著作権問題についての指針。

2004/01/21 森宮 照
更新履歴
2004/10/16 「未公開作品の盗作について」で、表現を修正。「罰則について」を新設。


■目的
 広く普及したメディアにおいて、近年我が国でも「著作権問題」がたびたび上がるように成ってきている。しかしその判定は多数の見解があり判断は微妙に成らざるを得ず、結果として決着まで非常に時間を取られる事が多い。またそうでなくても創作を行おうとする場合、「どの程度が盗作なのか?」に対する具体的な指針が無ければ作者としても作りづらい。その辺に対して具体的な指針を提示する事で、問題の早期解決を目指し、円滑で健全な作品制作を促す。

■基本理念
 「作品のアイディアという物は、常に後の作品に影響を与えつつ、かつ消費されてゆく物だ」という事を基本理念に置き、その上で有る程度の柔軟性を持つ、具体的な指針の作成を目指す。具体的には「無断使用だと認められる部分が2つ以上有る場合、その作品は盗作だ」という概略から設計されており、その判断条件を列記してある。なお現状と合わない、或いは改良点が見つかるなりした際は、常時付け加え改良していく。

■定義
著作権侵害か否かを判断する上での、用語の定義。
「要素」
 作品の特徴を列記してみた、その一行(40文字以内と想定)。「主人公は改造人間である」等。
「組み合わせ」
 その作品の中に入れられている「要素」2つ以上をひとまとめにした物。
「固有名詞」
 その作品中のみで使われている、名称や略称。外見的な特徴等も含む、とする。
「独自」
 その作品が企画or発表されるまで、その「要素」「組み合わせ」「固有名詞」「作品名」などを他の作品が持っていない場合を指す。

例:仮面ライダーの場合
  A.主人公は”強化された人間”であり、厳密には人間ではない。
  B.主人公はバイクに乗っている。
  C.必殺技は跳び蹴り。
  D.必殺技の名前は「ライダーキック」である。
  E.敵は強化された「元人間」の怪物である。
  F.敵は人々を襲おうという”能動的な意志”がある。

 以上6つが「要素」。A〜Fを1つにした物が「組み合わせ」。
 AとCとDとEは「独自」の要素であり、Dは「固有名詞」である。
 組み合わせは複数有っても良いが、「独自」である場合に限られる。
 また上記の場合、AEFで1つ、BCDで1つの組み合わせ、そう判断しても良い。
 ただし、その2つの組み合わせが「その作品独自の物であるなら」。
 ※もちろんコレは簡単な例で、厳密にはもっと列記出来るが、具体的な例として考えて欲しい。

■該当
ある作品から、その作品が持つ独自の「要素」を無断で使用している場合+1。
ある作品が持つ独自の「組み合わせ」を、無断で使用している場合+1。
ある作品が持つ独自の「固有名詞」と似た物を、無断で使用している場合+2。
有る作品の「作品名」と極めて似た名前を、作品名に使用している場合+5。

■判定
著作権判定は「カウント制」。「該当」を加算した結果、2つ以上は著作権侵害となる。
「該当」を加算した物を、「侵害レベル」と呼称する。
例:上記の仮面ライダーの場合。

 他作品として、「ライダー仮面」という作品があった。作品は下記のようだった。
  A.主人公は、宇宙人である。
  B.主人公はバイクに乗っている。
  C.必殺技は跳び蹴り。
  D.必殺技の名前は「ファイナルシュート」である。
  E.敵は、強化された「元人間」の怪物である。
  F.敵は人々を襲おうという”能動的な意志”がある。

 基本的に、B、C、E、Fが仮面ライダーと同じ、そのうち仮面ライダー独自の要素と接触しているのはCとE。
 故に、「要素」からの「該当」は、2つ。侵害レベルに+2。
 B,C,E,Fで一つの「組み合わせ」だとすれば、仮面ライダーにも有り、それは独自である。
 故に、「組み合わせ」からの「該当」は、1つ。侵害レベルに+1。
 固有名詞の接触は、この場合は無いと判断。
 しかし、「ライダー仮面」という作品名は「仮面ライダー」に著しく似ていると判断できる。
 故に、「作品名」に「該当」、侵害レベルに+5。
 結果として「侵害レベル」は累計で8と決定。2を越えているので、ライダー仮面は仮面ライダーの著作権を侵害レベル8で「著しく侵害している」盗作である、と断言できる。
 この場合、例えばタイトルが「英雄仮面」、Eが「敵は、自然発生した妖怪である」だったなら、ぎりぎり侵害レベル2で収まり、「仮面ライダーを参考にした作品であり、著作権侵害ではない」と言える。

