ストリード

「苦徒鬼神の村」
 自分が若い頃、TRPG「クトゥルフの呼び声」でマスターを勤め唯一成功した?と言えたセッションを思い出しつつ美化しつつ?再編してみる。今考えるに微妙に奇妙な設定だったが、ともかく何となく思い出深い。これはあくまでストリードなので、これ単体ではまだプレイ出来る物ではない、だろうが。雰囲気は解ろうか。

2010/07/26
森宮 照


プロデューサーシート
タイトル「苦徒鬼神の村」
 概略 TRPG「クトゥルフの呼び声」用シナリオ

コンセプト「何が悪いんだろう?」

ハード的テーマ「山間部の暗闇」否定肯定
 キャンプ地とかは山の中とは言え日差しもある開かれた場所だが、実際に問題が起こる場所は山奥の中とか夜間とか、ともかく不気味な森の中。

ソフト的テーマ「虐げられた者の憤り」肯定否定
 事件のキーになるリーダーとか、閉村された村人とか、とにかく力で押し潰された様な人々の憤りとかが産む暴走と悲劇、そう言う怖さを。

目的 商業的成功
それは無い 目的を達成しない

ディレクターノート
テーマ
表「主人公らを助ける」肯定否定
裏「悪い事は悪い」否定肯定

1990年代の話。バブル絶頂期で、人々は財テクに狂乱していた頃の話。
説明 サークルの誘いで山にキャンプに来てる一行。サークルリーダーの旧家らしい。
行動 でもメンバーの一人二人が幽霊に遭遇したとか騒ぎ。何か隠す感じのリーダー。
事件 やがて、サークルメンバーが一人減り二人減り。リーダーに怪しい動きがあり。
解決 リーダーの目的?が判明、サークルメンバーを生贄にして苦徒鬼神を呼び出す。
オチ 大地震の後、眼下のテーマパークは土砂崩れに埋まる。リーダーの消息は不明。

登場人物
大賀 由良(22)。物語の中心人物。「松山大学郷土史研究会」のリーダー。
納殻 泰造(89)。由良のお爺さん。キャンプ地白川に一人住む。

大賀 優子(16(当時))大賀の妹。4年前に殺害された。犯人は捕まっていない。


実際のプロット。
まずパーティは何らかの事情でその「松山大学郷土史研究会」の郷土調査、と言う名のキャンプに参加する事になる。サークルの目的はフィールドワークでは無く単純に遊び。暇だったパーティはそのサークルメンバーか知人友人で、誘われて参加する事になった。

1日目
パーティはサークルメンバーと共に、長野県松戸市森宮村にあるキャンプ場「白川」にやってくる。頭蛇山(ずだやま)と呼ばれる山の中腹にあるそのキャンプ場の眼下には、近年出来たばかりの巨大遊園地「ふれあいランド」も存在。遊びに関しては立地条件的に最高。夏休み、そこに一週間くらい泊まって、この地区の郷土史を存分に収集しよう、と言う話。男女比率も半々くらいで、目的の半分以上はもちろん恋愛毎とか。キャンプ地「白川」は今は人も殆ど住んでない廃村を利用したもので、古民家を利用したコテージ?がある(と言うか古民家その物。何の改造もしてない)。殆どのサークルメンバーはそのあちこちある家に一時の宿を取っていて、その中に管理人?らしきお爺さんが居る。故に、サークルメンバー同士は結構離れて寝泊まり、と言う事になる。

その管理人らしきお爺さん「納穀 泰造(ながら たいぞう 89)」と、サークルリーダーの「大賀 由良(22)」は結構旧知の仲?らしく、親しく挨拶などをしているが、チェックに成功すると、その納殻氏の視線にちょっと怪しげなものを感じない事も無い。ともかく飯ごう炊さんをし、花火を楽しみ、「明日はふれあいランドに行こう」と言う話で、今夜は就寝、と言う事になる。各メンバーはおのおのの部屋に戻り、就寝するが深夜2時頃、不意に一つのコテージ?から悲鳴。駆け付けるとちょっと半分脱いだ格好のサークルメンバーの男女が焦った顔で「幽霊が出た!」と言っている。コテージの中を確認すると何も居ないが、床に奇妙な水たまり?の様な後が。それに最初に触れたプレイヤーは何故か不意に寒気に襲われ、誰か奇妙な女性の声を聴く。その水たまりを調べると?かなり難易度は高いが「涙」っぽい液体。

