ストリード
「白虎隊戦没地巡礼 〜ある小説家の視点〜」
「絵美利ソフト」として、”観光写真”に小説をくっつける形で作品にしてみる。小説部分はもうちょっと調査するなり描写を綿密にするなりせねば成るまいと言うか。ただ?短編小説の発表という点ではありやしれん。
2010/05/06
森宮 照
プロデューサーシートは「絵美利ソフト」を使用。
ディレクターノート
タイトル「白虎隊戦没地巡礼 〜ある小説家の視点〜」
1
小説家の青年、若林 隼人(24)は苦悩していた。次のネタが浮かばない。昔で言うと「戦記物」と言われるだろう、第2次大戦付近、その架空の戦場を書く!で始めたは良いが。第2次大戦中にアメリカ軍の軍艦に乗っていた少年少女が様々な紆余曲折の末に日本の潜水艦に乗り込み日本海軍の包囲網を突破して逃げ、重要な機密を味方へ伝える事で戦況が一変する。初期プロットとしてはそうだが、当初から読者の「有り得ない」の洪水に苦悩し、現在では筆が止まっていた。 煮詰まった所で妻の冴華(22)に促され、二人でネタ探しの旅行に出る事に。目的地は会津若松だ。白虎隊で有名。
2
新婚旅行は近場で済ませた、売れない頃に籍だけ入れた状態、もちろん予算の問題だ。その後、小説が少し当たったので、その代わりの様な物でもあった。目的は観光、”白虎隊”の戦没地ほかを幾つか廻るつもり。二人で大ざっぱなプランを練り、旅館を予約する。ともかく、当時若い命を散らせた少年らの気持ちが少しは解ったらいい、或いはそんな気分で車を走らせやがて旅館へと到着する。荷物を置いて、少し休み。それから。ガイド本を頼りに車を走らせる。
3
白虎隊を取材に行こう、に対して「でも小説で主人公達が死んじゃうのはヤダなぁ」そんな妻の言葉に苦笑。同意するより無いし、今回は、そんなつもりもなく。ともかく到着した白虎隊の戦没地は、もちろん観光地化していて。階段を上った先の高台、鷲の塔とかを眺めていると、別の団体客が観光ガイドから説明を受けていた。白虎隊の話に感動したローマから送られた物、らしいが詳しくは聞こえず。その後、会津武士の格好をした女性による剣舞、と言うのも行われた。何でも白虎隊の最後を演目にしているらしい。なかなか美人だ、とか言っていると妻に引っ張られ、坂道を上る。
4
やがて、奇妙な螺旋形の塔にやってくる。何でも白虎隊の少年らが昔、ここで遊んでいた場所、らしい。戦況悪化、不幸な偶然が重なり孤立した彼らは、地の利が有るこの場所を目指した。またも隣で聞こえるガイドの話では、かなり難解な建物らしく、今の技師で創れる人は居ない、とか。「昔はコスト考えないから凄いよね」の言葉に、少し見習うべき何かを感じたりしつつ、その塔を見上げて、写真に撮る。その国宝級?の建物で、少年らは無邪気に遊んでいた訳だ、価値など解らないまま。
5、6
白虎隊の塔の先に、その「逃げてきた洞窟」と言うのが有った。洞窟と言うか、”水路”だ。白虎隊の15才くらいの彼らは、ここを通り戻ってきたのだと言う。そしてさっきの塔、その付近から城下を見下ろす。城が焼けたと勘違いして、皆で自害して果てた。経過を見ると、全く、馬鹿らしくさえ有る。少年を動員した時点で、保護者がその場を離れた時点で。勘違いと悪い偶然が次々と彼らを襲う。彼らが命を捨てたと言う、今は墓地に成っている広場を見下ろしつつ。ふと妻が「なんかもう、訳解らないよね」と言って。
7
戦争というのは、そう言う物かもしれないとは言う。訳が解らない。戦う理由など無いし、負けを前に自害する必要さえ無い、部外者の意見。散々、命がけで、仲間を守らねば!で絶叫し果てていく様なキャラを描いたくせに。それは現代人だからだろう、幸運な時代に産まれている。だから、本質的に戦争を語ろうとする事自身が滑稽ではあって。「だから面白いのかな」ふと苦笑し、妻に不思議な顔をされた。TVで馬鹿な事を言っているコメディアンの様な物かも知れない、今の自分のような小説家なんてのは。
8
戻って、白虎隊も戦勝を祈願しただろうお社を見つつ。彼らの必死さに思いを馳せる。必死だったろうか?単に大人達に乗せられていただけか。自分が架空戦記を書くのも、結局は「それを認められたから」だ。ウケるならガ○ダムの様なロボット物でも書く、その方がプラモに成ったり美味しい。だから、意味を解っているのだろうか。そもそも意味が有るんだろうか?子供連れの夫婦が、手を引いていた小さな子供を抱え、頭を撫でて。その後降ろして、また連れ歩く。ふと眺める、寄り添う妻は多分、違う事を考えているかもしれない。あの手を引かれた先に、この現場は、或いは有るのだ。不意に妻が「戦争ってイヤね」と言って、苦笑しつつ、同意する。
9
その後、古い民家が並ぶ観光地を巡る。観光客でごった返し、ノスタルジーに浸る余裕は微妙に無いまま、ともかく写真だけは撮す。昔から創られ続ける品々が並ぶ。店の人々も一生懸命商いを続ける。昔も宿場だったと言うから、混雑具合は似ているだろうか。そんなに昔も今も、人の営みその物が変わっている訳でもない。だから、意味不明に”彼ら”も、日本軍の潜水艦を乗っ取り脱出を計る自分の小説の主人公達も。それ程今の自分らと、変わっている訳でもないのかもしれない。単にパソコンが、携帯が、自動車が無いだけだ。或いは、そこに潜水艦が有るだけだ。
10
車を走らせ、「塔のへつり」へやってくる。国の天然記念物、その雄大な景観に「土に埋まったホ○イト○ース!」とか言う自分と、苦笑する妻と。彷徨きながら、ふとカメラのシャッターを森の方に向けると、不意に鬱蒼としげる森の中に一条、光の抜けるトンネルが見えた。「何?」妻の問いに、「いや、珍しいと思って」そんな返事をしつつ。その奇妙なトンネルを眺めつつ、自分が現代に生きている事に感謝しつつ。思う所もあった。「ともかく、悩むだけ無駄だって事だ」ふと苦笑して。明日には帰る日程の前に、今夜の事を考えた。
小説は、それでも少しは進みそうな気が、した。
end