■条項
>作品に対して。
 1.侵害レベルが2までなら、「参考にした」という事で、盗作とは言えない。
 2.侵害レベルが2以上に成る場合、「著作権侵害だ」と判定される。
 3.ただし、2.はその”該当”が「その作品独自の物」で有る場合に限る。他の作品でも使われている”該当”は、「その他作品から参考にした」と言えば”該当”にはならない。ただし作品名は明示する必要があり、その他作品は時期として明らかに訴えてきた作品よりも後に、その作品よりも前に創られた物でなければ成らない。
 4.”該当”を訴えられた側が知らないと言っている場合、本当に知らなくても酷似しているなら「知っていなければ成らなかった」、或いは「知らないはずが無い」という事でカウントされる。
 5.「固有名詞」に関しては、その名前が他の作品、或いは一般的に使われている物、著作権が発生し得ない物の場合、「独自」とは判断しない。
 6.”該当”が2つ以上は「著作権侵害」、5つ以上は「盗作」と判断する。
 7.ある要素や組み合わせに商標登録でもしていない限り、たとえ同じ作家、会社の作品でも異なる作品は”別作品だ”として判定する。有る会社のAとBというほぼ同じ作品があった場合、他社のCという作品がAから2つ、Bから2つを使用していても、作品単位では盗作ではない。
 8.上記の条項が適用されるのは、作品が「商用目的で作られている」物の場合に限る。

>作者に対して。
 1.ほぼ作品に対してと同じだが、作者(或いは制作した組織)が作者(或いは制作した組織)を訴える場合、判定は少し拡大して判断する。その場合、その訴えた作者の一連の作品から、「訴えられた作者の”一連の作品に”2つ以上該当が有るなら」、その訴えられた作者は「著作権を侵害した」と認定される。「あの作家は私のA作品から2つ、B作品から1つ、C作品から2つを無断で自分の作品に使っている。計5つも”該当”するから侵害レベルは5で、”私から”酷い盗作をしている」と判定が可能。もちろんそれらが「独自である」と認定される物に限る。

>未公開作品の盗作について。
 1.先に”該当”を「盗られる」、つまり似た該当を先に出されてしまった場合、「企画時期を明らかに出来る証拠が有るなら」、たとえまだ「商品化されていなくても」、企画時期の早い方が優先され、更に”1つ使われている毎に”侵害レベルに+5される。故に盗まれては困る該当の場合、後で”自分の方が早い”と主張できるように、企画日時は公式記録として残しておかねば成らない。ただし1つ程度なら”偶然一致する”事はあり得ると思うので、2つからとする(故に侵害の場合+10〜になる)。例えば作品を執筆中の有る作家が、先に出た作品の中に、まだ執筆中の未公開作品から”該当”を2つ発見したら、それは盗作だと訴える事が出来、その場合の「該当」は2で侵害レベルは2、更にそこに+10で12、「悪質な盗作だ」と判定可能。もちろん第3者などの「証拠」が有る事が前提。

>非営利作品について。
 1.商用作品(プロが営利目的で作る作品)が、非営利(金銭を得ていない、または一般販売前の)作品からその作品独自の「要素」や「組み合わせ」を勝手に流用する様な行為は、通常の”該当”判定の後で、更に侵害レベルに+5される。同人誌などに載っていた「独自の要素」をプロが勝手に自分の商用作品に使った場合、該当が1つでも侵害レベルには+5され、計6になり、「悪質な盗作行為だ」と判定される。
 2.非営利作品が、営利作品が持つ独自の「要素」か「組み合わせ」等を無断で使用している場合、「流用元を明記し、それによって金銭を得ていない場合に限り」”該当”には当たらない物とする。ただし、その行為が著しく”その作品の価値を貶める物である”と元の作品の制作側が見た場合は、その限りではない。

■罰則について
 罰則については「罰金」で考えてみると、大体侵害レベルの二乗×百万円くらいが適当か?と捉えてみた。侵害レベルが例えば+12なら、12*12*100で、一億四千四百万円の罰金になる。もちろん全国に流通される商品を前提とした話なので、アマチュア作品の場合なら一〇倍程度だと感じる。その辺は訴えられた側が得た利益を見て個別に判断したい。

■終わりに
 以上の判定に対する指針は、あくまで個人的なガイドラインであって、今のところ特に罰則規定を要求できる、そう言う物ではありません。ただそれ相応に「断言」出来る内容には成ったと思うので、まあお気に入りの作品がパクリ疑惑をされた際には、上記のルールに基づいて判定してみるとどの程度パクリなのかが容易く?解って面白いのではないか?と思います。基本的な想定は物語の場合ですが、本来はTVゲームのシステム的なパクリの判定用に思いついた規定なので、まああらゆる創作物に広く利用できるのではないか?と個人的には考えています。様々な作品を照らし合わせてみて、もう少し不備の補強や改良は必要だろうとは思うのですが、自分の作品がパクリかどうか、大体上記のガイドラインに沿って考えれば、作った後で「パクリだ!」とおっかない人に怒られずに済むと思うのですが、どうでしょう(笑)。


END