「助けて・・・」

後の人々は、その水たまりに触れても聞こえない。「何か見間違えたんじゃないのか?」とかで流されるが、そのまま就寝すると、水たまりに触れたパーティは悪夢を見る。自分が女性で、誰か乱暴な男に森の中で襲われて強姦されようとしている。目が覚めて朝に成り、その夢の話をリーダーが聞くとあからさまに顔色を変えるが。「僕はそう言う話は嫌いなんだ、例え夢でもね」とか言って、それ以上は何も言わない。ただ、チェックに成功すると明らかに何か隠しているかもしれない?事は解る。

2日目
その日に何をするか?はパーティに任されるが、リーダーは「今日は休む」と言ってふれあいランドには行かない。そっちに遊びに行ったパーティは、そのふれあいランドに纏わる顛末を聞く事が出来る。出来たのは3年前で、出来る迄には結構一悶着が有った事。本当は今の「白川」辺りまでが敷地に含まれる筈だったが村があったので出来なかった事。しかし「白川」の住人はその後、みんな村を捨ててしまった事。

キャンプ地に残ったパーティは、リーダーの由良が不意に消えた事に気付く。暫くすると帰ってくるが、何か収穫でも有ったのか少し嬉しそう。パーティ達を(サークルメンバーを)見て、妙な笑みを浮かべる。尋ねると、「君達は神様が居ると思うかい?僕は割と信じる方なんだ。ここに来て良かった」とか、ちょっと意味不明な事を言う。

ふれあいランドに遊びに行った方が帰ってきて、その日の夜も同じ様な感じで就寝。ただ幽霊に取り憑かれたパーティはその夜、前の日と同じ様な悪夢?で目が醒める。それでふと外を見ると、リーダーの由良と納殻が、共に山の方へ消えていくのを目撃する。追跡しようとすると、途中で取り憑かれた人は「駄目・・・」とか言う声を聞き、そのまま森の中に迷い込む事になって朝まで帰って来れない。ちょうど朝方、全く問題が無い頃に帰ってくる事になり、その時はリーダーは何食わぬ顔で出てきて「どうかしたかい?」そんな事を聞く。

3日目
 今日もどこかへ遊びに行こう、と言うと。パーティの中の取り憑かれたメンバーは不意に「袖を引っ張られた」気がする。チェックに成功すると、不意に「行かない方が良い」様な気になる。リーダーは今日はメンバー等と共に河川の探索に出かけていって、もしその直感に従い残ると、今度は森の中から誰かが呼んでいる様な気がする。そのまま呼ばれるとか、不意に感じる「予感」に従い森の中を進むと一本のしめ縄をした巨木へと到る。そこには「苦徒鬼神留殿」と記された祠があり、何か神様を祀ってある、らしい。注意深く調べると、そこに誰かが来た形跡があり、更に調べるなら血の後も有る。難しいチェックに成功すると「誰かがここに動物の生贄でも運んだ?」様な想像をするが、そこに到るまでに、後ろから納殻の老人がやってきて。妙な剣幕で「帰れ!」と言う。ここは神聖なる神の神殿だ!よそ者は入ると祟られるぞ!とか血相を変えて言う。何故?の理由には応えてくれず、帰るしかない。

リーダーが帰ってきて、何だか納殻と何か話をした後。パーティを見る眼にちょっと剣呑なものが混じる事に気付く。二人の会話を聞いてると、「急いだ方が良い」「まだ神がいらっしゃるまでには時間が掛かる・・・。もう少しここに留まらせねば」とか言うのが聞こえて。その夜、外を見ていると納殻老人の家屋に夜遅くというのに灯りが付いているのが解る。ここでその老人の家に近づき中の音を聞く事が出来るが、すると中にリーダーの由良が居て、納殻老人と込み入った話をしている気配。

「苦徒鬼大神様は・・・、本当にいらっしゃるのか?」
「”先輩”に聞いた通りにやった…経過も順調だ。明日にはお見えに成る筈だ」
「教えて頂ければ良いがのう・・・」
「この人数居れば・・・昨日の豚も、しもべの方は喜んでいた。大丈夫だ」
「どうするつもりだ?優子を殺した奴を殺すのか?」
「・・・解らない。ただ、今日改めて思ったよ、”連中”は殺さなければ成らない」
「一人残らずか?」
「ああ」

