンに長袖を着用していて、それは「蓮の芽」の対価だと言う。
教祖はその頃、病を患っていたらしい。日に日に教祖は窶れて行ったが、医者には、
掛からなかったそうだ。ある日から、教祖は部屋から出なくなって。彼が教祖の言葉、
それを人々に伝える役目になったらしい。だがある朝、教祖は呼びかけても答えず。
彼はだから、その部屋に入った。布団の中で、教祖は死んでいたらしいが、彼は、
それを「失踪した」事にして、そのまま教団を解散させた、と言う。
今に成ると解る、と言う。その「蓮の芽」と言う指輪は、絶対の真理を教えるが、
その代わりに、自分の身の中に蓮の種、の様なモノを飼わねばならない、らしい。
教祖の死体を片付ける事は簡単だったそうだ。あれは、人の死体じゃなかったと呟く。
彼は今、教祖の持って居た「蓮の芽」を持って居る、らしい。
救いを求める人は大勢いる、自分はどうしたらいいと思う?
その時ふと、彼の袖の下にデキモノの様なモノを見た僕は、
思わず逃げたのだけど。僕は、逃げられる…だろうか。
end