盗み聞きする会話は、ここで不意に途切れる。ここで直ぐにコテージに帰れば朝まで何も無いが、中の様子を聞き続けると、不意に後ろから気配無く”誰か”に肩を叩かれる。後ろに居るのはリーダーの由良。何をしているのか?を聞かれるが。この時の対応はどうあれ、ともかく何もされず、寝床に帰る事は出来る。

4日目
 朝になると、メンバーの一人が消えている(これは前の日の夜に、パーティの誰かが森の中を探索した場合、そのメンバーが襲われる)。その人物を捜そう!と言う事になり手分けして探すと、森の中に血の後が見える。それを辿っていくと、しかし駐車場に至り。その中にそのメンバーが居て、気を失っている。今の出血は大した事がないが、何だか人為的に手当をされていて、しかし足に何かが巻き付いた様な傷があり、そして引きずられた様な感じで擦り傷だらけ。その人物が目を醒ますと暴れ始める(狂気に陥っている)。「爆弾を作らなくちゃ駄目だ!」、手近にある材料で、爆弾を作り始める。止めるかどうか?はパーティ次第。ただ彼の話を聞くと、「この山には怪物が住んでいたんだ!でかい奴だ、タコみたいな触手が何本もあって・・・わあああ!」とか、なんか一心不乱に。ちょっとメンバーの状況が悪くなり、帰ろう?とか言い出す人が出てくるが、不意にそこで”奇妙な感覚”に捕らわれる。メンバーが「いや、まだもうちょっと居よう」「何か面白い事があるかもしれないし?」「いや良く解らないけど」とか言い出し、パーティも何となくそんな気がしてくる(クトーニアンのテレパシー支配)。リーダーは最初「不味いな」と言う表情をしているが、その様子を見て笑みを浮かべている。「ともかくもう一日ここで過ごそう。彼も大した事無かったんだし」で。みんな不自然に同意。チェックに成功すると、なんかおかしい事に気付く。チェックの成功度合いにより、何か危機が迫っている事も少し実感。パーティ以外の連中は、今は何か、全く危機感を感じていない様な様子に。

この日、比較的自由に動けるのはパーティのメンバーだけになる。ただ殆どの知覚チェック値が半分に成っていて、殆ど何も解らない。パーティの中で幽霊に取り憑かれた人物だけが通常のチェック値で判断する事が出来る上に、更に「とめて!」とか頻繁に聞こえ始める。メンバーの人々がリーダーが言う通りに「山の散策をしよう」に付いていく事になり、彼は「まあ、この人数居れば大丈夫だろう」とか呟く。付いていかないメンバーに対して「命拾いしたかな?」とか苦笑。彼らが居なくなった後、パーティは白川の家々を調べる事が出来る訳だが、その際に、納殻老人の家と、由良が寝ていた家との間に直通の洞穴が有る事も解る。彼はこの通路を通って、メンバーに気付かれずに外に出る事が出来たのだ。

幽霊に取り憑かれたメンバーの脳裏には、不意に「日記帳」の存在が浮かぶ。どこかの家の中に有る!と気付かない場合は、”その家”で何か物が壊れるとか落ちるとかが起こり、調査に入る事になる(何故か今は、納殻老人も居ないので納殻老人の家さえ調べる事が可能。その家で起こる)。納殻老人の家の中を隅々調べると、ある女性の日記帳が出てくる。名前が「大賀 優子」。それを読むと、この白川がふれあいランドを建設する為に地上げに逢いそうになった事、業者の嫌がらせが頻発した事、兄の「由良」はこの地が苦徒鬼神の聖地で有る事からそれに必死に抵抗した事。しかし剣呑さが増してきて、「妹に何か有っても知らないよ?」とか言われたらしい、事。で日記帳は終わっている。大賀 由良はこの地の出身で、「ここに住んでいた人間だった」事がここで解る。脳裏には悲しそうな女性の姿と、恐らく起こるだろう「サークルメンバーの末路」の悪夢が浮かぶ。クトーニアンの生贄にされる惨劇。幽霊の声は最後、悲痛そうに「助けて下さい・・・」とかで途切れる。

この後、パーティがどうするか?は分かれる。もし車に乗って帰ってしまったら、その後にふれあいランドの上の斜面で原因不明の大崩落があり、白川キャンプ地の他、ふれあいランドは壊滅的な被害を受ける事になるがパーティは助かる。ただ、サークルメンバーやリーダーの由良、納殻老人がどうなったのか?を知る事は出来ない。

パーティが由良を止める為に山を登った場合、途中で納殻老人に阻まれる。狂気の表情で「時は満ちた!後は由良が神との謁見を果たすだけだ!邪魔はさせん!」とか言い、杖とかで襲い掛かってくる。その老人を何とか倒すなりして先を急ぐと、やがて地震が始まり、断末魔の悲鳴?の様な声が聞こえる。そこに到ると、数匹のクトーニアンの触手に捻り潰されたメンバーらの光景が。その中で、巨木に向かい祈祷中らしき由良の姿が見える。彼はパーティに気付いてゆっくり振り返るが。「なんだ、来たのか・・・。助かったのに。もう遅いよ、大神様もやがていらっしゃる」とか言う。この後の会話はともかく、暫くすると更に巨大な触手が地面を突き破って現れ、由良もそれに飲み込まれていく。パーティはただ逃げるしかないが、そのルート上にも触手が次々と現れパーティを襲う。ただ不思議と幸運か、逃げる事は出来て。駐車場の車に乗って逃げる事になるが。どんな場合であれ、途中で道路の崩落が起こりその下を流れる河川へパーティは落ちてしまう。

パーティは幸いこの後、気付くと川の岸辺で目を醒ます。全員何とか無事に?助かるが、ふれあいランドや白川付近は原因不明の地震と崩落により壊滅してしまった、らしい。由良が何を目的にしていたのか?それは今と成っては解らないが。ただ彼にとっては或いは、何かの復讐は成された、そう言う事かもしれなかった。と言う結末。


裏設定
「ふれあいランド」は、バブル期に大資本が建てたレジャー施設だが、本来は超巨大ウォータースライダーを?今のキャンプ地「白川」から引く予定で、白川はその為に買収される予定だった。ただ住人がそれを渋り、業を煮やした企業が脅しの目的で大賀由良の妹を強姦しようとし、犯人はそのまま殺してしまう。強姦事件の後、関与の発覚を怖れた企業の方はそこに手を出すのをやめたんで、そのまま村は残ったが。それまでの地上げ?でかなりの住人が出てしまっていて、由良とその両親も優子の死地でもあり居るのに耐え難く、やがて出ていく事になった。廃村に成ってしまった村に、由良のお爺さんだけが残る。由良は妹の「優子」の死後、ちょっと人生に悲観的になり。大学に一浪して入るが、その後も、何もかも金の力で崩壊していく様に世の中への敵意をたぎらせる様になる。大学に入った由良は誘われてサークルに入るが、郷土史を調べ編纂する、とか言うサークルの筈が実体は単に遊び歩くだけのサークルで。失望?と言うか。ただ入学当時のリーダーが、そんな失望する彼に何故か「ものは考えようだよ?ここに居る連中は、本当に、”どうでも良い奴ら”だ。どんな運命が待っていようと受け入れるよ」とか言う。「これからは多分君がリーダーだ。そして君の願いも叶うだろう」とか言われ、それから彼はその卒業?したリーダーの後を継ぎ、サークルのリーダーと成っていく(このリーダーの記録は調べても在学記録さえ無い。ニャルラトテップが化けてる)。その後もサークルは単に山々を遊び歩くだけだが、リーダーだけは目的があって。そうして集めた資料とかを元に、彼は元の村に帰ってきた。その村に居たと言う「苦徒鬼神」を呼び出す為に。そして彼は、「何故こんな事に成ったのか?」それをその大神様に教えて貰おうとした。その為にはサークルの面々は、最高の?生贄だった。

テーマ的に言うと、この場合悪いのは大賀由良(-_-;)。地上げに対して無理して抵抗した結果、妹の犠牲が出た。その後も諦めず?と言うか、悪に唆された結果。もちろんテーマパークを建造した方も悪いしそう言う悲劇が起こってる裏で遊んでた方も悪い。ともかく村を捨てる際に、もうちょっと早く諦めれば妹の犠牲は無かった訳だが、ただ「悪い」とも言えない、時代の流れに押し流された人々の悲哀、と言うのが描ければ良い。


end